ワールドトリガー もう一人の家族   作:ひよっこ召喚士

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あけましておめでとうございます(もう2月

投稿がかなり遅れましたが去年から引き続き読んでくれている方も今年になってから読んでくれている方も何卒宜しくお願い致します。


大規模侵攻①

「「三雲君!」」

「B級昇格おめでとう!」

 

「え!?な、なんで!?」

 

 学校でトリオン兵が湧いた事で登校が再開されるのに時間がかかったな。ボーダーで色々と忙しかったのもあり、久しぶりの登校だなぁと感じているといきなりクラスメイト達からの祝いの言葉を投げられ、ただただ驚いてしまった。なんで知ってるんだろうと一瞬悩んだが、そうか広報サイトだなと思い、少し心を落ち着かせた。

 

「ボーダーの正隊員は全員広報サイトに名前が載るんだ!おれは全員暗記している!!」

三好(みよっしー)、ちょっとコワイ」

「にしても遊真、お前の名前もあったんだけど、それともう一人一つ学年下の雨取千佳ちゃんだっけ、B級の部隊として登録されてるよな!!」

「遊真くんもボーダーの人だったなんて、教えてくれれば良かったのに」

「いやいや、おれは転校した時はまだ所属していなかったから」

「遊真くんもB級への昇格おめでとう!」

「ありがとう」

「隊長は三雲なんだろ三雲隊って奴か?かっけーな」

「爆撃騒ぎのときテレビに出てたよね!?」

「基地の中ってどんな感じなの!?」

 

 何で知られているのか分かってもいきなりクラスメイトにどんどん詰め寄られて質問されると対応に困る。遊真の奴は上手く相手をしているがぼくは人に囲まれるような状況は慣れそうにない。

 

「はいはい、みんな。もうチャイムなってるわよー」

 

 そう思ってると先生が入って来た。おかげでみんなも席に着くために戻って行ったために散っていった。あ、そうだ今日は午後から任務があったな。

 

「あ……先生すみません。僕たち2時から防衛任務があって……」

「まぁ、そうなの?じゃあお昼が終わったら特別早退ね。お仕事がんばって」

「特別早退!プロっぽいなー!」

「そりゃプロだもん」

「いや……はは……」

 

 授業中は流石に囲まれることは無かったが休み時間になる度に人に囲まれる事になった。時間によっては他のクラスから人が来ることもあったけど、ぼくにそんな価値は無いと思うんだけど……

 

「防衛任務ってチームでやるんだよね?」

「遊真くんや千佳ちゃんって子といつもやってるんだよね。どんな感じか教えてよ」

「話せない事は話さなくて良いから、誰がどんな感じに戦ってるのかとか雰囲気だけでも」

 

 こんな感じの話がやっぱり多い。遊真の奴は「そう言うのは隊長であるオサムに」なんて言ってぼくの方に決定権が在る様に話してこちらに注目集めている。確かに話すかどうかはぼくが決めるべきだろうけども丸投げするなよ。

 

「概要だけで良いなら、少しだけ話すから質問攻めにするのは止めて欲しいかな……」

 

 そう伝えるとみんなわくわくした表情でぼくの机のまわりに集まって来た。もちろんボーダーの規定に関わる内容はぼかしたり、伝えかたを変えたが僕たちの隊が正式に稼働してからの話をいくつか話す事になった。

 


 

「これから隊としての初めての防衛任務だけど準備は良いか?」

「おう」

「大丈夫だよ」

 

 ぼく一人がB級にあがってから他のフリーの人や部隊の人と組んで行った事はあるが、僕が隊を率いる立場として参加するのは初めてになる。他に一緒に防衛任務に参加する部隊の人もいるし、そこまで心配はないだろうけどやっぱ不安だ。

 

『まぁ、安心して。私もしっかりサポートするからね』

「栞さん、ありがとうございます」

 

