バカンス取ろうと誘ったからにはハッピーエンドを目指すと(自称)姉は言った 作:haru970
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間桐雁夜 視点
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チエがキャスターの腕を切り落として蹴りをお見舞いしていた頃、雁夜はアインツベルン城へと向かっていた。
「しかしタイミング良すぎだろ、キャスター達が侵入すると同時に俺達も紛れ込むとか」
何故彼が単独で城に向かっているかと言うとチエがキャスターの討伐と言う名の殲滅にあっている間に恐らくはセイバーとランサーが向かっていて、その間にセイバーとランサー二人のマスターとの接触を図る。
そして特に重要なのは衛宮切嗣を狙っているであろう言峰綺礼を止める事。
らしい。
らしいと言うのは三月曰く“綺礼が綺麗に外道に墜ちたら怪物へと化す”と言っていたからだ。 そしてその時若干青ざめていた三月の顔は尋常ではなかった。
彼女の説明では────
【────とにかく綺礼を
今は時臣の駒として動いているだけだからある程度は予測できるし
「………デカい扉だな」
アインツベルン城正面に着いた雁夜は扉を見つけ、堂々とそこから入ろうとする。
他の場所から入ればいいと思ったが、相手が“魔術師殺し”と異名高い衛宮切嗣相手には些かどころか、愚行にも等しい行為である。
何せドッシリと構える拠点はハリネズミの様に罠や仕掛けがそこかしこに設置するタイプだと三月が説明していた。
「と言うか何だ? “流石現役”って?
ここで雁夜の思考は強制的に止められた。
背中に放たれた水銀の塊が雁夜を吹き飛ばし、アインツベルン城の門を突き破って中へと吹き飛ばした。
「ぐわ! イッッッッテー! 一昔前の俺だったら風穴空いているところだよ!」
前もってかけた状態復元魔法が徐々に背中を襲う痛みを癒しつつ、雁夜は吹き飛んできた方を見やる。
「今ので葬ったと思ったのだが……悪運は強いようだな、間桐の魔術師よ」
暗闇から姿を見せたのは巨大な水銀の塊を傍に歩いてきたランサーのマスター、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトだった。
あれ? 今俺後ろから攻撃されなかった? 確かこいつは“正々堂々が好き”って三月が言ってなかったっけ?
「まあ、な。 それよりもロード・エルメロイともあろうお方が不意打ちとは随分なご挨拶だ。貴族の嗜みは何処に捨ててきたので?」
「挨拶? 安心したまえ、今のは挨拶などではない。 先日、君のサーヴァントによって浅からぬ傷を受けた礼だよ。 三流魔術師風情が事もあろうに自身の力ではなくサーヴァントの力を振るい、マスターを直接狙うなど不意打ちも甚だしい」
あ、あー…あの時の絨毯爆撃か……………
三月もしかしてこれワザと狙ってないよな?
何だか有り得そうだ。 こう、ワザと俺に怒りをぶつけさせるとか。
確か前にも桜のプリンを俺が食べたとか。 いや実際に食べたけどそれは三月が“私の奢りだから”って言ったからで────
────って俺は誰に言い訳をしているんだ?
