転生したら米国二冠ウマ娘だったけどコーチの依頼が無くて極東に行ったら名コーチになって教え子に囲まれてます(仮)   作:罠ビー

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 お疲れさまです。お待たせしました。
 登場人物紹介を95年度版に更新してます。
 更新も遅いし展開も遅い……95年が分厚すぎるのが悪いんじゃ(責任転嫁)


春の嵐

 軽く混乱をしていた。心が引き裂かれそうになりながらサイアー室に行けば今はつかの間の春休みだし土曜日だって事を忘れていた。ならば用はないとばかりにサイアー室から出て宛も無く足を動かしていればその足は東条トレーナーのもとへ向かっていた。

 東条トレーナーは私を見やれば2,3言交わせた後にフジと二人きりにさせてくれた。フジは屈腱炎という事で要安静ではあるが骨折のようにベッドの上にいなければ行けないという様子は無い。

 だからこそ余計に辛いだろう。ベッドの上ならまだ諦めもつきやすいが痛みはあれどこう動ける分気持ちの整理はつきづらい。無理に走ろうとして悪化させる事は往々にしてあるらしい。

 

 コースの端でそれでも出来る事をと練習するウマ娘達を眺めているフジの姿を見つけると努めて冷静に普段通りに声をかけようとした。上手くいっていたかはわからない。よぉと軽く声をかけて隣に座る。そしてただ待つ事にする。

 

 

「姉さん。私はどうすればいいのかな。……何となく宙ぶらりんなんだ。期待されてたのは知っていたし答えられるとも思っていた。それをこんな形で裏切って。続いて行くと思っていた道が突然無くなったんだ」

 

「⋯⋯オレも眼の前で道がなくなった覚えがある。オマエと会った時のオレだ。道がなくなってふてくされてたオレにまたRaceと関わるChanceをくれたのはオマエだフジキセキ。結局オレもそこから引き揚げてもらった側だから偉そうな事は言えネエ。」

 

 

 姉貴分としてふがいない。悩めるコイツに私は道の一つも示してやれない。そして私自身がコイツに救われたことを思い出す。私はあの時ステイツの片隅で自棄になっていた私に憧れたコイツに光を見出したんだ。この輝石の輝きに。

 

 

「だからオマエを導く光はきっと現れる。無責任な発言なのは理解してるが、俺のキモチとしてはいくら回り道をしても道は続いていくんだぜ。とりあえずは同期の奴らの光を見てみるのがいいんじゃねえか。お前という光を追ってきていた別の光をヨ」

 

 

 情けねえな。そう思いながらフジの隣で空を見上げた。空は広く青く、迷子の私たちに道を示してくれることはなかった。

 

 

 

 1995年3月27日

 ようやく気持ちに少し余裕ができた。

 クラシックが気になるところだが今日は新しい発表があった。それは昨年好評を博した香港特別招待競走と同じような新しい大会の開催通告だった。

 80年代に本格的にレースを始めたUAEのドバイでダートの世界一決定戦、ドバイワールドカップの開催発表とドリームシリーズ級のドバイトーナメントの開催発表だった。ドバイワールドカップはナド・アルシバレース場のダート2000mで行われ、ドバイトーナメントも同じ条件で行われるらしい。ただダートはステイツのほぼ一強だろうしどれくらい盛り上がるだろうか。どれくらいのウマ娘が来るだろうか。

 

 1995年4月5日

 今年も新しい生徒達がやってきた。その中で気になるのが居たがそれは本当に私の勘違いではないのか、少し触れ合ってから考えたい。

 それはそれとして学期が開けてしまったがダーク達を送り出す会を行った。学年末レースではダークとエアグルーヴの激走やバブルとタッチの対決でタッチが一矢報いたりと爪痕を残しており、今年も何人かが既にトレーナーからスカウトを受けている。

 一番早くスカウトを受けたのは意外にもイシノで早くから彼女にアプローチしていた若手の志比(しひ)トレーナーが担当に決まった。ダークは姉と同じく滝トレーナーのもとに、バブルは刑部トレーナーがスカウトをしてもうチームに合流している。タッチはスカウトの話は来ているがどのチームに所属するか決めあぐねているようだ。

 

 1995年4月7日

 ナリタブライアン故障。春のクラシック直前に報じられたその一大ニュースは瞬く間に列島を駆け巡った。天皇賞を目標に調整していた中での股関節炎の発症のようだった。先日クラシック最有力のフジキセキが離脱しシニア最有力のナリタブライアンも離脱である。そして二人とも東条トレーナーのリギルである。東条トレーナーの心情を慮ると苦しいものがある。

 東条トレーナーの育成手腕やトレーニングを疑問視する論調もあるが好き勝手言える立場はいいよな。それくらい二人に対する期待感が高かったことの裏返しだとは思うが。クラシックにシニア共に一強構図から混戦模様に直前で変わった。まさに激動の一年になるのかもしれない。

 

