転生したら米国二冠ウマ娘だったけどコーチの依頼が無くて極東に行ったら名コーチになって教え子に囲まれてます(仮) 作:罠ビー
今回はほとんど時間軸は進んでいません。93年夏のままです。一周年でウマ娘も大きく変わりましたね。とりあえずピスケス杯頑張るぞー
最初は少し時間軸が巻き戻ってます
1993年2月10日
あのデンジャラスカーめ。とんでもない荒療治をしやがって。あーでもこれでハッキリしたよ。あれだけコテンパンにされると腹が立つ。まだサンデーサイレンスの競技者としての心が死んではいない事だけはわかった。私⋯⋯オレは忘れていたようだ。こんなんじゃイージーに合わせる顔がねーぜ。それにこんな弱い俺のままじゃフジ達を失望させちまうかも知んねーしな。
1993年2月11日
マルゼンスキーは現役選手だから謹慎中もトレーニングをしている。その横で私もさび付いた身体に思い出させていく。身体だけがさび付いているわけでは無いのは重々承知しているがまずは身体の錆を落とさない事には次に繋がらない。謹慎期間中は身体のさび付きを落とすことに専念する。
1993年3月30日
もうすぐ謹慎明けだ。これまではマルゼンスキーの自主トレに付き合っていたが謹慎明け以降は東条トレーナーの指導のもとに戻るだろうしこれからのトレーニングについて考えないといけない。私一人でできないわけでもないが一回は客観的意見が欲しい。……ああ、アイツに頼む事にしよう。
1993年4月13日
沖野トレーナーに一度トレーニングを見て欲しいという依頼をした。以前テイオーとの関係で世話を焼いた件があったからその事を出せば快くうなづいてくれた。現在チーム唯一のドリームシリーズのプレイヤーのリンデンリリーや数名のマイナーシリーズのランナーと一緒に練習をした。沖野トレーナーから今のさび付いた自分の走りの中でも第三者の目で気になる点を指摘してもらうとともに今の私に合った自主トレのやり方まで教えてもらった。そこまでは期待していなかったのにありがたいことだ。
追記:午後練の時間の近くまで練習をしてしまい合流してきたトゥインクルシリーズの面々にはびっくりされてしまった。トウカイテイオーには若干警戒をされてメジロマックイーンには⋯⋯どこかの誰かと雰囲気が似ていたからつい口が滑ってしまいお嬢様とは思えない眼光ですごまれた。
1993年8月5日
夏合宿初日。サプライズ⋯⋯になっているか微妙に自信はないがサプライズレッスンは上手くいっただろう。ちょっと厳しいかもしれないが本物の走りを感じる事は勉強になると思う。⋯⋯胸を張って本物というにはやや錆ているとは感じるが技術や圧、雰囲気といったところを感じてくれたらいいと思う。
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「アーと、今から呼ぶ奴はチョッと残レ。フジ、ツヨシ、ジェニュ、マーベラス⋯⋯」
夏合宿最終日、姉さんが私を含む10数人に居残りを命じた。今年の合宿はダーク達が合宿ノートをつけるように言われたくらいで大きな変更は去年と無いように思っていた。相変わらず若干ガサツな姉さんの料理やユニークな浜辺や海での特訓といった感じで少し慣れた感じがしていた。唯一違う点としては合宿が始まってから最上級生が毎日10人ぐらいづつ居残りをするように言われていた点だ。そして3日目の今日、私の番が来たという事だろう。呼ばれた名前はこれからトゥインクルシリーズやその先もライバルになるだろうと思っているジェニュインやツヨシといった面々だ。
居残りを命じられた面々が姉さんに連れられてきたのは合宿所のターフコースだった。なるほど模擬レースかなと思っていればどうやら当たっているらしい。しかし姉さんにしては少し普通な練習のような気がする。
「このメンバーで模擬レースをすル。今から5分後に発走するから各自準備してクレ。スタンドスタートで2000mナ」
そう言うと姉さんは私達から1ハロンくらい離れて内柵に腰を掛けていた。⋯⋯近くで見ないんだと不思議に思ったが私達だけの空気にしたいのかもしれない。しかしゲートスタートではないのかと少し疑問に感じた。ゲートじゃない方がうれしいけどね。
姉さんが持ってきた時計が約束の時間に近づいてくる。すると時計と一緒に置かれたラジカセからファンファーレの音が聞こえた。なるほどこれが合図か。だいたいみんな時計を見て準備を始めていたがこの音で横一列に並びスタンディングスタートの恰好をとる。
ガコンッ
ラジカセからゲートが開く音がして一斉に走り出す。まずは先行争い。私達の中には積極的に逃げようとするタイプの娘はいないためゆっくりとした立ち上がりから追い出されるようにマーベラスが前の位置をとろうとしており、私はそれに任せ後方のツヨシやパートナーの出方を伺おうとしていた。おそらく隣を走るジェニュインも同じことを考えていたと思う。
