バカンス取ろうと誘ったからにはハッピーエンドを目指すと(自称)姉は言った   作:haru970

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第16話 道化と魔改造の末

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 ランサー運営+三月 視点

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「それで、出向いただけの成果はあったのだろうか?」

 

「当然です、でなければ今まで使ったお時間が無駄になります」

 

 ここはケイネス達に三月が与えた拠点の一つの事務所。 そこにはケイネスとランサーが三月の向かいに椅子に座っていた。

 

 三月がケイネスの問いに答え、ポケットから取り出したのは何重にも分からないほどの結界の中で浮いていた、掌の上に乗る程度の()()()金属片だった。

 

 ()()はアインツベルン城でこけた()()をした際にアイリスフィールに抱き着いた時に抜き取った一部。

 

「おお!」

 

 ケイネスが()()を見た瞬間顔を輝かせて金属片達を手に取るケイネス

 

「こ、これが聖杯……!」

 

「欠片ですが」

 

 ケイネスは感極まって声を震わせながら、手袋越しに感触や見た目を確かめて、口元は形容しがたく歪んでいる。

 感激からかアインツベルンに対する屈辱か、今まであった常識が覆られる事からか。

 

「アインツベルンはこんなものを作ったと言うのか?! 素晴らしいッッッッ!!!」

 

「(うっわー、これは私もちょっと引くわー…じゃなくて!) その破片は生きていますので、扱いには気を付けた方がいいかと!」

 

「何だと?」

 

()()()()()()のですが、恐らくは生体部品の一部。 肉と金属が混ざり合ったのか、それとも金属自体が生物的な特徴を得たのか、そこまでは分かりませんが………生きています」

 

「馬鹿な……いや、しかし、そんな事があるのか? これは確かに純粋な金属やエーテルではないそうだが」

 

 それがあるんだよなー……実際()()()()()()もいるしー、っと心の中で静かに突っ込む三月。

 

 そしてそれを知らずに欠片を前に、さらに深く考え込むケイネス。どれ程と言うかと欠片を覗きに来たソラウに反応しない程だった。

 

「生きているのなら生体と融合していた筈だ。 それを君はどうやって抜き取ったのだ?」

 

「………………ごめんなさい、それは…………」

 

 ケイネスが三月から目を離さず、モジモジする三月を見てソラウが口を開ける。

 

「言いにくい事というのは、一族に関する秘匿の方法だからじゃないかしら?」

 

「ソ、ソフィアリ様…………」

 

「ソラウで良いわよ、貴方には感謝しているし」

 

「どういう事だソラウ? まさか……」

 

「ええ、恐らくは魔術刻印のように一族代々のみ伝わっているものではないのかしら?」

 

「なるほど、言いにくいのは分からなくもないが………これは私が貰っていいのだな?」

 

「え、ええ。 欠片が二つあるのは()()()汚染されていた破片と、そうでない破片があったからで────」

 

「────何ぃぃぃぃ?!」

 

 ケイネスが急に声を上げて、顔を急接近された三月は思わず顔を引きつらせて口の端がヒキつきながら身体ごと出来るだけ後ずらそうとする。

 

「(近い近い近い近い近い近い近い近い近い近いッ! あ、後忘れる前に────)────そ、その欠片にサーヴァントに触らせない方が良いですよ」

 

「む? あ、ああ。 元より、触れるつもりはないが、理由は何だ?」

 

「……サーヴァントも、欠片もエーテルで構築されている部分などがあるので『これ』といった理由は無いのですが………」

 

「そうか。 忠告感謝するぞ、三月」

 

「コホンッ…………余計な話はそこまでにしておけ。 もう用事はないな? ならば我々は本拠点へと帰らせて貰う」

 

 そう言い残しケイネスはさっさと出かける用意をする。  明らかに今すぐにでも調べたくてたまらない!っという空気を出している。

 

「では後程、ロード・エルメロイ、ソラウ様、ランサー」

 

 三月の言葉と同時に周りに展開していた結界が解除され、ケイネスは早足に去って行った。その後を追う手を三月に振っていたソラウに、霊体化するランサー。

 

「さて」

 

 三月は立ち上がり、ビルの階段を使い地上に降りてスキップしながら思考をチエへと飛ばす。

 

『ハロー、ハロー、チーちゃんそっちはどう~? 私の方は無事にケイネッスーに聖杯の解析を頼めたわー』

『三月か。 こちらは良好だ。 今雁夜達が聖杯に関して話し合おうと場所を城から移した』

『へー、どこどこ?』

『町の北寄りにある純和風建築の屋敷だ』

 