圧倒的な殺意と憎悪を身に宿しながら、ケイネスは虎視眈々と雁夜と相見える機会をうかがっていた。
倉庫街での一件でケイネスは直撃されなかったまでも、二次災害によって軽くはない負傷をしてしまった。 もっとも彼ほどの魔術師ともなれば治療をするのにそれほどまでに時間はかからない。
だが、ケイネス自身はこの聖杯戦争を『選ばれた魔術師による戦争』という一種の聖戦にも近い感覚で捉えている。 故にサーヴァントにはサーヴァント、マスターにはマスターという区切りを付けているのだが、それを在ろう事か雁夜は
つまりケイネスから見れば『三流魔術師が正面から闘うことを恐れ、サーヴァントによる攻撃で自分を排除しようとした』、と捉えていた。
そして計らずも此度、セイバーのマスターを討ち取らんと向かったアインツベルン城で雁夜を見つけ、以前の礼とばかりにアインツベルン城の扉の門ごと魔術礼装
雁夜が死んでいなかったのは想定外ではあるものの、それもサーヴァントによる何らかの補助を受けているものだと考え(そしてこれはあながち間違ってはいなく)、ケイネスは見下すように地に伏したままの雁夜を見た。
「立ちたまえ。いかに自分が愚かな行いをしたか、その身に刻んであげよう」
「いや俺は話をしに来ただけ────」
「────
「って話は最後まで────どわぁ?!」
攻撃してくる水銀の刃(鞭?)に対して雁夜は両腕を上げクロスガードで防御するが突然の事で踏ん張りが効かず、アインツベルン城内へとさらに押された。
キリキリキリ、パチンッ。
「ん?」
雁夜は足首辺りに何か引っかかったと思った頃には遅く、城内に仕掛けられていたクレイモア地雷が炸裂し数千にも及ぶ鉄の球が雁夜とケイネスに向けて放たれた。
凄まじい轟音と共に城内に荒れ狂う鉄の球は様々な物を削り取り、美しい洋風の置物などを一瞬にして廃墟同然にまで変貌させた。
「ふん。 カラクリ仕掛け頼みとは……ここまで堕ちたか、アインツベルン?!」
だが、その鉄の雨の中でケイネスは何事もないかのように立っていた。 それは彼の礼装による自動防御機能。
そしてここでまたもや魔術師達の聖戦を汚したとする切嗣への怒りが切り替わり、雁夜への怒りはもうほとんど残って無かった。
というのも、魔術師の魔術による戦いを侮辱しているアインツベルンが許せないというのもあるが、それ以前に雁夜は絶対に死んでいるのだ、と、そう思ったからだ。 何せあの超至近距離で爆発に巻き込まれた。
如何に強い補助をサーヴァントからもらっていたとしても、近くにそのサーヴァントがいない以上補助の効果が表れるまでには時差があるだろう、そうケイネスは思った。 キャスターのクラスならいざ知らず、
「────グッ、骨折れているな。これ絶対」
「何ッ?!」
爆風の煙の中からは服が破れてはいるものの、何事もなかったかのように立ち上がっている雁夜の姿があった。
「…………貴様、何故生きている?」
「いや死ぬかと思ったよ実際?
「────戯言を!」
「おわ?! これでは話し合いは無理だな!」
雁夜は青筋を浮かべているケイネスから即座に離れアインツベルン城内へと離脱した。
ケイネスはそれを逃げ出したのだと勘違いし、すぐさま索敵にかかった。 姿を現さずに勝とうとする臆病なアインツベルンに防御と逃げ一手の間桐は自らが鉄槌を下す。
そうさながら勝者のように余裕のある笑みを浮かばせながら、ケイネスは歩みを進める。
これこそ三月が計画した通りに事が運んでいると誰も気が付かずに。
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衛宮切嗣 視点
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「…………何なんだ、あれは」
切嗣はパソコンの画面から先の光景を見て密かな恐怖心を抱いていた。
魔術師思考の人間達に戦争の常套手段など分かる筈も無いが、超至近距離からのクレイモアによる攻撃はケイネスのような高位の魔術礼装でもない限り、影も形も残らない筈だった。
だと言うのに間桐雁夜は服が破れて下の皮膚には幾らかの打撃痕などが残っているのかもしれないが、その程度。 そう、普通の魔術師はおろか訓練され重装備された兵士でも即死になりえる攻撃がその程度で間桐雁夜に通用していた。
