アンデルセンは笑っている   作:小千小掘

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今回はクラスメイトと関わる回です。どうぞ。


空虚な優しさ(前編)

「おはよう山内!」

「おはよう池!」

 

 あれから一週間、これと言った変化はないまま時を過ごし、今日からいよいよ水泳の授業だ。

 ……早くね? まだ四月じゃない。薄ら寒ささえ残っている時期だというのに、こんなところまで特殊なのかよ。

 服脱いで泳ぐの、嫌なんだよな――。

 水泳初日を迎えるDクラスでは、いつもなら始業ギリギリで登校してくるはずの二人が、今日はかなり早かった。楽しみで夜も眠れなかったのかな? 僕と清隆は特別な思い入れなどなく、いつも通りワンツーエンターを果たしたけれども。

 耳を澄ませば、どうやら女子のスク水が目当てらしい。別に珍しい物でもなかろうに。小中学校でも散々目に入っていたはずだが。

 

「清隆、君はスク水好き?」

「え……べ、別に。どうしたんだよ、急に邪気の含んだような質問をして」

「いやなに、あそこの連中が普通なのか、僕らが普通なのか、常識が揺らぎ始めていてなあ」

「周りを見てみろ。答えは明白だ」

 

 清隆に言われた通り視線を巡らせてみると、二人の駄々洩れな会話を耳にした女子たちがゴミを見るような目をしている。おおう……鈴音以外にもこんな表情ができ――

 

「ルンダァッ!」

「えぇ!? ど、どうした急に!」

「さあ。彼の心がうるさかったからかしら?」

 

 いるならいると言ってくれ……無駄か。どこにいようと心に唱えた時点で彼女は知覚できてしまうんだったな。もはやエスパーの領域だ。まずはコンパスの使い方を学び直せ。

 

「冤罪だって。僕が心の中で何を考えていたって言うんだい?」

「知らないわ。目付きが悪いと思われてそうだなんて全く考えてないわよ」

「……何故わかった」

「本当だったのね、なら躾を」

 

 そう言って彼女は再びコンパスを掲げ……

 

「ちょっ、ウェイトウェイト! 暴力反対だ!」

 

 君は僕をどんな目で見ているんだ。君の目の前で必死に訴えかけているのは人畜無害な優男だぞ。可哀想だとは思わないのか? 思ってくれ。思え。思えよ。

 

「冗談よ。私はそこまで鬼じゃないわ」

「どの口が言う……」

 

 冗談ってのはされた側も笑顔になれるから冗談なんだよ。今のが冗談なら世界のユーモアがどれだけ人を苦しめていることになるのかやら。 

 

「――おーい、綾小路も浅川も来いよ」

 

 鈴音の残念なギャグセンスにげんなりしていると、男子の群衆からのお呼び出しが掛かった。声の主は、池か。

 

「……どうする?」

「悩みどころだな」

 

 同性の卑猥な友情を取るか、異性に対する体裁を取るか。どちらを選んでも、片側から非難の目を向けられることだろう。

 バレないように言い出しっぺの池を一睨みし、一番面倒な事にならない選択を探す。

 間もなく、アイコンタクトで清隆と考えが一致していることを確認する。

 僕らは、意を決して出して立ち上がった。

 

「まさか、行くつもり?」

「仲間入りするわけじゃないよ。寧ろ慈善活動さあ」

「同志を保護する。善良な市民は守らなくてはな」

 

「訳の分からないことを」と肩を(すく)める鈴音を後にし、僕らは戦場へと向かう。

 

「実は今、女子の胸の大きさで賭けをやってんだよ」

「オッズ表もあるやで」

 

 春樹と博士――と呼ばれていたが、名前は確か外村だったはずだ――の言葉を聞き机の上を見ると、何やら名前と数字の書き込まれた表が置いてあった。

 僕は群がる男子の顔色を窺う。

 言ってしまえば、性への関心は思春期の象徴の一つ。乗り気な者と自制心の働いている者の区別は非常に容易い。

 隣を向くと清隆と目が合う。向こうもターゲットを見定めたようだ。

 

「僕は遠慮しとくよ。あんま興味ないし。なあ健?」

 

 該当する生徒の中で呼びやすい名前をわざとらしく響かせる。自己紹介はしてくれなかったが合っているはずだ。

 