「『ファ?! ナンデ?!」』

 

 あ、ヤバイ。 声にも出しちゃった。

 周りの人達がビックリした顔で三月を見る。

 が、彼女は無視してそのまま北の方へと早歩きで進む。

 

『恐らくこちらの方が落ち着くからではないだろうか?』

『あ、そう』

『………何か悪いモノでも買い食いしたか?』

 

「『アハヘッ?!」』

 

 本日二度目の間抜けな声が思わず出た三月は走り始めた。 近道の為冬木中央公園を通ると何か感じているのか、首の後ろがピリピリとする。

 

「…………???(何この感じ、視線? 気配は………隠しているわね。 でも()()()()にこんな芸当を出来るのは宝具モリモリのアーチャーか、飛行機能付き宝具のライダーだった筈。 でも気配を隠すなんて────)────うわッ?!」

 

 風を切る音を三月が聞こえたと思うとほぼ同時に薄暗い月明かりの中で何かが彼女へと飛来する。 三月はこれを反射的に避けるが()()かは()()()()()()()()()()

 

「ウッ?!」

 

 ()()()()に三月は顔をしかめ、次々と飛来してくるものを何とか躱し続ける。

 

「(こ、これは短剣(ダーク)?! でも現段階でアサシンはライダーに一掃され────)────アガッ?!」

 

 焦る考えをまとめようとしていると視界からの別方向から急に現れた白い髑髏の仮面とマントを被った小柄の男に後ろから刺される。 これに続いて次々と同じような者達が瞬く間に三月の体に慈悲無く短剣(ダーク)を刺してゆく。

 

 

 

 と思う中それぞれの短剣(ダーク)が三月の体を通り抜け、混乱の中三月は早く死の輪から離脱し、髑髏マントの者たちは以前の間桐臓硯の様に体が圧縮した。 破裂音と共に金色の残滓が辺りにばらまかれ、息を切らせながら三月は周りを見る。

 

「グッ…………(流石にきつい、か………残存魔力もかなり心許無くなって来た)」

 

 彼女の服はボロボロになっているが、血や短剣(ダーク)によって切り裂かれた皮膚に傷が見当たらなかった。

 

 周りに気配も何もないのを感じる彼女は走るのを続行しながら冷汗が頬から零れ落ちる。

 

「(と言うか…………今のは()()()()()()だわ。 アサシンは確か『作通り』だと時臣がライダーの実力を見極めさせる為に綺礼に令呪まで使って貰ってアサシンに襲撃させていた筈…………少し計画を早めるか)」

 

 取り敢えず早々に雁夜とセイバー運営と合流して、事の一端と方針を話す必要が三月には優先順位が高く感じ、なぜまだ脱落していないアサシンが自分を排除しようとしたのかまでは考えが至らなかった。

 

 何故なら彼女にとって『今』が瀬戸際。 全てがタイミングと誘導、そして嘘誠の情報操作の切り分け時なのだから。

 

 さあ行こう、皆にハッピーエンド(役者達に幸せ)が訪れるのを目指して。

 

 それが()()として舞台(物語)自らの意思(我儘)で上がった自分(元観客者)なのだから。

 

 

 ___________

 

 間桐雁夜、セイバー運営 視点

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 場所は後に衛宮邸となる一つの屋敷。

 

 セイバー運営達と雁夜達が場所を変えたこと自体に深い意味はなかった。 単にこちらの方が落ち着くというそれだけの理由だった(というのもズタボロになった城では落ち着きようがないし、間桐家はリフォームされたとしてもセイバー運営からしたら何が仕掛けてあるのかわからない)。

 

 落ち着けないといえば、雁夜が自分は『魔法使いだ』と明かした時の切嗣以外のセイバー陣営の反応が凄かった。 特に何故かセイバーが最初に聞いてきたのが「花とかは関係ないですよね?」に対して雁夜は何がどうなれば『魔法使い』=『花』という流れなのか苦笑いしながら違うと断言した。

 

 そしてチエはバーサーカークラスではなく『エキストラクラス』で自分の師であるという時も。

 

 当然といえば当然か。 

 方や神秘の薄くなりつつある世界に『魔法使い』。 

 方や通常の聖杯戦争に召喚される筈のない『エキストラクラス』。

 

「(とはいえ、俺が『魔法使い』である事を考慮した途端に「それも今更か」という反応で納得したのはどうなのだろうか? それって俺が言うのもだが…軽すぎじゃないか?)」

 

 と畳の上でアインツベルンのホムンクルスが入れたお茶をすすりながら雁夜は思った。

 

