ワールドトリガー もう一人の家族   作:ひよっこ召喚士

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大規模侵攻②

 常に湧き出て市街地を目指して進行するトリオン兵たち、その数が段々と増していった。新型トリオン兵に対応するために戦力がかたまったんだろう。

 

[数が多すぎるな。ここは退いたほうがいい]

「いや、耐えれるだけ耐える。本部長の指示を考えるに危ないのは此処ともう一か所……遊真と言う戦力を考えればこれほど足止めに適した部隊は他に居ない。千佳の狙撃も上手く使えばもっと耐えれるはずだ」

「おれは良いけど、新型が来たらどうする。戦ってみないと分かんないけど危ないのは確かだぞ」

「新型が現れればA級の部隊も来てくれる。それまで持たせることが出来れば別にいい。今はとにかく数を減らす事を考えるぞ。遊真、黒トリガーを使ってくれ、千佳は少し下がって狙撃の準備を直線で倒せるだけ倒す」

「「了解」」

 

 指示を聞くと遊真は笑って黒トリガーを起動させた。千佳も栞さんのオペレートに従って直ぐに移動を開始した。面倒な地上の敵を一掃するのに千佳を使うので空を飛んでいるトリオン兵を打ち落とすのは僕が行う。狙撃の準備に入っている千佳を守りつつ、アステロイドを放ち市街地へ向かうのを阻止する。

 

 遊真は戦闘型のトリオン兵や遠くから砲撃をしてくる奴らを順調に片付けてくれている。『射』の印と『強』の印を複合させての攻撃で先ほどよりも素早くトリオン兵を倒せている。そして戦いながら自然とトリオン兵を誘導し並べると直ぐに『弾』で退避する。

 

【今よ千佳ちゃん】

「はい!!」

 

 千佳のアイビスによる狙撃で大きな道路一本に蔓延っていたトリオン兵が一掃された。まだ近くの建物に張り付いていたり、路地や一本隣の道路とかで動いている奴らは居るが視界内のトリオン兵の3割ほどが倒された。

 

「道を変えながらこれを繰り返す、遠くにいる生き残りや張り付いてる奴らを片付けながら路地を通って隣の道へ移動するぞ」

【凄いね流石千佳ちゃんの狙撃!!大型の中に新型が潜んでたみたいだけど反応が一緒に途絶えたよ。千佳ちゃんの撃破数4だね。っと近くに新型っぽい反応があるから気を付けて、右のマンションの中だよ!!ポイントを表示するよ】

「本部、こちら玉狛第二、新型と交戦する。遊真対処できるよな?」

「おう、任せとけ。あそこだな『強』印(ブースト)『射』印(ボルト)二重(ダブル)

 

 遊真が強化した射撃をマンションの表示されたポイントに放つと壁を撃ち抜いて中の新型トリオン兵に攻撃が当たった。黒トリガーの出力もあり、かなり削れているがまだ倒しきれていない様だ。

 

「あれならこれでいけるな。『弾』印(バウンド)、『強』印」

 

 弾く効果を持つ印で自身を一気に新型トリオン兵の前に飛ばすとそのまま新型トリオン兵を殴り倒した。完全に目が壊れているのが確認でき、他の新型の反応が無いのでこれで一安心だ。まだうじゃうじゃと存在するトリオン兵を引き続き倒そうと意識を戻す。すると何やら近くにレーダーの反応があるのに気づいた。そしてこれはトリオン兵ではなく味方のトリオン体の反応だ。

 

「そこに居るのは玉狛第二のメンバーか?」

「って白い新人そんなトリガーだったか、明らかにボーダーのトリガーじゃないだろ!?」

 

 反応の方に目を向けると銃手のトリガーを持ってこちらを目指している茶野隊の姿があった。以前の防衛任務で会った時と全く姿の違う遊真に驚いているようだ。

 

「これは遊真が所有している黒トリガーです。緊急時の為に隊長命令で使用を命じました」

 

