バカンス取ろうと誘ったからにはハッピーエンドを目指すと(自称)姉は言った   作:haru970

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ハイ、長らくお待たせしました。

もう一つの作品の『天の刃、待たれよ』に一区切り出来ましたので『バカンス』の『その後』を休憩代わりに投稿したいと思います!

何時も読んでくれている方達に感謝を!

これからもよろしくお願いします!


その後…
第26話 その後の三月(バカンス体)は…………


 ___________

 

 三月(バカンス体)、雁夜 視点

 ___________

 

「────という訳なのです、ハイ……………」

 

 先程の三月(本体)の爆弾発言で問い詰められた三月(バカンス体)は間桐邸にて正座をさせられ説明をさせられていた。 と言うのも条件があったのだが、

 

 曰く、「自分は()()()()()に位置するモノの一部」。

 曰く、「他世界線でよく似た、所謂『並行世界』に既に何度も行き来してこの世界の様な一つを()()した」

 曰く────

 

「────成程、つまりは何だ? お前は『神様』って奴なのか?」

 

 雁夜が全く納得していない顔で見下ろす。

 

「一応、『この世界線』ではね♪────あが?!」

 

 「そんなの『ハイソウデスカ』って信じられる訳ねぇだろうがぁぁぁぁぁぁ?!」

 

 ギリギリと音がしながら雁夜が三月(バカンス体)の頭を片手で握りしめながら彼女を星座の姿勢のまま押さえつける。

 

イダイダイダイダイダイダイダイダイダイダイダイダイダイダ?!?!?!?」

 

 何時ものアイアンクローに痛がる三月(バカンス体)のそばには切嗣とアイリスフィールの姿があった。

 

 つまりは雁夜、切嗣、そしてアイリスフィールの三人にのみ三月(バカンス体)は説明をした。

 

「そういう事………………凄い話ね、キリツグ。 …………………………キリツグ?」

 

 アイリスフィールが未だに全てを呑み込んでいない頭で必死に夫の切嗣に話しかける。

 

 まあ、自分の夫が義理とは言え(しかも別の世界線での未来の)とんでもない存在(方便上の神)の義父とは色々考えさせられる。

 

 だが要人である切嗣は頭を抱えていた。

 

 別の意味で。

 

「何と言う事だまさか僕が二児処か三児の親になってしかも三人とも出鱈目な存在なんてどうしたらと言うかあっちの僕は何を考えて安直なネーミングを彼女にしてしまってこんな迷惑を────」

 

 ────等と言った事を早口でブツブツと言いながらせっかくハイライトが戻った目からハイライトがまた消えて行く様。

 

 さっきの三月(バカンス体)の掻い摘んだ話の中に『衛宮邸での生活』も少し出ていたので、切嗣には思う所があったようだ。

 

「キ、キリツグ?」

 

 「アイリ!」

 

 切嗣がアイリスフィールへと向き、彼女の両肩を掴む。

 

 尋常では無い、血走った眼をしながら。

 

「ハ、ハイ?!」

 

「イリヤ()を絶対に幸せにするぞ!」

 

「ハイ、勿ろ────『達』?」

 

 そこで「何故切嗣はイリヤ()』?」と一瞬思ったアイリスフィール。

 

「ハイ、切嗣がそう思うのなら私は全力で貴方をサポートするわ。妻として」

 

 だがこれは恐らく()()()()()()()()と言った『衛宮家』の事だろうと思い、自分はそれを肯定すると言った。

 

 あながちアイリスフィールは間違ってはいない。

 間違ってはいないのだが────

 

「────良し! 三月君!

 

「イダイダイダイ────あ。何、おじさん?」

 

 未だに雁夜に鷲掴みされている三月(バカンス体)が()()()()()()()()切嗣に答える。

 

 ()()()()()()()()()!」

 

「「えええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?!」」

 

 切嗣の宣言に雁夜とアイリスフィールの両方がポカンとしながら驚いた。

 

「あ。うん、()()()

 

「ちょ、良いのかよ?! と言うか切嗣、お前は正気か?! ()()だぞ?! 重ねて言うが、()()()だぞ?!

 

 雁夜が三月(バカンス体)から手を離し、未だに切嗣のグルグルしている狂気の宿った目を見る。

 

「だ、だが違う世界とは言え僕の養子だったのは違いないし三月君────あ、呼び名はどうする? 君の言う『本体』と被るが?」

 

「私はどっちでも良いよおじさん♪ 私は『私』であると同時に『あっちの私』でもあるから」

 

「う、う~~~~~~~~~~~~~~ん」

 

「アイリさんも何か言ってくれ!」

 

 雁夜は切嗣の説得を諦めて、ウンウンと首絵を捻りながら唸るアイリスフィールに開き直る。

 

「私はイリヤを少し育てた経験しかないから、二児の面倒を見るのって大丈夫かしら?」

 

そっちの心配かよ?!