 オペレーターとして玉狛第一と兼任で栞さんが参加してくれてるのでサポート面では心配はないだろう。防衛任務の流れもしっかり覚えてるから一緒にやる人に迷惑はかけないと思いたい。

 

「あっ、居た居た。君たちが玉狛第二で良いのかな?」

「あ、はい。玉狛第二の隊長の三雲修と言います。今日はよろしくお願いします!!」

「空閑遊真です」

「雨取千佳です」

「こっちこそよろしく、チームで任務に参加するの初めてって話は聞いてるから、こっちもお節介にならない程度にサポートするから安心してくれ」

「隊長、こっちも挨拶しましょう」

「ああ、柿崎隊の隊長の柿崎国治だ。こっちが」

「照屋文香です」

「巴虎太郎です」

『どうも~オペレーターの宇井です。よろしく~』

 

 B級中位に居るグループ、隊員の情報では柿崎さんは初期の嵐山隊の一員、他の二人もその時期に入隊で新人王争いに参加するレベルだとデータがあった。実際に動きも堅実な物が多く、チームの動きとしてのまとまりもかなりのものだ。

 

「それじゃあ、時間まで警戒区域を回ろうか。まぁ、初めてだから緊張してるだろうけど落ち着けば君たちなら大丈夫だと思うから」

「それってどういう?」

「ボーダーで噂になってるからね。訓練で1秒切り、緑川を圧倒した新人、本部に風穴あけたトリオンモンスター、風間さんから1本、緑川から3本とった隊長ってね。しっかりと動けばトリオン兵相手に負けないだろうってね。まぁ、防衛任務での動き方や今回みたいに他の隊と組む時のやり方を覚えてくれれば良いよ」

「うっ、そこまで噂に……」

 

 ボーダー内での噂の廻り具合に驚き、少し胃が痛い思いだ。しかし、頼りになりそうな人が相手で助かった。それからレクチャーされながら巡回ルートを進んでいった。

 

「……という訳だから先に臨時のフォーメーションは決めといた方が良い訳だ。必要のないミスを減らせるし、隊同士でのいざこざを避ける面でも意識しといた方が良いよ。後は俺はそこまで気にしないけど年功序列とかマナーとか気にする人も中にはいるから、組む相手の事はざっとでも訊いておいた方が良いかな」

「なるほど、実際の例も聞けるとかなり勉強になります」

『オペレーター同士は慣れたもんだけどね~』

『まぁ、防衛任務だとそこまでやる事に差はないからね。連携もしやすいから、現場の隊員よりは楽かな。混線を避けて情報伝達を絞るべきか、伝達速度重視でどちらも口に出すかとかはあるけどね』

『そこいら辺は隊次第かな。口出さないで欲しい人とか、煩いのが苦手な人とか、コミュニケーションが苦手な娘とかもいるからね~っとそんなこと言ってたらゲートの反応だよ。ここから500メートル先に3つ』

『あれはバムスターとバンダーだね。バムスター2のバンダー1、レーダーに乗せたよ。追加が無いか警戒しとくね』

 

「出て来たね。雨取さんの狙撃はここだと使いにくいか…足が速いメンバーで先陣を切って貰って、残りはサポートでいこう。文香先行してくれ、虎太郎は俺らと行くぞ」

「「了解」」

「遊真、グラスホッパーで行ってくれ、千佳は付近で狙えるポイントに移動」

 

「了解っと、照屋先輩グラスホッパー使う?」

「ではお借りしますね」

 

「分かった。栞さん」

『任せて、そこの路地を少し進むと3階建ての建物があるからそこの屋根からなら問題なく狙えるよ』

 

 遊真が出したグラスホッパーを使い文香さんが跳び、遊真も跳んで行った。オペレーターの指示に従い、トリオン兵から目を離さずに道を進んでいく、千佳も既にポイントに到達している。

 

