ようこそ読心至上主義の教室へ   作:ひゅらら

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※リアルが非常に忙しく、更新がかなり大幅に遅れてしまいました。
 申し訳ありません。


第4話

この学校に入学式してから早一ヶ月。

ついに学校側の秘密が明かされる5月1日が到来した。

配られたポイントを確認するため携帯の電源を付けると、4万9千ポイントしか支給されていなかった。

つまりクラスポイントは490ポイントということ。

下から二番目のCクラスにとってはまぁまぁな結果と言えるかもしれないが、正直半分は切りたくなかった。

 

教室に入ると様々な反応が見られた。

半分しか振り込まれていないと不満を垂らす者。

学校側の不備だろうと楽観視する者。

何かを悟ったような顔をしている者。

皆が皆、大体予想通りな反応をしている。

 

朝のホームルームが始まり、坂上先生が入ってくる。

そして皆に知らされる衝撃の真実。

これには俺や龍園などの一部の生徒を除いて皆が荒れた。

安定した将来が得られると思っていた奴らは憤慨し、先日のテストで赤点ラインに近かった奴らは顔を青くしていた。

しかし後悔したところでもう遅い。

この学校で生き残りたいのならば必死に勉強して赤点を回避し、尚かつ望んだ進路先に行きたいのならば死に物狂いでAクラスまで上がらなければならない。

 

ちなみに坂上先生から知らされた各クラスのクラスポイントは次のようになっている。

 

A…940クラスポイント

B…650クラスポイント

C…490クラスポイント

D…0クラスポイント

 

Bクラスはともかく、Aクラスとの差が開きすぎている。

これは不味い、特別試験で相当頑張らなければこの差はひっくり返らないだろう。逆にDクラスはもう気にする必要はないと見ても良さそうだな。実質3クラス同士の戦いになる。

さてどうしたもんかと思考を巡らせているとホームルームの終わりを知らせるチャイムが鳴り、坂上先生は退室して行った。

 

「ようやくこの学校も面白くなってきやがったな」

 

先生の退室を確認すると龍園がそう呟きながら席を立ち、教壇の前まで移動しその上にどさりと座り込んだ。

そしてバンッと教壇を叩き皆の注目を集める。

 

「さっきの荒れた様子を見るに、ほとんどの奴らはこの学校の仕組みに気づけなかったらしいな」

 

いつものように愉快そうな表情をしながら龍園が話し出す。

クラスのほとんどが震え上がるのを感じる。この3週間で龍園の恐ろしさは皆が身にしみて分かっているからだろう。

 

「雑魚と無能ばかりで悲しいぜ。俺がこのクラスを支配していなけりゃどうなってたんだろうな」

 

歯を食いしばる音が聞こえた。

雑魚だなんだと龍園に馬鹿にされたが、その言葉を否定することができない。

実際、龍園がいなければ今頃クラスポイントは100前後しか残らなかっただろう。

 

「だが安心しろ。俺の命令に従うなら、おまえらをAクラスまで連れてってやるよ」

 

あまりにも大胆で強気な発言。

本当にそんなことができるのかという思いが皆からは見て取れるが、俺はそうは思わない。他のクラスにどれだけ優秀な奴がいるかは分からないが、龍園ならば今後出てくるであろうAクラスのリーダーにも渡り合えるはずだ。

 

「それとこれから俺が呼ぶやつは全員、放課後俺の部屋に集まってもらう」

 

そうして呼ばれたのは俺、伊吹、石崎、アルベルト、金田の5人。このメンバーから何故召集がかかったのか考えると、おそらく今後のCクラスについての会議か何かだろう。

一応金田という人物について説明しておくと、こいつは龍園に頭脳には自信があると言って自ら参謀を買って出たやつだ。

龍園の心を読んで確認したが、考えた通りだった。

俺は右腕として、金田は参謀として、石崎とアルベルトは護衛兼見張りということらしい。伊吹は何故呼ばれたんだと思ったが、なんでも龍園は伊吹の好戦的な性格を気に入っているようだった。それに加えて、いつも俺と一緒に行動しているという点を考慮してくれたらしい。

龍園に気配りができるとは...少し驚いた。

 

