転生したら米国二冠ウマ娘だったけどコーチの依頼が無くて極東に行ったら名コーチになって教え子に囲まれてます(仮)   作:罠ビー

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 お疲れ様です。前回から長く経ってしまいました申し訳ありませんでした。
 今回から96年です。今回の話はマイナーリーグについて、フジの視点のみで描かれており、いつもと少々テイストが違い、やや趣味の悪い描写もあります。

 バブルガムフェロー実装。キャラがわかってきたら一部書き直して行きたい所存。


マイナーリーグのとある日

 

 マイナーシリーズ中山3日目。年明けモードはある程度遠のいて来たこの頃。平日の中山レース場には熱心なファン……平日の午前中にこんな所で時間を潰しているという言い方はいささか意地悪が過ぎるかもしれない。

 学園ではクラスメイト達が授業に励んでいる時間。優等生で通っている私がこんな時間に外に居るのも背徳感を感じさせる。ゾクゾクするね……なんて冗談を言える程私は肝も強くはない。

 

 控室では知り合い同士や同チームのウマ娘が話している事こそあるが基本的にはピリピリとした緊張感が場を支配している。それは私が悪く言えば目立つのもあるかもしれない。

 私が今日出走するウマ娘の中では一番年下であるのは間違いない。私はシニア1年目の年齢であり、この年齢ではシニアを走っているウマ娘がほとんどだ。そうでもなければ既にドリームシリーズの出場権を得ているか。この年齢でマイナーに飛び込んで来るウマ娘はまず居ない。

 その上で話題性があるからだ。現に私はわざわざマイナーシリーズなのにも関わらず記者にインタビューをされている。もっとも出世ルートを外れた幻の三冠ウマ娘というゴシップ調になろう事は容易に想像出来るけど。

 

 黙々と一人でアップに取り組む。今日はトレーナーさんもいなければチームのメンバーもいない。トレーナーさんは多忙だし、これは私のわがまま以上の何物でもないから私から同行を断った。ヒシアマゾンは付き合おうとしていたが期末テストの話題を出して乗り越えた。

 周りに目をやれば本当に色んな選手がいる。今来たのは今日のメインに当たるレースの選手。マイナーシリーズでコツコツポイントを貯めてドリームシリーズの扉に手をかけたベテラン、ドリームシリーズでは良いところを見せられずマイナーに落ちて来たまだ比較的若い子、トゥインクルシリーズでG1レースにも顔を出していたがドリームシリーズデビューは成らずにマイナーでデビューすることになったルーキー。

 

 一方で今アップをしている私達は昨年積み立てたシリーズポイントがないウマ娘だ。

 マイナーシリーズはレースに入着するとポイントがあたえられ、1万ポイントまで到達するとドリームシリーズ挑戦の権利が与えられる。シーズンをまたいでもこのポイントは減ることがない。シリーズポイント自体はレースに入着すれば増えていき、逆に凡走すれば減っていく仕組みだ。対戦相手はポイントが近いもの同士であり、格差がある場合は得られるポイントも減るポイントも少ない。

 つまりシーズンポイントがない(厳密には毎年1000ポイントまでは与えられる)ウマ娘というのはこのマイナーシリーズにおいては一番下の立場なのだ。勝てないけど夢を諦められない、けれども戦い続けるには遠征費や用具代などもかかる、緩やかな閉塞の只中にいるウマ娘。または本業をすでに定めた、しかし走ることは続けている市民ランナーウマ娘。

 

 デビューをした8月の新潟を思い出す。クラシックのウマ娘達は値千金の1勝を勝ち取るために。ジュニアでは比較的早いウマ娘達、比較的エリートなウマ娘がこれから始まるレース人生に胸を躍らせる。

 シニアのウマ娘は、夏競走に出走するスターでは無い路を歩んでいる事に自覚をしつつスターになる事を夢見て足掻き続ける。

 

 ここはあの夏の日と同じ場所かもしれない。夢の世界を見て、現実の厳しさに打ちひしがれそしてなお夢を見続ける。ともすれば私は目にも入れたくはないだろう。痛いような緊迫感にも似た敵意を常々感じる。

 

 

「姉貴の応援に来てみればまさかあんたがいるなんて。偶然ってのは怖いな」

 

「キャプテン?お姉さんの応援もいいけど授業でなくていいの」

 

 

 私に声をかけてきたのは朝日杯を共に走ったスキーキャプテンだった。声をかけられると思っていなかったから私は少々素っ頓狂な声を上げてしまう。

 彼女の姉、スキーパラダイスは海外から日本のリーグに参戦したウマ娘だ。諸々の理由からスキーパラダイスはマイナーリーグの0ポイント、つまりは今の私と同じ状況から走り始めたウマ娘である。そしてスキーパラダイスはある程度ドリームシリーズ昇格に片手がかかっている本日のメインレースに出走するのだろう。

 

 

「キャプテン、君は今年はどうするの?」

 

