転生したら米国二冠ウマ娘だったけどコーチの依頼が無くて極東に行ったら名コーチになって教え子に囲まれてます(仮) 作:罠ビー
今回はちょっと箸休め的な話で短めです。
ちょっと表現がセンシティブ寄りかもしれません。イメージは損なってないと思います。
1995年6月6日
ライスシャワーは無事に意識を取り戻したという一報が入った。派手な転倒だったが充分に減速してからの転倒だった事や衝撃を平行方向に逃していたこと、ラチ等への衝突が無かったことが不幸中の幸いである。しかし立ち上がったり再び走り出そうと救護班ウマ娘相手に暴れたことなどから復帰は通常より長くかかるだろう。できればドリームシリーズの舞台でも活躍してほしいところだ。
宝塚記念関係では転倒の不利をもろに受けたナリタタイシンが急制動で屈腱炎の具合を悪化させたことからトゥインクルシリーズシリーズ引退を発表。こちらもドリームシリーズに進むだろう。
優勝したダンツシアトルも屈腱炎を再発。トゥインクルシリーズの歴史に、レコードという素晴らしい記録とともに蹄跡を残した彼女もドリームシリーズへのチケットを掴み、無理なく次に備えるようだ。
スター不在のトゥインクルシリーズを支えた選手たちが続々と引退を発表した形になる。それでも日々は続いていく。これをチャンスととらえる子達には頑張ってもらいたい。
1995年6月15日
マルゼンスキーが私にダートの走り方を教えて欲しいと持ちかけてきた。ジャパンのサンドを走るなら他にいくらでも候補が居るだろう。砂はあまり走った事が無いから解らないと突っ返そうとすると土の走り方よと言われた。
今日本に居るウマ娘で土の経験値がある中で一番強いサンデーちゃんに……とまで言われてしまえば受けないという選択肢は無い。
ただ日本だと土のコースが無いんだよなぁ。ウッドチップは反発が高すぎるし、砂は足取りが悪すぎる。は?飛行機のチケットはある?⋯⋯スーパーレースのチケットもある?
1995年6月19日
⋯⋯結局引き受けてしまった。それにしてもどういう風の吹き回しだろうか。いや、いままでアイツほどの才能が日本に留まり続けていたことの方が奇跡だろうか。さて問題は練習場などの工面なのだが⋯⋯アイツは何処から工面したんだ?まあ7月頭から休むことを通達しておかないとな。
1995年6月26日
パートナーがなんとフランスに挑戦するという。少し唖然としたが結構型破りなお嬢様であった。いわく「あのエンターテイナー様にはむかつくわ。それにその光を追い続けるクラシック路線の奴らにも。お姉さんもです。私の姿を刻み付けてあげるわ!!」とのこと。まったく誰に似たのやら。
1995年7月1日
およそ5年ぶりのアメリカ行きだ。次に土を踏むのは完全にオレを捨てた奴らに恥をかかせてからと思っていたが⋯⋯思ったより早い帰郷になったな思う。だったら断ればよかったのだが、なんでこのチケットを掴んじまったのかな。
マルゼンスキーの伝手は驚いたが、まあ納得はできるラインではある。
追記:よりによってお前もいるのかよ
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「ハローサンデー。ホームシックには早いんじゃなくて?」
「ハア!!スーパーレースで惨敗するお嬢様の吠え面を拝みに来ただけだぜ」
フロリダトレセン。今はスーパーレースに向けて調整してる子達ばかりね。普通部外者の私達なんかがこの練習場の近くに来れるはずはないんだけど、隣にいる彼女は一声で私たちの同行を許させちゃうんだもの。ほんとにかっこよくなっちゃてお姉さん妬けちゃうわよ。
「それで、今更私が恋しくなったなんておセンチな事は言わないわよね」
「もちろんだともマルゼン。君の方こそ急に熱烈な視線を寄こすじゃないか」
「そりゃ、こんなダンスの誘いに熱くならなかったらプレイヤーじゃないわ。それに私はずっと貴女にお熱なのよ、シアトル」
シアトルスルー。史上初の無敗のアメリカ三冠ウマ娘で、私のアメリカ時代の顔なじみ。有り体に言えばライバル⋯⋯ではないわね。どちらかと言えばトニーちゃんとブレーヴさんに近い関係ね。同じ年、同じ地域に生まれたものとして挑まないと気が済まない。
まあこのチケットは渡りに船だけれどシアトル自身の考えはうかがい知れないわ。でもそんなもの関係ないじゃない。私のキャリアももう折り返してるもの。こんな熱いお誘いに乗らないのはもったいない。
「当然貴女は
「まあね。すでに招待状は貰ってるんだ」