感心している間に龍園は教壇を降りて席に戻ろうとしていた。もう伝えることはないという事なのだろう。

だが、まだ席に戻っては困る。

放課後行われるのはこれからの方針を決める非常に重要な会議。それにはCクラスの主力を全員参加させたい。

そして、主力となり得るやつはあと一人いる。

俺は携帯を取り出して素早く指を動かし、龍園にメールを送る。

 

すると龍園は俺のメールに気づいたのかポケットからスマホを取り出す。

 

「そういや呼ぶやつを一人忘れてたぜ」

 

俺のメールを確認すると龍園は再び口を開く。

 

「椎名ひより。お前も俺の部屋に来い」

 

それだけ言うと今度こそ龍園は自分の席についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日の授業も終わり放課後がやってきた。

俺はさっさと龍園の部屋に行くために荷物を仕舞っていると、隣に座っている伊吹に詰め寄られた。

 

「もう2週間以上経ったからあの時お預けされたことを聞こうと思ったけど...」

 

「その必要もなくなっただろ?一月も経てば流石に学校側から説明が入ると思ってたからな」

 

「あんたと龍園はこの仕組みに気づいてたってわけ?」

 

「まぁな」

 

その質問を肯定する。

伊吹は、すごすぎでしょ...と言葉を漏らしていた。少し照れるが俺は先生の心を呼んだだけ。本当にすごいのは龍園だ。なんの説明も受けていないなか自力でこの仕組みに辿り着いたんだからな。

そして席を立とうとしていた時、

 

「すいません、少しよろしいでしょうか?」

 

と、声をかけられた。

 

声の方に振り返ると、そこには銀髪のロングウェーブが特徴の女子    椎名ひよりが立っていた。

 

「別に大丈夫だが...たしか椎名さんだったか。何か用でも?」

 

おそらくこの後の召集についてだろう。なにせ椎名はいきなり呼ばれた訳だから困惑するのも無理はない。不安になったから同じく召集がかかった俺達の所に来たってとこだろう。

 

「はい。何故夜見さんは私を呼んだんだろうと思いまして」

 

...ほう、

 

「いやあんたを呼んだのは龍園じゃない。なんで夜見が呼んだことになってんのよ」

 

伊吹から疑問の声が上がる。

 

「...伊吹の言う通りだ。椎名さんを呼んだのは俺じゃなくて龍園だ。少し何を言っているか分からないな」

 

悪いが白を切らせてもらう。なんでそういう結論に至ったのかを話してもらおう。心を読めば分かることだが、せっかくだからその口から聞こうじゃないか。

 

「すいません、もし違うのなら謝ります。ただ、あの時龍園くんは私のことを後から呼びました。多分、最初は私を呼ぶつもりなんてなかったと思うんです」

 

椎名は自分の見解を並べていく。

 

「なのに一度スマホを見た後に追加で私を呼びました。おそらく誰かから私を呼ぶようにメッセージが届いたんだと思います。そして龍園くんにそんなことができるのは   

 

俺だけ、ということか。

すごいな、素直に称賛に値する。

 

「いやお見事。さすがの洞察力だな」

 

やはり椎名を呼んで正解だったな。俺は自分が呼んだことを認める。伊吹は、なんでそんなことしたの?というふうに首を傾げていた。

 

「やはりそうでしたか」

 

椎名は自分の推理が当たっていたことに安心したのか、胸に手を当てほっと息をついていた。もしくは俺が素直に認めたことに対してかもしれないが。

 

「では、私を呼んだ理由をお話してもらえますか?」

 

「あぁ。かまわないが歩きながらでいいか? あんまり遅れると龍園にどやされるかもしれないからな」

 

「フフ、それは怖いですね」

 

だがその表情は恐れを全く抱いてはいなかった。頭も回って度胸もあるときた。これは呼んで正解だったなと俺は改めて思った。

そうして今度こそ俺は席を立ち、伊吹と椎名を引き連れるような形で教室を出た。

そして廊下を少し歩き、周りに人が少なくなってきたことを確認して話し出す。

 

「それで椎名さんを呼ぼうと思った理由なんだが、さっきも言ったとおり洞察力に優れていると思ったからだ。これから龍園の部屋でするのは会議かなんかだ。そこには頭が回る人材を何人か同席させたかったからな。」