 

 見事雁夜の期待を外れるどころか、別の方向で心配をしたアイリスフィールだった。

 

「あ。どちらかと言うと、私はおじさん(切嗣)の世話をしていたから、()()()()の補佐を舞弥さんと共に出来るよ? 後絶対にイリヤにお姉ちゃんって呼ばせてやる

 

「あら~~~、頼もしいわ~♪ 通りで私の事を前に『お母様』って呼んだ訳ね~」*1

 

なんでだ?! ここに居る常人は俺か?! 俺だけなのか?!」

 

「いやいや、雁夜も大概じゃん。魔法使いなんだし」

 

「自称神様のお前(三月)に言われたくないッッッッ!!!!」

 

 そして雁夜達の悩みの種が増えた。

 

 何せ三月(本体)の爆弾宣言の説明をされたと思ったら突拍子もない、ファンタジーじみた、SFじみた、或いは哲学を根本から塗り変える様な内容ばかり。

 

 果たして彼、または彼らはどう他の者達に説明するのだろうか?

 特に切嗣の泣きじゃくる姿を見た後なので、他の者達は絶対に何かあると考え、訊いて来る筈。

 

 舞弥とセイバーは多分興味はあるモノの、切嗣とアイリスフィールが頼めば黙って正体の隠蔽の協力をしてくれるだろう。

 

 だがさっきの連中の中でも生粋の魔術師であるケイネスと、正に『根源』を最後の最後まで追い求めていた時臣の二人が厄介だ。

 

 アーチャー(ギルガメッシュ)は論外。と言うか恐らくは気付いていて「そんな世界線はあり得ん」と、サッパリ切り捨てている節がある。

 

 ウェイバーならば黙っていてくれるだろう(特にチエをダシにすれば)。

 ライダー(イスカンダル)もそうだろう。 と言うか興味はあっても言いふらすタイプではない。

 

 ランサーも断れば自らは深入りしないだろう。 

 だが主であるケイネスかソラウの命令があれば動く。

 

 綺礼達は泣く切嗣の姿にびっくりしたものの、雁夜達から話さなかったら聞いては来ない………筈。

 

「「「(でも、一体どうすれば良い?)」」」

 

 そう悩む三人に、三月(バカンス体)がとある提案をする。

 

「じゃあ、『“大聖杯”を経由して“根源”にアクセス(接続)して得たデータ(情報)」って言えば良いじゃない? それも()()嘘じゃないし」

 

「「「あ」」」

 

 こうして、日本の衛宮家に新たな家族が一人増える事となる。

 

「雁夜おじさん、むずかしいかおをしているよ?」

 

「あー、うん。 三月の事でね?」

 

「おじさん、もしかしてまたいじめられていたの?」

 

「ファ?! だ、誰がそんな事を桜ちゃんに言ったんだい?!」

 

「イリヤちゃん! 『カリヤはわたしのみたてでは()()だ』って────」

 

 「────子供がそう言うの知っていちゃ駄目でしょうが?! 切嗣達は何を教えているんだ?!」

 

 尚その夜、桜は見た。

 雁夜が電話を切嗣にして怒鳴っていたのを。

 

 切嗣もイリヤの言っていた言葉に酷く動揺し、注意はしたが…………

 

 果たして効果があったかどうか、曖昧な所である。

 

 流石別世界での『白い子悪魔』。*2

 

 ___________

 

 三月(バカンス体)、衛宮家 視点

 ___________

 

 イリヤとリーゼリットとアイリスフィールは勿論の事、切嗣も充実する日々を送る事となる。

 

 ただ────

 

「────(う、嬉しいけど────)────ぐ、ぐるじい(く、苦しい)!」

 

「────この子可愛い~~~~~!!! どうしちゃったの、切嗣さん?!」

 

 三月(バカンス体)が若い藤村大河に「ぎゅう~~」っと抱き締められていて、顔がブチュッと挟まれていた。

 

 何と何の間に挟まっていたかはご想像にお任せします。

 

 実はこの世界でも後に衛宮邸となる曰く付きの和風屋敷を正式に買い取る際に、不動産屋と元の所有者とのトラブルが起きて、切嗣達は藤村組の世話となった。

 

 勿論『原作』と違い、彼は聖杯に呪われてアインツベルンの後ろ盾を失った処か非公式に次期当主任命者となったので、魔術的な解決も出来たがこれに切嗣は断固反対。

 

