バカンス取ろうと誘ったからにはハッピーエンドを目指すと(自称)姉は言った   作:haru970

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第9話 変態共の魅了、等価交換、同盟、そして夜の晩餐へ

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 ランサー運営 視点

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 次の日の朝、ランサー運営は三月を先頭に街を歩いていた。 ランサーは三月が用意した現代の服と、黒子から発生する呪いを無効化するファンデーションを渡され、今は具現化してケイネスとソラウを後方から警護していた。

 

 何故ランサーが具現化しているというと昨夜の出来事から三月はサーヴァントと同等の警戒をするべしとケイネスが言ったから(当初は“アサシンがまだ脱落していない”と言っていたが、遠回りに最後に“ああ、後あの少女も同じく警戒した方が良いかも知れんな”と言っていた)。

 

 そしてこうちゃっかりとランサーの分の服を三月が用意しているところを見る彼女もこれは想定していたらしい。

 

「プレラーリ嬢、何故こうして我々は町中を歩いている?」

 

「ま、私が拠点を提供すると言っても前もって“私が所有していた”となるとどんな仕掛けがされている建物は嫌と思って────あ、来た来た!」

 

 と言って話が打ち切られ、いつの間にか近くまで男が寄ってきていた。 中年くらいの、東洋人らしく背の低い男。 魔力の反応も無く、特に危険には見えないその男は三月と一言二言会話をすると、何かを差し出し、三月はにこりとしながら太った封筒をバッグから出してその男に渡す。

 

 そして男は離れ、三月はまた歩き出す。

 

 先程のやり取りが数回ほど行われ、ケイネス達は何が起きているのが分からないまま三月にさっきから受け取っていた()()を手渡す。

 

「これは何だね、プレラーリ嬢」

 

「ビルとその土地の権利書。 後警察の上層部とかにコネを持つ人たちの名刺と情報」

 

「は?」

 

 ケイネスはフリーズし、ソラウはこれを見たので彼を少し揺すり思考を戻させる。

 

「あ、その……権利書とはどういう事だね?」

 

「だからその中から好きなのを選んで。全部()買った物ばかりだから」

 

「えっと、そういう事ではなく。 その………入手手段をだね────」

 

「────ああ! ごめんごめん、言うのを忘れちゃった! ランサーの魅了をアレンジしたの」

 

「……は?」

 

「えーと、あの魅了って『黒子を見る』 『女性に』 『興味が』 『つけられる』っていう風に出来上がったのを私の着けているリボンに『リボンを見た者で』 『今すぐ売り出せる土地を』 『持っている者と』 『等価交換する』 を付けただけ。

 後はこのネックレスには 『ネックレスを見た者で』 『警察の偉い人と』 『コネを持っている者に』 『紹介される』 を。

 まあ、ネックレス辺りをガン見する変態はいるからネックレスにワザとしたんだけどね。

 と言っても両方とも急造だからあまり長く効果は続かないし壊れるけど。 あ、複数でもいいわよ、予備とか必要になるかも知れないし」

 

「そ、そうか」

 

 質の悪い冗談のような説明を聞き、その効果を目にしながらケイネスとソラウは三月が本格的に敵対しないでよかったと思うことにした。

 

 何せ()()()()()()という()()の呪いと言うものを極一部とはいえ一夜で解析して、それを別の用途に書き換え使うと言う事を短時間でして見せた。

 

「さて、と。 ちょっとその中で一番近いビルに行きましょうか? 着いたら私がこの同盟を結んだ意図も分かると思うわ」

 

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

 ここはとある事務所、既に人がいつでも入れるように必要最低限の者が設置されている一つの部屋の中、ケイネスとソラウソファーに座り、三月の話を聞いていた(そしてテーブルには紅茶と菓子)。

 

「では、ロード・エルメロイは聖杯は何処にあると思われますか?」

 