 

「なるほど。私のことをそう評価していただけるのは嬉しいのです。しかし夜見さんとはまだ話したことありませんでしたよね?なぜそう思われたのでしょうか?」

 

まぁそれはそうだ。目立ったことをした覚えはないのに、いきなり他人に評価されたら嬉しいというよりなぜと思う方が普通だろう。

 

「今朝、坂上先生から説明があった時にクラスを観察していたんだが、そのときほとんどの生徒が慌てふためいているのに対して椎名さんは妙に冷静にだった。そこから、もしかしたら椎名さんはこの学校のシステムにある程度勘付いていたんじゃないかと思ってな」

 

「なるほど、確かに私はこの学校には何か裏があるのではないかとは思っていました。しかしそれはただ単に私が学力に自信があり、あまり私の今後にはあまり影響がないだろうと楽観視していただけ、という可能性は考えなかったのですか?」

 

「そういう可能性も考えたけど、さっきの椎名さんの考察を聞いて確信に変わった。それに、あの状況で慌てずにいられるってだけでも十分だよ」

 

まぁ最初から椎名の心を読んだから知っていたというだけだがな。これまでの長々とした説明も、ただ椎名を納得させるためにそれっぽい理由をでっちあげただけだ。心が読めるから知ってました、なんて言えないからな。

 

「そういうことでしたら納得です」

 

こっちを怪しんでる様子もないし、しっかり納得させることができったっぽいな。

 

「そういえば前から思っていたのですが、もしかしてお二人は交際されていたりするのでしょうか?」

 

なんて安心していたところに、そんな質問を投げられた。まぁいつも二人で行動してれはそういうふうに見えるのも当然か。

 

「は、はぁ!?こ、交際って……」

 

伊吹は顔を真っ赤にしながらあたふたしている。

 

「べ、別に付き合ってるわけじゃ……」

 

そう言いながらも、目線がチラチラと俺の方を向いている。告白のようなカップルを成立させるイベントはしてこなかったが、実際伊吹との距離感は恋人のそれに近いからな。俺が心の中で伊吹との関係をどう思っているのかを確認したいんだろう。

 

「いや、別にまだ付き合ってないぞ」

 

こういう時は堂々とした態度でなければいけない。そして肯定はせずに、伊吹に対して好意があることを匂わせる。

 

「なるほど。『まだ』ですか」

 

椎名はあらあらまぁまぁといった風な仕草で微笑んでいた。

 

「ま、まだ……」

 

そして伊吹は恥ずかしいのか照れているのか、さらに顔赤く染めて俯いていた。

 

その後も軽く話しながら5分ほど歩いていると、龍園の部屋の前に着いた。そしてインターホンを押すと、龍園ではなく石崎とアルベルトがドアを開けた。

 

「夜見さん。ウス」

 

石崎にそう声を掛けられる。

別に同い年なんだから敬語を使う必要はないんだけどなと思いつつ、おうと返事を返す。石崎とは前から少し交流があったのだが、その時から龍園の右腕ということで俺にも敬語で接してくるのだ。何度か止めるように言ったのだが聞かないのでこのままにしている。 

ちなみに伊吹は石崎に少し引いていた。

 

「既に龍園さん達は集まっています」

 

そう言うとどうぞこちらへという風に片腕を廊下の奥へと向けた。そして短い廊下を抜けると、

 

「ようやく来やがったか」

 

とベッドに座り込んでいる龍園と、既に席についている金田の姿が見えた。まだ放課後になって10分も経ってないはずなんだがと思いつつ指示された席に座る。

 

「それで、今日はなんで俺達を集めたんだ?」

 

これから何が行われるかは知っているが、一応確認の為に聞いておく。

 

「これからするのはCクラスの今後についての会議みたいなもんだ。まぁ異論が出ようが認めるつもりはねぇけどな」

 

それは会議と呼べるのかという疑問はあるが、一先ずは龍園がこれからどう動いていくつもりなのか聞くか。

 

「まぁそうだろうと思ってたよ。で、俺達はどう動けばいい? もう作戦は決まってるんだろ?」

 

「あぁ。お前らにやってもらうことはBクラスへの妨害、まぁ軽い嫌がらせみたいなもんをしてもらう」

 