 その際、『原作』の流れと同じで藤村組の皆と縁を結ぶ。

 違いがあるとすれば本来、独り身だった切嗣に初恋をする筈の藤村大河が『イリヤのお姉ちゃん役』を買って出た。

 

 そして三月(バカンス体)と会い、上記の通りの場となる。

 

「大河ちゃんにも紹介するよ。 妻の()()()()の────」

 

「────プハッ! 『マルテウス(Martius)・プレラーリ』と言います。 よr────むぎゅ」

 

「────もう可愛過ぎ! まるで()()()()()()()()!」

 

 何とか大河の腕から自身を開放した三月(バカンス体)────『マルテウス』はドレスのスカートの端をチョコンと持ち、お辞儀をしながら一礼をすると、顔がデレッデレになった大河にまたも力強く抱きしめられる。

 

 しかも直感で開口一番で『人形』と呼ぶのが恐ろしい。

 

「(流石が『冬木市の虎』────)」

 

 「────ア゛────?」

 

────ヒ────

 

 大河が突然ドスの効いた声を出しながら辺りをキョロキョロと睨む。

 

「ど、どうしたんだい大河ちゃん?」

 

「いや……………何か私の事を『虎』と呼んだような気が………」

 

「(怖い!この世界でも藤姉は怖いぃぃぃぃぃ!)」

 

 そう思いながらガクガクブルブル震えるマルテウスだった。

 

 10年間も刷り込まれれば、別の世界とは言え同一人物に何かを感じるのはもはや()()としては条件反射となる。

 

 ただまあ………………

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

「へぇ~、これが穂群原学園の()()()()()か~」

 

「? みt────『マルテウス』君が経験した世界では違うのか?」

 

 穂群原学園のセーラー服を着て、物珍しそうに自分を見るマルテウスに切嗣が話しかける。

 

 余談だが長い髪の毛は二つ編みスタイルだった。

 

 ちなみにアイリスフィール、イリヤ、リーゼリット(そしてお守り役のセラと舞弥)は花嫁修業という名のお出かけに衛宮邸から出ていた。

 

「そうねぇ…………丁度藤姉────じゃなくて『大河』が卒業したちょっと後に制服が変わったの」

 

「へぇ~それは────」

 

『────ごめんくださーい!』

 

 玄関の方から少年の声が聞こえ、その後にセイバーの声が続く。

 

『これはベルベット君にライダーか』

 

『邪魔するぞ、セイバー! 坊主がどうしてもチエ殿と会いたいからと────』

 

『────ラ、ライダー! ち、違うからな! 誤解するなよ?!』

 

「やれやれ………」

 

 切嗣が笑いながら溜息を出す。

 

「その………『私』なりに考えた結末なんだけど、迷惑だった?」

 

「いや? 寧ろ感謝し切れないさ。 最後に()()()()()母さん(ナタリア)()()()()ありがとう」

 

 マルテウスに笑みを浮かべる切嗣は長年の腫れものが落ちたような、生き生きとし、純粋な子供の笑う姿だった。

 

「………………………」

 

 マルテウスは固まり、ただこの笑顔を脳内に焼き付けた。

 

「ん? どうかしたのかい?」

 

「ううん。 ただ再確認しただけ。 『()()()()()()()()()()』って」

 

「……それは……一体────?」

 

 玄関で騒いでいるウェイバー達に挨拶をしに、横を通るマルテウスに切嗣が聞き始め、彼女は彼に開き直った。

 

「『誰かを助けるという事は誰かを助けないという事』、だっけ?」

 

「ッ」

 

 切嗣は息を呑み込む。

 その言葉は、彼自身が()()()()()()()()()、歪んだ『正義の味方』像の語らいだったからだ。

 

 もし彼が未だに彼女の事を疑っていたのなら、今ので完全に疑いは晴れていただろう。

 

「確かにそうかもしれない。 ()()人間(ヒト)』では他社との意思疎通は難しいし、真意が分かるのも無理で、軋轢が生まれるのは必然。 でもね、『自分の手が届く人達を幸せにする』って()()()が言ったの」

 

「…………………」

 

 切嗣は一瞬呆気に取られ、思考が止まる。

 

『ただ多くの人々の幸せを願う無垢な思い』。

 それは過去の切嗣がナタリア(母親)と旅をし始めた頃の、自身の思いだった。

 

「…………そうか、凄い人だな。 誰だい、その人は?」

 

 マルテウスがクスリと悪戯っぽく唇に指をあてながら切嗣に笑顔を向ける。

 

「貴方の()()♪」

 

