転生したら米国二冠ウマ娘だったけどコーチの依頼が無くて極東に行ったら名コーチになって教え子に囲まれてます(仮) 作:罠ビー
皐月賞のみ短めですが読了感重視でこれで止めました。
平素よりありがとうございました。来年もよろしくお願いします。
※今話は短編としてpixivにも投下しました
皐月賞。
ついに私達の一生に一度のクラシックが幕を開けようとしていた。昨年は三冠ウマ娘も誕生し今年のクラシック戦線にも期待が高まっており、私はその初戦であるこのレースでありがたい事に私は3番人気に支持してもらっている。
欺瞞だ……。そのような事は当然私も、私自身がわかっている。本来なら私の人気はもう一つ、もう二つ下でもおかしくはなかったのだ。
フジキセキ。彼女は私達の中でもより一層の強い輝きを放っていた。スラリとした体躯、濡れたような深い青鹿毛の髪、自信を持った堂々たる振る舞い、エンターテイナーを自負する精神性。その全てが彼女という輝きをより強く見せていた。
年上の兄のようなリーダーシップに、一人大人の階段を先に登っているような彼女はまだデビュー前のポニーであった私達には眩しすぎた。
私達を導いてすらいたその光りが、クラシックの直前で消えた。まるで魔法使いの魔法が解かれたように、大人になる時間だと諭されたように。
私達はフジを強く意識していた。でもそれではだめなのだ。目標や憧れは自分で見つけて自分の足で立たないといけないんだ。遅まきながらフジの怪我で私達は自分の光りで足元を見ることができたのだ。
私はエンターテイナーの居なくなった舞台でようやく自分が舞台で何を成したいのかを考える事ができた。フジに勝ちたいじゃない、私は勝って私が
「随分と気が張っているね。そんな君を見るのは初めてかな」
「それは貴女もじゃない?ツヨシ。⋯⋯覚悟を決めたような、そんな目をしてるわ」
地下バ道で話しかけてきたのはツヨシだ。本格化の遅いだろうマーベラスやフィリーであるパートナーとは違う、今年フジと闘う、比べられる立場でフジと同じく先生のもとで3年間一緒に研鑽を積んだ同志とも言える友人だ。その友人はいままでより一歩進んだような眼をしていて、多分きっと私もそんな少し擦れた眼をしているのだろう。
「⋯⋯腹を括るしかないよ。もう甘えてられないみたいだから。」
「ええ、私達の
本バ場入場。身に纏った勝負服は来ているよりは着せられてる感が強い。そもそもほとんどがG1未経験のウマ娘達だ。いままでと比べ物にならない万雷の、地鳴りのような歓声が私達の心をかき乱す。
ゲート前になればこの熱に浮かされている若ウマ娘達ばかりだ。思考を何かが塗りつぶす。バツンとゲートが開き視界にターフが広がっていく……
◆◆◆◆◆◆
1995年4月17日
三冠路線の初戦、皐月賞が昨日あった。昨日は幸福感が勝り回顧などをしてる余裕が無かったが1日経って落ち着いてきたので書いていこうと思う。
フジが直前で怪我、朝日杯をフジと競ったスキーキャプテンは留学生のため参戦資格がない。たんぱ杯*1でツヨシに負けたが共同通信杯でやり返し、スプリングSを勝ったナリタキングオーは前日に出走を取り消しており人気は宙ぶらりんになっていた。それを表すように天候は曇天でありコース状態は稍重であった。
その人気が流れたのは毎日杯勝ちのダイタクテイオー*2、差のない2番人気に弥生賞2着のホッカイルソーという形でOP特別から参戦のジェニュは3番人気。たんぱ杯勝ちのツヨシは若葉Sでジェニュに敗れ5着に沈んだ事から評価を落として4番人気だった。
ターフの中はフジという絶対が抜けた故の混沌とした様相だった。各々が『フジキセキに勝つ』プランを建ててここまで来たのだろう。そしてそれは私達観客もそうだ。
ゲートが開くとツヨシはいつも通り後ろに下げていく自分のレースに徹して、ジェニュは3枠の中枠からポンと飛び出すと積極的にポジションを取りに行った。ホッカイルソーは中盤より後方、一番人気のダイタクテイオーはジェニュの外をキープしている。
