転生したら米国二冠ウマ娘だったけどコーチの依頼が無くて極東に行ったら名コーチになって教え子に囲まれてます(仮)   作:罠ビー

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 お疲れ様です。安田記念は素晴らしいレースでしたね。それとちょっと戻りますがダービー。残念な事故がありました。馬が生き物な以上仕方ないのですが。
 そこらへんに罠ビーが思うことは避けては通れないあの日の話の時にすると思います。


メイクデビュー

 

 1994年6月2日

 短期留学で話題になった滝トレーナーが私に話かけてきた。曰くまだ去就の決まっていなかったマーベラスについてのようだった。プライムなどのデビューが決まる中でまだ去就が決まっていない生徒たちは焦りも見えてきており、私もトレーナー室に赴いてまだ去就の決まっていない子の紹介とかを行っているときだった。マーベラス本人は特に焦っている様子はなかったけど。

 滝トレーナー曰くマーベラスをチームにスカウトしたいのだが、自分はこれから秋シーズンまでいないけれどスカウトして構わないだろうかといった感じの内容だった。今チームに入れればいいのでは?と聞いたがその間担当する樫本氏とマーベラスでは合わないだろう事、チーム入りしたタイミングでそれは時期が悪いだろう事を説明された。とりあえずこのことはマーベラスを交えて3人で話した方がいいと感じたのでアポを取ることにする。

 

 1994年6月4日

 マーベラスと滝トレーナー、そして私の3者による面談は滝トレーナーの申し出をマーベラスは了承した。マーベラスはまるで滝トレーナーからの打診が来ることが分かっていたかのようにいつも通りの様子でマーベラスと言っていた。若干末恐ろしいモノを感じたがそんなところもかわいいやつだ。

 それで終わりかと思っているとマーベラスは滝トレーナーに逆に要求を突き付けた。アタシもフランスに行っていい?したたかだと私が思っていると滝トレーナーは若干ギョッとした目で私を見てきた。⋯⋯入れ知恵なんかしてないぞ。マーベラスはキラキラした目で見てるし。

 追記:結局私が授業どうすんだというとわざとらしくアッと言ってから、若干折れて夏休みの間だけフランスに行くということになった。滝トレ押されてんじゃん⋯⋯

 

 1994年6月12日

 上半期のグランプリ、宝塚記念は天皇賞ウマ娘ビワハヤヒデの一強ムードだった。昨年のBNWはビワハヤヒデ以外休養中でそれより上の世代で対抗できそうなライスシャワーも天皇賞前の故障から復帰しておらずG1ウマ娘は他にはベガしか出場していなかった。3番人気にカノープスのナイスネイチャ、2番人気にビワハヤヒデと同級生の善戦ウマ娘のネーハイシーザー*1が続いていた。

 レースは終始好位置でレースを展開させたビワハヤヒデが4コーナー手前で先頭に立ち2着に来たアイルトンシンボリ*2に5バシン差をつけて圧勝した。

 本人も当然といった様子を見せておりインタビューも涼しい顔で受け答えていた。秋になれば妹のブライアンとの対決も実現するだろう。トウカイテイオーとメジロマックイーンが去った後のトゥインクルシリーズも盛り上がりそうで何よりである。

 

 1994年6月16日

 滝トレーナーのチームを一時的に預かるからと、各サイアー達に挨拶に回っているらしい樫本氏が私のもとを訪ねてきた。とても丁寧で律儀な印象を受けたが⋯⋯なるほど、これはマーベラスとは相性はよくないだろう。いうなれば堅物ともいわれる東条トレーナーに近く、規律に厳しい人という感じだ。滝トレーナーの所はダンスパートナーもいるはずだが⋯⋯アイツもいまいち相性はよくないだろう。この夏苦労するだろうな。

 まああのチームにはスーパークリークやバンブーメモリーといった先輩もいることだし心配はしていない。

 肝心の樫本氏との話はパートナーについてだった。これから一時的に担当するにあたり彼女の特徴などを聞きに来ていた。律儀な人だが帰り際の姿を見ていたら何もないところですっころんだりと若干心配になるところもあった。

 

 1994年7月9日

 今日、札幌でうちの生徒たちの中で一番最初にデビューすることになったプライムのレースがあった。生徒の初めてのレースということで不安もあったがプライムが刑部トレーナーのもとに行ってからも頑張っていることはメイクデビューが決まったことを報告にきてくれた刑部トレーナーよりうかがっていた。

 学年末レースだったりプライムのトレーニング内容であったりでもともとプライムは好成績をおさめていたし、刑部トレーナーのもとでちゃんとやっているのならメイクデビューは心配するほどではないのだが⋯⋯走る当人のプライムに顔を見せることが恥ずかしいくらいには緊張していた。

 レースは人気通りプライムが勝ち、お祝いに行ったら顔が変ににやけていたらしく刑部トレーナーに爆笑された。

 

 追記:嬉しいことは嬉しいがなんとなく感情の波が高すぎる気がすることが気がかりだ。自分の事のように⋯⋯と言ったら聞こえはいいが⋯⋯シンパシーによる共感なのだろうか?トニーやBTの奴が生徒の勝利に入れ込んでいる姿を目にするし、私も良く生徒自慢をしたし。ただ私の客観的な部分がそのことに疑問を投げかけてくる。めでたい日に書くことではないがこの感覚は記録に残した方がいいと感じた。

 

 1994年7月19日

 大方の生徒たちのトレーナーは決まったがなかなかトレーナーの決まらない生徒もいる。すでに有力なトレーナーはほとんど募集を打ち切っており、今担当を探しているのはもっぱら新人トレーナーやあまりうだつの上がらないトレーナーなどである。一方でそういう生徒を受け入れるトレーナーもいる。