ダートの世界一を決めるってお題目ならシアトルに招待が無いはずがないものね。納得だわ。ならお姉さんはその舞台への挑戦権を取らなきゃね。もう話は終わったという感じでシアトルは調整に戻っていったわ。私はその後姿を消えるまで見ていた。
「なんてまるで初恋の少女みたいね。やめやめ。ほらサンデーちゃん、遊んでないでお仕事お仕事。しっかり頼むわよ」
「ケッ。てめえオレの事体の良いバリアかなんかだと思ってんだろ。Sly like a fox.」
らしくない考えを振り払うようにいまだにイージーちゃんといちゃついているサンデーちゃんに腕を絡める。イージーちゃんにウインクをするとサンデーちゃんを引き寄せながら遠巻きに私達を観察するウマ娘やトレーナーの目をけん制する。
「あら?いい女でしょ」
「色ボケの間違いだろ。あんなメスの面して」
そんな軽口を言い合いながらシアトルに案内されたコースに出る。日本の砂と違い固く芝に近い感覚がある。足の跳ね返りもいい。トロットで軽く走ると想像よりも推進力が出る。
「こんなに弾んだかしら」
「テメエがデカくなったから反発もデカいんだろ。正直レース場によって土の成分が違う。ここは粘土質が多いが砂が混合しているコースもある。だからナドアルシバがこの感覚の保証はねえよ」
軽くサンデーちゃんと確認をしあいながらキャンター、ギャロップと負荷を上げていく。足下のグリップは日本のダートに比べればしっかりと効くし足抜けも良い。芝と同じとまではいかないまでも多少荒れた芝、例えば昔の冬枯れの芝なんかに近い。
これなら十分に走れる。十分、勝負できる。だから
「ねえサンデーちゃん。この前のリベンジとかしたくないかしら。全盛期とはいかなくても勘は戻ってきたんじゃない?」
「乗った。と言いたいが全盛期じゃないオレを此処で晒したくはないな」
いけずね。それにしても
「サンデーちゃんも恋する乙女じゃない」
「うっせ」
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1995年7月4日
現地で見るスーパーレースは流石に圧巻だった。私が現地で見てた頃は余裕がなかったからか思い出がないのだが、今そのオーディエンスや関係者の熱気に充てられると圧倒される。
そこは自由の国らしい様々な人種や階級の民衆やウマ娘が、皆等しくパドックパフォーマンスやレースでの選手たちの一挙手一投足に注目し、応援している選手や陣営の結果に一喜一憂する。そしてライブになればエンターテイメントの形はハリウッドやブロードウェイといった色に姿を変える。
正しく熱狂という表現が当てはまるだろう。夢も自由も羨望も嫉妬も金も野望も悪徳も理想も。その凡てをひっくるめて回っている。レースという熱狂の、その集大成。極上のEcstasyだ。
オレ達はその熱狂の
⋯⋯酔っているナ。ああ、酔っている。
ガルフストリームパークの最終直線。お嬢様がシアトルスルーに追いつけずフォアゴーに置き去りにされる姿はオレの中のSadismを刺激するとともにオレ以外に置き去りにされている事実に腑が煮えくりそうになる。頬に添えた手が筋肉の震えを伝えてくる。
今、私はとてもいい顔をしている事だろう。
「おハナさん。私今回ダートで出るわね」
「マルゼンお前も……いや、好きにしなさい。」
「めんごめんご。でもおハナさんにとっても良いことじゃない。なんせ、狙ってるんでしょ?」
マルゼン姉さん
出番多くない?とお思いでしょう。なんか絡ませやすいんだもん。スター選手でアメリカ産まれ、お茶目で面倒見も良くフッ軽でも問題ない。まあ実際日本に居るのがオーパーツな血統だし。
それはそれとしておハナさんの胃は死ぬ。アマさんが一番優等生ってどういう事だよ
シアトルスルー
米国の誇る大スター。マルゼン姉さんと同期の無敗アメリカ三冠ウマ娘であり第一回ドバイトーナメントのボス。サイアーとしても大変優秀で日本にも生徒が留学して来ている。
ちなみに血統的には父父は素晴らしいが父は種付け料がやすく母方も地味目な血統。外向脚で見栄えが悪く『醜いアヒルの子』
なんか聞き覚えがありますねー。ガタイは誰かと違ってデカいけど。後付で点と点が繋がるのはこの作品あるある
スーパーレース
米国のドリームトロフィー。名前はアメフトのスーパーボウルから。
米国のレースは資本主義のギラツキというイメージ。日本はアイドルのキラメキ。欧州は権威主義のプライド。という感じのイメージの開き。ただ本質は変わらない。取り巻く環境が変わるだけ。
恋
うちの作品ではこう書いて多分執着とか殺意と読むと思う。しかも多分一途ではない。マルゼン姉さんはシアトルはもちろんトウショウボーイやテンポイントなんかにも矢印を向けてるし。