『うん、目標撃破……追加でゲートの反応あり、修君たちの方が近いかな。バムスター3、モールモッド2だよ』

『道一本挟んでかたまってるね。「バムスターが2、モールモッド1」と「バムスター1,モールモッド1」で別れてる』

「いつもより多いか……初任務なのにドタバタしてるな。まぁもうすぐで交代だし頑張ろう。それじゃ数が多いし、分担してやろうか、1,1の方は任せちゃっても大丈夫か?」

「はい!!行くぞ、千佳は顔を出してるバムスターを頼んだ。僕はモールモッドとやる」

 

 バムスターであれば千佳の狙撃で簡単に撃破できるだろう。そうなると僕がモールモッドとやる事になる。玉狛での訓練で何度も倒しているし、落ち着いて対処しよう。

 

 モールモッドは鋭い攻撃が危険だが不意打ちでも喰らわない限りは一撃でやられる様な相手ではない。いる場所が分かっていればレイガストの盾モードで全然防げる。

 

 レイガストを破ろうと攻撃してくるがそう簡単には壊れはしない。そしてモールモッドの攻撃は大きく払う、斬り捨てる様な動作だ。

 

 そのため、小さな穴を狙って刺すような動きは出来ない。僕は盾モードのレイガストを少し広げ、脚の一本を捕らえてモールモッドを捕まえると正面に穴を広げた。

 

「アステロイド!!」

 

 正面から弱点である目を狙い、アステロイドの攻撃を放った。装甲を貫く必要が無いので無理に逃げられる前に倒そうと弾速重視で放ったが問題なくモールモッドは沈黙した。

 

 辺りを見渡し、更に追加で開くゲートが無いのを確認してから少し警戒を緩める。そうしているとちょうど千佳から声がかかった。

 

『修くん、バムスター倒したよ』

「こっちもちょうど倒した」

『オサム、終わったか?』

『終わったなら合流しようか』

『ここならちょうど良いんじゃない』

 

 向こうのオペーレーターの宇井さんが場所を示してくれたのでそこに向かう。全員かすり傷なく無事終える事が出来た様だ。

 

「よし、時間になったし後は引き継ぎの確認をしたら、任務を終了した報告をする。その後で反省したり、隊長は報告書を書いたりしておしまいだ。まぁ、突出した行動もなく、急造の割に連携はしっかり出来てたからそこまで問題は無いな。しいて言えば報告をオペーレーターに任せっきりにせず、倒せたら報告するといいかもな。もちろん、集中しないといけない状況とかは別だ。状況判断はこれからこなしていけば分かってくるから、今日みたいな感じでやれば大丈夫だろう」

「はい、ありがとうございます」

『引き継ぎの連絡来たよ。ここからは諏訪隊とB級のフリーの人でやるみたい』

『よお、お疲れさん。出現数が多かったらしいな。こっちでも注意しとくが上がる時に一応連絡しといてくれ』

「了解です。まぁ、こんな感じで気になる事があったらそこも伝えたりしておくと良いかな。本部への連絡は俺がやっとくから上がっちゃって良いよ」

 

 そうして最初の防衛任務は終了した。玉狛支部に戻った僕達は隊の中での反省を行い。僕は先輩に教わりながら報告書の書いた。

 

 まだ数回ではあるがその後も防衛任務はこなし、他の隊の人と知り合う機会も出来た。まだ完璧とは言えないが隊として問題のない動きは出来ているつもりだ。

 


 

 個人名やトリガーなどについてはぼかしながら最初の防衛任務について話した。休み時間を潰してまで聴く価値があったのかなと思ったがみんなは満足している様だ。

 

「そんな感じなんだ。やっぱりすげーな三雲」

「事務的と言うか仕事っぽい感じが逆にプロっぽくて良いね」

「千佳ちゃんって子はスナイパーなんだ。スナイパーって響きがすでにかっこいいよな」

「遊真くんって力が凄いのは知ってたけど足も早いんだね」

「話してくれてありがとな」

「また聞かせてね」

 