「あ? お、おう。俺も興味ねえからパスするわ」

「はあ? なんだよーお前ら、釣れねえなあ」

 

 僕の恨みの矛先である池がつまらなそうに喚く。誰もが君のように下衆な考えを持っているとは限らないのだよ。見ろ、今からその事実が浮き彫りになるぞ。

 

「オレも、あまり同調主義は好まなくてな。沖谷もそう思うだろう?」

「え? う、うん。僕、こういうのはちょっと苦手かな……」

 

 沖谷と呼ばれた生徒の方に目をやると、何とも中性的な見た目だ。可愛らしいと言われても文句はつけられないだろう。

 

「な、え、お前らもか!? 何だよチクショー!」

 

 今度は春樹が悔しそうに叫ぶ。コイツら、意図せず結構な数の男子を纏めかけていたな。場合によっては平田に匹敵するカリスマ性かも……いや、撤回だ。こんな汚れたカリスマがあってたまるか。

 

「てなわけで、他にも乗り気じゃないやつがいたら気にせず下りな。別に彼らも強制したいわけじゃないだろうし」

 

 それだけ言い残し、清隆とその場を後にする。健と沖谷を半ば強引に引っ張って。

 他の男子もぞろぞろと群れから離れ始めた。残ったのは最初の半数くらいってところか。

 今度は二人揃って嘆きの叫びをあげている。君ら仲良いな。類は友を呼ぶということか? 随分と穢れた友情なことで。

 

「成功だな」

「いえーい」

 

 互いの健闘を称え、盟友とグータッチをする。善い共同作業だった、僕らいいコンビになれるかもしれないぞ。

 

(わり)ぃ、助かった。俺もさすがにあれはって思ってたんだ」

 

 素直に謝辞を述べる赤髪ヤンキーこと健。とてもコンビニの前で先輩に噛みついていた人間とは思えない。ああいう賭け事にも乗り気なものかと思っていたのだが、存外お堅いようだ。

 

「君はもっと我の強いタイプだと思っていたよ。離れることもできたんじゃないのかい?」

「あー、普通ならそうしたかもしれねえけどよ。あいつ等――池と山内な――は入学してすぐダチになったんだ。あんま突き放すマネしたくなかったんだよ。そりゃあランキングとかオッズ表とか出てきた時には引いたがな、退き際を失っちまったってわけだ」

「友達想いはいいことだね」

 

 あれか、義理は果たす系の真面目ヤンキーだったりするのか。ワンチャン何の意味もなく「ンだテメェ!」ってブチ切れられるかもとビクビクしていたのだが、杞憂だったみたいだな。

 蓋を開けてみれば春樹なんかよりは余程真面な人間のようだ。アイツ、何の躊躇いもなく女子の名前を挙げては、大声で告られたと(うそぶ)いたりブス呼ばわりしたりしていたし。えっと、誰だったっけ? 確か佐倉って呼ばれていたような……。

 

「でも、いけないことだって思ったならちゃんと指摘してやるべきだったと思うぞ。本当に大事にしたい友達ならなあ」

「おう、今度はビシッと言ってやるぜ」

 

 しない後悔よりする後悔とは言ったものだ。繋がり自体を優先して周囲から嫌われるのと、間違いを正すことでより良い繋がりを目指すのと、どっちがいいのかって話だ。

 

「あ……あの、僕も助かったよ。ありがとう」

「礼には及ばない。オレたちも、自分たちの体裁を守るためにやったことだからな」

 

 次に感謝の言葉を発したのは、清隆が連れてきた沖谷だ。近くだとつぶらな瞳が良く見える。鈴音よりもよっぽど愛嬌を感じるぜ。……よし、聞こえてないな。

 清隆の発言で頭にクエスチョンマークが浮かんでいるようだ。君は匂わせるような話し方が癖なのかい? 「困っているやつを見ると放っておけない」とか、簡単なこじ付けでもすれば良いのに。

 

「にしても……沖谷は、恭介と似ているところがあるな」

「え、どんなところが?」

「名前、二人共『きょうすけ』だろう?」

 

 ああ、確かに自己紹介で言っていた気がする。滅茶苦茶シンプルな共通点だった。

 

「漢字はどうなの? 僕は『恭』しいの字と紹介の『介』なんだけど」

「僕は『京』都の字だよ。『介』は一緒」

「そっか。一文字違うとはいえ、同名どうし仲良くしようなあ」

「うん、よろしく!」

 