「…………………………………………………………………は?」

 

 ポカンとする切嗣を後に、ウェイバーとライダーに挨拶をしてくるマルテウス。

 学園へ通う為、戸籍上の住居は衛宮邸となっているが雁夜と桜(オマケ程度に慎二と鶴野)の様子が気になるのでこの二つの屋敷を交代制で通っていた。

 

 ウェイバーとライダーはマルテウスが今は衛宮邸と間桐邸を行き来しているのを聞いて様子を見に来た。

 

 と言うのは建前で、ウェイバーは「次は何時、チエさんが来るのかな?」とそれとなく聞いていた。

 

「フゥ~~~~~ン?」

 

「な、何だよその邪悪な笑いは?!」

 

「ううん、何でも………と言うか、貴方もしかして鍛えている? 肌もちょっと焼けてきているし」

 

「おお! マルタ殿も気付くか! 坊主はいっちょ前にあの神父共に弟子入りを申し込んでな────?」

 

「────ちょっと待て。 『マルタ』って私の事?」

 

「だって一々『マルテウス』と言うのは面倒臭いであろう?」

 

「………………スゥー」

 

 マルテウス(改名『マルタ』)は深く息を吸ってから()()()()()()のオープニングを歌い始める。

 

「────宇宙の彼方、イスカンダルへ♪────」

 

「ぬ? 余の名前か?」

 

 そのままマルタは歌い、興味津々に歌の歌詞を聞き始めるライダーだった。

 

「────()()()()()、イスカンダルへ♪────」

 

 「────な、何ィィィィィィィィィィィィィィィィィ?!」

 

 ライダーが突然立ち上がってマルタに迫る。

 

「お、教えてくれ! それは何の歌だ?!」

 

「ンフフ~、教えなーい♡」

 

 「頼む!この通りだ!」

 

「オホホホホホ~~~~」

 

 ウェイバーはただ「何この図?」と考えながら頭を華奢な少女に下げる必死な巨漢のライダーを見ていた。

 

 尚、このアニメは現時点から20年間程後にリメイク版が出て、CMにてこの曲を聞いたライダー食べていたラーメンを吹き出しては素っ頓狂な声を上げ、興奮しながらマルタに夜中に関わらず電話をしたそうな。

 

 その夜、料理を終えたアイリの料理は木炭に似た何かで、ウェイバーは無事に切嗣と共に(物理的に)涙を流しながら食した。

 

 その席ではマルタがイリヤに「お姉ちゃんと呼んで欲しい」が却下された。

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

 そして場は穂群原学園のとあるクラスでは新たな留学生が来ると聞いた男女達が大河と一緒に登校してきたその子を物珍しそうに見る。

 

 だが期待と反してパッとしない雰囲気を出す二つ編みの髪の毛に眼鏡と言った、所謂『地味な子』だった。

 

「(計画通り! これで()()()学校生活は安定だ!)」

 

 追記としてここに足すが、マルタ(三月)は既に学校を終えていた。

 だが『お義母様』経由の、切嗣の頼みで「危なっかしい大河の面倒を見て欲しい」と言うものだった。

 

 本当は衛宮邸と間桐邸でグウタラしたかったのだが毎日毎日飽きもせずに何かとマルタと関わりたがる遠坂時臣にケイネスにソラウにウェイバー(&ライダー)に(少しだけ)うんざりし始めていたので、これ幸いにと穂群原学園生活を()()体験する事に。

 

 ただし今回は以前の騒動や『月の女神/天使』の二つ名などは御免なので出来るだけ『地味な子』を演出していた。

 

 そして計画は順調()()()

 

 過去形である。

 

「(どうしてこうなったのさ?!)」

 

 マルタはワナワナと震える手で、非公式なクラブの作品を手に取っていた。

 

『虎x丸』と言う題名で、本の表紙は()()()()()の絵があった。

 

 これはマルタがあまりにも『地味な子』を完璧にトレース(投影)しまった事により、剣道部の華である大河としょっちゅう一緒になっていた事が原因だった。

 

 太陽の様な元気いっぱいの大河に対して少し暗く、内気な感じのマルタ。

 このペアがどこに行っても一緒なのが()()()()()()をさせていた。

 

 しかも本のイラストではマルタが『攻め』で(以下略)

 

 余談ではあるが、マルタは留学生とは言え、無事に(?)自分のクラスの委員長になり、注意していた男子が逃げる時に落とした同人誌だった。

 

「…………燃やそ」

 

 内容を見た瞬間、本を閉じて庭裏の焼却炉にその本を放り込んで火を点ける。

 

