ワールドトリガー もう一人の家族   作:ひよっこ召喚士

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どうにか今年最後の投稿が出来た。
とりあえず、読んでください。


空閑悠菜⑤

SIDE:迅

 

 

 既に陽は落ちきっており、明かりの無い捨てられた家が立ち並ぶ辺りはだいぶ暗く感じられる。預けた可愛い後輩たちの為にも、これから対峙する油断ならない相手に集中する。あいつ等がこの道を通ってやってくることは見えている。ただ、その時を待つばかり、そしてレーダーに映る事は無いが静かに駆ける姿が目に映った。

 

「迅……!!」

「なるほどそう来るか」

 

 こちらの姿を確認して止まった彼ら、一人は心底嫌そうな顔と恨みのこもった視線で名前を呼び、No.1アタッカーであるもう一人はどこか納得したような表情でこちらの出方を理解したようだ。

 

太刀川(たちかわ)さん久しぶり、みんなお揃いでどちらまで?」

 

 薄っすらと人が見たらいやらしいと感じる笑みを浮かべると世間話をするかのように何でもないような表情で彼らの用件を尋ねた。

 

「うおっ、迅さんじゃん。なんで?」

 

 リーゼント頭のNo.1スナイパーは純粋な疑問、という訳では無くどういう意図で自分たちの前に立ちふさがったのかとあえて学校で友人と会話するかのように訊く。

 

「よう、当真(とうま)冬島(ふゆしま)さんはどうした?」

 

「うちの隊長は船酔いでダウンしてるよ」

「余計なことをしゃべるな。当真」

 

 彼らの前に立っている事で自分の目的は分かっているだろうと考え、遠回しな質問には触れずに質問で返すと、意味が無いと分かっているのか世間話の様に軽く答えてくれた。しかし、それを小さいNo.2アタッカーが注意する。

 

「こんな所で待ち構えてたってことは、俺たちの目的もわかってるわけだな」

 

()()()()()にちょっかい出しに来たんだろ?」

 

「最近、玉狛(うち)の後輩たちはかなりいい感じだから、ジャマしないでほしいんだけど?」

 

「そりゃ無理だ……と言ったら?」

 

「その場合は仕方ない」

 

 

 

「実力派エリートとして、かわいい後輩を守んなきゃいけないな」

 

 

 お互いに分かり切っている事を最終確認と言う訳では無いが聞き、そして答える。こちらとしてはそれをされる訳にはいかないのだから。

 

「…………」

「なんだ迅いつになくやる気だな」

「おいおいどーなってんだ?」

「迅さんと戦う流れ?」

 

「『模擬戦を除くボーダー隊員同士の戦闘を固く禁ずる』

隊務規定違反で厳罰を受ける覚悟はあるんだろうな?迅」

 

「それを言うならうちの後輩だって立派なボーダー隊員だよ。あんたらがやろうとしていることもルール違反だろ風間(かざま)さん」

 

「……!」

 

 理詰めで此方に対して牽制を仕掛けてくるNo.2アタッカーこと風間隊の隊長に対して、そちらの方が問題だよと軽く言って見せる。

 

「『立派なボーダー隊員』だと……!ふざけるな!近界民(ネイバー)を匿ってるだけだろうが!!」

 

「近界民を入隊させちゃダメっていうルールはない。正式な手続きで入隊した正真正銘のボーダー隊員だ。誰にも文句は言わせないよ」

 

 近界民に対しての恨みが強い三輪()が感情任せに叫ぶが、間違った事はしていないという主張を変えずに貫く。しかし、素早く主張の穴を着いてくる人がいた。

 

「いや迅、おまえの後輩はまだ正式な隊員じゃないぞ。玉狛で入隊手続きが済んでても、()()()()()を迎えるまでは本部ではボーダー隊員と認められない。俺達にとておまえの後輩は1月8日まではただの野良近界民だ。仕留めるのになんの問題もないな」

 

「へぇ……」

 

 太刀川さんの主張は正しく、仮に遊真を攻撃されたことを訴えても()()()認めていない隊員に関する主張など突っ返されるだけである。

 

「邪魔をするな迅、おまえと争っても仕方がない。俺たちは任務を続行する。本部と支部のパワーバランスが崩れることを別としても、(ブラック)トリガーを持った近界民が野放しにされている状況はボーダーとして許すわけにはいかない。城戸司令はどんな手を使っても玉狛の黒トリガーを本部の管理下に置くだろう。玉狛が抵抗しても遅いか早いかの違いでしかない。おとなしく渡したほうがお互いのためだ。……それとも黒トリガーの力を使って本部と戦争でもするつもりか?」

 

 そちらの主張など関係無いと人蹴りにして、淡々と本部の意思と任務の続行を告げる風間さん。

 