 1995年4月9日

 初めて自分の生徒たちが参加するクラシックの開幕戦、桜花賞の日だ。いざクラシックが始まると楽しみが勝ってしまう。当然生徒はフジの他にもいるのだからそう思わないとさすがに不義理だし楽しめる精神状態であることに安堵する。当然私も現地で、パートナーやプライムの応援グッズを持ち全力応援の構えだ。

 事前の人気はローカルのカサマツからの挑戦者ライデンリーダー*1が一番であった。ローカルシリーズ無傷の10連勝を決めてそのまま中央の報知杯をかっさらっていた新たなるシンデレラガールに、ファンは昨年のシンデレラガールとそしてその姉である葦毛の怪物の影を見ていた。対する中央のエリート、それこそ注目度抜群の名家の生まれで海外サイアーの師事を受け、トレーナーも滝や刑部という名門のパートナーにプライム。こんなストーリーラインで受けない訳がない。そもそも今年ライデンリーダーが桜花賞に出走できているのはローカル所属のままクラシックに出れる規約改定とクラシック登録をトレーナーがしていたためであり規約の壁に敗れたオグリキャップのリベンジという側面もある。ティアラ路線であるがその注目度は非常に高いレースだ。

 レースは逃げを選択したウマ娘がポンと飛び出して行き、半マイル46.4秒のペースで飛ばす中、注目のライデンリーダーやプライムはバ群中団に構え、いつも通りパートナーは後方という注目ウマ娘は後ろよりに固まるという展開だった。

 そんな中注目ウマ娘達と同じポジションにいたが、やや影の薄かった大外枠ワンダーパヒューム*2がバテ始めた前方と距離を詰めて少しポジションを上げた。この場面が勝負を分けたのだろう。直線を向く頃には上がり最速で追撃するパートナーや35秒後半で追い上げるプライムやライデンリーダーを35秒後半の足で凌ぎきったワンダーパヒュームが桜の冠を手にした。

 中央のエリート対ローカルの雑草という構図は伏兵の激走に崩れたのだった。まあワンダーパヒュームも桜花賞の権利を勝ち取っている以上はエリートなのだが。

 

 追記:個別に労うとパートナーはいつもの勝気な様子を隠さず歯を食いしばり悔しそうに、わんわん泣いていた。一方のプライムは涙を見せないように、しかし声は震わせながら私を迎えてくれた。そんな彼女たちがが愛おしく、誇りに思い、それでいて悔しさが伝播してきたような思いを持ち、気が付いたら強く強く抱きしめていた。 

 

 1995年4月11日

 さてそろそろ今年新たに私が担当することになった生徒たちの話をしよう。まずは編入組のスぺだが、今まで何度か合宿に招待などもしており思ったより早く馴染んでいた。今年から最上級生のスズカやリョテイ達との関係はもちろん、下級生でもスティンガー達4人娘に可愛がられていたりとこちらも良好そうである。

 新入生ではまず癖が強かったのはエアシャカールだ。強いはねっ返り気質に独自の理論を持っているタイプであり非常に、年齢離れして聡明である。手描きのノートでデータを取ったり、私がB組以降でやるようなことをこの時点でやっていたりと、コミュニケーションの取り方を考えなければならないなと感じた。しかしアヤベのような危うさは感じない。

 そんなエアシャカールをライバル視するのは名家アグネス家の麗人アグネスフライトだった。まだ幼いが一族を背負うといった気負いを感じるがコミュニケーション力も高くこの世代の中心になるような気がしている。

 そして一人……というか触れなきゃならない娘たちがいる。それがダイタクリーヴァ*3を中心としたシンパシーが少し遠い、おそらく私がベストサイアーではない娘達の存在だ。彼女達もシンパシーは感じるので別に愛おしくないわけではないのだがそれでも何か少し違う感覚がある。そして彼女達のベストが誰か、わかるような気はするが解りたくない、そんな事を思いながら接するのは誠実さに欠けているだろうか?

 

 

*1
ボールドルーラー系ワカオライデン産駒。本文参照

*2
ヌレイエフ系フォティティン産駒。悲運の桜花賞馬

*3
フ※※※※産駒。後の重賞複数勝利ウマ娘




 95年、おつらい、おつらくない?実際フジキセキとブライアンが連続で離脱した時の空気感とかどうだったんだろうか?ハヤヒデも引退してるし……
 ダイタクリーヴァ登場で締めたかった。次回は皐月賞から天皇賞くらいまでの予定。天皇賞……宝塚……

 ドバイワールドカップ
 第一回ドバイワールドカップは96年なのでこの年に開催告知。香港と同じようにドリーム級のレースもないと不自然だからこの世界線では新設。着々と国際交流の準備が整っている。

 エアシャカール君
 ロジカルさん。それはこの時空この時点でも遺憾なく発揮されている設定。しかしパソコンはまだない。窓95がこの年の秋に上陸するからガジェット要素はそこから。
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