「どこ、だと? ハッ、何を。 答えは、この世ならざる場所だ。どこと聞くのであれば、それはどこでもない」

 

「聖杯と言う“概念”ではそうかもしれません。 ですがこれは魔術儀式。 つまりは儀式によって“成った”ものを蓄積して、聖杯に至る為の道筋がある筈という事です」

 

「確かに、そう考えればこの世にある」

 

「そしてそれは()()()()()()()()()()()()()()。 そして幸か不幸か間桐雁夜、彼のサーヴァント、そして私がアインツベルン城にライダーによって()()()()()()()()。 そこにロード達を私達の同盟者として堂々とアインツベルン城に入れることが可能です」

 

「…………成程、こうすればアインツベルン城への侵入はあくまでライダーの主導。 警戒は当然される。 が、私達が直接侵入するのとでは比べものにならない。 そこで、聖杯の欠片なり術式の一部なり、手に入れれば────」

 

「────そしてここで一つの仮定が私の中で出来ているのです。 聖杯は自分に望みがある者を呼び込む。 そして足りなければ、近場で魔術回路がある者を数合わせにしている。

 ですが、その者達を選ぶ基準は? この広い街の中、魔術回路を持つ者が明らかに異常だったキャスターとそのマスターが選ばれた。

 それでも聖杯は、候補の中から狂人と殺人鬼を一緒にした。 まるで、その組み合わせが一番ふさわしい、と言っているかのように」

 

「確かに………キャスターの愚行は聖杯戦争とは無縁だった。 あるとすれば聖杯戦争を無視した行動を取っていた事だ……となれば………聖杯に何らかの異常が発生している?」

 

「ええ、アインツベルン城でその手掛かりを。 そして直接聖杯にたどり着けずとも、観測くらいは出来る筈。 そこから、異常を調べ、対抗手段を練ろうと思っています。 これも、ロード・エルメロイだからこそ取れる手段なのです」

 

「……面白い。 面白いぞプレラーリ嬢。 だが相手に警戒されないように、となれば派手には動けんぞ。 どうやって探しだし、一部を奪うつもりだ?」

 

「恐らくはアイリスフィール本人かと。 そして私には手段があります。 必要な物があればこちらから提供できるもの、または入手できるものならお渡しします」

 

「成程、感謝する」

 

「三月よ、私からも感謝を」

 

「んえ?」

 

 三月が話しかけてきたランサーにキョトンとする。

 

「貴方がいなければ私の涙黒子の所為でまた我が主を苦しめるところだった。 感謝を」

 

「あ、うん。 まあその………えっと」

 

 三月がたじろぎ、ケイネスの方をちらちらとする。

 

「ランサー」

 

「はッ」

 

「貴様は私に言ったな、“主への忠義を示す事。聖杯など必要ない”と。 過去の英霊が、人間風情の使い魔に身をやつすというのに、何の願いもない? 忠義を示す事が出来ればそれでいい? 馬鹿馬鹿しいにも程がある」

 

「ちょっとケイネス」

 

「黙っていろソラウ。 どうだランサー?」

 

「………返す言葉もございません」

 

「しかし、だ。 聖杯戦争は私情を挟んで勝てるほど甘くはない。 それを私も、お前も実感した。 私情を挟んだせいで敗北したなどと、魔術師の風上にも置けん」

 

「主………」

 

「故にランサーよ。 此度の聖杯戦争に限り、私はお前に関係する私情の一切を捨てよう。ただ、勝利するためだけに持てるだけの全てを振るう。 そしてランサー、お前にも誓ってもらう。 私情を挟まず、私()に勝利を捧げるためだけに、その二槍を振るい、共に戦場を駆けると」

 

 そこにはただ一人の魔術師としての、戦士としての面貌のケイネスがいた。

 

 マスター()は覚悟を決めた。 後はそれに応えるだけだ。

 

 ランサーもまた、感情の高ぶりを抑えつつ、戦士の貌で、ケイネスへと返した。

 

