バカンス取ろうと誘ったからにはハッピーエンドを目指すと(自称)姉は言った   作:haru970

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第8話 あれは何だ?! 影か?! 闇に潜む怪物か?! いえ、あれは少女と言う名の掃除屋です

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 ランサー運営 視点

 ___________

 

 

「「……………」」

 

 近くのベンチみたいな物に一緒に座るケイネスとソラウはあの後本人同士長くとも感じられる間抱き合いながら共に泣いていた。

 

 ソラウはケイネスが自分を心から思っていたが世間体を気にするあまりに正直になれなかった言葉を聞けた事の上に今まで府に落ちなかったケイネスの数々の行いが実は全てソラウを思っていたからこそやっていた事に。

 

 ケイネスはやはりソラウはランサーから何かの影響を受けて様子がおかしくなっていた事と、今まで自分の胸の奥に押し込めていた本心を、自分の愛する人に言え、それが受けられた事に。

 

 そして今気持ちが少し落ち着くと気まずそうに顔を互いから逸らしていた。

 

「心に整理は付いたかしら?」

 

 そして二人の向かいでニコニコと笑顔になっている三月はどこか肌もツヤツヤとしていた(三月の傍で監視と警戒をしているランサーもだが)。

 彼女のかけた声でケイネスは咳払いをし、表情を何時ものキリっとした余裕のある顔で三月を見た。

 

「ではもう一度最初からで宜しいでしょうか?」

 

「う、うむ。 そうだな」

 

「では、お初にお目にかかりますロード・エルメロイ、私の名は三月・()()()()()。 そして間桐雁夜の()()を務めております」

 

「…………やはり聞き間違いではなかったか。 貴様────いや、これは駄目だな。 プレラーリ家は聞いた事も無いが……んんッ、こちらこそ始めまして。 私はアーチボルト家、九代の当主にして時計塔鉱石科のロード・エルメロイである。 そしてこちらが私の婚約者のソラウ・ヌァザレ・ソフィアリ。 彼女がかかっていた呪い解除とその原因である呪いの無効果、感謝する」

 

「いえ、こちらこそ()()()をご拝見出来たので♡」

 

 ケイネスはバツが悪そうな顔をし、ソラウは苦笑いをした。 だがそれも束の間で、今三月と向かい合っているのは聖杯戦争に参加したランサーのマスターと、そのサポートのケイネスとソラウだった。

 

「さて………良くここを突き止めたと褒めて置こう。 どうやったか知らないが、間桐の魔術師の師を名乗ったからにはさぞ腕の立つ者と受けるが……何用で私達に接触を直に図った?」

 

「単刀直入に言いますと取引を。 名高きロード・エルメロイの腕を貸して欲しいのです。 同盟を結んで」

 

「ほう、同盟とは。 続けろ」

 

「いくらロードとは言え、この様な即席の工房ではまともな防備は敷けないと思いまして」

 

「君は私が頷くと、本気で思っているのかね? 君の弟子はついさっき、私が敵マスターを始末する邪魔をしたばかりではないか? いや、それどころか私を捕獲しようとしたな?」

 

「あ、それはちょっと勘違いをしていると思う。 私は他のマスターやサーヴァントが貴方に危害を加えない様に見張っていただけです。 現に、私はランサーの邪魔をするどころか助けていますし」

 

「何だと?」

 

「我が主、その三月と言う少女が言っているのは真の事です。 私が駆け付けた頃、彼女はアサシンと思われるサーヴァントを退けていました」

 

「ふむ……その言葉、嘘では無い様だな。 だが礼は二度言わん。 話を続けろ」

 

「ええ、大丈夫です。 こちらもその件に関しては礼を言われるとしても困りますので。 では先にこちらを…あ。  私のバッグを持って来ても宜しいでしょうか?」

 

 ランサーはケイネスを見ると、ケイネスは頷く。 三月が立ち、部屋の隅置かれているボストンバッグを持ち上げ、元居た場所に戻り、バッグから出した書類をソラウに渡す。

 

「……こちらの書類に魔術は感じません」

 

「ふむ……これは……“魔術師殺し”、だと?」

 

「はい。 これは貴方がアインツベルン城で対峙していた、現代兵器を使っていた者の情報です」

 