 口々に感想とお礼を言ってみんなは席に戻っていった。たくさん話したせいで喉がカラカラだ。水分補給をしているとちょうどチャイムがなった。

 

「授業を始めるぞ」

 

 やけに疲れたけど先生も入ってきたので気持ちを切り替えて授業に専念しよう。この授業が終われば昼休みだし、昼食時くらいは人の波から離れて休めるだろう。

 


 

「人に囲まれるのは疲れる……」

「オサムしょっちゅう囲まれてるじゃん」

「疲れたのはお前が押し付けた所為でもあるんだぞ、まったく」

 

 ボーダーと言うのは良くも悪くも世間の注目を集めている。ボーダー隊員だと言うだけで少なからず人から視線を受けることは多くなるのは分っているが、毎日これだと一苦労だ。

 

「修くん」

「おーさぶさぶ」

 

 声が掛けられ、そちらを向くと千佳ともう一人女の子が立っていた。寒そうに少し震えながら首をすぼめている。たしか千佳がスナイパーの訓練を受けている際に見かけた気がする。千佳の同期でスナイパー仲間なのだろうがもう仲良くなったのか。

 

「おーチカ」

「そっちの子は……?」

 

「いっしょに狙撃手(スナイパー)になった出穂ちゃん」

「チカ子はとっととB級にあがっちまったけどね。っと、ども夏目(なつめ)出穂(いずほ)っす」

 

「チカのともだちか、オレはチカと同じ部隊の仲間の空閑遊真、どうぞよろしく」

「三雲修です。ええっと、千佳の部隊の隊長をやってる。よ、よろしく」

「よろしくっす」

 

 その後に千佳の事を少し聞いたり、部隊ってどんな感じですかと逆に訊かれたり、多少話しをさせてもらい。そのまま一緒に昼食を取る事になった。

 

「そう言えばB級って事は千佳や先輩たちも大規模侵攻ってので近界民相手に戦うんですよね?」

「んっ、C級にも通達されてるんだ」

「あっ、はいっす。戦っちゃダメですけど避難とか救助のサポートにトリガーも使用して良いって事になってます。なので避難経路とかちょっと覚えて何度も確認してます」

「ほほー、イルガ―の時のオサムの活躍がボーダーのルールを変えたのかね」

「持ち上げるのはやめろ」

「へー、なんすかその面白そうな話、教えてくださいよ」

 

 他愛も無い冗談を交えた話をしている時間が一番安らぐが、実際に侵攻の時が攻めっているのを感じるとどうしても落ち着かない気持ちもある。

 

「アフトクラトルがこっちの世界から離れるまであと10日ほどだ。それまでどうにか凌ごうぜ」

「10日か」

 


 

「うお、早いな」

 

 三門市全域を見渡せる一に佇み、その未来を見つめていた男は、数ある未来の中から選ばれた次の瞬間への感想を漏らした。

 


 

 侵攻についての話題を出していると、千佳が何かに気付いたように立ち上がり、警戒区域の方を向く。すると一拍遅れて警戒区域の空が暗く染まりだした。

 

「……!」

「……!?」

 

 警戒区域を包み込む暗雲から次々に吐き出される黒い雷。異なる世界からの侵略者たちの門が一斉に開いた。

 

「これは・・・・・!!緊急呼び出し……!」

「来たって事だな」

 

 


 

「門の数、38、39、40……依然増加中です!!」

 

「任務中の部隊はオペレーターの指示に従って展開!トリオン兵を撃滅せよ!!一匹たりとも警戒区域から出すな!!非番の正隊員に緊急招集を掛けろ!全戦力で迎撃に当たる!!」

 

「戦闘開始だ!!」

 

 


 

「システムとの連動はどうにか出来ました。各支部や街のカメラとも接続できてます。本当なら外付けでベイルアウト機能も付けたい所ですが、流石に間に合いそうにないですね。調整せずにつければエラーを起こすだけですね」