「♪~」

「あ、三月ちゃんそれ取ってもらえるかしら?」

「は~い♪」

「いや、味噌汁に沢庵はさすがにないだろう? 大根を取ってくれ桜」

「はい、チー姉!」

「え? でもお茶に合うって聞いたからてっきり日本の汁物に合うって────」

「「────それは色々とズレている」」

 

 そして何故か上機嫌な三月とアイリスフィールとチエと桜がキッチンで料理をしている。

 主にチエが先導し、三月が桜とアイリスフィールのフォローを。 

 

「良いのか、あれで?」

 

 切嗣もキッチンの近くでオロオロとアイリスフィールの心配しているアインツベルンのホムンクルス達を見て不安だったのか雁夜に問いかけるが雁夜は心配してなさそうな返事をする。

 

「心配しても無駄だと思う。 それにチエさんの手料理は旨いんだ」

 

「そ、そうか?」

 

 切嗣はキッチンに立っている四人を見た。 皆エプロンをして、顔立ちこそ似てはいないが仲が悪いわけでは無く、聖杯戦争にあるまじき、ほのぼのとした空気が漂っていた。

 

「………そもそも何故バーサーカー…じゃない、『チエ』に料理なんかをさせている?」

 

「彼女が買って出たんだ。 『魔法を教えるから料理ぐらいさせろ』って」

 

「??????」

 

『魔法を教えるから料理ぐらいさせろ』。 

 

 一見教えられている側にしかメリットがないように聞こえるが、前にも触れた通り『魔法は誰にでも同じように使える訳ではない』。

 

 何故なら()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 元来、どんな人物にでも過ぎた力は悲劇などで物語は終わっている。

 どの英雄譚も悲劇や悲恋などに終わっているか、悲痛な思いをしながら物語の終わりを迎える。

 

 だが()()()()()()()()()()()()()()みればどうか?

 

 例えば『魔術回路』。 

 魔術師が持つ擬似神経で、生命力から魔力への変換、大魔術式への接続などを担う役割を果たし、魔術師達は自ら手を加えては回路を一本でも増やそうとする。

 何故ならこれは魔術師としては優秀とされていて、生まれながらに持ち得る数が決まっているからだ。

 

 ならば人の中に元からある神経に類するものを魔術回路として使えるようにと変え、()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()

 

 例えば『魔力』。

 ()()()()で言うと原初の生命力とも、命そのものとも言われる。マナ(外部)オド(内部)に分けられるが、マナは量が絶対的に多いというだけで、質に大した違いは無い。

 魔術師ならマナは自由に行使できるが、その量は魔術回路の数に依存する。

 

 なら先ほど言った疑似的に増やした上にマナ(外部)に劣るとも言えない常時発動型の魔力炉を搭載したら?

 

 例えば『詠唱』。

 魔術を起動させる為の動作。そして『詠唱』とは呼ぶが、発声に限らず身振りもこれに含まれる。

 

 ならば『声』や『動作』が繰り出される以前の脳からの『電気信号』…………いや、それより更に以前の『思考』で発生出来るようになったら?

 

 以上の通りに『魔術回路』、『魔力』、と『詠唱』の改造を施された『人間』は果たして『人間(ヒト)』であろうか? このようなモンスターマシン並みの改造されたのが?

 

 ではその前に『人間(ヒト)』とは何であろうか? 

 

 それは『人型』という形であるからか? 

 否、それだけでは駄目だろう。 そうであれば四肢欠損など生まれ持った者達は『人間(ヒト)』でなくなる。

 

 では『知性』や『記憶』を持っているからか? 

 否、それも駄目だ。 そうなれば精神病や記憶喪失者が『人間(ヒト)』でなくなる。

 

 では『人間(ヒト)』とは何ぞや? 少し哲学的に言えばそれは『自身の捉え方』。

 

 ただ最もシンプルに『我思う、故に我在り』と。

 

 自分を『人間(ヒト)』と定義すれば他人から不定はされよう。 断定もされよう。

 

 だが『我思う、故に我在り』。 

 

 極端な話『自分は人間だ』と()っている内は人間(ヒト)であり、『人型のナニカ(人外)』の領域へと踏み出す事はほぼ無い。

 

 そして()()()()の基準で魔改造レベル以上の事を施されたモノがここに。

 

 その罪悪感からかどうか知らないが、チエはそうやって間桐家では桜達となるべく一緒に居ようとした(本人達の強い希望と魔法の練習も兼ねて)。

 