 その資料は衛宮切嗣の情報の資料で、それによれば彼は力ある魔術師を複数名打倒しているらしいが……ケイネスの見た感じその魔術師達は“名前だけが大きくなった、痩せ犬ばかりだったのだろう”、と。 しかも、勝ちの全ては対象魔術師の魔術行使失敗による自爆だ。 話にならない、と。

 

 

 馬鹿馬鹿しいとケイネスが断ずる前に三月が話を再開する。

 

「もし話一割だとしても、実際に高位の魔術師はいた筈。 そうでなかったとしても、経験がとても多い魔術師ばかりが死んでいます。 ここでロードに問いますが、こう都合良く魔導に浸っていた者達が自爆などミスをするでしょうか?」

 

「ふむ…(その訳が無い。 時計塔の講師の中ではまだ若いとは言え、それでも数年の経験はあるのだ。 魔術行使の失敗にはパターンがあり、それを積み重ねて能力を上げていく。 大魔術を行使するのであれば、最大限に気を遣う筈だ。 そんなものは、未熟者の自爆だ、で済ませていい問題では無い………………つまり、考えられるのは────)────まさか?! 魔術に対するカウンターか?!」

 

「はい。 恐らくかの者はそれを可能とする手段を持っていて、それを敵対するマスターが大魔術を行う瞬間を虎視眈々と狙っていたでしょう」

 

「何と卑劣な!」

 

 くっ、と歯がみをして、資料を叩き付けた。彼、ケイネスには自負心がある。 魔術師の大家として積み上げ、時計塔で功績を重ね、若年にして一級講師になったというプライドが。

 

 そこに付け入れようとし、あざ笑われていたのだ。 あろう事か、魔術師の本懐を忘れたような輩にだ。

 

 今度こそ、油断はしない。 あらゆる対策を立てて、再び奴の前に立つ。 そして……今度こそ、絶対に殺す。 泥のようにうねる殺意を固め、しまい込む。

 

「待てよ………まさか………そうか、そういう事か! 君の弟子が私を生かしておいたのはそう言う事か! ハッハッハッハッハッハッハッハ!」

 

 突然笑いだすケイネスにソラウはハテナマークを出すような、理解が付いていない様な顔を上げる。

 

「何の事、ケイネス?」

 

「つまり、間桐の者は()()()私の前に姿を現せ、()()()臆病風を偽装し、()()()私に傷はおろか意識を奪うだけにしたのだ! こうすれば私はアインツベルンの“魔術師殺し”と何も知らずに会う事は無い! いやはや、お若いのにこれは一本取られた!」

 

「さすがロード・エルメロイ。 最小限の言動で意図を見抜くとは」

 

「では、本題に戻るがここまでして私に同盟を申し込むとはどういう事だ?」

 

「私達は少なくとも、ここよりはマシな拠点と情報を提供します。 こちらのサーヴァントの真名を明かす訳にはございませんが」

 

「見返りは何だ? これ程そちらが譲歩するからには何かある筈だが?」

 

「まず拠点を提供しようとしているのは先程ランサーが言った様にアサシンがまだ脱落していないからです。 いくらランサーと言えど、位置の離れている二人を聖杯戦争中ずっと守る通せるという保証がありません」

 

「…………では何だ? 間桐の師と言うのならば彼の様な化け物と彼のサーヴァントを送り出せば聖杯戦争を終わらせる事も容易い筈」

 

「主よ! セイバーは私が必ずや御首級を────!」

 

「────貴様は黙っていろランサー!」

 

「んー、別にセイバーとランサーを決闘させても良いんだけど?」

 

「…………は?」

 

 本日何回目になるか分からない間の抜けた声をケイネスが発する。

 

「今のセイバーは呪いの傷を負って全力、即ち宝具を使えない状態。 なら、ランサーが負ける事はまずないのです。 実はこの二人に能力値の差はほとんどないのです」

 

「何だと?!」

 

「はい、確かにセイバークラスは三騎士の中でも強いです。 が、マスターとの相性や精神理論の違いが現状、枷になっています。 俗に言う“足を引っ張りあう”ですね。 あ! 紅茶の葉っぱなど御座いますが、お飲みになられますか?」

 

「あ、それじゃあ私がチェックをして淹れようかしら」

 

「ソラウ」

 

「大丈夫よケイネス。 少しは貴方の………つ、つ、妻を信じなさい」

 