「は?何それ。そんな陰湿なことして学校にバレたらヤバいでしょ」

 

龍園の作戦に対して伊吹が反射的にそう反応する。まぁ妨害、なんて物騒な言葉を聞かされたらツッコみたくなる気持ちは分かる。この学校なら特にな。だが龍園のことだ、何か考えがあるんだろう。

 

「クク。お前の喧嘩っ早いところは嫌いじゃないが、もう少し頭を使ってから発言してほしいもんだな」

 

「は?」

 

「まぁまぁ伊吹さん落ち着いてください。そんなリスクのある作戦を立てたということはそれ相応の理由がある。違いますか? 龍園くん」

 

「そこそこ頭回るじゃねえか。夜見に指名されただけのことはある」

 

そう言うと龍園は座り直し、両肘を自身の膝の上に置いて再び話し始める。

 

「嫌がらせの内容はなんでもいい。メンチを切るだのクラスの前で騒ぐだのしてBクラスの奴らにストレスを与えてやれ。それが第一段階だ」

 

「第一段階ってことは続きがあるんだな?」

 

「あぁ」

 

俺の問に龍園がそう答える。

 

「ある程度cpがあるBクラスとはいえ今日の発表には荒れただろ。Aクラスにならなきゃ望んだ進路に行けねぇのはBクラスも一緒だ、少なくないストレスが向こうにもかかってる。そこにさらに俺たちが嫌がらせをしてやって、そのストレスを増大させてやるのさ。そして早くも何かしてくるのかとCクラスを警戒させる」

 

少し策の全貌が見えてきたな。

 

「そうなったら今度は噂を流すのさ。Bクラスのaはbを嫌っている、cは中学時代ウリをやっていた、dは警察に補導歴がある…とにかく悪いイメージの付く噂を流す。Bクラスは他のクラスとの交流を持ってる生徒が多い。もちろんウチのクラスのヤツと仲がいいやつもいる。そんな状態なら嫌でも噂は耳に入る。普通なら突拍子もない噂だと一蹴できるだろうが、精神的負荷がかかってる場合ならその限りじゃない」

 

「…なるほど。精神が不安になっているBクラスに疑心暗鬼を誘発し、内部崩壊を狙うというわけですね」

 

これが第二段階ってことか。たしかによく練られた策ではある。これが成功すればBクラスは自然と脱落し、早々にAクラス対Cクラスの構図に持っていくことができる。

だが    

 

「一ついいでしょうか。龍園氏」

 

「なんだ?」

 

ここで金田が手を挙げて龍園に問いかける。おそらく俺と同じことを思ったのだろう。

 

「たしかにこの一手は成功すれば非常に強力なものと言えます。しかし、これはあまりにも相手依存の戦略では?噂が広まったとしてもクラスの雰囲気が一時的に悪くなるだけでそれ以上にはならない確率の方が高い、そもそもCクラスが警戒されている状態では噂の拡散元もCクラスだと看破される恐れもあります」

 

そうだ、Dクラスなら兎も角、相手は比較的優秀な生徒が集まるBクラス。クラス全体を疑心暗鬼にさせるなんてあまり現実的ではない。だが、この策を考えたのは龍園だ。これだけで終わるなんてことはないはず。

 

「しかし、龍園氏の戦略がこれだけとは考えられません。他にも何かあるのでは?」

 

「そこまで頭が回れば上出来だな。参謀として合格をやるよ」

 

龍園がニィと笑みを浮かべる。やはりそうだろうと思っていた。

 

「今回の作戦の本当の狙いはBクラスのポテンシャルを測ることだ。Aクラスは言わずもがな優秀な生徒の集まり、噂じゃリーダーも二人台頭してきているらしい。潰してやるのには時間がかかるだろうな。そしてDクラスだが、初日でpp全部吐き出すような不良品の集まりに興味はない。優秀な奴が一人二人いようが不良品共を従えるのはまず無理だ。俺の遊び相手は務まらねぇ」

 

流石は龍園、情報収集は欠かせていないらしい。

 

「この2つのクラスのポテンシャルは大体測れてる。だがBクラスだけがまだ分からねぇ」

 

