バカンス取ろうと誘ったからにはハッピーエンドを目指すと(自称)姉は言った   作:haru970

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第12話 腹ペコ王 VS フリーダム王

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 アインツベルン城内サーヴァント+マスター 視点

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「(何だ、この空気は?)」

 

 切嗣が戻ると先程自分が席を立ったピリピリとした雰囲気は消えていて、マスターの何人かは動揺しているか冷静を偽っていてサーヴァント組の方は何だか緩んでいた。

 

 だがそれも続かずサーヴァント達は皆立ち上がり、視線を周りに移すとそこら中には、白い髑髏の仮面を被った者達が周りを囲んでいた。 マスター達は各自サーヴァントの傍に駆け寄り、同じように警戒する。

 

 髑髏の仮面達の接近をここまで許したのは気配遮断と言うスキルのおかげ。 

 自身の気配を消す能力。

 完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移ると発見されるのはほぼ必須。

 

 聖杯戦争にてアーチャーによって葬られたのは確かにアサシンで合っている。 だが当時三月は雁夜には“これは演出”と言ったがあながち間違いではない。 ではなぜ一つ、また一つと髑髏の仮面の漆黒のローブ異装の集団が続々と集結していたか?

 

 アサシンのマスターは今ここにはいないマスターとなり、時臣はアーチャー、ならば言峰綺礼となる。

 

 そして今の彼は実質時臣の忠実な部下、つまりこれは────

 

「────おい金ぴか、これはお前の差し金か?」

 

「時臣め……下種な真似を」

 

「む……無茶苦茶だっ! どういうことだよ?! なんでアサシンばっかり、次から次へと……だいたい、どんなサーヴァントでも一つのクラスに一体分しか枠はないはずだろ?!」

 

 続々と現れる敵影の数に圧倒されたウェイバーが、悲鳴に近い声で嘆き、獲物が狼狽する様を見届けて、群れなすアサシンは口々に忍び笑いを漏らす。

 

 そう、時臣は綺礼にアサシンをこの場で集結させて()()()()()()()()と言う命令を下した。 

 

 暗殺に長けているアサシンは確かに脅威、だがそれは相手が油断していたり、サーヴァントと離れていたりと特殊なケースの場合。

 決してこのように姿を現し、警戒された後に攻撃する場合ではない。

 

 ならば、今攻めてくる理由とは何なのか?

 

「酒宴に遅く来たのが悔やまれる。 しかし! まだ終わったという訳では無いぞ。 さあ、遠慮はいらぬ。共に語ろうという者はここに来て杯を取れ。この酒は貴様らの血と共にある────」

 

 ヒュッ!バシャッ!

 

 ────ライダーへの回答は短刀の投擲だった。  柄杓はライダーの手の中に柄だけを残し、残る頭の部分が寸断されて地に落ち、汲まれていたワインは無残に中庭の石畳に飛び散った。

 

「………余の言葉、聞き間違えたとは言わさんぞ? 『この酒は貴様らの血』と言ったはず。 そうか。 敢えて地べたにぶちまけたいと言うのならば、是非もない」

 

 嘲るように笑うアサシンの声の中、殊の外静かなライダーの口調が、響き渡り、旋風が吹き込んだ。

 

 それは熱く乾いた、焼け付くような風。

 夜の森の中の城壁に囲まれた中庭では決して起こりえない筈の、肌を焼き付ける様な灼熱の砂漠の熱風が吹き渡ってきた。

 

「セイバー、アーチャー達よ、これが宴の最後の問いだ………そも、王とは孤高たるや否や?」

 

 いつの間にかライダーの肩には荒れ狂うマント、そしてTシャツジーパン等ではなく征服王としての装束に転じていた。

 

 ギルガメッシュは口元を歪めて失笑する。 問われるまでもない、といった様子だ。

 

 セイバーも躊躇わない。 己が王道を疑わない今ならば、王として過ごした彼女の日々こそ、偽らざるその解答だ。

 

「我が王道は常に理解されない道であった。 だが、それを間違いだと思った事は一度たりとて無い! 余が今ここで、真の王たる者の姿を見せつける!」

 

 荒れ狂う熱風が静まり始め、そこのサーヴァントとマスター達が目にしたのは────

 

「────馬鹿な、固有結界……だと?!」

 

「ほう、これはなかなかどうして………」

 

 そこは照りつける灼熱の太陽。 晴れ渡る蒼穹の彼方。 吹き荒れる砂塵に霞む地平線まで、視野を遮るものは何一つない。

 