 差し出した手が握られる。ちゃんと男らしさを感じる硬めな手だ。

 なんか、こう、落ち着くな。清隆の言う通り、どこか自分と波長が合いそうな節がある。

 

「あれ、でも名前が一緒なだけで似ているってなる?」

「それは……その、あれだ……」

 

 どこか気まずそうに口籠る清隆。言いにくいことなのか? 僕と沖谷の顔を交互にまじまじと覗いている。

 

「…………女々しいな、と」

「……中性的って言え」

「僕、そんなに男らしくないかなあ……」

 

 君は女々しいぞ、僕とは違って。上目遣いで呟くのは女子のテクニックだ。君が自然と身に付けるべきものではない。

 てか清隆、君そんな風に思っていたのか。もしかして鈴音も? あり得る。さっきもコイツ言い淀んでいたし、気遣っていただけなのかもしれない。

 

「そうだ。綾小路も浅川も、お前らグループ入ってねえだろ?」

 

 自分の外見を気にしていると、健が話題を振ってきた。

 

「グループ? 確かにオレたちははみ出し者かもしれないが」

「いや……そういうことじゃなくてよ。男子だけのグループチャットがあるんだ。良かったら俺の方から招待しとくか?」

 

 おい清隆、余計なことを口走るな。おかげで憐みの目を向けられたじゃないか。僕も同じ勘違いをしちゃったけれども。

 健の提案は大変ありがたい。今まで会話という会話は四人としかしてこなかったし、内一人は他クラスだ。ついに僕らにも新天地への道が開拓される時が来たようだな。

 

「ぜひ入らせてくれ。ね、清隆?」

「ああ、願ってもない戦利品だ。よろしく頼む」

「お安い御用だ。恩返しだからな」

 

 こうして、僕らは思いがけない形でDクラス男子の一員となった。圧倒的に遅れを取ってしまったが、僕らが半ば排他的でいたのが悪かったのかもしれない。

 

「ど、どうしよう。僕も何か恩返ししないと……」

 

 僕らの様子を見て焦りだす沖谷。確かに今の状況だと彼が気まずくなってしまうか。

 

「心配なさんな、僕らは慈善活動のつもりだったんだ。見返り目的じゃないから気にしないで」

「うう、でも――」

「でも、どうしてもって言うなら、今度は僕らが困った時に、頼らせてもらってもいいかい?」

 

 そう言ってやると、沖谷はハッとした表情になり、「うん!」と微笑んだ。

 僕らが何と言おうと、きっと沖谷は負い目を感じてしまう。こっちの励まし方の方が正しいはずだ。見るからに優しそうだし。

 それから二人との連絡先交換を済ませ、少し雑談をした後、再び自分の席へ戻った。

 

「お勤めご苦労様。長かったわね」

「お、僕らのことが恋しくなった?」

「たった今恋しくなったわ。一人の時間が」

 

 冷たすぎて泣ける。君がさっきかましたクソおもんない冗談よりはずっと平和的なものだったろうに。いや、逆か? こっちもそれくらい辛辣な発言をしないと君はビクともしないのかい?

 棘を刺す時に限ってちょっと上手いのも腹が立つな。ある意味罵倒が得意な彼女らしい。もっと他人の笑顔のためにそのポテンシャルを活かせ。

 

「にしても、頑張ったじゃない。面倒事の嫌いなあなたたちが、一体どういう風の吹き回し?」

「妥協案を取っただけだよ」

「あんな身の毛もよだつような視線は浴びたくないが、一方的に拒否すると、男子から反感を買ってしまうからな」

 

 何だかんだで三分の二くらい集まっていた。いなかったのは平田のようなリーダーシップのあるやつか、幸村や明人などの真面目メンツくらいだ。

 

「同調しているだけの何人かを引き離してやれば、向こうもへイトの向けようがない」

「そう、結局全部自分たちのためだったわけね。それを慈善だなんて、偽善の間違いでしょう」

「結果的に誰かのためになったんだからいいじゃない。情けは人の為ならずだよ」

 

 細かいことは気にしない。僕も周りも救われた、それで良いのだ。

 

「だけど、一つだけ解せないわね。どうしてよりにもよって、あなたが連れだしたのはあの須藤君だったの?」

「それはー、ただのお節介だなあ」

「お節介?」

 

