転生したら米国二冠ウマ娘だったけどコーチの依頼が無くて極東に行ったら名コーチになって教え子に囲まれてます(仮)   作:罠ビー

22 / 53
 お久しぶりです。いつも閲覧ありがとうございます。今回はサンデーさんの影が薄いです。いつも薄い?それはそう


想いの力

 1993年5月23日

 ティアラ路線二冠目のオークスは桜花賞と同じくベガが勝利した。一時は王道路線のダービーに出走するといったうわさが立ったが桜の女王として最終的にはオークスに出走を表明した。レースは先行の位置からベガが抜け出して残り1ハロンのところでユキノビジンをかわすとそのままゴールした。しかし最後の方ではベガがばてていたように思えた。形としては完勝なのだがレースコンディションやペースが違えばどういう結果かはわからないだろう。

 トニーは流石だよベガって超喜んでた。ただその一方でトゥインクルでもう一年は厳しいかなって言っていた。概ね私も同意見だ。トゥインクルシリーズの規格の勝負服は規定が厳しくて負荷が大きい。身体、ウマソウルの成長を促すものであり成熟した後だとかえって枷にしかならなかったりするし大きな怪我をした場合はそれを庇う機構の着用も制限される。そのためトゥインクルシリーズの所属はミホノブルボンのようにクラシックだけの場合もあればマックイーンのようにシニアを何年も走る場合もある。

 まあ今は二冠をたたえて、メジロラモーヌ以来のトリプルティアラをかけた秋で熱いレースを期待するとしよう。

 

 1993年5月30日

 今年のダービーはビワハヤヒデ、ウイニングチケット、ナリタタイシンの三強対決の様相を呈していた。世間ではBNWだとか新平成三強といった呼び名が浸透している。トニービンが指導していたウイニングチケット、トニービンと同じ年に来日して日本でサイアーになったリヴリア*1の生徒のナリタタイシン、アメリカで活躍したシャルード*2の生徒であるビワハヤヒデ。サイアーの目線で言えばURAのサイアー招致戦略の成果が表れてきているように思える。

 一方で彼女らを指導するトレーナーはベガとナリタタイシンとともに春のクラシックタイトル総なめを目指す新進気鋭の滝トレーナー、リギルの元トレーナーで東条トレーナーの師匠であるビワハヤヒデの刑部トレーナー、ベテランながらダービートレーナーの称号は得れていない井端 誠トレーナーといった新旧入り混じった形だ。特に井端トレーナーは取材の類を断る徹底ぶりだった。

 レースはインコースを終止走り4コーナーで後方からから抜け出したウイニングチケットが好位を追走していたビワハヤヒデより先んじて前に立ち先頭を走るアンバーライオンをかわして先頭に立つ。最後方から猛追するナリタタイシン、差し返そうとすがるビワハヤヒデを引き連れてウイニングチケットがダービーウマ娘の栄誉を手にした。三強が1着から3着を埋めるすばらしい決着だった。そう言えばウイニングチケットはタッチの姉貴なんだよな。なんか意外な感じだ。

 

 1993年6月1日

 タッチに姉のダービー制覇についておめでとうと言うと苦笑しながら受け取られた。なんでも家にいた頃からダービーダービーと五月蠅かったからこれで少し静かになりそうですとのこと。その割には尻尾が振られまくっているんだよなー。かわいい奴めと頭をくしゃくしゃするとダークやバブルに寄られていた。

 

 1993年6月3日

 スピカのトウカイテイオーの3度目の骨折が発表された。有馬記念は残念だったが昨年のジャパンカップで日本のウマ娘として、東国の帝王たる走りを見せていたために非常に残念である。宝塚記念への調整の最中という話だが⋯⋯トウカイテイオーはシニアクラスも2年目になる。実績も十分にあるしドリームシリーズに進むのが濃厚だろう。ドリームシリーズでの快走を期待したい。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 ジャパンカップ。あのレースの後、悔しいなりふがいないなりの気持ちがボクの中で渦巻いていた。臨戦過程や精神、身体のコンディション。もちろんアウェイなんだから万全とは言い難いけどそこらへんも含めてね。

 来日にともなってURAの人との約束なんかもあってそれなりに滞在の予定があったのだけれど、自分のふがいなさに観光なんて気分じゃあまりなくて。時間を持て余したボクは自然とトレセンに向かっていた。そこでたまたまジュニアの子たちが目に入った。ダービーダービーと騒いでるやけに元気なウマ娘に目がいっていた。