「ソラウッ!」

 

「あ~、話を戻していいかしら? あ、これが紅茶の葉っぱの入れ物と、ティーセットと、お水の入ったボトルです……って、このままじゃ冷たいか────よッ!」

 

 三月は次々と物をバッグから取り出し、最後に出した水の入ったボトルを手で握り、グッと力を入れるとボトルからみるみると湯気が立ち始め、三月はそれにタオルを巻きソラウに渡す。

 

「(ほう、かなり変換率の良い魔術をボトルに組み込んでいるな)」

 

「はい、熱いから気を付けてね?」

 

「え、ええ。 ありがとう……こんなに短時間でお湯を沸かすとは随分と効率的な魔術式ね」

 

「え? これ市販で出回っているただのボトルよ? スーパーで買ったヤツ」

 

「「何?!/何ですって?!」」

 

「中のお水()()を沸騰させただけだから」

 

 三月は何事も無かった様に笑顔をケイネスとソラウに向ける。 

 実際彼女からすれば何もなかったのだろう。

 

 が、魔術師は基本的に現代の技術を忌み嫌う。 もちろん彼らも使わなくてはならない物を渋々使うが、お湯を沸かすのはやはりあらかじめ魔術を組み込んだポットなどを使う。

 今三月がした様な僅か数秒という短時間で、しかも詠唱も術式も無しに成し遂げた様な魔術は基本的に不可能である。

 

 術式が無いのはソラウが確認するとして、今問題は────

 

「────少し脱線したな。 君はランサーとセイバーが────」

 

「────ああ、うん。 先ずは魔力値。 これは宝具発動に関するけれどランサーの宝具が常時発動型なのと、セイバーが宝具を使えないから、この差はないも同然。 次は差の大きいと思われる耐久力だけど、これはあの赤い長槍の力で無いにも等しい。 多分その分をセイバーは筋力に振り分けると思うけど、これでセイバーとランサーの筋力は五分五分になると私は見ている」

 

 ケイネスはソラウが入れた紅茶を手に取り、啜りながら考える(既に紅茶やコップに魔術影響が無いのも、ボトルが本当に市販のままの状態なのも確認済み)。

 

 この三月・プレラーリと言う娘………見た目と言葉遣いは幼さが残っているものの、聡明さと魔術の腕は恐らくこの聖杯戦争で二位を争うところかと意識を改めている(勿論総合的に一位は自分だが)。

 

 それに今の説明は理に適っている。

 

 後ろで“もっと自分を良く言ってくれ!”という満足そうな顔をしているランサーに腹が立つのは別として。

 

「後この二人の差と言えば………戦い方ね。 見たところセイバーは瞬発型に対してランサーは常に自分の技量に頼っている。 後はあの見えない武器の長ささえ見極めば更にランサーに軍配は上がる」

 

「その通りですケイネス様! 必ずやセイバーを討ち取って見せます!」

 

「……………そうだな、今度こそ会う時は決着をつけ。 次は無い」

 

「!!! はっ! このディルムッドにお任せ下さい! 必ずや、勝利を我が主に捧げると誓います!」

 

 “やはり俺の主を見る目は間違っていなかった!”と思うディルムッド・オディナ。

 

 “やはりソラウは私に思いを寄せていたか”と思うケイネス。

 

 “やはり、ランサーは香車見たいに一直線を行くわね~” と思う三月。

 

 そして“あ、この紅茶美味しい”と和んでいるソラウ。

 

 今ここに廃墟には合わないほのぼのとした空気が────

 

 

「────君はまだこの同盟に私達から何を求めているか答えていないのだが?」

 

「(うん。 やっぱり優秀ね、この人。) これは失礼しましたロード・エルメロイ。 ですが先にそちらの拠点を選んでからの方が話しやすいと思いますのですが」

 

「ふむ、確かに一理ある……だがこのまま君達や他の運営が私達を襲撃するとも限らない」

 

「あ、それじゃあコレを先お渡しします。 お気に召せば良いのですが────」 

 

 三月はバッグの中を漁り、()()を取り出すと────

 

「なッ?!」

 

 ケイネスが突拍子もない声を上げ、思わず紅茶を落としそうになる。

 何故なら三月の手には良く見知った魔術礼装があったからだ。

 