ビリビリビリビリと背筋を何かが走った。直感がこのままではいけないと訴えかけるような気がした。少なくとも模擬レースでは今までに感じたことのない感覚が私の足を速めた。いつの間にかマーベラスの内側くらいまで上がって来ていて、最初のコーナーを利用して少し後ろの様子をうかがう。ツヨシたちから70m程後ろに長い青鹿毛を揺らした肉食獣のような形相をした姉さんが私たちを追走してきていた
今までは感じた事が無かった圧力に周りは自然とペースが上がっていっているように感じた。隣を走るジェニュインはいつの間にか半歩前を走っている。私は数年前のアメリカで姉さんのライバルと走った経験があったから比較的冷静でいられたと思う。
浮足立った状態のままレースはバックストレートを迎えていた。姉さんはパートナーやツヨシの2バシン後方、外側に陣取っていた。振り返れば目に入る、逆に姉さんからは私達の全てが見える位置に陣取って不気味に追走していた。
第三コーナーに入る頃にはパートナーやツヨシが段々とポジションを上げてくる。しかしそれはいつもよりも速いペースでの上りはじめだった。マーベラスは慣れない先頭を走らされながらもペースは崩していない。後方のウマ娘たちがポジションを落とさないように、外を回されないように、囲まれないようにと段々としかけ始める。
そして第4コーナー、速度の上がった隊列はやや膨らみながらコーナーを曲がろうとする。私もスパートをかけていたため少し膨らんでしまった。すると内側を、ラチを擦るかのように影が割り込んでくる。後ろのツヨシやパートナーかと一瞬思うけど二人は外にいたはず。姉さんも外にいたはずと考えながら直線を向く頃には私の4分の1バシンくらい前に姉さんの姿があった。すぐさま姉さんが通った内ラチ沿いに進路を取ろうとするけれどコーナーを曲がり切ったマーベラスが内に若干寄れてきており道が狭く断念する。外のジェニュインに進路をふさがれるのを嫌い若干外に進路を取りマーベラスの前に行く。若干アシの上がっていた姉さんを捕らえきれずにゴールする。いや、大人げないでしょ姉さん。
「ゼェ⋯⋯ハァ⋯⋯ゼェ。オレの勝ちダ。そして夏休みのオレからの宿題ダ。今のレースでの走りを振り返る事。どのタイミングで誰を意識してどう動こうとしたカ⋯⋯レースってのは思っている以上に考える事が多いからナ。レース中は勘でも構わねーガその勘を言葉にできた方が便利だからナ。それじゃダウンしてディナーにすんぜ」
レース後ラチに寄りかかりながら一番バテている姿でそう言っていた。サプライズでレースに参加した上に全力疾走して生徒よりバテている。威厳もへったくれもない姿だけれど本気の姉さんの姿が見られて嬉しかった。そして、たぶん私だけじゃないだろうけどその背中を、いつか追い抜いてやる。そう思った。
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7月24日
学校のキャンプで行ったキャンプ場で憧れの競争選手のマルゼンスキーさんに出会いました。マルゼンスキーさんと一緒に来ていた少し怖そうな人はサンデーサイレンスさんというらしいです。まるで他人のような気がしない人で、私にとっては初めての感覚でとても戸惑っちゃいました。トレセン学園でサイアー?という先生の一種をしているらしいです。サンデーさんが言うには私は今年からトレセン学園に通えるようだったのですが転入できないか学園の人に聞いてみるとのことでした。秋からトレセン学園に通えたらと思うとワクワクしてきます。
7月26日
帰ってからお母ちゃんに今年から通えたかもしれないこととサンデーさんの事を話しました。少し喧嘩みたいになっちゃいましたがすぐに仲直りしました。どうやら間違えた願書を持ってきちゃったらしいです。お母ちゃんは結構おっちょこちょいだなあ。
7月28日
サンデーさんが言うには私は再来年の春までトレセンに通えないという事でした。すごくがっかりしちゃいましたがサンデーさんから8月の前半頃に走りとかを教えに来てくれるとのことでした。トレセン学園でのトレーニングを経験できるみたいで今からとても楽しみです。
8月9日
サンデーさんと学園の職員のたづなさんという方が来てくれました。お母ちゃんがサンデーさんの姿に少し緊張しているように見えたけど⋯⋯。たづなさんとお母ちゃんがトレセン学園への編入について話をしているのを尻目に私とサンデーさんのトレーニングが始まりました。よーし、けっぱるべ。
サンデー「よろしくお願いシマス」
(スーツビシッ、目付きギラッ)
お母ちゃん(うわ……怖、マフィア?)