 ダービー。欧州だとやっぱりエプソムダービーは別格なのだが自国のダービーでも特別なものだ。ダービーイタリアーノでボクは4着だったかな。そうそう簡単に勝てるものじゃないと知っている。が同時にウマ娘がどうしても求めてしまうものだということも理解している。いたずらにその無謀なウマ娘の顔を見てやろうとしたとき、ボクは運命を感じた。ウイニングチケット。それが帰国後に漠然とプレミアリーグ*3を走ると思ってたボクを日本に留まらせたウマ娘の名前だった。⋯⋯まあボクが日本に留まるって話で故郷のトレセンとはひと悶着あったが、この出会いの前には些細な問題だったね。

 さて、今日はダービーだ。東京レース場に来るのはレース観戦であの頃よりは慣れたはずなんだけどね。あの頃とは違う緊張感がボクを支配している。あの子は猪突猛進で感受性が豊かで、そしてボクの知る限り最も今日のダービーに思い入れのある子だ。先週のベガのレース、クラシックの一冠目の皐月賞を見守るのも緊張しなかったわけでは無いけれど⋯⋯やはりダービーというものには魔力がある。そう思いながら関係者席の方に歩いて行く。声をかけに来てもいい、と井端先生には言われているけれど何となくそういう気は起きない。というかチトセ*4も出るんだからひいきするのは良くないしね。陣中見舞いも必要はないだろう。

 そう思いレース発走の時刻を待つ。続々と選ばれた18人が本馬場に入ってくる。皐月賞をとったナリタタイシン、注目株のビワハヤヒデ、同門のチトセ、そしてチケット。相も変わらず大きな声で観客席に手を振っている。そんなのいいよ集中しろよ⋯⋯そんな風に思うがその姿があの子らしくて笑みがこぼれる。

 

 ⋯⋯勝てよ。チケゾー。とれよ日本ダービー。

 

 そう思いこぶしを突き出す。はるか遠くレース場のチケットとこぶしがあったような気がした。

 

 

 

 

「ヴィンチェレ ジャポネーゼ ダービー?」

 

「おねーさんもダービーに興味あるの!!!!」

 

 あれはサクラチヨノオーさんがダービーを勝った年だった。知らないウマ娘のお姉さんによくわかんない外国語で話されたことは覚えている。ダービーだけ聞き取れたからそのおねーさんにいきなり迫ったんだった。そのおねーさんがアタシのセンセーになるトニーだと知ったのはその出会いからしばらくたってだった。

 トニーはイタリアのウマ娘で一流のウマ娘だったんだけどイタリアのダービーをとることはできなかったんだって。トニーほどのウマ娘でもダービーは取れないんだと驚いたとともにあこがれが強くなった。

 ジュニア期の終わりが近づきアタシをスカウトしたのが井端センセーだ。ベテラントレーナーでチームには二冠ウマ娘のミホシンザン先輩や地方から出てきたイナリワン先輩とドリームシリーズでも一線で戦っている選手も多くて名門の一つと言っていいチームだった。だけれどそのチームにもダービーウマ娘はいなくて井端センセーはダービートレーナーになれていなかった。

 

 

 ボクはダービーイタリアーノ取れていないんだよね

 

 俺もダービー取れてねえんだよなぁ。俺、ダービー取れたらトレーナーやめてもいいわ

 

 私が怪我をしていなければ、師匠の名を継ぐことができていれば。だからチケット⋯⋯

 

 あたしはローカル出だからわっかんねぇけどよぉ、イナリさんは応援すんぜ。おやっさんを勝たせてやってくれ

 

 

 いつの間にかあたしの夢はチームの夢に、みんなの夢になってた。だから負けるわけにいかないし負けたくない。そのために練習してきたし思ってきた。誰よりも今日勝ちたいと思っているのはアタシだ。そう思い拳を上に突き上げる。

 

 

 

「うおおおおお、トニー、井端センセー、ミホシンザン先輩、イナリ先輩。あたし勝ちます、ダービー。うおおおお」

 

 

*1
85年世代の米国ウマ娘。G1.3勝

*2
86年世代。G1勝ちは無し。

*3
欧州版ドリームシリーズ。ドリームトロフィーはチャンピオンズカップ

*4
サクラチトセオー




サンデー「トニー、ダービーサイアーおめでとう」
トニー「チケットがダービー勝ったよおおお。サンデーありがとおおおおおお」
サンデー「Shut Up。うるせええ」

 ウイニングチケットさん
 ダービーの娘。実は自称サンデー四天王の一人ロイヤルタッチと姉妹でありタッチいわく家でもうるさいらしい。……だからタッチ君はダーク達の尻拭いをするはめになるのでは?この後は史実だと大きな活躍はないけれどドリームシリーズがこの世界にはあるから活躍に期待。

 井端誠トレーナー
 ダービーに縁がなかったベテラントレーナー。刑部トレーナーのライバルと言われて、それに違わぬ指導力で名門チームを作りあげている。他に所属している代表的ウマ娘はイナリワンやミホシンザン。少し世代の古い人情の熱いタイプのオジさん。はぐれ刑事純情派の藤○ま○とさんのイメージ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。