 呼びやすくて印象にも残っていたからというのもあるが、一番の理由は別にあった。

 健は入学日早々やらかしている。折角クラスがまとまる第一歩になるはずだったのをぶち壊したのだ。その後の素行も踏まえると、同級生の中での鬱憤は測り知れない。

 それが少しでも和らいで欲しかった。悪い所だけで全て知ったような気になられて切り捨てられて、なけなしの善意に一切目を向けてくれないのは残酷だ。

 

「あなたにも考えがあったのでしょうね。私には到底理解できないような考えが」

「理解しようとしていないだけさあ。障子を開ければ、外はけっこう広いものだよ」

「偉人の言葉まで借りて、諭すような態度がムカつくわね」

「この程度でムカつくようじゃ、まだまだ視野が、いや、器が小さいねえ」

 

 一層不満気になった彼女を傍目に、僕は分析する。

 変わったようで、変わっていない本質がそこにある。

 自信と慢心は紙一重だ。彼女は、自分自身を正しく把握できているのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 HRを終え、いよいよ(男子だけ?)待望の水泳の時間。それぞれがプールへと移動を始める。

 しかし僕は、そこから遠く離れた場所にいる。

 

「できれば僕、水泳の授業は全て見学にしたいんですけど、できますか?」

「別に構わんぞ。だが、まさか全部とはな。何か事情があるのか?」

 

 相手は教師の中でも比較的ガタイの良い男、次の授業でお世話になる人だ。勿論場所は職員室。

 

「一応入学前に提出した書類には書いてあったと思うんですけど……」

 

 そう言って僕は、制服を僅かに捲り上げて横腹を見せる。次の瞬間、彼は驚愕に顔を染めた。

 

「それは……! そうか、君が例の生徒だったのか」

「え、どこかで噂にでもなってるんですか?」

 

 だとしたらあまり良くない展開だ。これは他の生徒にはあまり知られたくない。

 

「いいや、把握しているのは教師だけだ。君の書類には、周知されたくないとはっきり書いてあったからな」

「そうですか、安心しました。それで、構いませんか?」

「ああ、わかった。その辺りは色々と工面しておこう」

 

 工面……? 工面しないと融通が利かないのか? そこまで評価の増減には厳粛なのか。

 下手な発言をして僕らの推測を悟らせてやることもない。素直にお言葉に甘えさせていただこう。

 

「ありがとうございます。それでは、失礼します」

 

 

 

 

 

 見学席に着くと、既に多くの女子が座っていた。先の一件を気にしてのことだろう。

 何だか騒がしいなとプールを見下ろすと、賭けに躍起になっていたやつらがこちらを向いてギャンギャン喚いている。

 

「キモッ……」

 

 朝話題にされていた一人である長谷部が、幻滅といった顔で呟く。うん、あれは同性の僕の目から見てもどうかと思うよ。

 どこの席に座ろうかとぼんやり見回すと、気になる生徒が目に入ったので隣に腰を下ろす。

 珍しい機会だし、一時間丸ごと無言なのは興が乗らん。暇つぶしついでに交流を深めよう。心にもない言葉で傷ついていないかも心配だ。

 

「ごきげんよう!」

「え? えっと……」

 

 急に話しかけられて委縮してしまう少女。一度も会話したことのない異性が相手では当然か。

 

「浅川恭介だよ。さっきのことを気に病んでいないか心配でね」

「さ、佐倉愛理、です……。あの、大丈夫ですから……」

「そっかあ。……」

 

 ……やっべ、他の話何も考えてなかった。早すぎる沈黙だ。

 焦りを紛らわす癖で思わず前髪を弄る。人前では控えているが、なかなか直らないものだ。

 

「えーっと……楽しんでるかい? 高校生活は」

「はい、まあ……」

「……この高校を選んだのはどうして? 大分変わってるとこだと思うけど」

「家から近くて……」

「へえ、そっかあ……」

 

 ……合点いかん。

 コミュ障どうしの初対面はこんなものなのか。それとも僕の潜在能力が低いだけなのか。清隆も鈴音も饒舌ではないが、ここまで話が途切れることはなかったはずだ。

 今度は視線を前に移す。どうやらタイムを計って競うようだ。二人はどこに……いた! サイドでしゃがみこんでいるな。仲良しこよしは良いことだ。

 