「(────ってチエなら考えそうねー……真面目ねー……()()()()()()()…………まあゲーム的に言えば名前の入ったモブを疑似的に裏ボスに書き換える事になるか)」

 

 三月はそう思いながら黙々と料理をするチエを見る。

 

「(でも良かった。 彼女も良い思い出が出来て)」

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

「桜ちゃんは何歳なの?」

 

「ろくさい!」

 

「あら~、イリヤとそんなに離れていないわね」

 

「えへへへへへ」

 

 軽い食事を終えた後、アイリスフィールと桜は気が合い本当の母子のように一つの座布団の上で互いに接し、それを微笑みながら見る三月と静かに表情を変えないチエとセイバー。 

 

 そこでチエは三月の方を見て彼女は桜を風呂に入れると言い、居間を出る。

 そこに切嗣、アイリスフィール、そしてセイバーの方を見た雁夜が口を開ける。

 

「さて、セイバー運営の方々。 聖杯の状態を戻すと言ったが、それは第一希望に過ぎない。 これは分かるな?」

 

 雁夜は一瞬アイリスフィールの方を見ると彼女は沈んだ顔になる。

 

「だからもしもの場合を考えなくてはならない。 今は比較的少量の魔力だけ聖杯に集まっていない。 だから何とかなっているが、問題は────」

 

「────遠坂時臣、か」

 

「ああ。 彼だけならまだしも、アーチャーは脅威だ。 二重の意味で」

 

「どういう事? 確かに遠坂時臣は優秀な魔術師で、あのアーチャーの実力は恐らくこの聖杯戦争で順位が高い方なのは分かるけれど」

 

「聖杯へ送られる魔力か」

 

「よくわかったな、衛宮切嗣」

 

 チエが切嗣へと肯定の声をかける、がアイリスフィールは分からずただ彼の方を見る。

 

「簡単な事だよアイリ。 ギルガメッシュは最古の英雄、つまり神代がまだ続く世の中」

 

「あ」

 

「そういう事、ちなみにチエさんの目安だとギルガメッシュの魂は英霊三騎分程に匹敵するらしい」

 

「「英霊三騎分だと?!/ですって?!」」

 

 アイリスフィールと切嗣の目が見開き、互いを見る。

 

 英霊三騎分。

 つまり英雄王ギルガメッシュを倒し、聖杯へと還すだけで願望機として機能するに必要な七騎分の半分弱が集まるという事だ。

 

 そしてその分アイリスフィールは『自分』を失う事となる。

 

「成程………迂闊にアーチャーが打ち取られるのは避けたい所だが………果たして奴と時臣がただ傍観するか………」

 

「何とか彼達を説得できないかしら? 聖杯に異常が出ているのなら────」

 

「────いや、それは僕も思ったがアーチャーはともかく、時臣は望みが薄い。 彼………『魔術師』にとって聖杯は『道具』だ、『根源』へ至るためのね」

 

「そんな…………」

 

「それに資料で見たところ、このトキオミは模範的な魔術師(メイガス)。 もし我々が英雄王を説得し、彼が行動すればトキオミは令呪を用いて我々を葬った後、英雄王に自害させる事は容易に想像できる」

 

「そうすれば後は聖杯を無理矢理にでも表現させて聖杯戦争を終わらせるって事だ」

 

「でも、そんな明らかなルール違反は聖堂教会からの監督者が────」

 

「────その言峰璃正には恐らく全て承知の上か良かれと思っているかも知れない、もしくは共犯者か。 どっちにしろグルだよ、アイリ」

 

「…………………」

 

 先程から現実を知らされ、落ち込むアイリスフィールと気まずそうなセイバー。

 

 聖杯戦争という儀式で器が必要なのは幼少からアイリスフィールは言い聞かされ、切嗣と会って一時的とはいえ迷っていたが夫の願いを聞いた後、決意を新たにし受け入れていた。

 

 だがいざ裏を返し、真実をこうも聞くのは未だに受け入れがたい。

 

 セイバーは願いを未だに決めかけているのを一旦保留にし、今は聖杯戦争で切嗣と生き残ることに専念していた。

 だが彼女もアイリスフィールの事情も知り、聖杯を求める者達の『試合』は己の実力の競い合いどころか出来レースもいいところ。良くて『茶番』でしかなかった。

 

「なら………私達は…………()はどうすればいいの?」

 

「………」

 

「この身体は最初から聖杯となるのは分かっていた。 でも切嗣の願いを聞いてそれでもいいと思っていた。 でも今のままでは聖杯は切嗣の願いはおろか、ちゃんと機能するのか分からない。 それにその異常が取り除かれたとしても切嗣の願いは叶わない………ねえ、(聖杯)はどうすればいいの?」