「フィオナ騎士団が一番槍、ディルムッド・オディナ。 必ずや貴方()に勝利を捧げましょう。 我が二槍は貴方()と共に」

 

「よろしい。 ソラウ、君はどうかね?」

 

「フゥー………今更ね、私は元々勝機のある勝負にしか出ないわ」

 

「よかろう、では今から我々は共に勝利を目指す同盟者同士! 我々に敗北は許されない!」

 

 そこには新たに覚悟を決めるケイネス、ソラウ、そしてランサー。

 初めは目的も思惑も信頼も無かった三人が新たに決意をした。

 

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 セイバー運営 視点

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「切嗣。もう身体の方はいいの?」

 

「ああ。アイリのお蔭で、殆ど万全の状態だよ」

 

 キャスター、ケイネス、そして雁夜達の襲来の後のアインツベルン城。 あれ程の激戦を言峰綺礼という同盟を結ぶ可能性が一番無かった者と共闘する事で辛くも生き延びた切嗣は固有時制御による副作用から受けたダメージをアイリスフィールに癒してもらいながらも、既に次の作戦への準備に入っていた。

 

 殆ど万全と口では言ったものの、あれからまだ一日程度しか経っておらず、状態としてはせいぜい六割、といった状態だがあの夜見せつけられた圧倒的で、暴力的なまでの強さの前に悠長に構えている暇などあるはずもなく、気を失い、目が覚めてから、ひたすら思考を巡らせているものの、未だ良い作戦は思い浮かばずにいた。

 

「(何という失態だ。 もっと注意深く見るべきだった。 あんな規格外のサーヴァントを連れているなら、マスター(間桐雁夜)も常識の範疇を超えている事くらいは想定すべきだった)」

 

 今も悔やまれる。 綺礼と組んだ時、倒す一歩手前まではいった。

 

 だが理解不能な現象によって、次の瞬間に振出しに戻ったとはいえ、間違いなくあと一歩あれば、雁夜は仕留めていた。

 

 しかし、次は違うだろう。 例え綺礼と再び組もうとも。

 今更だが他のマスターと組む事はない。 相棒という点でいえば、綺礼との相性は非常によく、他のマスターとでは最悪と思えた。

 

 ならば他の方法で勝機が出るか?

 例えば冬木ハイアットの時のように爆破解体するか?

 

 それも考えたものの、切嗣は止めた。

 

 間桐雁夜はあの超近距離でのクレイモアを目立った外傷もなく立ち上がった相手だ。爆破解体で死ぬようなビジョンが思い浮かばない。

 

 ではセイバーの宝具で吹き飛ばすか?

 

 左手を負傷している現状、セイバーには令呪を使用せねばならず、例え令呪を使用して宝具を放ったとしても、流星群を何事もなく降らせるようなサーヴァントがいれば、防がれる可能性すらもある。

 

「(あの時彼のサーヴァントが口にした宝具の真名らしき『アンタレス・スナイプ』は完全なレッドへリングだった。 未だに真名の糸口どころか、宝具すら分からない。 ここまで来ると、間桐雁夜の経歴は完全にダミーと捉える方が正しい)」

 

 魔導から逃げ出した落伍者、と経歴上なってはいるものの、ここまで来ればそれに信憑性などなかった。

 あれ程の実力の持ち主が、魔導から逃げ出した落伍者である筈がない。

 

 つまり此度の聖杯戦争の為に周囲の目を欺き、ただ静かに、己が牙を磨き続け、虎視眈々と聖杯を手に入れる為に、汚名を被りながらもこの時を待っていたのだろう。

 

 そう、切嗣は思った。

 

 そしてこの様な完全に的外れな思考に至ったのは仕方のない事である。

 何しろ魔法を、しかも()()()()には存在しない魔法を使っているのだから、他の魔術師が聞けば卒倒するレベルだ。

 