なるほど。Bクラスの結束力を確かめるついでにBクラス内にいる実力者をあぶり出してやろうっていう戦法か。

 

「仲良しクラスで通ってるBクラスが俺の作戦にどう反応してどう対処するのか、俺の遊び相手が務まる奴がいるのか、俺はそれを知りたいのさ。もし仲間割れを起こす程度の奴らなら潰してやる価値もない」

 

本当に龍園の考えの深さには驚かされる。

 

「作戦の内容は分かったけど、結局バレたらヤバいのには変わらないじゃない。私は最初からそれを聞いてるんだけど?」

 

「それに関しては多分大丈夫だと思うぞ、伊吹」

 

「…なんで夜見は大丈夫だと思うの?」

 

話し相手が俺に変わると、息吹の口調が少し柔らかいものになった。

 

「入学から5月になるまでの間、教師たちはどんな問題行動に対しても一切咎めることはなかった。各クラスのcpを決めるためとはいえそんなことをする学校が嫌がらせ一つで動くとも思えない」

 

実力主義を謳っているこの学校ならある程度の悪逆は許されるだろう。

 

「仮に今回の策が悪質だと判断されてCクラスが罰せられるようなことになっても、今後外道な策は使えないっていう情報が手に入るならcpの100や200は手放してもいい…って思ってるんだろ?」

 

と言って龍園の方へ目線を向けると、龍園はククと笑い声を漏らして、あぁと呟いた。

 

「まぁ今夜見が言った通りだ。まだクラスの対抗戦は序盤も序盤、cpなんて後から盛ればいい話だ。まぁそうなる確率は低いと思うがな」

 

「…でもそのもしもが起こってcp引かれたらクラスの連中は納得しないでしょ。私だって納得できないし」

 

「たしかに納得されないだろうな。だが……俺は最初に異論は認めないと言ったはずだぜ?」

 

龍園は目を細め、声のトーンを少し落として答える。次からの反論は許さないという雰囲気だ。

 

「……チッ」

 

龍園の威圧に屈したのか、伊吹は小さく舌打ちして引き下がった。

 

「物分かりがいいやつは好きだぜ伊吹」

 

その言葉に、伊吹がものすごい眼光で龍園のことを睨んでいる。

 

「しかし嫌がらせとは…あまり気分の良いものではありませんね」

 

椎名が呟く。内心では伊吹と同じであまり乗り気ではないのだろう。まぁそれが普通だ。

 

「やりたく無いならやらなくてもいいぜ?元々第一段階はクラスの雑魚どもにやらせるつもりだったたからな。その代わりBクラス共の監視はしてもらう。何か動きがあったら逐一報告しろ。いいな?」

 

「それくらいでしたらお引き受けします」

 

椎名は龍園の策に若干の不満を漏らしたものの、Aクラスに上がるためには必要なことだと割り切ったようだ。

 

「では僕も裏方に徹させてもらいます。あまり荒事には慣れていないので」

 

金田も監視に徹底するようだ。ここにいるメンバーを抜いても、クラスにはまだ30人以上の人数が残っている。第一段階はそいつらに任せればいいからな。

金田や椎名が無理にやることでもない。

 

ふと時計に目をやると針は17:30を指していた。窓の外も暗くなり始めている。

龍園もそれに気づいたのか、ベッドから立ち上がって話し出す。

 

「少し長くなったが会議はこれで終わりだ。今伝えたことは明日のホームルームで他の奴らにも伝える。お前らはもう帰っていいぞ」

 

そう言うと龍園は台所に向かい、冷蔵庫から麦茶を取り出してコップを用意し始めた。俺たちの分も注いでくれるのかと思ったが、そんなことはないようで用意されたコップは一つだけ。

ケチな奴だな。

 

麦茶を勢いよく飲み干すと、龍園はベッドに戻り携帯を弄り始めた。

金田と椎名はそんな龍園の様子を見て、会議がもう終わったことを再度認識すると席を立ち、部屋を出ようとしていた。伊吹は俺と一緒に帰ろうとしているのか、いつ立ち上がるのかと観察するように俺を見ていた。

 

が、まだ俺は帰るつもりはない。そして金田と椎名も帰るのは待ってもらおう。これから起こる光景を見ていってもう必要がある。

 