「城戸さんの事情は色々あるだろうがこっちにだって事情がある。あんたたちにとっては単なる黒トリガーだとしても、持ち主本人にしてみれば命より大事な物だ。別に戦争するつもりはないが、おとなしく渡すわけにはいかないな」

 

「あくまで抵抗を選ぶか……おまえも当然知ってるだろうが遠征部隊に選ばれるのは()()()()()()()()()()()と判断された部隊だけだ。他の連中相手ならともかく俺達の部隊を相手に、お前一人で勝てるつもりか?」

 

「おれはそこまで自惚れてないよ。遠征部隊の強さはよく知ってる。それに加えてA級の三輪隊、俺が黒トリガーを使ったとしてもいいとこ五分だろ」

 

 事実トップクラスの実力を誇るA級部隊4部隊を一度に相手をするとなれば黒トリガーとサイドエフェクトを含めても五分行けたらいい方である。

 

「『おれ一人だったら』の話だけど」

 

「……!?なに……!?」

 

 これまでの条件を覆すかのような発言に驚きを隠せずにいると、おれと4部隊以外の人影が屋根の上に現れた。気配にいち早く気付いた太刀川さんが目を向けた先には頼もしい援軍がいた。

 

「嵐山隊現着した。忍田本部長の命により、玉狛支部に加勢する!」

 

「嵐山……!」

「嵐山隊……!?」

 

「忍田本部長派と手を組んだのか……!」

 

 突然の展開に状況判断が遅れたが、太刀川がいち早く、嵐山隊と言う援軍の意図の裏側を理解した。嵐山隊は名乗りを上げた後でおれのすぐ近くに降りた。

 

「遅くなったな迅」

「良いタイミングだ嵐山」

「三雲君の(チーム)のためと訊いたからな。彼には大きな恩がある」

木虎(きとら)もメガネくんのために?」

「命令だからです」

 

 お互いに意思を伝えた後で緊張をほぐすように冗談を挟んだのだが木虎には冷たく返された。嵐山たちの到着によってこの先は決まった。

 

「嵐山たちがいればはっきり言ってこっちが勝つよ。おれのサイドエフェクトがそう言ってる。おれだって別に本部とケンカしたいわけじゃない。退いてくれるとうれしいんだけどな。太刀川さん」

 

「なるほど、『未来視』のサイドエフェクトか。ここまで本気のおまえは久々に見るな。おもしろい」

 

 自信満々に告げるも目の前の戦闘狂は任務以上に本気のおれとの戦闘という事に興味を惹かれたようでゆっくりと腰にさした得物をゆっくりと引き抜く。

 

「おまえの予知を覆したくなった」

 

「やれやれ、そう言うだろうなと思ったよ」

 

 しょうがないと言わんばかりのテンションでこちらも得物を抜く、そうするとお互いの面々が距離を取って戦闘態勢に入った。

 

 

〈へぇ、忍田さんも味方してくれるのか。それは嬉しいね〉

 

 

『!?』

 

 敵味方関係なくいきなり頭に直接響いた独り言のような声に全員の動きが止まった。その中で1人、おれだけは聞き覚えのある声に固まった。

 

〈ってことは、こっちの嵐山隊の人たちは味方ね。それにしても結構簡単に通信に割り込めたし、全体的なシステム的にもセキュリティに問題があるんじゃないかな。そう思わない?迅〉

 

『・・・・・・!?』

 

 全員に届く謎の声ははっきりと迅という名前を告げたので全員の視線がおれに集中する。そしておれは()()()()()()()()()()()未来に驚き、冷や汗を流す。

 

「おいおい迅。まだ伏兵を用意してたのか」

「……いや太刀川さん。これはおれも想定外だ」

「……!?おまえが想定できないことがあるのか?」

「見えにくいとか以前に()()()()()()()()と言えば分かってもらえるか」

 

『!?』

 

 この場にいる者でおれの『未来視』を知らない者はいない。未来を好き勝手出来る様な物ではないと理解して貰っているが、超感覚(ランクS)のサイドエフェクトを何らかの形で無効化したという事だ。それを聞いた太刀川さんも驚きを隠せていない。

 

〈お話終わった?色々と理由はあるんだろうけどさ、たった一人の家族に手を出されるのを黙って見てるわけにはいかないんだけど…………そこんところ、どう思う?〉

 

「……!?待った待った。待って欲しいんだ悠菜(ゆうな)姉さん。こっちにも色々事情があるんだって、それに遊真(ゆうま)についてはおれが守るから」

 

『姉さん!?』

 

 突然見えた、いや()()()()()()()未来(可能性)に慌てて止まってもらえるよう願い出る。その際にうっかり昔の呼び方で呼んでしまったため、敵味方共に驚いている。というか、おれも含めてさっきから驚いてばかりである。

 

〈まっ、迅が言うんなら守れるんだろうけど、何かあったら本当に許さないよ。後、止めるのは直接的に手を出す事だけ、サポートと妨害は勝手にするから〉

 