「…………心象風景の具現化か」

 

「応ともバーサーカーよ!」

 

「だがお前は魔術師ではない筈、ならばどうして────?」

 

「もちろん違う。余一人でできることではないさ」

 

 誇らしげな笑みを浮かべて、ライダーはバーサーカー(チエ)を否定する。

 

「ここはかつて我が軍勢が駆け抜けた大地。 余と苦楽を共にした勇者達が等しく心に焼き付けた景色だ」

 

 囲んでいたアサシン達は何時の間にか一群の塊となって、彼方に追いやられ、ライダーを挟んで反対側に他のサーヴァントやマスター達。

 

 そのライダーの後ろに蜃気楼みたいな揺らぎが生じてその中から影が現れる。

 

 その数は視界を端から端まで埋め尽くす。

 

「この世界、この景観を形にできるのはこれが我ら全員の心象であるからさ。 見よ、我が無双の軍勢を!

 肉体は滅びその魂は英霊として世界に召し上げられて、それでもなお余に忠義する伝説の勇者達!

 彼らとの絆こそ我が至宝 我が王道、イスカンダルたる余が誇る最強宝具『王の(アイオニオン・)軍勢(・ヘタイロイ)』なり」

 

 誰もが驚愕の眼差しで見守る中、続々とライダーの周囲に実体化していく様々な人種と装備の兵士達。  その中でライダーのマスター、ウェイバーは更に追い打ちをかける。

 

「こいつら……一騎一騎がサーヴァントだ……」

 

 ウェイバーの呟きに、ギョッとしたのは魔術師達。 固有結界もさることながら、それによる一時的な多数の英霊召喚はまさしく切り札といっても遜色はない。

 

『な、なあ三月』

『何、カリヤン?』

『これって凄い事の筈なんだろ? 何か、違和感を持っているのは俺だけか?』

『ううん、これは凄い事よ。 普通ならね。 ただ今回の聖杯戦争に対軍、対城、対界宝具を持っているサーヴァントが参加しているのが相性的に最悪ね』

『…あ、あー。 成程ね』

『まあ、流石にあれ一人一人が宝具持っていたら不味いけど』

 

「久しいな、相棒」

 

 満面の笑みで、ライダーは巨馬の首を強く腕で抱く。

 

「立派な愛馬だ、征服王よ」

 

「おおさ! やはり貴様とは気が合うなバーサーカー! 今からでも────」

 

「────断る」

 

「そうか。 王とはッ! 誰よりも鮮烈に生き、諸人を魅せる姿を指す言葉!」

 

 馬の背に跨ったライダーは声高らかに謳いあげる。

 

「全ての勇者の羨望を束ね、その道標として立つものこそが、王。 故に、王は孤高に非ず!その偉志は、全ての臣民の志の総算たるが故に!」

 

「「「「「「「「「然り!然り!然り!」」」」」」」」」

 

 周りの兵士達が自らの王に応える。

 死を迎えても、時を超えても、そして、サーヴァントとしてこの世に仮初めの生を受けても。なお、切れることの無い強き絆。一体どれほどの繋がりがあれば、それを可能とするのか。

 

「さて、では始めるかアサシンよ。見ての通り、我らが具現化した戦場は平野。生憎だが、数で勝るこちらに地の利はある」

 

 ライダーの言葉にアサシンの何体かは逃げ出したり、吶喊したり、その場で立ち尽くしたり、そこにもはや統率された暗殺集団の面影は既になかった。

 

「蹂躙せよ! AAALaLaLaLaLaieeeeeeee!!!」

 

 ライダーの号令と共に軍勢の雄叫びが響き渡り、掃討というにはあまりにもあっけなく、そして簡単すぎる蹂躙が始まり、軍団から勝鬨の声が沸き起こり、誰もが王である征服王イスカンダルの威名を、勝利を讃えながら、一度役目を終えた英霊達は霊体へと還っていく。

 

 それに伴い、彼らの魔力総和によって維持されていた固有結界も解除され、全ては泡沫の夢であったかのように、元の様子に戻っていた。 夜の静けさ、僅かな寂しさが到来する。

 

「……幕切れは興醒めだったな」

 

「成る程な。いかに雑種ばかりでも、あれだけの数を束ねれば、王と息巻くようになるか。つくづく目障りな男よな、ライダー」

 

「言っておれ。 どのみち余と貴様、それにセイバーとは直々に決着をつける羽目になろうて…………そして、ランサーと、未だ名も知れぬ英霊よ。 お主達共な」

 

