「喰らったら一発でアウトってあたりがやっぱり黒トリガーはズルいよな」
トリオン能力があまり優れていない米屋では槍の形をした弧月で弾を受け続けるだけでも相殺の為にトリオンを消費するので辛いところである。
一緒に戦う緑川も同じで攻撃手として戦えるだけのトリオンしか持っていない。それでも的確に弾を斬り伏せ、削れた刃を修復しながら敵に迫る。
「ッ危な!?」
「突っ込むだけの考えなしではないか……」
緑川のスコーピオンが届くかどうかというところでマントの下に隠していた多くの弾が飛んでくるが、咄嗟にシールドで守りながらグラスホッパーで距離をとる。
「やっぱこの間合いだときついな」
「特攻しても倒しきれるか微妙だしなぁ」
相打ち覚悟で向かえば一太刀浴びせることは出来るが相手に回復手段があるのがネックである。だが面倒なのは敵にとっても同じであった。
「ヴィザ翁の回収に成功しました。ヒュースも同じ形で収容しますか?」
「……大窓は後どれだけ使える?」
「船への帰還を考えると多くは……」
何処から間違えていたのか、雛鳥の回収は出来ず、金の成鳥も逃しかけているこの状況に少し苦い顔を浮かべる。
「ヴィザの回収で警戒されてるだろう。そちらは予定通りで問題はない。金の成鳥は?」
「ラービットで足止めはしていますが徐々に巣に近付いています」
「そのまま監視を続けておけ」
どんな存在でも逃げ切ったと思った瞬間が油断を誘う。それまではと新たに弾を作り出し、敵と向き直る。
付かず離れずの距離を保ち戦い続けているが緑川と米屋では弾を消費させるには及ばず、防戦一方になっていく。
「とりあえず時間を稼ぐぞ。緑川、グラスホッパー出せ」
「良いけど、なにすんの?」
「こうすんだよ!!」
緑川にグラスホッパーを展開させると近くにある。瓦礫やトリオン兵の残骸を弾かせて敵に飛ばし始めた。即席ではあるが遠距離、それもトリオンと物質の両面からの攻撃だ。
大きな塊を飛ばしている為に速度はそれほど出ないが対処の切り替えの手間と弾の消耗を考えたのか相手はそれを大きく避けて回避する。
「むっ、面倒な真似を……ッ!?」
トリガーを用いた攻撃ではないため脅威ではないが明らかに時間を稼ごうとする相手の動きを煩わしく思っていると新たに黒い銃弾が身体に刺さり、重りが加わる。
「来たのか」
「おっ、三輪先輩!!」
「標的を確認、処理を開始する」
米屋が所属する三輪隊の隊長である三輪秀次がその場に現れた。
「本部までもう少しだ!!」
ワープによって新しく新型トリオン兵が送られてくる事はなかったが倒したという情報がない以上は警戒して損はないと慎重に足を進める。
【こちら嵐山、三雲隊員とキューブ化された雨取隊員を連れて本部へ帰還しました】
侵攻時は厳戒態勢がしかれている。秘密経路と同じくトリガーを翳すことで開閉は出来るが連絡をいれたほうが手早く済む。
敵の狙いが雨取であることは既に通達されており、本部職員も嵐山隊の姿を確認すると直ぐに扉を開き、その場の隊員が入ったのを確認するとトリオン兵が入り込まないように直ぐに閉められた。
「よし、開発室に雨取さんを連れて行こう。キューブ化の解き方は既に判明している」
「はい」
無事に本部に辿り着き、開発室まで三雲を案内しようとしたその瞬間、嵐山につけられた『蝶の楯』による欠片を起点にワープが開かれた。
「ここまでご苦労さま」
「なっ!?」
初めに一番近くにいた嵐山の周囲に小さな黒い穴が開くといくつもの棘が鋭く突き刺さりベイルアウトになる。
動揺しつつも即座に攻撃態勢に移った木虎と時枝がアステロイドを放つが小窓で返される。狙われてる雨取を奪われるのも本部の奥へ入られるのも不味い。
【シールドを張りなさい!!】
この状況をどう切り抜けようかと思考を巡らせている三人に通信が入る。そして急な指示に反射的に従ったその瞬間、入り口が切り刻まれ、敵の付近にメテオラによる爆撃が降り注いだ。
「ようやく追いついたわ。もう終わりよ」
入り口を破壊する音に警戒し、敵も防御をしたが既にボロボロであった。何が起きたのか把握する前にそのトリオン体は真っ二つに斬り裂かれた。