「これは同じ魔術師としてお返しいたします」

 

 ソラウに三月が渡したのは()()()()()()()()()()()、即ち────

 

「月霊髄液だと?! 何故君が持っている?!」

 

「これはアインツベルン城で私が出来るだけサルベージした物に同じ様な術式を施した水銀を足しました………」

 

 ケイネスはそれをソラウから手渡され中身を確認する。

 

「…………(間違いない、これは私の魔術礼装月霊髄液………しかもアレンジなど加われた物ではなく、そのまま私の魔術礼装だ。) …………Fervor,(沸き立て、)mei(我が) sanguis(血潮)

 

 ケイネスが水銀を地面に落とし唱えると、そこには雁夜によって破壊されたと思われた魔術礼装が復活していた。

 

「……これはどういう事かね? 間桐の師……いや、プレラーリ嬢?」

 

「これで貴方には自身を守る術が戻りました。 もしご不満でしたら私自身、明日まで寝床を一緒にしますが?」

 

 三月は悪戯っぽく笑いながらケイネスにそう言うとソラウの視線がケイネスに突き刺さる様な気が彼にした。

 

「い、いや結構だ! ここまでしてある程度の信頼は築けたと思う!」

 

「ありがとうございます、ロード・エルメロイ。 ではまた明日。 ご機嫌用、ソラウ様」

 

「あ。 え、ええ。 貴方も」

 

 三月は立ち上がりペコリと一礼した後、ゆっくりと廃工場を後にする。

 

「………………ソラウ。 君は彼女をどう思う?」

 

「え? どうって……不思議な子としか…感謝していると言うか……(紅茶が美味しかったとは言えない)」

 

「率直に言おう。 私が感じたのは少女などではなく、人の皮を被った()()()だ」

 

「え?」

 

「やはり主もお気付きでしたか」

 

「え、ランサーも?」

 

「あの者と初めて会った時、不肖ながら俺が最期に感じた無力さを感じました。 アサシンとは言え、サーヴァントを退けるあの姿と態度………」

 

「……………どういう事、ケイネス?」

 

「誠に不愉快な事だが………奴は私の月霊髄液を()()()()()したと言う。 これは不可能な事だ。 何故なら間桐の魔術師は下準備も何も無く、たった二節程度の詠唱から生み出された()()で私の月霊髄液を一撃で消し飛ばしたからだ。 そして奴はその様な行いをする者の師。 あの時咄嗟に反射神経でもう一度魔術礼装に魔力を入れたが()()()()()()()()()

 

「それはつまり………月霊髄液は機能不能までダメージを負った? でも今貴方が使っているのはどこからどう見ても────」

 

「────そうだ。 私の魔術礼装そのものだ。 その上仮とは言え、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()退()()()。 ここまで言えば君にもこれが何を意味するのか分かると思う」

 

 重い沈黙がランサー運営の間で続き、結局その夜睡眠どころか、仮眠も出来なかった。

 

 ケイネスとソラウは寝所を共に身を寄せあって半端ないリア充感を出していたが。

 

 そしてランサーは辺りを警戒しつつ二槍流のイメージトレーニングをしていた、来るべき闘いの為に。

 

 

 尚、日にちが変わろうとする時間に三月がクシャミをし続けながら帰って来て、心配していた桜に泣きつかられて困り、三月の気持ちが重くなるのは別の話である(この頃、間桐家では“皆で一緒にデザートを食べる”というのが桜の希望によって生まれた家の風習が出来上がっていた)。

 

 ___________

 

 遠坂凛 視点

 ___________

 

「みんな! こっちよ!」

 

 場所は冬木市の夜、入り込んだ裏道の中遠坂凛は同じ年の子供達が男に連れ去れているのを見て、そして父からもらった魔力計がその男を示しながら反応した事により凛はその男を尾行し、とある廃れた飲み屋みたいな所で自分が探していた友人のコトネと他数名の子供達が虚ろな目をしていたのを発見した。

 

 そこで男(キャスターのマスター、雨生龍之介)に凛は発見され捕まりそうになるが、龍之介の着けていたブレスレットが突然壊れ、子供達の全員の意識が覚醒し、凛は皆に逃げるよう誘導しながら殿を務め、龍之介相手に時間稼ぎをしていた。

 