「悩んでる。ステイツに戻ったのもクラシックに出れないからだったけど、出れていたとしてお前とは競い合えなかったしな。それにケンタッキーでは身の程を思い知らされた。戻ってきてからは走りも崩れちまった」

 

 

 アップを続けながら互いに言葉を交わす。たった1レースともに走っただけだ。クラスではあまり話したことはなかった。だけれど彼女は朝日杯で私に最も迫ったウマ娘だ。

 

 

「⋯⋯ねえ、少しアップ手伝ってくれない。きつめでいいから」

 

「は?お前この後レースだろ。馬鹿言ってないで」

 

「お願い」

 

 

 

 

「ったく、アップじゃすまなくなるぞ」

 

 

 私の唐突な声掛けに思ったより常識的な事を言ったキャプテンにダメかなとやや甘えるように言う。キャプテンは一瞬呆けたように口を開けるが私も伊達や酔狂やおせっかいではない。

 試合勘が明らかに鈍っている私に対してここまでの極上なスパーリングパートナーはそう居ない。確かにベストな体調で開幕戦に出れないかもしれない。それでも目の前のキャプテンとのアップの方が価値があるだろう。

 

 控室を出てしばらく歩く。ある程度邪魔にならないところまで来てから互いに軽く足を伸ばす。何mにする?と聞かれたので600mと答える。ただし200m流して400mスパートで行うことにする。

 なんともなく互いにジャージを脱ぐと少しずつ走り出す。私が少し前に立ちその斜め後ろにキャプテンがつく。200mは適当に流すが400mになった時に互いに足の踏み込みを強くする。

 

 ややスパート速度で走るには向かない場所だから少し足の力が逃げていく。とてもベストというコンディションではないがそれでもキャプテンのビリビリとした圧は感じる。少なくとも世代最強に手をかけた、それだけの圧がヒシヒシと感じられる。

 マッチレースだから駆け引きもない。だけれどもともにプライドを打ちつけながら走る感覚。屈腱炎以降初めて他のウマ娘と競いあう為か最初の一歩は明らかに遅れた。

 勝ちたいっていうキャプテンの気迫が、私にバチリと火をつける。私もだよスキーキャプテン。私も再び君に勝ちたい。

 突っかかりの弱い地面は私たちが全力で走るには物足りない。だけれどそのコンディションで相手に勝つ為に必死に足を動かす。

 

 やがて決めていたゴールが訪れる。互いに段々と力を抜いてから立ち止まる。客観的な勝敗は正直わからない。ただ私もキャプテンも爽快という様相ではない。互いに勝ちを疑っている。

 

 

「はっやっぱりこうなるじゃねえか。アップになんなくなるって言ったよな」

 

「あはは、本当にね」

 

 

 呆れたようにキャプテンがそう言う。私もごめんねと少し笑ってかえす。もしかしたらこれから走るレースに支障が出るかもしれない。軽率だっただろう。それでも

 

 

「私にとっても、君にとっても必要なアップだったんじゃないかな」

 

「⋯⋯言ってろ。出走まで時間ないんだろ。さっさと戻れよ」

 

 

 キャプテンにそう言われてそういえばそうだと小走りにレース場に戻っていく。あ、そうだといたずらを思いつき振り返る。

 

 

「応援はしてくれないのかい?」

 

「しねーしいらないだろ、お前なら」

 

 

 再度呆れたように返される。なんで私の同期はみんなツれないんだろうね。素直に喜んでくれるのはマーベラスくらいだよ。

 

 

 

 

 

「⋯⋯や、姉さん。どうしてこんなところにいるのかな」

 

「Hai フジ。東条に頼まれて陣中見舞だ。わざわざオレにデビューを黙っていた挙句随分と一人でお楽しみだったみてえじゃねえか」

 

 

 さて、本番は気楽に走ろうと思ってレース場に戻ってきた私に待っていたのは凄絶な笑みを携えた姉さんだった。なんとなく怒っているような様子を感じる。

 

 

「オレは悲しいゼ、フジ。大事な一番弟子の新たなデビューの日を教えてもらえないなんて。東条からまた聞きした時には目の前が真っ暗になりそうだったぜ」

 

「当然そんなオレをもっと悲しませたりはしないよな、エンターテイナー」

 

 

 笑みを浮かべる姉さんにごめん姉さん時間だからと逃げだす。

 こんなにレースの終わりが怖いと思うことはなかった。

 

 




 マイナーリーグ
 いままで存在は匂わされてたリーグ。トレーナーの中にはマイナーリーグがメインのトレーナーも多いと思います。ウマ娘も地盤がありこのレベルで走り続ける人も居れば、更に上のレベルを目指す人も居る。
 実業団リーグとか海外サッカーでいう3部4部リーグみたいなイメージで見て頂ければと思います。

 スキーキャプテン
 フジキセキの朝日杯の接戦2着。だけれど留学生のためクラシックは出れなかった。この年の1月AJCCが最終戦。ちょこちょこ名前の出ているスキーパラダイスの妹。
 スキー姉妹、こんなに出番が多くなるなんて
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