アルビノと言う訳でもないのに私の身体は一部は白く、普通では在り得ない造り物の様な光沢を放っていた。理由も分からず、時間が経つと共にゆっくり、ゆっくりとその白は身体を侵食していった。ただでさえ不気味な身体を持ち合わせていた私が他の人には見えない物が見えていると気付かれた時、周囲から化物として扱われるようになった。
流石に赤ん坊の頃の記憶は
流石に法律上で人と扱われる存在を勝手に処分するのは不味いと理解するだけの考えは持っていたようで、私の特殊な身体を理由に入院の必要は無いが介護が必要で家からは出れないと言う不幸な娘の親の顔を外にはしていたようだ。
少しでも悲しんだり、彼らへの関心を持とうという努力をしていたら何かが変わっていたのだろうか、そんなもしもの話は考えるだけ無駄である。言われた通りに家から出ずに知識を求めて行動していた。自分の見える物の存在があの時の私にはただただ不思議に思えた。今思えば子供としての執着心、拘りの様な物もあったのかもしれない。その対象が世間からは未知の物で、私しか理解できていない物だったのが問題だった。
自分の身体を含めて考察を纏めたり、色々と試したりと子供なりの実験の日々は彼らからしてみれば魔術師の儀式に感じられたのだろう。気持ち悪さが耐えられなくなった彼らは排除することがかなわない私に矛先を向け始めた。
殴られたり、蹴られたりは段々と当たり前になり、自然と受け身の取り方を学んでいく段々とそれに慣れていった。食事や水が出されないことも屡々あったが当時の私はそれが普通だと思っていたが私は他の人よりそれらを必要としない身体になっていたようで苦しみは少なかった。暴力からくる痛みも白い部分で受ければダメージが少ない事に気付き、殴られそうになったら上手くそこに当たるよう自ら身体を動かして当たりに行った。
彼らがそれを不振がることは無かった。なぜなら私は別の痛みに悶えて、夜中に呻き声を上げることが度々あったからだ。成長と共に白が広がっていく、それに合わせて痛みも襲ってくるのだと後から気づいた。この身体に現れる白はやはり普通ではなく、異常だと再認識できた。
白から感じるエネルギーの様なものは私が見ている物と同じものだと気付いた。自分の中を見たり、彼らの事を見ているうちに人の中に宿るそれらを観測することも容易になった。どうやらこのエネルギーは誰でも持っていて胸辺りで作られているようだ。このエネルギーが原因であるのならそれを操ることが出来れば白の侵食も止まるのではないかと考え実行した。
彼らの事を観察している私は無表情でじっと胸元を見上げ続けていたらしく、それが不快に感じられたのか追い払う様に目を合わせない様にとその日は部屋に押し込まれてしまった。暴力を受けなかったのは触りたくないほど不気味に思う様になったのだろう。
エネルギーの事を完全に理解することは出来なかったがエネルギーをある程度抑えることは出来るようになった。しかし、成長と共に体内のエネルギーの量が増えていき、その際に少しずつ白が増えていった。やはり私はエネルギーの量が多すぎるようでそれに耐えれていないのだろう。どうすればいいのか分からず、確かめやすい外にあるエネルギーを調べてみることにした。
よく見て見ようと思った時に自分の体内のエネルギーや彼らのエネルギーに気付くことが出来た。それならこれらをよく見ようと、よく聞こうと、よく触ろうと思いながら集中して調べていった。その際に自然と体内のエネルギーをそこに集めてしまったのだが、少しの痛みはあったが大きな収穫もあった。
目が良く見える、耳がよく聞こえる、エネルギーを触る事、操る事が出来る。同じことが鼻や舌で出来るか試してみたら問題なく出来た。調べるのに便利ではあるが、その中で一番気になったのはエネルギーの操作だった。エネルギーの動きを理解すると更に動かす力が上達し、それは体内のエネルギーにも使えた。
繰り返しエネルギーに触れ、操って行くうちにエネルギーの事がなんとなくで分かるようになっていた。気配と言う物に近く感じた。元々人の動きや生活の中で出る音にもすぐに気が付いていたがエネルギーを捉えることでより鋭敏な知覚を得た。
エネルギーを通して知れるものが増えて私の興味は一層強まっていった。エネルギーの気配だけなら家の外まで軽々と探れるようになった。そうして分かったが私の持つエネルギーの量は他の人と比べられないぐらい多いと言う事を改めて実感した。
ちらほらとエネルギーの多い人も感じられるがその人たちを百人集めても私のエネルギー量には届きはしないだろう。それが今も増え続けている途中なのだから私の異常性を自分のことながらようやく知ることが出来た。それでも止めようとは思わなかった。調べていくうちに分かる事より知らないままの方が私にとって怖かったのだろう。
夜中に私はエネルギーの大きな揺れの様な物を感じて飛び起きた。便利であるが必要以上に敏感なのも考え物である。今は私に向けられていない様に感じるためまだ安心できたがその揺れを引き起こした存在に危機を覚えた。何かが迫っているような巨大な何かに押しつぶされるようなそんな逃れることが出来ない運命のような物を感じた。