「あ、ああ、もう好きにしてください。それで終ったらこっちに来るんですか?と言うかいつこっちに帰って来たんですか?」

 

〈ま、一度()()()顔出すよ。さてそれじゃあ、遮っちゃたけど始めようか〉

 

 そう言って、通信は途切れてその場を静寂が包み込んだ。そうなると全員が抱いた疑問の答えを知るためには何かを知って居るであろう者に訊くしかない訳で、また視線がおれに集中する。

 

「迅、今の声は誰だ?」

「おれも教えて欲しいな。迅お前に姉なんていたのか!?」

 

 すぐさま戦を闘再開できるような雰囲気ではなくなっており、風間さんと嵐山の二人からどういうことだと尋ねられる。こちらとしても状況の理解が追いついておらず、どう説明して良いのか分からないのだが、黙っている訳にもいかず口を開く。

 

「まずあの人が何者かと言うと旧ボーダー、それも創設期に近い時代のメンバーで忍田さんやうちのボスの直接の後輩にあたる。要するに最古参のメンバーの1人だ」

 

 冗談交じりに「おれら全員にとって先輩にあたる人物だ」と伝える。しかし、それだけではないだろうという視線が未だに突き刺さってくる。

 

「他にも、創設期のメンバーで関わりが深かったのが最上さんと空閑有吾さんと言う人だ」

「空閑だって!?」

 

 聞き覚えのある名前に嵐山が反応を示した。敵の面々はざっと概要を知って居るのか空閑の名前に対しての反応は無い。それがなんの関係があるんだという顔をしている。

 

「そう、嵐山も名前を知ってるみたいだが……有吾さんはお前たちが狙ってる近界民認定されちまった空閑遊真の父親にあたる。そして今の通信に割り込んで来たのは有吾さんの義理の娘で遊真の義姉にあたる空閑悠菜さんだ」

 

「ほぉー、ってことはその近界民っていうのはこっちの出身なんじゃないか」

「当真、近界出身だろうがこっちの出身だろうが任務に変わりはない」

 

「なんと、空閑くんにそう言う事情があったとは驚きだが、三雲君のためもそうだが、彼の為にも頑張るとしよう」

「まさか、伝達の際に言われた近界民があいつだったとは」

 

 既知の情報と新しい情報とでごちゃ混ぜになりそうだが、なんとか全員が状況の整理が終わったようで騒めいていた空間が静かになる。

 

「で色々と起こりすぎて変な空気になったけど、さっきも言った通り、おれと嵐山隊が組んでる以上負ける事は無いし、悠菜さんが補助してくれるとなると更に負ける可能性は減った。それでもやるか、太刀川さん」

 

「はっ、さっきも言ったがおまえの予知を覆してやるよ」

 

 改めて全員が武器を構えて、戦闘態勢を取る。少しの距離を開けて向かい合う両陣営だが、これから先の予定は少し変更する必要がある。

 

 

「負けなくなったってのもあるんだけど悠菜さんがいるから()()()()()()()()()()()()()()。だから……」

 

 おれは『風刃』を起動すると一気に二つの刃を飛ばして、残すと厄介になる風間隊の菊地原と同じく風間隊の歌川の首を飛ばした。太刀川さんと風間さんは素早く、胸と首(急所)を庇う様に動いたが二人は何の反応も出来ずにやられた。

 

 

 

「最初からプランB、いやプランCになるのかな」

 

 




迅は旧ボーダー時代に悠菜とあっており、かなり懐いていた設定です。

原作では二手に分かれて戦いになり、迅さんの方がプランA「トリオン切れで撤退させる」がばれてから「風刃で戦い、風刃の価値を高める」プランBに移行するはずでしたが、万が一があった際になりふり構わない存在の登場で少々焦ってます。

どちらにせよA級混合部隊は迅と嵐山隊を分断させる必要があるので三輪隊+弾馬鹿対嵐山隊の構図は変わらないでしょう。

迅対A級混合部隊の戦いは歌川が居ないこと、風刃を起動して2つ既に使った事、そしてその後すぐに乱戦から下がってリロードした事、あまり関係ないですがプランAでの戦いをしてないのでトリオンが全然消費されてない事ぐらいですかね。

そして乱入者によって通信関係やオペレーターによる補助が受けられなくなってるのが最大のポイントですね。

さてさて、ほぼほぼ勝ちが決まっており、悠菜と言うイレギュラーが登場していることで風刃の価値を認めさせることが出来るのかと言う点などもありますが、そこいら辺は次回の更新でいきましょう。

次で戦いの決着までいって、その次で本部の人たちとの会話と支部への合流かな。

ではいつもの挨拶と今年最後の挨拶で締めさせてもらいます。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。
そして良いお年を。
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