 ここで凛と龍之介双方に幸いしたのが、凛は既に初歩魔術を行使できる事。 だが殺人者の狂気か本物の殺気に当てられたのか魔力の集中が上手くいかず、行使する魔術は不発に近いが目くらましとしては使えた事。

 

 もう一人の龍之介はほぼ一般人で、つい最近までは魔術の“ま”さえも知らず、キャスターを召喚出来たのは偶然にも実家で聖杯戦争について書かれた古書を発見し、それに基づいた“儀式殺人”を行っただけに過ぎない。

 

 なので魔術に関しては此度の聖杯戦争参加者内では下の下だった。 ただこちらは以前から殺人を行っている連続殺人者なのでいざ命に関わる(命の)取り合いとなると全身全霊を込めて相手を殺す事に躊躇しない。

 

「はやくはしって!」

 

「「「うわぁぁぁぁ!!!」」」

 

 ビカッ!!!

 

「グワッ! また、こぉんの! 待ちやがれクソガキ共がぁぁぁぁぁ!」

 

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ! (あと、もう少しで、おおどうろにでる! そこまでいけば────!)」

 

 凛は後ろから龍之介の足音がして、宝石魔術を振り向かず、また使うが────

 

「────きゃあ?! な、なんで?!」

 

 何故か龍之介が今回怯まず凛を後ろから地面に押さえつけられ、持っていた宝石が辺りにばら撒き、首から下げていた魔力計はガラスが割れずとも首から外れ地面に落ちる。 

 

 凛は暴れるが自分より体格が大きく、体重のある相手にそのバタつきが効く筈も無く、龍之介が強制的に凛を仰向けにして首を片手で絞め始める。

 

 その時、凛が見たのは大きく歪んだ笑顔をした龍之介がサングラスをもう一つの手を使って顔から外していた。

 

「(そうか、こいつサングラスで魔術のせんこうを────)────ガはッ! アッ! ガッ?!」

 

「ん~、一時的にサングラスを襟辺りからぶら下げるのをCOOLと思っていた過去の俺に感謝だぜ~~……このガキ、手こずらせやがって。 他の奴らは逃げちまうかも知れねえがテメェだけはゆっっっっっくりといたぶってやる」

 

「(やばい、にげなきゃ、ほうせきとどかない、うごけない!) アッ……アガッ………」 

 

「本当はお前を“芸術品”にしたかったけど、暴れそうだからな~~……そうだ! 手と足切り落とそう! そしたら気絶して少しは静かになるかも!」

 

「?! (な、何こいつ?! く、くるっている?!)」

 

 龍之介は右手で持っていたサングラスを捨ててナイフを取り出し、首を絞めていた左手を離し凛の右腕を抑え、すかさず足の肘を凛の胸辺りに乗せて体重をかける。

 

「んじゃ! 先ずは手癖の悪い右手から“バイバイ”いっちまおうか!」

 

「かッ…アッ……やめ……て────」

 

「────じゃあ気絶するなよ~? でないと楽しめない」

 

「お……………と……………………だ………れ………………か」

 

 ザシュッ。

 

 

 

 

 凛の視界が酸素不足から暗くなり始め、意思が朦朧とし始めた時、刃物が()()を差す音が狭い裏道に響く。

 

 

 

 

 

 

 カランッ、カランッ、コロン、カタッ。

 

「え? あれ? アレ俺の……ナイフ? お……………おあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛?!」

「カハッ! ゲホッケホッエホッ!」

 

 龍之介は凛の上から退き、自分の右腕に刺さったテレビアンテナの部品を信じられない様な目で見ながら左手で抜き取る。

 

 凛は急に酸素を取り込んだのか頭痛がし始めて立ち上がろうにも手足に力が上手く入らず横へ倒れそうになると誰かが自分を支えるのを体温で感じた。

 

「(あ。 ちょっとヒンヤリする……だれ? おかあさま?)」

 

 視界が霞む中、凛は地面に落ちた魔力計が異様な程赤くなっていたのを見えた様な気がした。

 

「(すごくあかい………てにおえないきけんがちかい? でも、もう…むり────)」

 

 とうとう限界が来たのか意識が深い闇の中へと落ちる中、女性の声がどこか遠くで響いた。

 

「逃げ足の早い外道め」

 