 

「ベイルアウト専用のトリガーなんてものそう簡単に思いつかれても対応できるか!!本部のシステムで黒トリガーの機能を拡張できただけ十分だろうが!!」

 

「本当にまぁ、これだけのものがあれば市街の被害は防げそうだが、悠菜さんが言うんなら次の機会にって事で」

 

「黒トリガーを奪われる可能性を考えればその保護としては的確なんですよ。まぁ『迷宮(ラビィ)』と『雷の裁き(ドンナー)』については任せました。私は先に出てトリオン兵を減らしてきます。指示があれば通信で伝えてください」

 

「おっ、おい!?勝手に出ていきおって、っとわしも急ぎ向かわんとな。冬島、『迷宮』はお前に任せるからな」

 

 本部の開発室にギリギリまで粘って調整に回っていたが、悠長に武器をいじくりまわしている時間はこれ以上無さそうだ。

 

「本部や警戒区域内の仕掛けがトリオン製だから『崩壊』は使えない。『迷宮』がある以上は『砲台(タレット)』を出す必要性もない。相手が誰か分かるまでは顔は出したくないし、これを使うか『レムレス』起動(オン)、レプリカ視覚支援を」

[了解した]

 

 これは雑魚退治にしか役に立たない、少数遠征の様な精鋭ばかりの奴では最初の数発が当たれば良い方だ。だが、相手が数で押そうとしている間は十分だろう。

 

「さてさて、家族と仲間、故郷の為に働くとしましょう」

 

 

 


 

【門発生、門発生】

 

【大規模な門の発生が確認されました】

 

【警戒区域付近の皆様は直ちに避難してください】

 

 

「なにあれ……!」

「基地の方が真っ暗だ……!!」

 

「先生!」

「三雲くん」

「呼び出しがあったので現場に向かいます!学校のみんなをなるべく基地から遠くに避難させてください!」

 

「三雲!」

「もしかしてヤバいのか!?これ……!」

 

 警報が鳴り響き、普通では在り得ない程暗くなった空にみんな不安になっている。変に安心させるより危険な事を伝えたうえで行動を示した方が良い。

 

「近界民が警戒ラインを超えるかもしれない。先生に協力してみんなを避難させてくれ頼んだぞ」

「わ……わかった!」

「気を付けてね……!」

 

 急いで外に出て基地の方を確認する。今日が任務の隊の人はもう先に向かっているだろう。僕たちもここからならそう時間を掛けずに向かうことが出来るだろう。

 

「夏目さん、C級はこれから避難に当たるんだよね。気を付けて、危ないと思ったら迷わずトリガーを使って、何か言われたら僕がそう言ったと言って良いから」

「了解っす、メガネ先輩!チカ子、気をつけろよ!!」

「うん、出穂ちゃんも気を付けて!!」

 

 C級である夏目さんに少しだけ言葉をかけてから改めて二人に向き直る。

 

「これから玉狛第二として動く、遊真は使うべきだと思ったらすぐにでも黒トリガーを使え、千佳も遅れないように気を付けて、【栞さん、オペレートお願いして良いですか?】」

【任せとき、今はまだ第一の先輩たちは小南を迎えに行ってるからしばらくは修君たちの方に専念するよ】

「それでは玉狛第二、行くぞ!!」

「「了解」」

 


 

 三門市全域を観測するモニター、その画面を埋め尽くす様に示されるトリオン兵の印。それらは着々と侵攻の動きを見せていた。

 

「トリオン兵はいくつかの集団に分かれてそれぞれの方角へ市街地を目指しています!本部基地から見て、西・北西・東・南・南西の5方向です!っとこれは!?」

 

「どうした?」

 

「トリオン兵の反応が本部を中心に次々に消えてます。増加数の方が多いですが、かなりの反応が減少中です」

 

「おそらく悠菜くんか、【悠菜くん、今トリオン兵を片付けているのは君か?】」

 

