転生したら米国二冠ウマ娘だったけどコーチの依頼が無くて極東に行ったら名コーチになって教え子に囲まれてます(仮) 作:罠ビー
最近投稿ペース落ちてますわね。申し訳ありません。ちなみに農業下手くそ民でした。理事長はやけくそ来ました。
1995年12月10日
今日は香港招待競争とジュニアチャンピオン決定戦の朝日杯がある日だ。今年の朝日杯にはウチの生徒からはバブルのみの出走だ。
前評判こそ高かったがデビュー戦で土が付いて、まだ早かったんじゃないかとの評価であったが、次のレースと府中ジュニアをトントンと勝つとまだ未完成ながらすでにその素質は本物だろうと評価を改めた。
当の本人は「大衆など容易くその掌を返すものさ。所詮ボクは憐れな偶像に過ぎない」と悟ったような事を言っていやがったがいつもの調子を保てているなら重畳だ。
レースが始まると好スタートを切ったバブルは最内からハナを切ったウマ娘のすぐ後ろにつけレースを進めていた。ハナを切ったウマ娘も速度を上げず緩めの展開の中バブルはロス無く落ち着いた立ち回りをしていたように思われる。
対抗と目されていた留学生達*1が緩めのペースに痺れを切らして前に上がっていく中バブルは終始自分のレースに徹していた。最終コーナー2番手から直線で前を行く留学生を捉えて1着でゴールした。
最後は余裕も感じさせ、2年連続の生徒によるジュニアチャンピオンの誕生となった。フジはクラシックに挑戦する事は出来なかった。バブルがジュニアチャンプとして挑むクラシックが楽しみだ。
1995年12月11日
昨日の香港のレースで日本のウマ娘が初めて海外で勝った。昨年も香港に挑戦していたフジヤマケンザンが今年の香港国際カップに勝利した。
国際的な格付けはG2ではあるが香港内の格付けではG1でありとても価値のある勝利だった。にわかに学園というかURAは盛り上がっていた。
位置づけとしては新興国のレースではあるが米仏の強豪が出場しており日本以外の土地でそれらの強豪国のウマ娘に勝利したと言うことになる。
ヒシアマゾンやスキーキャプテンが米国に挑戦し、パートナーが約10年振りに長期遠征で欧州に挑戦し好走し、さらに日本のウマ娘として初めての海外重賞の制覇。シンボリのWエース以降止まっていた海外への扉が開かれ、蹄跡を刻みつけたのだ
1995年12月13日
香港国際特別招待は今年パートナーが挑戦する前の、10年前のシンボリの裏エース、シリウスシンボリ。そして昨年挑戦スピードシンボリと同じ学生競争時代の傑物ミスオールラウンダータケシバオーという布陣だった。
香港での熱量は昨年以上でありシニア級ながら地元香港を背負って立つリヴァーヴァードン*2が参戦し盛り上がりを見せていた。
米国からは英愛ダービーも走った米芝路線のシアトリカル*3、英仏をメインに走りながら米芝でも結果を出したインザウイングス*4、連覇を狙う南半球のキングストンタウンに昨年と感じように出場してきたトリプティクなど対外志向の強いウマ娘が他国からも参戦していた。
レースは後方のキングストンタウンやインザウイングスを警戒して少し遅めのペースで進むかと思われたが野武士とまで評された日本のベテランが仕掛けた。エクステンドでも勝負出来るスタミナを持つタケシバオーがペースを握りギアを上げていった。
その勝負にシアトリカルはついて行くが他のウマ娘はついていかない。2人の少し後ろでトリプティクが集団を引っ張りシリウスシンボリがピッタリとトリプティクについている。地元のリヴァーヴァードンはキングストンタウンと最後方だが顔に余裕がない。
最終直線、タケシバオーとシアトリカルは一歩も引かずバチバチとやり合うがここでシアトリカルは少しのロスを承知し外に身体を流す。後方の足を残してるキングストンタウンとシリウスシンボリに揺さぶる。
しかしシアトリカルとタケシバオーの間のスペースにトリプティクが強襲をかける。ウチで粘っていたタケシバオーは攻めた結果ここで対応する余力は無くそのポジションを明け渡す事になる。
当然シアトリカルはトリプティクとの一騎打ちに持ち込むが一歩ずつ左右に振ったロスはベストポジションからロス無く切り込んで来たトリプティク相手には分が悪かった。
6カ国G1級勝利9勝の稀代の旅行者が2度目の挑戦で昨年のリベンジを果たした。
1995年12月17日
今年の短距離戦線は来年から高松宮杯が短距離G1になる直前だがサクラバクシンオーとノースフライトが去った後の群雄割拠という様相であった。
人気を集めたのは夏から頭角を現してスワンSを勝ちマイルCSを3着と好走したヒシアケボノ、そして昨年のスプリンターズSを2着と好走したビコーペガサスであった。春はやや精彩を欠いたが夏以降の成績はほぼ互角でありビコーペガサスが非常に小柄でヒシアケボノが非常に体格が良いことから凸凹マッチなんて囃し立てられていた。