「……アイリ、セイバーを────」

 

 ────呼んでくれ、と頼もうとして、切嗣は言葉を紡ぐのをやめた。

 

 英霊の存在を嫌悪し、相入れることは無いと思っていた自らのサーヴァント。

 それは事実だ。そしてこの聖杯戦争で何があろうとも、互いの思想や理想が交わることは無い。

 

 だが今更それに固執して、勝利を落とすというのであればそれこそ本末転倒だ。

 

 ましてや、既にセイバーとは何度か言葉を交わしてしまっている。 最早、無視を決め込む道理すらそこにはなかった。

 

「(私情を挟んで勝てるほど聖杯戦争は甘くはない……か。頭では理解していたというのに、僕もまだまだだな。) …ハハッ」

 

 自嘲めいた苦笑いを浮かべる切嗣にアイリスフィールは首をかしげる。

 

「切嗣?どうしたの?」

 

「いや、何でも。 ただ、漸く気づいたよ。 この聖杯戦争を勝ち抜くには、今の僕達の関係ではダメだという事がね」

 

 そう言われて、アイリスフィールはただ頷いた。

 経緯はどうであれ、切嗣とセイバーの間にある関係が良い方向に向かっているという事を、アイリスフィールは悟った。

 

 そしてその発端は間違いなく間桐雁夜とのやり取りだ。

 

 アイリスフィールは敵である筈の雁夜と彼のサーヴァントに感謝していた、切嗣とセイバーの確執を取り除いた事に。

 

「僕はセイバーを探してくる。 念話で呼ぶのもいいけど、今のアインツベルン城の状態を自分の目で把握しておきたいからね」

 

「そう。 あまり無理を────ッ?!」

 

 その時、轟音がアインツベルン城のある森に響き渡り、目眩がしたかのようにアイリスフィールは一瞬ふらついた。

 

「大丈夫かい、アイリ?」

 

「え、ええ。大丈夫。 少し不意を打たれたわ。 まさか、ここまで無茶なお客様をもてなすと思ってなかったから」

 

「すぐにセイバーを向かわせる。アイリはここに」

 

「ええ。 切嗣も気をつけて。さっきの音、このやり方は恐らく……」

 

「ライダー……だろうね」

 

 轟音と共に響き渡った雷鳴は間違いなく、一昨日の倉庫街で見せつけられた宝具『神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)』によるものである。

 

 結界が万全な状態であるのならいざ知らず、先日キャスターやケイネスらによって術式が引っかき回されたばかりで、まだ再調整の出来ていないタイミングであるが故に術式は更に滅茶苦茶になっていた。

 

「おぉい、騎士王! わざわざ出向いてやったぞぉ! さっさと顔を出さぬかぁ?!」

 

 既に正門を踏み越えたのか、ホールから堂々と呼びかけてくる大声は案の定、征服王イスカンダルのそれに違いなかった。

 

 間延びして聞こえる声はおおよそこれより戦闘に臨む者の語調とは思えない。まるで、久しぶりに古い友人にでも尋ねるかのような気の抜けた声。

 

「(ルール無用の聖杯戦争で、他の英霊を真名をバラしてスカウトしようとする輩だ………常識で考えるだけ無駄か)」

 

 理解しようとするのを半ば諦めつつ、おそらく先に向かったであろうセイバーに合流するように切嗣もその場へと向かう。

 

 視線の先、自身よりも早くに到着したセイバーは白銀の甲冑を実体化させ、戦闘態勢に入っているというのに、その場で呆然と立ち尽くしていた。

 

 遅れて到着した切嗣が見たのは、確かに声の主であるライダーの姿。

 

「城を構えていると聞いて来てみたが…何ともシケたところだのぅ、ん?」

 

「ライダー、貴様はここに何をしに来た?」

 

 気色ばんで呼びかけるセイバーではあったが、あまりに理解しがたい光景に眉を顰める。

 