「黒トリガーってS級のじゃないのか!?」

「驚いたけどS級と同じ戦力が居るって事だよな。こっちは他のB級部隊と合流するために移動してたんだがそっちはどうす」

【新型トリオン兵の反応あり、茶野隊の二人気を付けて!!】

「盾モード、スラスターON!!」

「『強』印二重」

 

 指示を聞いてから動くのでは逃げきれないと判断し茶野隊の死角から迫っていた新型の間に入りレイガストを盾モードに切り替えて攻撃を防ぐ、無論スラスターを使ったとはいえしっかりと踏ん張ってもいない状態で受けた攻撃は防ぎきれずダメージは無いが衝撃で茶野隊と一緒に吹き飛ぶ、だがその隙を狙って遊真が新型のボディに攻撃を入れて逆にふっとばし返した。

 

「オサムは無事だな。千佳撃てるか?」

「ごめんここからじゃ手前の家が邪魔で撃てない」

 

 ならそのまま追撃して仕舞おうと遊真が動く前に体勢を崩していた新型目掛けてメテオラが山の様に降り注いだ。爆撃にまみれてボロボロになった新型だがまだゆっくりと動いている。しかし、次の瞬間に目を目掛けて放たれたスコーピオンの一閃で新型は沈黙した。

 

「目標沈黙」

「あ……嵐山さん!」

「三雲くん!無事か!?」

 

 茶野隊を庇って吹き飛ばされて戻って来ると新型や近くのトリオン兵を倒している嵐山隊の姿が見えた。新型はここいら辺にも現れる。このまま一緒に行動できればこの方角の防衛も不可能ではない。状況報告と協力の要請の為にそのまま近づき、まずは感謝を述べる。

 

「援護ありがとうございます」

「どうも、助かったよときえだ先輩」

「あれ?そんな恰好だったっけ?」

「例の黒トリガーですよ先輩、というかあなたそれ城戸司令からの使用許可下りてるの?」

「下りてないけど非常時なもんで」

「遊真の黒トリガーの使用は僕が隊長命令を出しました。何かあった場合処罰を受けるのは僕です」

「そう言う問題じゃないでしょ。それに貴方になんの責任がとれるって言うの?」

「何が出来るかではなく責任の所在の話です。黒トリガーに関しては隊長として必要だと判断しただけです」

 

 そこまで言うと苦虫を潰したような表情をしているが何を言っても無駄だと判断したのか木虎はそのまま「それなら勝手にしなさい」とだけ言って近くの警戒に戻った。僕はそのまま嵐山さんにさっき考えた提案を話しに向かった。

 

「嵐山さん、遊真の黒トリガーと千佳の狙撃があれば新型にも多数のトリオン兵相手にも対処が可能です。このまま合同でこのエリアの殲滅をお願いできませんか?」

「なるほど、確かに遊真くんと千佳ちゃんの力があれば不可能ではないだろう。今の新型の報告も含めて本部にこちらから伝えてみよう。【本部!こちら嵐山隊!新型を一体排除した!現在、玉狛第二、茶野隊と合流、新型を倒しつつこのエリアのトリオン兵の対処を検討中……?……本部……!?】」

【……砲で……迎撃……近……】

「……!?」

 

 通信が乱れている事を不審に思い耳を澄ませると混戦しているのか薄っすらと何かを指示している声が聞こえ、嵐山さんは本部の方をバッと振り向いた。そこには本部へと迫っているこの前に街を破壊したトリオン兵の姿が映った。

 

「あれは……!?」

「爆撃型トリオン兵……イルガー!遊真!」

「今からじゃ間に合わないけど次の警戒をする」

 

 咄嗟に遊真に指示を出したが流石にこれだけ距離が離れていれば間に合わない。次の瞬間には本部にイルガーがぶつかり物凄い衝撃が響いた。

 

「基地が……」

「やられた……!?」

「……いや」

 

 茶野隊の二人があまりにも大きい爆発に基地が落ちたのではないかと不安を口に出したが、基地は健在で崩落している箇所は見られない。しかし、遠くに更に接近しているイルガーの姿が見えた。

 


 