 

「アイリスフィール………………」

 

 アイリスフィールは今も泣きそうな、いや既に大粒の涙で泣き始めている瞳で周りを見る。 切嗣は申し訳なさそうな顔をしながら目を閉じる。 雁夜は呆気に取られ、どう声をかけたらいいのか迷っていた。

 そしてセイバーはチエを見る、もしかすると何か考えがあるのではないかと。

 

「…………セイバー、『全て遠き理想郷(アヴァロン)』で聖杯の異常正常化は可能と思うか?」

 

「「「?!」」」

 

「…………」

 

全て遠き理想郷(アヴァロン)』。 アーサー王伝説における常春の土地、妖精郷の名を冠した鞘、そして持ち主の傷を癒し、老化を停滞させるだけでなく、真名を以って開放すれば所有者をあらゆる干渉から守りきる、セイバーの守りの宝具。

 

 そして今はマスター囮役としてアイリスフィールに埋め込まれている。

 

 目を閉じ、考え込むセイバーは数秒後頭を横に振る。

 

「分かりません。 確かに『全て遠き理想郷(アヴァロン)』は所有者をあらゆる干渉から守りきります。 ですが聞くところによると聖杯は既に汚染されている状態なので………果たしてそれを正常化できるかどうか………」

 

 重い空気が場を支配する。

 

 今の切嗣に理想的な流れは、聖杯戦争を生き残り、雁夜と共にイリヤスフィールをドイツから奪還すること。 

 だが出来ればアイリスフィールを生かしたいという希望も出始めている。 ただ雁夜は聖杯が汚染していると言っている。 『この世全ての悪に』。

 

 雁夜としては今の膠着状態はかなり奇跡に近い事を実感している。 だがいつどこの魔術馬鹿(遠坂時臣)がしびれを切らして強硬手段に乗り出すかわからないし、もし三月達から聞いた話が本当なら()()()()()()()()()()()()()、冬木市は文字通り()()()()()()()

 

 だからこそのケイネス達、ランサー運営との同盟なのだが切嗣達はともかくアインツベルン本家はこの事を良しとしないだろう。 何せ手塩をかけた『聖杯』を一部とはいえ外部者に解析される事になるのだから。

 

「もし……」

 

「「「?」」」

 

「もし聖杯を…………()を正常にできなかったら、破壊して」

 

「「アイリ?!/アイリスフィール?!」」

 

「分かった」

 

「雁夜?!」

 

「これは次の手だ。 聖杯が悪用されない為の。 それに、()()()()()()()

 

 雁夜そう言いながら隣にいるチエを一瞬見るのを切嗣は見逃さなかった。

 

「(成程、本人(アイリ)が望んでいるからそう言っただけか)」

 

 そのように考えている中、チエは襖の開く音で横を見ると戻ってきたホクホク顔の桜がタックルをかます様に飛びついた。

 

「髪の毛をちゃんと乾かさないと痛むぞ、桜」

 

「えへへへ、じゃあチー姉がかわかして!」

 

「…………こっちに来い」

 

 チエがタオルを使い、桜の湿っている髪の毛を揉んでいる間三月が居間の中へと入り、皆の顔を見る。

 

「………どうしたの雁夜?」

 

「ああ、ちょっと聖杯の事でね」

 

「ふーん」

 

 三月は興味なさそうに切嗣、セイバー、アイリスフィールたちの顔を見ると。

 

「貴方達は聖杯に願いは無いの?」

 

「私は元から切嗣の願いを願っているわ」

 

「僕は…………家族と幸せに暮らせれば、それでいい」

 

「ふーん。 セイバーは?」

 

「私は………今後の事は分かりません。 ですが今はランサーと決着をつけたいと思っています」

 

「そっか。 ねえ雁夜、少しの間留守を頼めるかしら?」

 

「あ、ああ。 それは良いけど、お前は?」

 

「う~ん、チエちゃんと()()

 

「そうか、気を付けろよ」

 

 三月は返事をせずにただ笑い、チエと共に屋敷を出る。

 

 夜が朝へと変わるも二人は戻ってこず、再び夜になる。

 




作者:いよいよクライマックスじゃー!

マイケル:てか三月も無敵じゃないんだな

ラケール:ね? 私もびっくり

三月:貴方達は私を何と思っているのよ

マイケル:悪戯好きの悪ガキ

ラケール:マセたガキ

作者:色々と残念────ヘブァ?!

三月:最後のは余計よ!

マイケル:と言うかそのハリセンは何処から出た?
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