「少し待ってほしい」

 

そう言うとこの部屋にいる全員の視線が俺に集まる。

 

「さっきの龍園の策だが…俺は反対だ。するべきじゃないと思ってる」

 

一同に同様が走る。まさか龍園の右腕である俺から反対意見が出るとは思いもしなかったのだろう。唯一伊吹だけが少し嬉しそうな反応をしていたが。

 

「……あぁ?どういうつもりだ夜見」

 

龍園が訝しげながら俺に問う。

 

「言葉の通りだよ。確かにこの策は有用なものであることは認める。だがクラスメイトに掛かる負担があまりにも大きすぎる」

 

「意外だな、お前が他の奴らな気を配るとは」

 

「これから3年間一緒に生活していく仲間達を気にかけるのは当然のことだ」

 

「ハッ、くだらねぇな。お前は他の奴らを駒としか観ていないタイプだと思ったが…どうやら違ったらしいな。雑魚どもなんざ使い倒してなんぼだろうが。それにさっきも言ったが、反論は許さねぇ。それはお前でも同じだぜ?」

 

伊吹のときと同じように俺に威圧をかけてくる。

にしても人を駒としか見ていないタイプか、想像以上に龍園は俺を良く見ているらしい。駒とまでは言わないが、昔から周りの人間を自分を良く見せるために利用していたことは間違いない。事実、伊吹とも打算的な理由で行動を共にしてるわけだからな。

そんなことを思いながら龍園と睨み合っているところに、金田が割り込んできた。

 

「夜見氏、先程は龍園氏の策に賛同するかのような口ぶりでしたが…どういう心境の変化で?」

 

「あれはただ単に龍園の考えを代弁しただけで、別に賛同していたわけじゃない」

 

「なるほど。しかしこの策が有益であることは夜見氏も同意していたはず、それに夜見氏自身には不利益のない話です」

 

「確かにそうだ。だかこんな策を実行すればこの1ヶ月で作り上げた他のクラスの人達と関係は崩壊するだろう。俺みたいに他クラスと交流がないやつはいいが、そうじゃないやつもいる。この先だって、Cクラスのやつと友達になりたいなんて人はいなくなる」

 

そこに再び龍園が突っ込んでくる。

 

「他クラスの連中は全員敵だろうが。付き合いなんかいらねぇんだよ」

 

「お前はそうかもしれないが他のやつは違う。それに部活動に入ってるやつはどうする?これから先もこんな策を続けていけば確実に部活内で孤立するはずだぞ」

 

「だからどうした?部活動で得られるppなんて高が知れてんだよ。居心地が悪くなったやつは辞めればいいだけの話だろうが」

 

龍園達の意見はクラス全体の利益を追求したもの、それに対して俺の意見はクラスメイトの個人の立場に寄り添ったもの。

このまま続けてもこの論争は平行線だ。龍園が自分の考えを曲げるとも思えないし、なにより()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「クク、お前がここまで反対するのは想定外だったぜ。だったらもう少し話し合う必要があるらしいな」

 

だが、そう言う龍園の顔はとてもこれから話し合いをするようには思えない獰猛な笑みを浮かべていた。

 

「おい、お前らは部屋から出とけ。石崎とアルベルトもだ」

 

どうやら龍園は俺と一対一で何かをしたいらしい。龍園の性格からしてその何かはもう分かっているが、想像しているような事にはならないだろう。

 

「ちょっと!龍園アンタ夜見に何するつもり?」

 

「あ?だから話し合いだっつてんだろ」

 

伊吹は俺を心配してくれているらしい。状況から見て俺が暴力を振るわれるのは明白だからな。

 

「大丈夫だよ伊吹。俺も龍園を説得したら出るからさ」

 

「でも   

 

「大丈夫。外で待っててくれ」

 

俺は伊吹を手で制してそう言いうと、伊吹はこちらを心配そうに見ながらも椎名達と一緒に部屋から出ていった。

にしても若干デジャヴを感じるやりとりだったな。

 

そう思いつつ俺が振り返ると、龍園の顔は先程までの獰猛な笑みではなく、いつものスカした笑みに変わっていた。

 

そして龍園はクククと笑い        

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「随分長い茶番だったな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんだ、気づいてたのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

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