「おいこら騎士王。今夜は当世風の格好(スーツ)はしとらんのか? 何だ、のっけからその無粋な戦支度は?」

 

 セイバーの甲冑姿を無粋と称したライダーの服装はウォッシュジーンズにTシャツ一枚。おおよそ、今から戦を始めるものの格好ではなかった。

 

 ライダーの巨躯の後ろにいるウェイバーもまた、判然としない微妙な表情でセイバーと切嗣を見ていた。

 その顔に“自分は早く帰りたい”と書いてある。 無理矢理連れてこられたのは火を見るよりも明らかだった。

 

 切嗣は嘗てのイスカンダル王が、侵略先の異文化に並々ならぬ興味を示し、率先してアジア風の衣装を纏っては側近達を辟易させたという逸話については知っている。 

 

 その姿や言動を鑑みても、セイバー以上にライダーと自身の相性は最悪だとそう思った。マスターを強引に連れ回すところや、その豪快さは切嗣の聖杯戦争に臨むスタイルを徹底して叩き壊すものだ。 それでは“魔術師殺し”も形無しだ。

 

 いや、現実逃避はやめてライダーの携えているモノを見よう。

 

 木製の樽。

 

 何処からどう見ても何の変哲も無い、ごくありふれたオーク製のワイン樽。筋骨逞しい腕でそれを軽々と小脇に抱えている様子は、もはや配達に来た酒屋の若大将といった風情である。

 

「もう一度問うぞライダー。 ここに何をしに来た?」

 

「見てわからんか? 一献交わしに来たに決まっておろうが。 ほれ、そんな場所に突っ立ってないで案内せい! どこぞ宴にあつらえ向きの庭園でもないのか?」

 

 全くもって図太い神経の持ち主である。

 

 セイバーは心底うんざりした様子で切嗣を見た。 切嗣自身、ライダーのようなタイプは苦手だった。 

 英霊と称される人間の中でも特にだ。 興味を持たれる前に『さっさと案内をしてしまおう』とセイバーにアイコンタクトを投げかける。

 

 アイコンタクトを投げかけられたセイバーは目を瞬かせた後、こくりと頷く。

 

「来い、征服王。貴様の“挑戦”。 受けて立つ」

 

 切嗣から一任された以上、セイバーがそれを断る道理がなかった。

 

「ふふん、その反応…解っておるようだな、騎士王」

 

「私も王、そして貴様も王だ。 それを弁えた上で酒を酌み交わすというのなら、それは一つしかない」

 

 自身も王で、相手も王であるのだから、それを断るのは臆したと思われても仕方のない事だからだ。 勿論それだけでは無い。

 

「応とも。 今宵は貴様の『王の器』をとことん問い質してやるから覚悟しろ」

 

 宴の場所として選ばれたのは、城の中庭にある花壇であった。

 

 昨夜の戦闘の傷跡もここには及んでおらず、一応はもてなしの面目も立つ場所である。 他の相応しい場などは先の激戦で目も当てられないような事になっていたりする。

 

 ライダーが持ち込んだ酒樽を真ん中に挟んで、二人のサーヴァントは差し向かいにどっかりとあぐらをかき、悠然たる居住まいで対峙している。

 下手にはウェイバーと、そして切嗣が並んで座り、共に先の読めない展開に気を揉みながら、一先ずは成り行きを見守ることに徹していた(尚ウェイバーは遠くにいるサーヴァント達だけでなく近くにいる切嗣にも胃を痛くしていた)。

 

「聖杯は、相応しき者の手に渡る定めにあるという。それを見定めるための儀式が、この冬木における闘争だというが……なにも見極めをつけるだけならば、血を流すには及ばない。 英霊同士、お互いの『格』に納得がいったなら、それで自ずと答えが出る」

 

 竹製の柄杓で樽のワインを一杯、一息で飲み干したライダーは静かな声で口火を切る。

 