『はい、とにかく数を減らすべきと判断して動きました』

 

「そうか【北西から南にかけては無視していい、そのまま東側一帯を頼んだ】」

 

『了解です』

 

「現場の部隊を2つに分けて南と南西の敵にそれぞれ当たらせろ!」

 

「了解!」

 

「ちょちょっと待ってください本部長!西と北西はどうするんです!?」

 

「心配は要らない。西と北西にはすでに迅と天羽が向かっている。あの二人に任せておけば問題ない」

 

「おお……こういう時は頼もしいねェ……!」

 

「問題は他の2方だ。防衛部隊が追いつく前に市街に入られる訳にはいかない。鬼怒田開発室長」

 

「わかっとる。既に冬島と組んで対策済みだわい。それにアイツには『迷宮』を預けておる」

 

 鬼怒田室長がそういった瞬間に警戒区域内の従来の設備が作動した。トリオン兵に反応して作動する罠は市街地へ向かおうとするトリオン兵を押し留める様に倒し始めた。そして、新たにボーダーに与えられた力であり、『迷宮』の名が与えられた黑トリガーが起動した。

 

「こ、これが……」

 

「ふん、流石は黑トリガーか……シミュレーションよりも形成速度も規模も一段階上に見て良さそうだわい」

 

 『迷宮』と言う名に相応しく、それは陣地を作り上げる事が出来るトリガーだ。自分の戦いやすいフィールドを作れば敵国でも楽に戦える様になる。

 

 だが、このトリガーが真価を発揮するのは攻めるときよりも守る時だ。外敵から国を守る為の要塞を一瞬で築く事が出来ると言うのは防衛と言う点においては追随を許さないレベルだ。地を進むトリオン兵を進ませない大きな壁が警戒区域を封鎖するように形成され、その壁から生み出される砲台からの攻撃で警戒区域を出ようとしていたトリオン兵が次々に片付けられていく。

 

「モニターを増設し、監視カメラだけでなく、隊員の視覚情報からも現場を確認出来るようになっておる。その場その場で必要な支援が可能だ。守る壁を作っても良し、敵を牽制したり、邪魔なトリオン兵を倒したりも黑トリガーとアイツの技量なら簡単だ。わしが作った罠と比べてトリオンの効率が段違いに良い。トリオンもそうそうきれんだろうし、罠や砲撃を使わなくて良い分、本部のトリトンにも余裕が出来たわい」

 

「ふむ、この分なら十分間に合うな。部隊が追いついた」

 

『諏訪隊到着した!近界民を排除する!』

『鈴鳴第一現着!戦闘開始!』

『東隊現着、攻撃を開始する』

 

「風間隊、嵐山隊、荒船隊、柿崎隊、茶野隊もトリオン兵を排除しつつポイントへ向かっています!」

 

「よし、合流を急がせろ。各隊連携して防衛にあたるんだ」

 


 

[ボーダーとトリオン兵が交戦し始めたようだ]

「状況は!?」

[数ではトリオン兵が圧倒しているが敵はなぜか戦力を分散している。予知と備えで敵の初動を捉えられたのが大きかったな]

「……いや、勝ち目がないのに挑んでくるわけがない。まだ次があるはずだろ」

「そうだな。ラッド騒ぎを起こしたであろうアフトクラトルって国なら戦力を把握しているはずだ。どうする?グラスホッパーで跳んでくか?」

「僕と千佳は跳ぶのに慣れてない、失敗した場合のロスを考えるとこのまま進んだ方が良いだろ。それに途中でトリオン兵にも出会うはずだ。倒しながら少しずつでも良いから進むぞ」

「了解っとさっそく見えて来た。敵の狙いを考えるのは後にしてやろうか」

「遊真は好きに動いてくれ、千佳は後ろで警戒、硬いのや空を飛んでるのが居たら援護を頼む!!【玉狛第二、警戒区域内で戦闘を開始します】」

 