家からそれなりに離れた場所であったのだろう。だが確かな危険を感じさせるその正体を知る事に私は必死になった。耳に集中させて彼らが使っている「てれび」という情報を伝える機械の音を拾った。当たり前の事を知らない私には地理は勿論、自分の居る場所さえ分かりはしないが彼らの話し声も併せて拾うと同じ市内でそれも「ばす」と言う乗り物で一駅しか違わないぐらいの距離で行方不明者が発生したそうだ。
以前から市内での行方不明者は出ていたそうだがこちらの方で被害が出始めたのに彼らは不安を表していた。しかし、それは表面上の言葉だけで実際に警戒こそしていないようだ。私とは違ってそれが自身に降りかかるかもしれないと考えない様だ。私が何故これほどまでに緊張して事に当たっているのか、それが警鐘を鳴らしたエネルギーの揺れと関係ない物だとは思えないからだ。
私が六歳の時にそれは現れた。エネルギーが操られて空中に黒い穴が開いた。その向こうからそいつは姿を見せた。そいつは生物の様な見た目をしていたが生物らしさは感じられず、エネルギーで構成されていた。それを見てこいつの目的が私が持っているエネルギーなのでは無いかと推察した。
エネルギーの操作技術は少しずつであるが上がっていた私はエネルギーを塊にして撒くことでそいつの認識を誤魔化すことが出来ないかと試してみた。エネルギーに攻撃をしているそいつを見るがそいつはそのエネルギーに害がない事に気付くと無視して向かって来た。
床を蹴ってそいつの攻撃を避ける。こいつの様なものが現れているのだとしたら行方不明以外にも被害が出ていてもおかしくないと思ったがそんなことを考えている暇はなく。続いて足の様な部位を振り上げて薙ぎ払う様に斜めに下した。
慌ててしゃがみ込んだ私はそいつの攻撃を喰らう事は無かったが、心臓が潰される様な痛みを疑似的に感じた。血流が急速に早まり、冷たい汗が流れる。どうしようかと考え込んでいた時、物音に気付き目を覚ました彼らが起きてこちらに向かっているのが分かった。戦闘をしている様に思えるかもしれないが敵はこちらを無力化して捕まえようと動いており、そこまで大きな物音は立てていない。攻撃が壁にぶつかったり、私が飛び跳ねた音は響いているがせいぜい隣の家までだ。この部屋や他の部屋とを行き来することは出来るが階段の扉は鍵が掛けられており、降りることは出来なかったが、彼らが来ると言うのなら都合が良かった。
私は此処を出ることを決めた。今まではどうでも良いと思い彼らの言いつけを守り、やりたい事をやって来た。彼らに対して何も思う事はなく、ただ何となく面倒だと思ったからここに居続けただけだ。私はまだまだ知りたい事があって、死にたくは無かった。
相手の攻撃に合わせて飛び跳ねて部屋を飛び出すとエネルギーの反応で彼らが扉を開けようとしている事が分かった私は攻撃を避け続ける事は厳しいと言う思いと彼らに外へ出ることを邪魔をされる可能性を考え、鍵が解かれた瞬間に扉を蹴り破る勢いで飛び降りた。
彼らは突然の私の行動に驚き、怒鳴り声で何かを喚き散らしている。しかし、そんなことをしている場合では無かっただろう。彼らも近くで自分たちより大きい物が動いて居ればその存在に気付くことは出来る。しかし目の前に存在する何かに気付いたところで生身の人間には何も出来なかった。
声にもなっていない叫びにもそれは反応を示さず私にやった時と同じ動きをして見せた。綺麗に決まった前足の攻撃に吹き飛んで壁に体をぶつけて口から何かを吐き出しながら倒れこんだ。あれはエネルギーに反応している様だった。彼らは周囲の人間たちと比べてみればエネルギーを持っている方だった。それがこの結果を呼び起こしたのだろう。
何が私の足を止めたのかは分からないが横たわり呻き声を上げる彼らがあの存在に飲み込まれるのを階段の下で眺めていた。その光景に私も多少なりとも恐怖を感じたがそれ以上に胸が軽くなるようなスッとした思い出満たされた。その感情の正体を考え、ようやく気付いた。私は彼らが嫌いだったのだろう。
確認を終えた私はこれまで過ごしてきた場所から抜け出して夜の街を駆け抜けた。周囲を確認で度々エネルギーの反応を見ていたのだがあれが追いかけてきた様子は見られなかった。彼らを捕まえたことで満足してくれたのか、それとも私の様に外に出ることは禁じられているのか、そんなどうでも良い考えを後にして私は静かに過ごせそうな場所を探した。
家の周辺、建物の多い場所にはあまりいない方が良いだろう。私が普通の人と違うと言う事は嫌と言うほど理解している。第二第三の彼らの様な存在が現れる事は望ましくなかった。肌着もつけず、少し古くて端がほつれている寝間着代わりの服とズボン、靴は勿論靴下さえ身に付けてはいない。春とは言え風が吹けば体温を持って行かれる。身を隠せる場所は欲しい所だ。
「寒いけど、心地よい」
そう呟くと夜の闇に紛れる様に走り出した。何もない空の下がどれだけ過ごしやすい場所だったか、それを知ることが出来ただけでも外へ飛び出した価値はあった。誰もいない、縛る物が無いと言うだけで晴れやかな気持ちになったのだ。自分は誰かと一緒にいるべきでは無いと感じた。それがたぶん私にとって幸せなのだ。