ワールドトリガー もう一人の家族   作:ひよっこ召喚士

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大規模侵攻⑥

 

 新型の群れと脱落寸前の猛者を相手取る太刀川、相手はすでに星の杖を起動するだけのトリオンはなく、ただの剣として使い、時間稼ぎに徹している。

 

 一方で太刀川は素早いブレードによる遠距離攻撃がなければ受け太刀になる回数も減り、時間はかかるが新型を着実に倒していった。

 

「これで終わりだ」

 

「そのようです……」

 

 トリオン体の動きも悪くなって、援護がなくなり、遂には受け止めることも許さずに斬り伏せられたヴィザ。その場に舞った煙が晴れると生身の身体が現れる。

 

「今の瞬間にでも回収されると思ったが、お仲間は忙しいのか?」

 

「はて、それはどうでしょうか、今も貴方の隙を窺っているかもしれませんよ?」

 

「それはおっかねぇが……もう遅い」

 

 ワープ使いがやってきた際にすぐに斬ることが出来る位置に陣取りながら話していると後方に二人の人影が現れた。

 

「こいつが人型の一人か?」

 

「せっかく来たのに終わってるの?3人居るって聞いたんだけど?」

 

「一人は向こうでまだ戦闘中、一人は逃げられた。俺はこのまま他のトリオン兵狩りに戻るから後は頼んだ」

 

「小南、お前が悠菜さんの援護に向かえ、俺はこの人を護送する」

 

 誰かしらがやらなくてはいけない作業であり、太刀川が元々任されていた仕事に戻るのであれば小南か木崎のどちらかがやる必要があるが、木崎は迷わずに請け負った。

 

「あたしはそれで別に問題ないけど、大丈夫?」

 

「トリオン体は破壊されてるし危険は少ない。ワープ使いへの対策をするなら遠距離攻撃が出来る俺の方が良いって話だ。【本部、人型近界民を一人確保、護送します】」

 

【こちらも把握している。木崎隊員なら安心だ】

 

 


 

 緻密な動きで襲ってくる弾を躱し、隙間に刃を通してトリオン体に突き刺し、トリオン体に穴をあける。少しではあるがトリオンが漏れ出ている。

 

 相手もただやられるだけではなく突きを放って来た箇所に弾を集中させて刃を削り、相手の動きを制限させる為に自分の周囲を囲う様に弾を展開する。

 

 だが地面を蹴り砕くと破片をぶちまけて目くらましにする。その破片で弾を少し退かさせて、残った弾を斬り伏せ、必要最低限の刃の損耗でその場を離脱する。

 

 放棄された地区であるために壊れてもお咎めはないので追いかけてくる弾をまくために自分一人が通れるだけの穴をあけるとそこを通り抜ける。

 

 ワープ使いは居ないので相手から死角になっている場所に穴を開ければ狙い撃ちされる心配はない。追ってきている弾は通った後に塞げばなにも問題はない。

 

 とは言ってもキューブ化の弾は複数の形がある。確認できているのは魚と虫のニ種類だがもっとあってもおかしくはないと思い警戒は怠っていない。

 

「やっぱりあるか……」

 

 飛び出た先には半透明で見えづらいことこの上ないクラゲ型の弾が足のふみ場がないくらい埋め尽くされていた。

 

 飛び出た勢いのままで長い刀を一つの弾に突き刺すと先端が少し削れたがまだ十分な長さがあり、勢いのまま棒高跳びの様に屋根へと跳び上がる。

 

 見晴らしの良い位置、しかも地面から高い場所だと四方八方から弾が向かってくる。戻ることなく一つの方向に進み、対処する必要数を減らし、抜けたところで屋根を切り崩し、飛ばして攻撃を行なう。

 

 屋根のかけらは相手の視界を塞ぐ役目も果たし、相手の死角をついて近づくと一気に刀を振り切り、大きな傷をつける。

 

 トリオン漏れに期待が出来る程の一撃だったが、ハイレインは仕方ないとばかりに立ち止まると周囲のキューブを回収し、トリオン体を修復した。

 

「トリオン体の修復技術は他の国にもありましたが、トリオンの再利用は反則ですね」

 

「戦争に反則もなにもあるまい」

 

「それはその通りです。なので文句は言いませんよね?」

 

「なに!?くっ!!」

 

 レーダーを見ていた悠菜は近くに小南が来ている事を知り、相手が気付かない様に場所を移していた。家の陰から飛び出すと、双月でその腕を切り飛ばした小南を危険と判断し、弾をぶつけにかかるが、その前に待機させていたメテオラが雨のように降ってきた。

 

 弾同士がぶつかり合うと効果が発揮されないが、メテオラの爆発が起これば、トリオンによる広範囲の攻撃となり自動的に相手の弾も消費される。盾の役割を果てしていた弾が一気に消え、挟み撃つ様な形で追撃にうつると、その刃が届く前にワープが開きハイレインは即座にワープ内に飛び込んだ。

 

「逃げたの?」

 

「そのようです。キューブ化した千佳を狙うか、国宝である星の杖の回収に向かうか……移動能力のある敵は厄介ですね」

 

【すまん、やられた!!お前らは修達の方に向かえ!!】

 

 木崎の申し訳なさそうな声が通信によって聞こえてきた。声に従い移動を開始し、動きながら何があったのか確認する。

 

【爺さんやトリガーをキューブ化して小さなワープで回収された!!こっちを狙った攻撃だと思い込んだ俺の失態だ】

 

「【修達が危ない】ってことね」

 

 


 

 本部までの道を進んでいるとワープによってトリオン兵が送られ始めた。

 

「ワープ使いが追ってきたのか……」

 