 そう言ってライダーは笑うと、残っていた酒を一息に飲み干し、ライダーが剣を、縦に振るった。何も無いはずのそこで、しかし空間を両断する。開かれた異空間をこじ開けるようにして、戦車が現れた。馬の嘶きとは別種の声を上げながら、想い音を立てて地を蹴る。

 

 具現した戦車に、己のマスターを押し込む様にして乗せて去ろうとするライダー。

 

 酒とつまみを持ちながら。

 

「待てライダー、貴様は何をしている?」

 

「うん? 何って、帰るところだが?」

 

 セイバーの問いにライダーが“何を?”と言っている様な顔しながら答えた。

 

「ならば何故酒とつまみを持っている?」

 

「何故って、そりゃあこんなにあるのだから取って良いだろう?」

 

「バカバカしい、我は帰る」

 

 アーチャーは呆れたように言い、霊体化した。

 

「では、我が主よ」

 

「うむ、我々も失礼させてもらおう」

 

 ランサー運営が出口の方へと歩き出す中、セイバーとライダーは残った酒とつまみのことで言い争いはじめ、ウェイばーはオロオロとし、切嗣は呆れたようにセイバーを見る。

 

「………(これが騎士王なのか?)」

 

「どうしたんですか、()()()()?」

 

「お、『おじさん』?」

 

「三月?」

 

 切嗣が『おじさん』と三月に呼ばれたのがショックだったのか言いよどみ、帰ろうとしたチエに釣られ雁夜が席を立つと三月が切嗣に声を掛けたのが予想外だった。

 

「…何だい?」

 

「あの女の人、生き生きとしていますね!」

 

「………………」

 

 三月が見た目の年相応の言動に切嗣は静かにセイバーを見る。 確かに未だにライダーと口論をしている彼女は切嗣が見た事も無い『王』としての仮面をつけているアルトリアではなく、ただの『ヒト』のアルトリアだった。

 

 酒とつまみはアインツベルンへと献納された物=セイバー運営の物と、普段の彼女からは考えられない低俗な内容だとしても。

 

 最終的に酒は5割ずつ、そしてつまみは持って来た雁夜達に所有権があるので決めて欲しいとセイバーとライダーに迫られた。

 その結果、ジャンケンで決める事となりつまみは6割セイバー達へ、4割がライダー達へ。

 

 

 尚ドヤ顔のセイバーとドンヨリとし落ち込みトボトボとしたライダーの姿は三月と雁夜たちがちゃっかりと携帯のカメラで写真を撮った。

 

「バーサーカー!」

 

 歩き続けるチエに気付いたセイバーが彼女を呼び止め、チエは振り返った。 三月達にアイコンタクトをとり、三月と雁夜は先に城を出ていく。

 

「………何だ、騎士王よ?」

 

「先日、子供達を救って下さり、ありがとうございました。 貴方が駆けつけなければ、多くの罪なき命が散らされていました。 後………私の願いを否定せずに……」

 

「気にするな、事実を言ったまでだ」

 

 そう言い残し、チエは踵を返し歩き出す。

 

「……セイバー」

 

「キリツグ?」

 

「この聖杯戦争、絶対に勝つぞ」

 

「ッ!!! ハイ!」

 

 そこには真にマスターとサーヴァントの関係が出来上がった。

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

「────あ。えっと、先程ぶり……になるのか?」

 

「……………」

 

「「?????」」

 

 数時間後、間桐雁夜とチエがアインツベルン城へと戻って来ていて、これに困惑するセイバーと切嗣だった。




作者:セ、セ、セーフゥゥゥゥ!!!

三月:ちょっと短いけど、これはこれでいっか

作者:無茶言うな! いつ書いたプロットだと思うよ?! むしろここまで書けた自分が怖いわ!

三月:ん~、十年前くらい? その上私とチエは“俺と僕と私と儂”で────

作者:────ワー! ワー! ワー! ネタバレ困りますお客さん!

チエ:だがうろ覚えで書いた“ぷろっと”としては上々では?

作者:チエちゃんマジ天使!

三月:と言うかそろそろやばそうね? という訳で次回! カリカリ君とチーちゃんがセイバー運営と本格的に接触!

作者:と言うかマジで俺がやばい! 主に仕事と書く事を両方成立するのが!

チエ:がんばれ。 マッサージをして────

作者:────もう結構ですぅぅぅぅぅ!!!! という訳で次回の投稿が遅れたらすみませんッッッッッッ!!!
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