 セイバーもまた、差し出された柄杓を手に取ると樽の中身を掬い、ライダーに勝るとも劣らない剛胆な呷りようで、それを見届けたライダーが「ほう」と愉しげに微笑する。

 

「それで、まずは私と『格』を競おうというわけか?ライダー」

 

「その通り。お互いに『王』を名乗って譲らぬとあっては捨て置けまい。いわばこれは『聖杯戦争』ならぬ『聖杯問答』……はたして騎士王と征服王、どちらがより、聖杯の王に相応しき器か?酒杯に問えばつまびらかになるというものよ」

 

 そこまで厳しく語ってから、ライダーは悪戯っぽい笑いに口を歪めて、白々しく小馬鹿にした口調でどこへともなく言い捨てた。

 

「ああ、そういえば我らの他にも一人ばかり、王を名乗る輩がいたな」

 

「戯れはそこまでにしておけ、雑種」

 

 ライダーの放言に応じるように、眩い黄金の光が一同の眼前に湧き起こる。 そしてその声音と輝きに見覚えのあるセイバーと切嗣は、ともに身体を硬くした。

 

「アーチャー、何故ここに……」

 

「いや、な。街の方で暇そうにしているこいつの姿を見かけたんで、誘うだけ誘っておいたのさ。 遅かったではないか、金ピカ。 まぁ余と違って歩行(かち)なのだから無理もないか」

 

「よもやこんな鬱陶しい場所を『王の宴』に選ぶとはな。それだけでも底が知れるというものだ。 我にわざわざ足を運ばせた非礼をどう詫びる?」

 

「まぁ固い事を言うでない。 ほれ、駆けつけ一杯」

 

 アーチャーの怒気を磊落に笑い飛ばしながら、ライダーはワインを汲んだ柄杓をアーチャーに差し出した。

 

 アーチャーはライダーの態度に激怒するかと思いきや、あっさりと柄杓を受けとり、何の躊躇もなく中身を飲み干す。

 

 アーチャーもまた、王の格を量る為の聖杯問答に参加している身なのだ。認めていないとはいえ、王を名乗る輩が出してきた酒を飲まないわけにもいかない。

 

「……なんだこの安酒は? こんな物で本当に英雄の格が量れるとでも思ったのか?」

 

 かの英霊は最も古き王。

 

 神秘の溢れた時代に生きた英雄王なのだ。 例え現世において、素晴らしい物だとしても、かの英霊が生きた時代ではとても高級とは呼べない代物になる。

 

 最も現世においても、今ライダーが持っている物は最高級とまではいかないが。

 

「そうかぁ? この土地の市場で仕入れたうちじゃあ、こいつはなかなかの逸品だと聞いたぞ」

 

 とはいえ、ライダーとしては十分に美味かった上、自分の気に入っている人物からの薦めとあって、食い下がった。

 

 それをアーチャーは鼻で笑って一蹴する。

 

「そう思うのは、お前達が本当の酒を知らぬからだ。 そも、王の宴に用意する酒を、雑種に選ばせるなど論外だ」

 

「すみませ~~~~ん! お待たせしました~~~~~!」

 

 現れた者の姿を見て、ライダーは待ちくたびれたとばかりに声を上げ、セイバーとウェイバーと切嗣は目を剥き、ギルガメッシュは目を細めた。

 

 そこは三月、間桐雁夜、チエの間桐運営にケイネス、ソラウ、ランサーのランサー運営が歩いて来ていた。

 

 何やら大荷物を全員抱えて(ケイネスは自分とソラウの分をランサーと月霊髄液に持たせていた)。

 

「おおっ、漸く来たか! それにランサーもとは!」

 

「どういう了見だ? よもや、この場に“王”たる者ではないのを呼び寄せるなど」

 

 ライダーを睨みつけるようにギルガメッシュはその紅蓮の双眸を細める。

 