 そんなトレーナーの一人である中ヶ瀬(ナカガセ)トレーナーに面倒を見てくれないかとお願いに行った。中ヶ瀬トレーナーは中堅に差し掛かってきたトレーナーで福島や新潟といったレース場を中心に活躍するトレーナーだ。花々しい活躍こそ少ないものの業界人での評判は良く南坂トレーナーなども彼を慕っている。

 そんな彼に生徒の一人、サンデーウェル*3の担当をお願いしに行った。当のサンデーウェル自体は口では嫌だと言っているが案外まんざらではない様子だ。⋯⋯サイアー業、けっこう苦労するな。

 

 1994年7月31日

 札幌ジュニアステークスにプライムとキタサンサイレンス*4が出場する。二人ともメイクデビューを勝ち重賞挑戦の権利を得ていた。生徒の初めての重賞挑戦で3週間前のメイクデビューのように私は緊張していた⋯⋯私なんかより本人の方が緊張するだろう。こんな姿見せたくねえなというのと合宿が近いからというのもあり今回は自宅で観戦しようとしていたらそんな私の気持ちを測ったかのようにトニーとBTの奴が突撃してきやがり、騒いでいたら隣室のマックイーンまで来てしまった。

 件の札幌ジュニアはプライムが勝利して生徒による重賞初制覇を達成した。面倒な奴らににやけ面を拝まれたと思うと若干遺憾だが仕方ない。それはそれとして3週間前に感じたことは多分間違いではないのだろう。以前は共感という言い方をしたが⋯⋯3大欲求、それとは違うが明確に生徒の勝利に快体験が紐づいてる気がする。⋯⋯この思考を広げることは危険かもしれない。私は皆の活躍が嬉しい。それで終わらせた方が間違いなく幸せな話だ。

 少し話題を反らす。マックイーンのドリームシリーズデビューが近いそうだ。京都のエクステンド戦。頑張ってほしい。

 

 1994年8月5日

 今日から夏合宿である。最上級生には今年も去年と同じサプライズを用意しているが今年は意図があり北海道で行うことにした。北海道は避暑地だしいつも海で行っている訓練とは違った効果も期待したい。

 北海道を選んだ理由の一つがスぺの存在だ。まだ正式に入学はしていないものの彼女の話はハヤカワまで知るところだし、編入後は私が面倒を見るし実質生徒みたいなものだろう。すでに一部の生徒とは仲もいいし来年以降も問題なく馴染めるだろう。その一歩としてこの夏合宿には参加して欲しかったし。

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

「重賞勝利おめでとうと言っておくわプライム」

 

「ありがとうパートナー。私、貴女は友達ですが敗けたく無いですもの」

 

「私からもおめでとうと言っておこうかなプライム」

 

 

 メイクデビューも始まり少し緊張感の上がってきた教室で姉さんに師事した2人が話していたので声をかける。私の声かけに気づいたのか顔をこちらに向けるとプライムは若干呆れたようにかえしてくる。

 

 

「目が笑っていませんわよフジ。エンターテイナーが聞いて呆れますわ」

 

「それは失敬。自覚が足りなかったかな」

 

 

 プライムの勝利は喜ばしいが姉さんの初めてを持っていったのは事実だしね。純粋に先を越された感覚があってね。

 

 

「ところでフジ、あんた東条トレーナーの所よね。指導とか厳しいんじゃない」

 

「それをいうなら君だって今こってり絞られてるって聞いたよパートナー」

 

「ぐぐぐ……あの優男、アタシを嵌めたのよ。あんな規律女が来るなんて聞いてないわよ」

 

「プライムはどうだい?」

 

「まあ楽しんでいますわ。チームメイトもどことなく雰囲気が近い子も多くてやりやすいですわ」

 

 

 パートナーが私をチャカそうとしてくるけどそれ自分にも刺さるよね。私はおハナさんとは良好だし、何よりチームメイトがチームメイトだからね。ドリームトロフィー優勝者が2人、ドリームシリーズ確定級が一人。一つ上のアマゾンもドリームシリーズに進むだろう。そうなると注目度も高いし……自分がこのチームで頑張らなければならないって圧がある。

 ジェニュインやツヨシが私をライバル視しているのは知っている。だから私はこの世代の王者として、姉さんの一番弟子として、エンターテイナーとして、リギルのメンバーとして強い姿を見せなければいけない。

 

 

「そういえばマーベラスも滝トレーナーの指導受けるらしいよ。知ってたパートナー?」

 

「初耳なんだけど」

 

 

 

*1
マルゼンスキー系サクラトウコウ産駒。この時点で産経大阪杯勝ち

*2
シンボリルドルフ産駒。ステイヤーズステークス2勝の名ステイヤー

*3
史実セントライト記念勝ち

*4
実は6月デビューだけど黙っとけばばれへんか




 滝トレーナー
 今後何度もサンデーさんの生徒を預かる事になる現時点では若手のホープ。多少要素がアニメのトレーナーに吸われるがそれでもまだ抜けた実績を残すだろうあたりヤバさの塊である。この年は海外遠征でしれっと描いてはいないがこの話の裏でキングジョージ2着とかやっている。

 中ヶ瀬トレーナー
 今回初登場。ローカルがローカルシリーズを意図しそうでローカルという言葉を使えなかったローカルの王がモデル。アマさんとターボが抜ける為史実より少し寂しいメンバーになってしまう。南坂さんは割りと近しいグループ
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