「爆撃型トリオン兵接近!!」

「砲台全門撃ちまくれ!!」

「一体撃墜!!もう一体がきます!!」

「衝撃に備えろ!!」

 

 基地全体を揺するほどの衝撃が襲うが本部は無事であった。しかし、爆撃型トリオン兵は続いて出現し、また本部を目掛けてゆっくりと近づいて来ている。

 

「第二波来ます!!三体です!!」

「装甲の耐久度は!?」

「後一発まではなんとかもたせる!」

「一般職員はシェルター室に退避!迎撃砲台に限界までトリオンをまわせ!砲撃集中一体だけでいい、確実に撃墜しろ!!」

「!?いや……いったいだけでは……」

 

 一体しか耐えられないと言う鬼怒田開発室長の言葉を無視するかのような指示に根付メディア対策室長が同様の声をあげる。そのまま指示に従って一体のイルガーが落とされるが未だ二体のイルガーが本部を目指してきている。

 

「一体撃墜確認!!残り二体!!」

「忍田本部長!!二発は保証せんぞ!!」

()()()()()()()()()()

 

 忍田本部長がそう告げた瞬間に居合でイルガーがバラバラに切り裂かれた。モニターの映像を見ていた根付と鬼怒田は驚き、それを引き起こしたであろう人物に目を向けるとそこには1位の姿が見えた。

 

「太刀川!!」

「おお!!」

「もう一体が直撃します!!ショックに備え、え!?砲撃により撃墜を確認!!」

「砲撃?援護射撃のようだがどこから……いやそれより後続は!?」

「今のところありません!」

「よし……今のうちに外壁を修復、次を警戒しろ。【慶!お前の相手は新型だ。斬れるだけ斬って来い】」

「了解了解。さっさと片付けて昼飯の続きだ」

 


 

「基地は大丈夫だ。太刀川さんが爆撃型を堕とした!」

「タチカワさん……?迅さんとライバルだった弧月の人か、自爆モードのイルガーを斬って落したのか。しかも普通のトリガーで……すごいな」

「遊真から見てもすごいのか?」

「自爆モードはかなり頑丈になるからな。こないだみたく引きずり堕とすほうがまだ楽かもしれん」

 

 そうか、となると仮に相対した時に僕が対処する方法は難しくなりそうだ。最初から自爆モードであれば僕の少ないトリオンでは太刀打ちできないだろう。()()()()遊真に倒してもらうか射線が通れば千佳に狙撃を頼むしかなさそうだ。そんなことを考えていると通信が復活したのか本部から嵐山さんに先ほどの報告に対して返答が返って来た。

 

【嵐山隊、通信が乱れてすまなかった。新型を仕留めたと言うことだな?】

【さすが嵐山隊、新型討伐一番乗りですねぇ】

「【いえ、我々が到着した時にはすでに玉狛第二が交戦中でした。新型の体勢が崩された所に追撃しただけです。それに、どうやら玉狛第二が先に新型を何体も倒してるみたいですよ】」

【何体もだと……そうか!例の黒トリガーと千佳ちゃんか!】

【なるほど、先ほどの砲撃の支援は遊真くんの黒トリガーだね?おかげで本部の被害は非常に少なくて済んだ】

「【忍田本部長!玉狛第二の三雲です!城戸司令!現在、緊急事態と判断し黒トリガーの使用を空閑に命じました。事後承諾で申し訳ありませんが使用の許可を頂きたい。そして、避難が進んでいる地区の防衛は後に回されると聞きました。南西部の防衛ラインの突破を防ぐためにも玉狛第二と嵐山隊でこのエリアのトリオン兵の排除に当たりたいと考えています】」

【……新型に対抗できる黒トリガーはボーダーの貴重な戦力、独断での使用は非常時ゆえ特別に許そう】

【なるほど、確かに遊真くんと千佳ちゃんの能力を考えれば新型と戦ってもそう簡単にやられないだろう。よし玉狛第二は別行動でそのまま嵐山隊と共に行動してくれ】

 

 城戸司令と忍田本部長から許可をもらい、なんとかお咎めも無しで済みそうだ。責任をとると言ったがようやく部隊を組めたと言うのに即解散という訳にはいかなかったので正直助かった。