先日の倉庫街で流星群を降らすと言う馬鹿げた行為を行う
寄せ集めた資料には一年前から聖杯戦争の為に急遽帰って来た落伍者とされている。 ならば大した障害にはなり得ない筈。
サーヴァントが強力であればあるほど、間桐雁夜は戦闘を行う余裕が無くなる。
そう思っていた。
さっきの映像に映ったのは常軌を逸した能力を見るまでは。
あれで急造の魔術師とは質の悪い冗談以外何も無い。 まるで代行者か、それに準じる存在と相対しているのではないかと思ってしまう程だった。
だが奴とケイネスは敵対している、これを利用すれば────
そう思いながら切嗣が部屋から出ようと思った時ドアノブが吹き飛び、これに対して切嗣は咄嗟に身を横に転がし回避する。
「いつつつ、ケイネス滅茶苦茶だ。 質の悪いストーカーみた────あ、えみy────あだだだだだだだだだだだ?! ちょっと話をぉぉぉ────!」
切嗣は入ってきた人物が雁夜とわかった瞬間にキャリコの引き金を引き、咄嗟の事の為
と言うか
「(
やはりか、と先程の一撃の確認の様に切嗣は冷静に判断していた。 そもそもキャリコの攻撃は敵を倒す為ではなく牽制と隙を作らせる為に使っている。
だがキャリコで痛みを感じるのならば“本命”は間違い無く効く筈。 そう思い切嗣が“本命”を抜こうとした時、パソコンが置いてあった長テ-ブルを中心に円状に床ごと下の階に落ちた。
「見つけたぞ、小虫ども」
出来た穴から出てきたのはケイネスだった。
「魔導の面汚し共め、私自ら引導を渡してくれる。 Scalp!」
先程のように月霊髄液がその形状を変化させ、その一部を槍のようにして切嗣と雁夜を貫かんと襲いかかる。
「((
その詠唱と共に切嗣の速度が加速し、月霊髄液の攻撃をいとも容易く躱し、ケイネスの作った穴を出てその場から逃げる。
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間桐雁夜 視点
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雁夜は反応速度と精神強化を
だが、その程度の攻撃では月霊髄液の自動防御を打ち破ることは叶わず、ケイネスは不敵な笑みを浮かべる。
「それだけか? やはりサーヴァント無しではこの程度か、出来損ないの魔術師が。 師の程度が知れるな」
カチンッ。
「………………おいロード・エルメロイ。 その言葉には少しばかり語弊がある」
「ほう。 まさか、自分が純然たる魔術師だとでも宣うつもりか」
「違う。 俺は、
「寝言を────!」
ケイネスが月霊髄液に攻撃の指令を出そうとしたその時、雁夜はケイネスの礼装である月霊髄液の方へと手を突き出した。
すまないチエさん、禁じられた
「天の雷よ、裁きをここに!」
雁夜の詠唱が終わると同時に凄まじい一筋の閃光がはるか上空からアインツベルン城を月霊髄液ごと貫いた。
計り知れない一撃を予期せず受けた月霊髄液は四方に飛び散り、その端々を黒く染め、焦げた鉄の匂いが辺りに充満する。
何が起きたのか、ケイネスには理解できなかった。
否、理解したとしてもそれはありえん事なのだ。
二節。
たった二節程度の詠唱から生み出された圧倒的破壊力のある
ケイネスは過去自身が目にしてきた魔術師は数多くいれど、その中にこんな事をやってのける人間はいなかった。
そもそも不可能の筈なのだ。
人間であれば。 魔術師であればある程度に今の芸当は出来るし、それは理解出来る。
だが先程のはたった二節程度で放つ事の出来る威力を超えている。
するにはサーヴァントの、その中でもキャスタークラスに至れる程の素質を持ち、それでいて大掛かりな下準備を施す必要がある。
だが、ここはアインツベルンの本拠地。
セイバーのマスターである切嗣にはその機会はあれど、雁夜にはその機会が全くないに等しい。
ともすれば、雁夜はそれをどう行使しているのか。ケイネスが問いかけるよりも先に雁夜が口を開く。
「さてと、そのどこぞの変形自在の液体金属みたいに動く水銀は綺麗に吹き飛ばしたけど、これでも話し合いに応じないか? ロード・エルメロイ?」
そう問かかれ、ケイネスの混乱していた思考回路はさらに混乱する。
先程の一撃で月霊髄液は四方に飛び散り、使用不可能となった。
では、他の魔術礼装はあるのか?