『剣道部のヒマワリ、そして月の様な女王陛下』といった、紹介人物のページだった。

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

「プレラーリ嬢、少し…………話したいことがある」

 

「へ?」

 

 間桐邸で桜の相手をしていたマルタにケイネスが珍しくソラウ抜きで訪ねて来た。

 

「ふ~ん、またおとなのはなし?」

 

「え゛。 さ、桜は何で────?」

 

「────雁夜おじさんにきいたー」

 

「(アンノもずく頭め~~~~~~!)」

 

「オールバックおじさん、ながくなる?」

 

「ウッ……………かも知れない」

 

「じゃあ桜、なかでまほうのしゅぎょうしてくるねー!」

 

 幼い桜がトテテテーと間桐邸の中に戻り、ケイネスがマルタ近くの庭の椅子に腰を掛ける。

 

「どうしたのですか、ロード? あまり、顔色が優れないようですが? それに、ソラウさんも────」

 

「────そのソラウが問題なのだ。()()()()()

 

え゛

 

 マルタが良く見るとケイネスは寝不足なのか、目の下にクマが出ていた。

 

「その…………君のおかげで彼女は以前より愛想がよいのだが────」

 

 そこからケイネスは3時間程、爛れた毎日の惚気話を聞く事に。

 

 次第にケイネスは寝不足なのが嘘のように振舞い、肌のツヤが潤っていった。

 

 逆にマルタはゲッソリしていったが。

 

「そ、それでロード? そろそろソラウさんの距離の事を話して欲しいんだけど?」

 

「ム? 何だ、これからが良いところなのに…………まあ良いだろう。 彼女が何かと私に引っ付きたりがるのだ」

 

「あら、中がよろしくて良いじゃない?」

 

「そうなのだが……………()()()()()()()()()()()のだ」

 

「(ハイここにもリア充イタァァァァァァァ!!!)」

 

 これは以前のチエが言った事で『ナニ』を意識したリア充第一号(切嗣とアイリ)達を配慮して間桐邸にイリヤと一緒にお泊り会をする理由の一つだった。*3

 

「それで、その……………私生活では構わないのだが、今では所構わず腕を組もうとしたり、私の視線を手で遮って『だ~れだ?』と言う彼女は確かに可愛いし────」

 

「────ッ!(ヤバイ、惚気話に入っちゃう!) そ、それはロードへの愛情表現と同時に、貴方の困った顔を見たいからではないですか?!」

 

「そ、そうかね? そうか…………ではワザとか」

 

「あ、あの………ソラウさんには私生活のみでして欲しいと伝えましたか?」

 

「無論だ。 そして最初こそは私生活だけだったが…………研究中にそうしてくると私は中断しざるを得ないのだ」

 

「…………………ちなみに、研究は何時間ほどの期間ですか?」

 

()()()()()()だが、何か?」

 

 「いやそれあかんやろ?! 幾らなんでも!」

 

「は?」

 

 いきなりの聞き慣れない方便でケイネスはポカンとしていた。

 

「あ、えっと…………では聞きますが、ロードはソラウ様が一人で一週間ほど貴方の元を離r────おわああぁぁぁぁぁぁ?!」

 

 マルタはケイネスの急変ぶりに慌てた。

 

 目からハイライトは消え、顔は「この世の終わり」とでも言いたいような悲しさに歪み、いつも身に纏っている貴族特有の「優越感」がドンヨリとした空気に入れ変わっていた。

 

 マルタは待機場の水分を鏡の板の様なものを作り出してケイネスに自身の姿を見せる。

 

()()()()()()! これが数日間ほったらかされたソラウさんの内心です!」

 

 ケイネスが死んだ眼で自分を見ると、ギョッとする。

 

「そうか! そうなのか! ならば彼女との時間をもっと増やさねば!」

 

 マルタが嬉しそうにウンウンと頭を縦に動かす。

 

「彼女にも助手が出来る研究を────!!!」

 

 「────せやから研究時間を減らせや?!」

 

 この時の「ケイネスさん」が彼にとってあまりにも新鮮だったので「これからそのように」と頼まれたマルタであった。

 

 子供の頃から周りの期待をずっと背負ってきたケイネスに、気軽に話せる相手は今までいなかったので尚更である。

*1
第11話より

*2
作者の別作品、『天の刃』より

*3
第25話より




マルタ:はい、という事で私、三月(バカンス体)は「マルテウス」と改名しました! よろしくね~~~!!!

三月:うっわ、その名前無いわ~

作者:ちょ、待って! ここで争わないで?! カオスになっちゃうでしょ?! 是非お気に入りや感想、評価等あると嬉しいです!
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