ハナをマイネルブリッジ*3が主張をしているがこのレースを支配している困惑はレースのペースに現れていた。上位人気が好位につけているからか、それでも彼女らが前を主張しないからなのか、重力のように重くゆっくりとしたバ郡は小さい集団となって進んでいく。
1000mは61秒0とインターミドルにおいては遅いペースで展開したレースは第3コーナーから第4コーナーにかけても大きく展開が動くことはなく、中団にいた外枠のウマ娘*4が並びかけてきて4人が横並びになり直線へと入っていく。
中山のコーナーはきつく外はそれだけ不利を被る。外に広がっていた二人は直線を向いた頃には1バシン2バシンと離されていく。内では直線を向き足の上がったマイネルブリッジをジェニュが突き放していく。外からホッカイルソーは追い上げてくるがジェニュには届かない足色だ。
そこで突っ込んで来たのはツヨシだった。後方でレースを続けたツヨシは重いバグンの中比較的内側でレースを続けておりロスがなく、それでも詰まる危険性のあるばくちを通して直線を最速で駆け上がってきた。
最終局面、ゴール板で最後の天秤はジェニュの方に傾いた。着差はクビ差。その死闘を演じたのは私の愛しい生徒の二人だ。
フジがいたら結果は違うだろう。フジ程の影響力を持つ子が今回のレースにいたら展開も結果も変わらないはずがない。しかしこのレースは二人が、出走にこぎつけた16人が演じたレースだった。それ以上の言葉は無粋であろう。
私は二人の頑張りに胸を焦がされる。本当に皆孝行娘達だ。
◆◆◆◆◆◆
最終直線。中山レース場の急坂が壁のように襲い掛かる。内側を走っていたマイネルブリッジさんを突き放し、外にいたダイタクテイオーさんはいつの間にか視界から消えていた。視界には誰も映らない一人ぼっちの先頭の景色だ。
3歩くらい足を進めるとズシリと足が重くなる。1800mを走ったから足が上がり気味なのか、レース状態が稍重だから予想より足を取られているのか、この中山の急坂で速度が落ちているのか。それとも
――ワアアアアア
このスタンド前の大歓声に応えるという重圧が足を重くさせている錯覚を生み出しているのかしら。酸素の廻らない頭では判別がつかない。【本物】になるということはこんなにも苦しいのか。フジなら、きっと涼しい顔で登っていくんだろうなあ。幻影が私のクビ先にいるような感覚を
勝つのはアタシだあああああ
後方から急速に迫ってくる威圧感が振り払う。思わずチラリと後ろを振り返りそうになるが思いとどまる。そんな隙を晒してはいけない。私の思う相手が追ってくるならその隙は致命的だ。
坂を登りきるころ私の横には思う相手、ツヨシの顔が迫って来ていた。それはとても頼もしくて、一人ではないと感じさせてくれて、それと同時に負けたくないと強く望んだ。ゴール版を駆け抜けた時は私はツヨシに勝っていたのか正直わからなかった。
走り抜けた先から戻っていくと歓声が私を受け入れていた。ツヨシが、レースを走った全員が私を称えるように手をたたいている。勝者は私なんだ。
「おめでとう、ジェニュイン」
「ありがとう、ツヨシ。ねえ」
私は【本物】に、なれたかしら。なれるかしら。
「君は紛うことない本物だよ。おめでとう、
天皇賞再注目ウマ娘、2連勝中のエアダブリン特集
復活なるか、菊花賞ウマ娘ライスシャワー
ヒーローに……なるよ、ライスは
NEXT天皇賞(春)〜
ジェニュイン、タヤスツヨシ、フジキセキ
罠ビーの考える関係性。この3人だとフジキセキに対するコンプレックスはあるだろうと思う。フジキセキが前を走ってるだろう。本物になり、強くなりエンターテイナーに肩を並べる為に。
ジェニュインの馬名の意味は、本物の〜、正真正銘の〜という意味であるため何者でもないウマ娘がエンターテイナーに感化され何者かになっていく。そういうストーリーライン
変幻自在の撃墜王は秋まで待たれよ。春シーズンはこの3人と、淀のヒーローの話中心。