答えは否だ。
それはケイネスが決して準備を怠っていた訳では無く、切嗣によって本拠地としていたホテルを丸ごと爆破解体されその際に大量の魔術礼装を失ったからだ。
その中で月霊髄液の礼装が残ったのは他でもない月霊髄液がホテルの爆破解体の窮地から救ってくれたからだ。
そして今その唯一の魔術礼装を失い、サーヴァントもおらず、身一つで前線に放り出されている。
当然ながら魔術を絶対とし、戦闘向きではないケイネスに肉弾戦の経験はなく、完全に詰んでいた。
にもかかわらず雁夜は“対話”をしようと言う。 普通ならばこのような出来事に対し、交渉をするなどして時間を稼ぎ反撃のチャンスを待つが、ケイネスのプライドはそれを認めない。
ケイネスが魔術を行使しようと雁夜は感じ、彼はケイネスの懐に入って拳がケイネスのボディを見事に捉え、その身体をくの字に曲げながらケイネスの意識を刈り取る。
「フゥー………やはり、実戦は違うな。 それにさっきの魔法を少し無理して行使したのがハッキリと身体に響くな………………さて、三月の言った様に動いたけど………本当にどこまであのゴスクロ悪魔は先読みしているんだ?」
「ふーん、その“ゴスクロ悪魔”って誰の事?」
「それはもちろん────って三月ィィィィ?!」
雁夜は驚きながら声のする方、いつの間にか円状の穴から浮かび上がった三月を見る。
「ハ~イ! 呼ばれてじゃじゃじゃじゃ~ん!」
「いや、呼んでねえよ。 どこの誰の真似だよ」
「乗り悪いわね。 で? お…切嗣は?」
「離脱した。 お前がここに来たって事は────」
「うん、ここは私に任せて行って。 多分そろそろ切嗣目掛けて綺礼が来る筈よ」
「よし、今は綺礼だけ止めれば良いんだな?」
「うん、
雁夜はホッとした表情を上げ、部屋を出て着る嗣の追跡を開始する。
その部屋に意識ある他の誰かがいれば三月が“計画通り”とボヤいているのを聞こえたかも知れない。
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チエ 視点
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「ねえお姉ちゃん、もっと何か見せて!」
「いいぞ」
「「「「わーい!」」」」
「…………ランサー」
「何だ、セイバー?」
「…………
「そう主は言っていたが………
そこには信じがたいものを見るような目をしたセイバーとランサーの前に焚火を起こし、夜の森に残された子供たちに手品やジャグリング行為などを披露し子供達の世話や介抱をしている
先程キャスターを葬りセイバーとランサーが駆け付けるや否、チエは刀を腰にある鞘に納めた。
『何故剣を収める!』
『刃を抜くのは斬る為だけ。 争う気は無い』
『ほう? ではこちらから襲っても良いという事かな?』
『二人はさぞ名のある騎士と見受ける。 その様な者達が不意打ちをするとは思えん。 それに…………』
『『それに?』』
『この泣き喚く幼子達を慰めるのが先だ』
『『………………』』
そして子供達を一か所に集め焚火を起こし、今に至る。
ここで奴を討つ事が出来れば、我が主への忠義を果たす事は出来ると思うランサーだが、正面から挑めば先ず子供達を安全な距離まで引かせる必要がある。
だがそれでは一時的にとは言えチエかセイバーを見失う事になる。
あとは不本意だが背後に回り、必殺の一撃をもって一瞬にて命を刈り取るほかない。 ここで此度の聖杯戦争の異端とも思われる運営の片割れを討ち取る事が出来れば不仲であるケイネスにも忠義を示し信頼を得る事が出来る。
だがランサーは騎士、その誇りがチエの言った様に不意打ち等の行為を許さない。
悪魔でも敵を正々堂々、正面から打ち倒すのみ。