「味方がやられた報告はきてない。おそらく包囲を抜けて来たんだろう」

 

「数が多いのもまずいですが、新型が厄介ですね」

 

「……良し!!走り抜けるぞ。ルート共有を頼む。行くぞ!!」

 

 オペレーターによって視界に表示されているマップにルートが追加される。指導を受けてるとはいえ地形踏破の練度はまだ低い修が少し遅れるがフォローも入り、トリオン兵の襲撃をすり抜けていく。

 

「まずい色付きが追いついてきた!!」

 

 ジェット噴射のような機構で急加速が可能な個体が進行方向を立ちふさがる。避けていくのは難しく、戦っていれば後ろからやってくるトリオン兵に挟まれてしまう。どうしたものかと思案していると、目の前の新型に向けて一人の隊員が飛んできた。

 

「緑川!?」

 

「やっほー三雲先輩」

 

「俺もいるぜ!!」

 

「陽介先輩!!」

 

 緑川がグラスホッパーで奇襲を仕掛けたがレーダーで感知した新型が目を塞ぎ、傷をつけるが倒すには至らない。そこに槍を持った陽介が的確に追撃を加え、無理やり目をえぐり、新型を止めた。

 

「新型に連続で来られない限りはこのまま進んでいけるでしょ?」

 

「ああ、助かる!!」

 

 砲撃をしてくる新型も厄介ではあるが避けれないものではない。このまま近くによってきたトリオン兵だけを倒しながら進めばいける。そう、考えていたその時に嫌な連絡が入った。

 

【修くん、キューブ化の黒トリガー使いが逃げちゃった!!そっちに行くかもしれないから気を付けて】

 

「嵐山さん!!」

 

「こっちも連絡を受けた!!」

 

 向こうも戦い続けている筈だが相手は黒トリガー……油断は決して出来ない。むしろ問答無用で無力化すると言う一番厄介な敵だ。

 

【レイジさんからの連絡!!拘束していた星の杖の使用者を回収されてまた消えたって、今度こそそっちに行くかも……】

 

「三雲先輩、危ない!!」

 

 通信を聞いてる最中に素早く魚の形をした弾が飛んできたのか咄嗟に緑川がスコーピオンで切ることで対処したために三雲は無事だったがどうやら追いつかれてしまった様だ。

 

「腕を切り飛ばしたって聞いたが直したみたいだな」

 

「回復される前に倒し切る必要があるとかけっこう鬼畜ゲーだな。まぁ、トリオン自体は削れてるだろ?」

 


 

 磁力を用いて自由自在に操る敵のトリガーに未来予知で戦い続ける迅。互いに実力は拮抗しており、致命打は与えられていない。

 

「ふぅん、なるほどあの爺さんは回収されたか……まぁ、捕まる可能性は低かったからな。まぁでも、お前の仲間はけっこう倒したみたいだよ?残ってるのは隊長さんとワープ使いだけらしいよ。うちはまだ余力もあるしね」

 

「敵の言葉など誰が信じる?!お前を倒してこの目で確かめるだけだ!!」

 

「そう……でももう詰んでるよ?」

 

「なにっ!?」

 

 そういった瞬間に四方八方から弾が飛んでくるのに気付き、攻撃に回していた欠片を呼び戻しなんとか防御する。

 

 それでも全ては防ぎきれず身体からトリオンが漏れ出ているが、普通の剣とかを扱うのとは訳が違うので戦闘面で遅れを取ることはないだろう。

 

 射手による援護は厄介だが、来るとわかって入ればなんてことはないと目の前の敵に意識を戻したその瞬間、二本の銃弾が頭と胸を貫通し、トリオン体が解除された。

 

「だから言ったじゃん、もう詰んでるって?出水に賢、二人共助かった」

 

【いやいや、これぐらい訳ないですよ。場は迅さんが整えてましたし】

 

【俺のツインスナイプ見ました?まぁ、指示された場所でスタンバってただけですけどね俺も】

 

「万が一にもお前が向こうに行くと後輩が危険でね。もう大丈夫になったから倒させて貰ったよ。まぁ悪いようにはしないから大人しくついてきてくれると助かるんだけど……」

 

「貴様!!くっ……サイドエフェクトか……」

 

 未来が見えると言ってのけた男、何もかもそうなるように整えられていた戦場、信用できないが何らかの力があるのは確信し、それでも睨みつける。

 

「もうすぐ戦いは終わる。姉さんが動いてくれてるし、向こうはけっこう安心だ。お前は置いてかれるがお前はこっちに残った方が正解だとだけ言っておく」

 

 男は持っている発信機に目を向ける。回収の余裕さえないのか、それともこの男の言う通りなのか。ただどちらにせよこの状況下で出来ることはないに等しかった。

 

「そっちはトリオン兵倒しに向かっちゃって、こいつは俺が送ってくから」

 

【【了解!!】です!!】

 

「……被害がないのが一番だけど、やっぱキツイな」

 

 一番助けてくれている、信頼のできる姉さんの顔を思い浮かべながら迅は何処かやるせない顔である方角を見つめていた。

 


 

[門の解析、後3分といった所だ]

 

「プロテクトの解除も同じくらいで終わるよ。船にも防御機構はあるだろうし、私も入るから作業はお願いね。回収されたであろうキューブは最後で良い」

 

[ああ、直接アクセス出来れば情報のコピー転送にはそうかからないだろう]

 

「あまりいい顔はされないだろうけど、後は私の仕事だよ」

 

 




前からだいぶ時間が空いてる……そして、そろそろ終わり終わり詐欺になりそうだけど、本当にあと少しです。


読んでくれている方々に多大なる感謝を。
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