レースは中団から進めた2人が直線並んで上がってくるという形になった。体格に優れるヒシアケボノが外を回り力強い踏み込みで飛び込んで来るその内側をやや集団の中で消耗しながらビコーペガサスが懸命に軽やかに上がってくる。
高速決戦、中山の急坂はパワーも必要だが身体が重ければ重いほど影響を強く受ける。その急坂をヒシアケボノは登りきり栄冠を手にした。
◆◆◆◆◆◆
「いつまでもわだかまりを抱えているのは良くないと思ってね」
「だからって後輩達の晴れ舞台を出汁にするのは姑息だろ」
ツヨシは部屋の前まで来た私にそう言う。まあ私もそうは思ったが私達の一年を省みるのに、これから闘いはじめる後輩達のレースは丁度良かった。正直ドアを開けてくれない可能性もあったしね。まあこのわだかまりを解きほぐしておきたいっていうのは私の独りよがりじゃないといいけど
「まぁまぁそんな事言わずに。二人は今日誰が勝つと思う?」
それでも気持ち剣呑な二人に予想を聞く。口火を切ったのはジェニュインだった。どちらかというとツヨシよりジェニュインの方が溝が深いと思っていたが少々意外だ。
「私はイシノさんですね。先生の所にいる頃から冷静に自分を見ていると思いますし、力強い踏み込みは魅力的です」
「オレはタッチだな。何となく今日はタッチの方が持ってる気がする」
「それじゃあ私はダークだね。ダークはステイヤーよりで追込型。ミドル以下で先行策の私とは真逆だけど実力は半歩抜けてると思うよ。それにジュニアの2000は長いし」
三人が三人別々の子を上げる。それぞれがそれぞれの視点で答える。やや堅苦しさは残っているがレースの事で嘘はつかないし誠実であれる。
「んで、怪我の調子はどうなんだよ」
「悪くはないみたいだね。春先くらいからは走れそうかな」
「でも走行免許は消したんですよね。マイナーを走る。私たちの
パドックパフォーマンスから本ババ入場までの間、投げ込んで来たのはツヨシの方だった。私は答えるとジェニュインは語気を強めかぶせ気味に言ってくる。許せないと目が語ってる。
「春先は貴女が私たちに見向きをせず先に行ってしまうことに憤っていました。でも今は貴女が自分の輝きを自ら貶めるような真似をしていることに納得がいっていません」
「返す言葉は無いかな。うん、相談しなかったのは悪かったけれど道を選ぶのは私自身だ。気に食わないなら君自身が傷つけにくればいい」
ジェニュインは歯ぎしりでもしながらそう言ってくる。ようやく聞けたがジェニュインは私の輝きを強く見すぎているきらいがある。しかしこれは言葉を尽くしたところで完全には解きほぐせはしない。
「だからオレはフジが上がってくるのを待つぜ。オレは来年から
「ツヨシ?初耳ですが」
「今言ったからな、でお前はどうすんだよ」
黙っていたツヨシがパンと手をたたくと決心をつけたようにそう言う。私は面食らってしまったがそれはどうやらジェニュインも同じようだった。というより今決めた⋯⋯いや、思ってはいたがここで言うことで腹を決めたのかな。相変わらずここ一番で思い切りが強い。
「お前はどうすんだよジェニュイン」
「私は⋯⋯」
「別に焦ることはないんじゃない?」
ツヨシに言われたジェニュインは言葉を詰まらせる。冷静で端正な優等生な彼女らしからず頭を掻きながらいらだちを隠さない。焦らなくてもいいんじゃないかという私の声掛けにキッと睨むと強く溜息を吐く。
「⋯⋯⋯⋯あーもう、私だけ置いてきぼりですか。わかりましたわかりましたよ!!」
「私はシニア級に進みます。進んでナリタブライアンやマヤノトップガンに下のダークやバブルたち相手に戦って証明しますよ。私が、私たちが本物であるってことを」
そんなジェニュインの様子が面白くて噴き出す。難しく考えすぎだと思うんだけどね。つられてツヨシが笑い、ジェニュインはムッとしてはいるもののいくらか雰囲気は和らいだ。
画面の中のたんぱ杯は本ババ入場が終わりゲートインを迎えていた。
香港国際競争。クラスメイトはフジヤマケンザン勝った事に盛り上がっていた。それよりも最終レースを勝利した彼女の方が目に焼き付いた。
鉄路の彼方に立つ彼女の姿を幻視しそして憧れた。
クラシック戦争
初年度三人組の話はひと区切りです。三人が三人別のカテゴリーに進み、そしてその路は交わるのか?そして来年からフジキセキ編後編です。
トリプティク
6カ国を股にかけて41戦しG1.9勝。これを80年代にやってのけた稀代の旅行者。ドバイ香港があったら参戦してただろうと思う。ところで最近旅がキーワードの奴実装されましたね。