 

「【了解しました。ありがとうございます】……」

「ああ、頼りにしてるぞ三雲くん。茶野隊はB級部隊に合流しろ」

「「了解!」」

 

 


 

「なんで追い打ちしねーんだ!?あと2・3発で陥とせただろうが!」

「敵を無駄に追い詰めれば痛い目を見る。その程度のことも分からないのか?」

「雑魚の理屈なんか知らねーよ。敵は殺せるときに殺しゃいいんだ」

「爆撃は敵戦力のあぶり出しと混乱が狙いだ。我々の目的は玄界の占領や支配ではない……だがこのままでは不味いのも事実。ミラ、東の反応は掴めたか?」

「いえ、トリオン兵が次々と破壊されるばかりです。ラービッドのセンサーでも対応できないようでこれ以上は北西部、西部と同じく無駄になると思われます」

「三方向のトリオン兵の放出数を減らしていけ、零にはするな。警戒させて腕利きを足止めできればそれはそれで良い。それよりも市街地まで侵攻出来ていないのが問題だな。それに雛鳥の姿も未だに確認できていない」

「潜んだラッドが壁の付近までは進められていますが壁は下まで続いている様です。出現時の反応を観測できませんでしたがおそらくあれも黒トリガーでしょう」

「このままトリオン兵を消耗しては打てる手も無くなるか……雛鳥を確認できなかったのは失敗だが()()()()は確認できた……作戦変更だ。逃げられる可能性も高く、黒トリガーと腕利きも近くに居るが俺とミラが初めから出る。ランバネインとエネドラは玄界の兵を蹴散らしてラービットの仕事を援護しろ。だが無理をする必要はない。あくまで戦力の分断が目的だ。危険な場合はミラのトリガーで回収する」

「『危険』?オレが玄界の雑魚にやられるわけねーだろ!」

「ウィザとヒュースは俺について来い、新しい神を拾うぞ」

 


 

「おいおい、真っ平じゃんか天羽(あもう)

「迅さん……」

「おまえなーもうちょっと加減しろよ」

「やだよめんどくさい……どいつもこいつもつまんない色のザコばっか。全然やる気起きないよ」

「うんうん、余裕があっていいことだ。悪いんだけどさおまえおれの担当もやってくんない?基地の西っかわ」

「ええー……なんで…………?」

「敵さんがちょっと危険な動きをしそうでな。おれはちょっと行かないといけないんだ」

 


 

 見つからない様に隠れて黒トリガーで基地の東側のトリオン兵を逃がすことなく倒し続けている悠菜。その表情は厳しく、歪んでいた。

 

[トリオン量は大丈夫か]

「全然平気だよ。今のところは見つかって無いし、何か数は減って来てるね」

 

 『レムレス』と呼ばれる透明な弾丸を自由に操る黒トリガー、視覚的に見えないだけでなく、レーダーの反応もある程度防ぐそれは辺りをつけていない限り感知不可能な攻撃だ。風刃と同じくトリオン量で一度に作れる弾数に制限があるが悠菜には関係の無い話である。

 

「それよりも、遊真たちは大丈夫?」

[向こうの現状は問題はない。嵐山隊とも合流して順調に新型を含めたトリオン兵を削っていっている] 

「そう……でもまだ危ない事には変わりはないでしょ」

 

 普通は戦闘と言うのは攻め込む側が不利に思われるかもしれないが守りながら戦わないといけないと言うのは足かせの様にも感じられる。

 

「そろそろ移動する。焦って出てくるとしたらそろそろだからね。子機を広げておいて」

[これ以上の視界の拡大は危険だぞ]

「大丈夫、どうせ()()()()でしょ」

[遊真と違って()()()()()()()()だろう]

「関係ないでしょ。遊真と友達を守れれば後の事なんてね」

 

 私はそっと借りていた民家から飛び出すと見つからない様に静かに移動を開始した。細かい所は任せておけば大丈夫だ。きっとこれで良い、ただ家族の為に。

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