「……あの、すごかったですね。朝の」

「え?」

「みんなを、助けてあげてて」

 

 あの時の行動のことか。傍からは小さなヒーローにでも見えたのだろうか。そんなつもりではなかったから、何だか申し訳なくなってくる。

 

「それほどでもないよ。我ながららしくないことをしてしまったって思ってるくらいだから」

「それでも、すごいと思います。私はあんな風に、堂々と自分の意見なんて言えないから……」

 

 手放しに称賛されても何も出せない。彼女は控え目な性格がコンプレックスなのかもしれない。

 

「それに……須藤君を連れ出したのも、優しさ、ですよね?」

「おお、よくわかったね。嬉しいよ」

 

 驚きを隠すのにてこずった。意外と周りのことをちゃんと見ている。

 顔色を窺い慣れた成果なのかは知らんが、単に口下手というわけでもないようだ。

 

「でも、別に我を通せることばかりが長所になるとは限らないよ」

「そう、なんですか?」

「だって、自分を隠すのだって優しさだろう? 他人の気持ちを察して、不快にさせないように動けるのだって十分すごい。TPOってやつだよ」

 

 いつだって反発して衝突することが偉いわけじゃない。自己紹介での健らの行動がそれだ。何を言うにも、環境を捉えて、自分の頭で考えて、選び抜かなくてはならない。

 同様に、何を聞き、嗅ぎ、見るのか、そして、するのかも。

 失敗は成功の基なんて、取り返しのつかない失敗をしたことないやつの常套句だ。

 一度の失敗がドミノ倒しのように、次々と物事をダメにしていく。

 それは、何も社会に出てからの話というわけでもない。

 だから、踏み出せない気持ちはよくわかる。

 

「浅川君は、私と似てるんですね」

「似てる?」

「あ……いや、違うんです! ……ごめんなさい、何でもないんです」

 

 彼女は見かけによらず目敏いようだ。あるいは見透かされているのかもしれないな。

 君も僕も、どこかで一線を引いてしまう癖がある。

 そして、このままではいけないと葛藤を繰り返している。

 

「いいや、違くないと思うよ。確かに似た者同士かも」

 

 傷の舐め合いじゃあ、面白くないよな。

 

「なあ愛理、変わりたいか?」

「へ?」

「今の自分、好きって言える?」

 

 答えはわかっているが、彼女の口から聞きたかった。

 ―――君の心に、聞いているんだ。

 

「……好きじゃ、ないです。あまり」

「そっか。ならお互い、励まし合って頑張っていこうよ。一人だと心細いかもしれないけど、仲間がいれば気休めくらいにはなるだろう? ――同盟を始めよう」

 

 僕の言葉と、優しさという皮を被せた()()()()笑顔に、愛理は呆けていた顔を綻ばせた。

 

「……はい」

 

 清隆とはまた別の同志が見つかった。

 変わりたいと願っているこの子の手伝いくらいに、なれたらいいのだけど。

 

「あの、浅川君……」

「ん?」

「あれ、あの人、浅川君のこと見ていませんか?」

 

 そう言って徐に愛理が指したのは、プールサイド。

 気付けばレースは全て終わり、優勝者が決まったようだ。

 しかし、結果にガヤガヤとしている連中には目もくれず。

 僕の意識は、彼女の指の先にいる、ただ一人に釘付けになっていた。

 ……アイツ。

 

「何だか、睨んでませんか? ――()()()()

 

 それは、圧倒的な実力差で優勝をもぎ取った少年だった。

 




沖谷との名前被りの件、正直に言うと、この話書くときに調べるまで全く気付いてなかったです。アニメ見て判断しましたけど、原作でも一応この名前なんですかね?
まあやってしまったものはしょうがない。今後の沖谷の出番は未定ですが「きょうすけ」仲間ということで、ご愛嬌ですね。漢字も違うから許して。

佐倉の口調が上手く書けない難しい。次回予定の高円寺との会話も不安です。

オリ主の過去話について(どれになっても他の小話もやるよ)

  • 止まるんじゃねぞ(予定通り,10話超)
  • ちょっと立ち止まって(せめて10話以内)
  • 止まれ止まれ止まれ…!(オリだけ約5話)
  • ちょ待てよ(オリキャラだけ,3話)
  • ムーリー(前後編以内でまとめて)
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