「小南先輩!!」
「……ミラ!?」
「申し訳ありません。トリオン体を破壊されました。なんとか船に帰還しましたが……」
「目の前で話をするなどふざけてるのか?とっととくたばれ!!」
シールドで弾を確実に防ぎ、鉛弾と弧月を用いて傷を与えていた三輪。ミラの作戦の失敗を聞き動揺したすきを逃さない。
「一度立て直すか……」
「逃がすか!!」
まだ時間はあると船に戻り立て直そうと展開されたワープをくぐる。三輪は急に逃走を図った相手にあっけにとられとられつつも直ぐに怒りを再燃させ、追撃を仕掛けたが仕留めるには至らない。
「クソッ!!」
「落ち着けよ。とりあえずまだトリオン兵がいるんだそっちを処理しようぜ」
「……ちっ、わかってる。こちら三輪、対象の逃亡を確認、トリオン兵の掃討に戻る」
「予想外な事ばかり起きたが、いくつか座標を確認することはできた。後は『窓の影』で奇襲を仕掛ける。流石にこのままでは損失がでかすぎる」
トリオン兵を送り込むゲートは敵に誘導され、市街地を襲うことすら出来なかったが、時間を掛ければ座標を計算して導き出すこともできる。
残り少ないがトリオン兵自体も無いわけではない。それらを駆使すれば金の成鳥は無理でも多少のお土産程度は確保できるだろう。
「それを許すわけにはいきませんね」
「……白鬼!?」
「なぜ此処に!!」
「ゲートの座標を調べてたのはこちらも一緒ですよ」
敵の船に乗り込むというのはまず想定のない行動である。ましてやトリオン体の破壊されたばかりの者ばかり、そして破壊されては困る船ではそもそも戦うという選択肢はとりづらい。そして、目的は聞くまでもなく直ぐに判明した。
「これは帰還命令か……」
「えぇ、ですが座標の方は少しいじらせて貰いました。確認してもらっても構いませんよ」
「なにッ!?」
「座標が書き換えられています!?命令の変更が出来ません!!」
やってくれたなと相手を睨みつけるがそんな視線を全く気にせずに悠菜は笑っていた。
「玄界の情報を渡さない為、攻めてきた者がどうなったか知らしめる為、色々と理由はありますがこれでも故郷を攻撃されて怒ってるんですよ」
話してる間に作業は終わったのか近くに浮遊していた悠菜のレプリカがゲートを開いている。
「貴方達と敵対してる国を選んでおきました。運良く生き残れば帰れるかもしれませんので頑張ってください。それでは」
話すだけ話してゲートをくぐると、タイミングをはかっていたのか直後に彼らの遠征艇は進みだした。悠菜の発言がどこまで本当かも分からない中で死を待つ様な近界の旅路が始まったのだ。
「これでちょっかい掛けてくることはないかな。後は適当に報告して終わりだ」
[迅や林藤あたりは気付きそうだがな]
「城戸さんとかも分かっちゃいそうだけど、仕方ないでしょ」
対近界民大規模侵攻三門市防衛戦は市民にもボーダーにも被害はないという奇跡的な勝利を飾って確かに終わった。
いやぁ、最後ちょっと駆け足過ぎたかな。それでもこれで一応、大規模侵攻までおしまいです。
追撃や報復を回避するために遠征艇をジャックして、敵国に島流し。待ち伏せて全員殺すというエンドを最初は考えてたんですが、どっちのがエグいですかねぇ。
実を言うと大規模侵攻を書いてて、途中でけっこう大きなミスがあってモチベとか以前に書き方に困ってて投稿が遅れたり、最後駆け足になりました。
書き始めた頃はランク戦も途中だったのでここでこの作品自体はおしまいです。エピローグ的なのや後日談は上げる予定ですが、一旦おしまいです。
最初の頃の悠菜の設定とか過去話とかあんまり活かせてないし、戦いも黒トリガーだよりに傾いたし、気が向いたら(狂ったら)リメイクしたいなぁ……まぁ時間がないので難しいですけどね。
なんかまぁ、こんな感じになりましたし、未練は多いですがとりあえず終わりです。こんな作品を読んでくれた方々には本当に感謝しかないです。ということでいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれた方々に多大なる感謝を。