主君であるケイネスがそれを命じればその限りでは無いものの、自らの意思でそんな事を行うのはランサーにはできなかった。
そしてこれにはセイバーも当てはまる。
ランサーと違いセイバー自身聖杯の入手を望み、聖杯戦争に参戦した。
ランサーのマスターと違い、衛宮切嗣は手段を選ばず、常に結果だけを求めて非人道的な行為に手を染めている。 これにセイバーは自らの主を諌める事などしない、何故ならば騎士道を謳う自らもまた過去自らの統べる国を救う為に少数の人々を犠牲にした事があるからだ。
だがそれは“王”としての選択、決して“騎士”としてではない。 そして今のセイバーは一人の騎士。 この葛藤がセイバーの意志を鈍らせていた。
こうして微妙な空気と場面を目撃し自分達のマスターから聞いた目の前の
その時、ランサーがハッとしてアインツベルン城のある方角を向いた。
「ランサー?」
「……我が主が危機に瀕している」
「……行くがいい、ランサー。 貴方も私も、ここで決着は望んでいない」
「感謝する。 セイバー」
「ああ、ランサー安心しろ。
「「?!」」
セイバーとランサーは突然自分たちに声を掛けるチエを見て目を見開いていた。
「どういう事だ
「言った通りの意味だ、私のマスターは貴君の主の意識を失わせただけだ。 付き人もいるので命に別状はない」
セイバーはキリツグの言葉を思い出す。 切嗣は自身が
だが優秀な筈のランサーのマスターが殺されずに急造の魔術師と思われる雁夜に
ここでセイバーの中に疑問が生じた。
切嗣は確かに優秀だ。 戦争を勝つ為の準備を怠らず、何より手段を選ばない以上、騎士として許せない行いこそあれ、聖杯を手に入れるのに最も近いというのは感じていた。
だが、
ここは何としてもマスターの所に向かい、この場から一刻も早く立ち去らねばと思う騎士達がチエの方を見る。
「私は別に構わぬが召集がかかればすぐにマスターの元へと跳ぶ。 その時に誰かが道を阻むと言うのならば────斬る」
チエがセイバーとランサー方を見るとその場の温度がさらに下がった様な気がした。
そしてその時にアインツベルン城のある方角で大きな爆発が起きた。
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間桐雁夜 視点
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雁夜はここからどうしたものかと考えていながらアインツベルン城内を奔走し三月の切嗣に対する注意点を思い返す。
【いい? 相手の通り名は“魔術師殺し”。 それは決して伊達では無いわ。 彼は現代の武器や装備と魔術を巧みに合わせる。 その中でも彼の持つトンプソン コンテンダーは脅威よ、他はどうにかなるとしてもこれだけには注意しなさい。 さもなくば命が吹き飛ばされるわよ? それでも…………
そんなことを思いだしながら、雁夜が曲がり角を曲がると通路の数メートル先に探し求めていた人物は身を隠すこともせず、佇んでいた。
「ハァ、やっと追いts────あいだだだだだ! だから話を聞けっつうのー!」
足を止め対話を試みる雁夜に対し、切嗣は左手に握りしめたキャリコを雁夜へと向け、引き金を引く。
案の定、キャリコの弾丸は雁夜に直撃すると音を立てて弾かれるが、それは先程確認済みであり、分かりきっている結果であった。
だが先も言った様にキャリコは牽制役。
キャリコをガードしている間、雁夜がこちらの動きを見えないことも牽制に入る。
切嗣はキャリコの弾丸をばら撒きながら、懐から自身の“本命”のトンプソン コンテンダーを取り出す。
トンプソン コンテンダーはアメリカ合衆国で開発された後装式シングルアクション拳銃であらゆる口径の弾丸を発射できることが特徴であるが、切嗣の礼装は銃本体ではなく装填される弾丸にある。