「(このこえ………どこかで………………あ……………桜といた………………)」

 

 ___________

 

 ライダー運営 視点

 ___________

 

 とある冬木市にある一際大きな水路の中、少年の悲鳴が響く。

 

 

 

 

 大男の笑い共に。

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!」

 

「フハハハハハ! そう怖がるな坊主! 男ならもっとどっしりと構えんか! それに坊主も気になるだろ、先程から聞こえてきたあの音が」

 

「あ、ああ。 何か工事で“ガツンガツン”する奴みたいだな」

 

 三月がランサー運営と接触し、ソラウの魅了解除とランサーの黒子の呪い無効化を同時刻ごろ、ライダ-と彼のマスター、ウェイバー・ベルベットはキャスターの工房であったらしい場所へとと移動していた(キャスターが討伐された連絡は入れ違いでまだ伝わっていない)。

 

「む、これは……」

 

「え、何だよ…これ?」

 

 何故“らしい”になるかと言うとキャスターの魔力の残滓しか感じられなかったから。 魔力は淀んでおり、霊的にも不安定。 あまりそういった事の感知が得意で無いウェイバーでも、ここがろくでもない事に使われていた、というのは工房での惨状を直接見なくても分かる。

 

 ウェイバーにプレッシャーを与えているのは、それだけでは無い。 

 

 工房には先客がいた。

 

「お主は……確か()()()()()()だったか?」

 

 今聖杯戦争で、()()()()()()は最も謎が多いサーヴァントだった。

 確実な情報に繋がる手掛かりを調べ上げ、辿ってみても矛盾するか更に謎が深まるだけ。 

 

 そしてここぞという場面で致命的な一撃を披露する。

 

 僅かな時間で魔術師の工房など比較に出来ない陣地の要塞化。

 その上ステータスもクラスも読めなかった。 しかもクラスに至っては間桐雁夜が彼女を“バーサーカー”と呼んでいただけで確証は無い。

 

 会う事があれば多少無理をしてでも情報が欲しいと思ったところにキャスターの陣地らしき場所へと踏み込んだ際にこうやって偶然にも会った。

 ウェイバーが考えたのは進んだ先が、キャスターの工房らしき場所なのも、聖杯戦争のルール変更を考えれば予想の範疇内。

 

「……………ライダーか」

 

 ()()()()()()はライダーたちに振り向かうと、この離れた距離からでも分かるほど彼女が来ている黒い着物がどす黒い赤に染まっていたのが見えた。

 

「“これ”はお主がやったのか?」

 

 ライダーの目は()()()()()()の前にあった柱に人型の()()()が凄い腕力で何度も叩きつかれた痕跡があり、よく見ると辺りに新しい血の跡があった。

 

「少々手癖の悪い者がいた」

 

「そいつァ、キャスターのマスターか?」

 

「何をしに来た、ライダー?」

 

「うーん、余らはキャスターの陣地があろう場所に乗り込んで来ただけよ。 別に今おぬしと事を構えるつもりは無いわい」

 

「そうか」

 

「ヒッ」

 

 ()()()()()()の視線がウェイバーに移ると彼の肩はビクつく。

 彼女の赤い瞳は感情を表さず、ただウェイバーを見る。

 

「貴様は近づかない………いや、見ない方が良い。 明かりを付けるな」

 

「!!! ば、馬鹿にするな! ぼ、僕だってやれば────!」

 

「────坊主!」

 

 ウェイバーは馬鹿にされたと思い、怒りが込み上げ(あとライダーとの暮らしのストレス)、明かりをつける魔術を行使し、上にそれを投げると照明弾の様に明かりがつき、辺りの惨状を見せる。

 

 そこには子供がたくさん転がっていた。

 

 服は破れて、血が張りつている。眠っている顔は、恐怖と苦痛に引きつっていた。

 

 これらはまだマシな方で、中には原型を人型から変えられた者や恐らく生きたまま内臓を────

 

「────ウッ! ボエエェェェ?!」

 

「あー、だから言わんこっちゃない」

 

 ウェイバーは嘔吐し、胃の中が空っぽになり、口を袖で拭く。

 

「こ、この子供達は…………」

 

「おおかた、キャスターかそのマスターの奴らが連れ去ったのであろうよ。 ()()()()()()にああして保護されている子達がいるという事は、少なくとも生きておる者もいるようだ」