 確かにここにはライダーとセイバーのマスター達はいる。

 だがそれはあくまでも同席せざるを得ない事情があるからだ。

 

 単独行動スキルを持つアーチャーと違い、セイバーとライダーはある程度近くにマスターという魔力補給線がいなければならない。

 

 だが今来た者達は違う。

 サーヴァントと共にマスターとその他は現れ、そのサーヴァント達は王を名乗ってはいない。

 

「な~に、『聖杯問答』をするのは我ら王ではあるが、民の声を聞くのも悪くないと思ってな? 我らと対峙してなお、堂々と臆せずに意見を述べられる者は此奴ら位のものだろう? あの時余みたいにマスターと共に戦場に現れたその気概は気に入っておってな」

 

「うわ~、貴方褒めまくりじゃん!」

 

「…………………」

 

 チエ達は大荷物を下ろす前に、チエ自身雁夜に自分の荷物を渡し、その場の地面に何か鞘を使って刻み始める。

 

「ここの城主は誰か?」

 

「何だ雑種? 遅れてきて図々しいな」

 

「英雄王様、遅れて誠に申し訳ございません。 宴と言うからには酒だけでなく、席やつまみなどをお持ちし、私がおもてなしをしようかとする所存でございます。 という訳でちょっとした物をご用意したいのですが、城主は────?」

 

「────僕から話を付けている。 続けてくれ」

 

「ではお構いなく────」

 

 雁夜がチエの方を向くとチエは頷くとチエが地面に刻んだ魔方陣が光瞬く間にテーブルが二台に、椅子が十足ほど()()()()出てきた。 テーブルと椅子がセットでマスター達とサーヴァント達の方に現れた。

 

 しかも器用にサーヴァント達の椅子は恐らく装備などを参考にしたデザインだった。

 そこにテーブルの上にはいろんな、古今東西のつまみなどが並ばれる。

 

「グワッハッハッハッハ! 気が利くのう! 宴会らしくなってきたぞぉ!」

 

 朗らかに笑い、ライダーに渡された柄杓を呷った後、毅然とした様子で告げた。

 

「サーヴァント、ランサー。 至らぬ身ではあるが、此度の『聖杯問答』に参加させていただく」

 

「サーヴァント、()()()()()()。 そちらと同じく」

 

 セイバーはこれから始まる『武力を使わない戦争』に突入する前に横目に視線を飛ばした。 そこはマスター達の集う卓。

 切嗣は相変わらず隙あらば殺すような視線と必要最低限の言葉を。

 これに乗りロード・エルメロイに身体を寄せる彼の連れで怖がっている(?)女性。

 これに喜びつつも切嗣を視線で牽制するロード・エルメロイ。

 “何故こうなった?! 胃が痛い! 帰りたい!”と死にそうな顔をしているライダーのマスター。

 持って来たつまみや飲み物をその少年にお勧めしようとする三月と名乗った少女。

 そしてその少年を温かい目で見る間桐雁夜。

 

 セイバーは生前は王であり当然交渉などの経験もある。 故に、分ってしまった。 その戦が誰に一番有利に進んでいるかが。

 

 今一、二を争っているのは自分のマスターの切嗣とランサーのマスター。

 これを見たセイバーは自分のマスターが頼もしく感じた。




作者:ついにここまで来た!

チエ:………

作者:長かった………

チエ:………

作者:え~と…

チエ:………

作者:し、死んでる?!

チエ:勝手に殺すな

作者:ウオ?!

三月:チーちゃん! カンペ! カンペ!

チエ:む、そうだったな。 “もし楽しんで頂けたら、是非お気に入りや感想、評価等あると嬉しいです! えへ!☆”………………これで良いか?

三月:バッチリデス! (ハァ、ハァ、ハァ

作者:ンンンン"ン"ン"ン"ン"!!! (両手サムズアップ

チエ:血が鼻から出ているぞ二人共。 どこで損傷した?
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