 捕獲用に砲撃用、戦闘用と雑多なトリオン兵が列を成すように向かってきている。はっきり言って数が多すぎる。遊真ならまだしも、僕が正面から戦えばトリオン切れを起こすだけだろう。

 

「遊真、足を崩してくれ、目を狙い撃つ!!」

「了解、グラスホッパー!!」

 

 向かってくるトリオン兵たちの足元を飛び交う様に進み、トリオン兵の足をスコーピオンで切り割いて行った。そのまま向かった先で遊真は別のトリオン兵を相手をしている。まだ経験が足りていない僕だが目の前の(動けない)トリオン兵は敵ではない。

 

「アステロイド!!」

 

 人よりトリオンが少ない分、工夫はしていかないとこれから先が無い。必用な分で必要な仕事をこなすべく、最低限必要な威力でそれぞれのトリオン兵に弾を飛ばす。

 

「目標沈黙、この調子で行くぞ。ん、通信?」

【忍田さんこちら東!諏訪隊と共に新型トリオン兵と遭遇した!サイズは3メートル強、人に近い形態(フォルム)で二足歩行、小さいが戦闘力は高い!特徴として隊員を捕えようとする動きがある。各隊警戒されたし、以上】

「新型トリオン兵……!!」

[なるほどそういうことか、【忍田本部長、その新型はおそらくかつてアフトクラトルで開発中だった捕獲用トリオン兵ラービットだ】]

【捕獲用……!?捕獲は大型の役目じゃないのか……!?】

[【役目は同じだが標的(ターゲット)は違う。ラービットはトリガー使いを捕獲するためのトリオン兵だ。他のトリオン兵とは別物の性能と思った方がいい。A級隊員であったとしても単独で挑めば食われるぞ】]

 

 


 

「仕掛けるか?」

「諏訪、まだ特徴が分かってない状況でこちらから動くと危険だ」

「つってもこのままこいつに足止めされてる訳にもいかんでしょ。ちょっと仕掛けるんで危なかったらさっきの小荒井みたいに吹き飛ばしてくれ。それ行くぞ、オラァ!!」

 

 下がりながら銃撃を始める諏訪隊、だが弾を受けてもラービットはびくともしていない様子だ。

 

「クッソ、アホみてーに堅ぇな!!」

「日佐人!抉じ開けろ!!」

「了解!!」

 

 諏訪隊のアタッカーが装甲を剥がしにラービットの上を陣取り、弧月を突き立てた。その次の瞬間、ラービットから電撃を彷彿させる攻撃が放たれ、日佐人の身体が崩れて落ちた。

 

「日佐人!!……野郎!!吹っ飛べ!!」

「おい、諏訪!!」

 

 日佐人がやられそうになったのを見て諏訪が前に出てフルアタックの銃撃をお見舞いした。その間に堤が日佐人を担いで撤退しようとしているが、逆にラービットに諏訪がつかまってしまった。

 

「落とすぞ。諏訪!!」

 

 東が諏訪を先ほどの小荒井の様にベイルアウトさせようと動いたが、小荒井の時と違い両腕で抱え込むように抱かれていた。諏訪を狙った攻撃は弾かれ、そのまま諏訪はラービットに格納された。そのまま残った堤と日佐人が狙われると思った瞬間、二人の姿は消えていた。

 

「風間か……」

「東さん、ここは俺たちでやります。他の部隊の援護に向かってください」

「ああ、助かる。あいつの装甲はアイビスの攻撃も弾く、しがみつけば電撃、まだ隠されてるてがあると思った方が良いぞ。【一見、戦闘のデータを風間隊に】」

【もう送ってるよ】

 

「うわ、たしかにこれは面倒だな」

「なめてかかるなと。見た目より手ごわいぞ」

「わかってますよ。もういきなり退場はこりごりだ」

 