 

「御託は他所でやれ。 手伝わないのなら時間の無駄だ」

 

「何だ、手伝ってやってもよいぞ?」

 

「………感謝する」

 

「その代わりと言っては何だが、少し話をしようではないか!」

 

「……………道すがらで良いのなら」

 

 ()()()()()()とライダーが子供達を戦車の御者台に乗せる間、ウェイバーは彼女を観察した、どうにか真名などに辿り着ける仕草や言動があるかどうか。

 

「(今までじっと見た事ないけど、あれって日本の着物だよな? だったら彼女は日本の英霊? でも本とかで呼んだ限りは“聖杯”は西洋の概念だから可能性は低い………だったら日本出身で旅人をしていた方がしっくりくる。

 でも………僕から言っても昔の時代、女性の位置は社会的に低くてある一部の例外を除いて男装してたって────)」

 

 ウェイバーのまじまじと見る視線に気づいた()()()()()()が彼の方を向く。

 

「何だ?」

 

「えッ?! いや、その、僕は………」

 

「オウ、あらかた乗せ終わったぞ! ん~? どした()()()()()()? あまり坊主をイジメてくれるな、おぬしの様な目麗しく、高貴な者に見とれてもしょうがいではない!」

 

「………………」

 

「……乗るか?」

 

「ええええええ?! お、お前何言ってんだよ?!」

 

「???」

 

 ライダーがウェイバーにデコピンを食らわせ、黙らせる。

 

「いや何。 戻る道は長く、余としてはこの辛気くさい場所で長居はしたくない。 それに隣におぬしの様な者がいれば少しは華が咲くと言う者よ!」

 

「そうだな」

 

 そう言い、ライダーの御者台にはライダー、ウェイバーと()()()()()()が隣に立つという位置で来た道を戻り始めた。

 

「(う~、ライダーの奴何考えているんだ?! 奴が僕を狙っても守り通せる自信があるのか?!)」

 

「……して()()()()()()よ」

 

「何だ」

 

「おぬしからはどこかの王………いや、皇の様な者の雰囲気を感じる。 名は何と言う?」

 

「言う必要は無い」

 

「まあ、そう固い事を言うな! 見た所この極東の島国の出身っぽいが? それにさっき“高貴な者”と言ったのを不定しなかったしな!」

 

「……………………」

 

「高貴な者で流星を空から降らす様な者なぞ何も恐れる事は無い筈! それならば己が名乗りを憚るまい」

 

「……………………」

 

「だんまりか、むぅ……堅い奴め」

 

「何言っているんだ、こっちの方の振る舞いが当たり前だろう?!」

 

「坊主こそ何を言っているのだ? よいか、ただ座して手に入れられる情報など、たかが知れているものよ。 真に必要な情報は、自分で動かなければ手に入れられん。 特に()()()()()()について分かったのは、マスター共々戦闘でかなり腕が立つという事位だ。

 ()()()()()()としての本領すら見せていないのだぞ? 多少無茶でも、突っつかねば分からんのだ」

 

「確かに、一理はある」

 

「はぁぁぁ?!」

 

「おお! お主も分かる口か?」

 

「何でも試してみなければ、分かる事など何もない。 怯え、自重したところで、それで得られるのは“自分は常識的だった”という満足感だけ。 それこそ、本当に無意味だというのに」

 

 今までに無い位長い文章を喋った()()()()()()に対してウェイバーは目を見開き、ライダーは満足そうに笑った。

 

「気に入った! お主も誘うとしよう!」

 

「誘う?」

 

 ライダーがニカっと笑い────

 

「────それはもちろん、宴にだ!」

 

 頭を傾げるバーサーカー(チエ)、口をあんぐりと開けているウェイバー、そして豪快に笑うライダー。

 




作者:やっぱりライダーを考えるとスネークになる

ライダー:おう、余を呼んだか!

作者:呼んでない! 暑苦しい!

ライダー:何だ、貴様もモヤシみたいではないか?!

作者:誰だよこいつにここの場所を教えたの?!

ライダー:お! 茶と菓子があるではないか! (バリバリバリバリバリバリッ! ゴクゴクゴクゴクゴクッ!

作者:ああああ! お茶とおかきがぁぁぁぁぁぁ?!
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