起源弾。 “切断”と“結合”と言う対極的な魔術を撃ち込められた相手に強制的に発言される礼装。
“切断”によって相手の魔術回路にダメージを。
“結合”で傷と魔術回路のダメージを文字通り結合。だが結合≠修復では無い為魔術回路は実質滅茶苦茶なまま結合され使い物にならなくなる。
起源弾の真骨頂は撃たれた後、相手が大きな魔術を行使さえしていれば魔術師としての機能を完全に失う事になる。
トンプソン コンテンダーの引き金が引かれようとした時、ガードの中からトンプソン コンテンダーを見た雁夜は一瞬焦った。
「風よ!」
「ッ?!」
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衛宮切嗣 視点
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「風よ!」
「ッ?!」
突然激しい風が切嗣の身体を真正面から噴き出し、ほんの僅かの一瞬だけだが切嗣の体勢を崩せた。
「(これは、セイバーの
体勢を立て直し再度雁夜に向けて銃口を向けるが、その時雁夜は既に切嗣との距離を詰めていた。
「(速い!この速度………僕の固有時制御と同じ類の魔術か?!)」
けれど、距離はまだ十分にあり、切嗣は混乱しながらもコンテンダーの狙いを再度合わせて引き金を引く。
コンテンダーから放たれた弾丸は吸い込まれるように雁夜の額に直撃し────。
────否、
「(何だ、今のは?! 一体どんな魔術を行使したんだ?!)」
次の弾を装填する為にコンテンダーを開き、空になった薬莢を捨てて新しい物を入れる。
だが、その動作が終わった頃には雁夜は目と鼻の先まで接近していて、拳が鳩尾へと向けて放たれる。
放たれた拳は凄まじい速さで切嗣へと襲いかかる。
「(
切嗣は体内の時間を三倍に加速させることでそれを回避し、そのままバック転する事で距離を取りつつ、追撃を防ぐ為に残されたキャリコの弾丸を再度ばら撒く。
「(どういう魔術かは見当もつかないが、起源弾を躱された……いや、
銃口を雁夜に向けながらも、切嗣は歯噛みする。
起源弾は切嗣の肋骨を磨り潰して作られ、それ程数が多くない。
合計にして六十六発。 今のものを除いて三十七発を聖杯戦争より以前に使用してきたが、一度たりとて仕留め損ねることなどなかった。
それは切嗣が常に万全を期したタイミングで撃っていた事や、相手が魔術師としての常識に囚われていたという事もある。
起源弾を
いや、
どちらにしても、キャリコの残弾はゼロでカートリッジの交換が必要。 コンテンダーは再装填はしているが、また
実質切嗣の読みは当たらずとも遠からず的を射ていた。 雁夜は起源弾が当たる直前に自らの身体に起源弾が通れる“通過トンネル”モドキを開け、起源弾が身体を通り過ぎると自らつけた傷を治していた。
“切断”と“結合”の起源弾。 そして雁夜の“分離”と“修復”。
これは三月が雁夜に提案した起源弾対策の一つだった。
切嗣はこの事を知り余地も無いが。
「(こちらが同じ速さで動くのは相手も理解している。 ならば────)」
────バリィンッ!
「「ッ?!」」
切嗣が雁夜に仕掛けようとしたその時、切嗣の背後の窓ガラスが割れ、黒い影が城の中へと転がり込んできた。
割れた窓ガラスから射し込む月明かりに照らされたのは神父服に身を包んだ一人の男の姿。
「「言峰……奇礼?!」」
「見つけたぞ、衛宮切嗣………そして、間桐雁夜」
作者:う~ん、何度月霊髄液を見ても銀色のぷよぷ〇かドラク〇のメタルスラ〇ムにしか見えないな~
月霊髄液:(。´・ω・) (プルプルプル
作者:………かっわいいの~
月霊髄液:(・`ω・) (プルッ!
作者:もし楽しんで頂けたら、是非お気に入りや感想、評価等あると嬉しいです!
月霊髄液:(。´・ω・) (プル~