「【本部、こちら風間隊、諏訪が新型に食われた。直ちに救出に入る】」

 


 

「基地南部、風間隊が新型と戦闘を開始!諏訪隊は一名捕獲された模様!東隊は1名が緊急脱出!そのまま東隊、諏訪隊は柿崎隊に合流、新型と交戦中!南西部では茶野隊、鈴鳴第一がそれぞれ新型と遭遇しています!新型の妨害でトリオン兵の群れを止められません!現在、南西部で戦闘中の玉狛第二が多くのトリオン兵を倒してくれているため保っていますがこのままでは壁に差し掛かります」

「【冬島、その黒トリガーでどれくらいもたせられる?】」

【ばらけてる奴や空を飛んでる奴を倒すのに正直手がいっぱいですね。全体をカバーするのは無理です】

「そうか、捕獲された諏訪の状態はどうだ?」

「トリオン体の反応は消えていません!緊急脱出はできないようですが……」

「よし、諏訪は風間隊が取り返す!部隊の合流を急げ、A級が合流後は新型の相手はA級が行え、B級は全部隊合同で確実にトリオン兵を殲滅せよ。警戒区域の外に一匹も出すな!!」

 

 


 

 

「おいおい……もうラービットとまともに戦えるヤツが出て来たぞ」

「いやはやこれは……玄界の進歩も目覚ましい……ということですかな」

「大したことねえよ。ラービットはまだプレーン体だろが」

「いやいや、分散の手にも掛からなかったし、なかなかに手強いぞ」

「我々も出撃致しますか?ハイレイン隊長」

「いや、お前たちが出るのは玄界の戦力の底を見てからだ。慌てることはない。卵はまだたくさんある。玄界はまだその戦力の全てを見せていない。前回ラッドを撒いた時は数百の兵が動いていた。その規模からしてこの隊以外にも腕の立つ使い手が数多く存在すると推測できる。それにこちらの方角のトリオン兵の消失も気になる。反対側は反応からして玄界の黒トリガーと腕利きの兵のようだだが、こちらは正体を探知できていない」

「玄界の猿相手にびびりすぎなんじゃねーの?隊長さんよ」

「口を慎めエネドラ、上官に対して無礼だぞ」

「あ?てめーこそ誰に口利いてんだ?雑魚が」

「ほっほ、いやはや。お二人にケンカされては船がもちませんな」

「…………チッ…………イライラするぜ!!このクソ狭めー船はもううんざりだ!なあオレを出せよハイレイン!玄界の兵なんざオレ一人で皆殺しにしてやる!」

「皆殺しはともかく、確かにそろそろ体を動かしたいものだな。兄…………いや隊長」

「もう少し我慢しろ。すぐにお前たちの出番は来る。ミラ」

「はい、次の段階に進みます」

 

 




オリジナル黒トリガーの登場です。以前に本部に提出した物ですね。どんな能力か気になると言ってくれた方も居ましたが、こちらは陣地形成を得意とする『迷宮』、これのおかげで警戒区域を出そうなトリオン兵が今のところはいません。まぁ、悠菜と言う戦力が一方向を担当したので余裕も大きいですね。もう一つの『雷の裁き』の方が狙撃手用の黒トリガーです。こちらの詳細は登場してからという事で。


うーん、三雲がなぁ。強化されてる感はあるけど、まだスパイダーを持っていないから誰かと組まないと複数相手にするのはまだ出来ないな。訓練で大抵の相手に対処できるようになったけど基本的に1体1専門だな。千佳なら相手を直線状に並べられればアイビスで一気にどーんと行けるだろうけど。まだ鉛弾は持ってないし、足止めは出来ない。それでも流れて来たトリオン兵に対処できるんだからまぁまぁ強化されてるか。

東側に戦力を割かなくてよくなったため、東隊と諏訪隊が一緒に居たり、この後の展開も所々変わる予定です。詳しくは次回をお待ち下さい。

それではいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。
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