異世界チート転移した学生のお姉さんが美しい魔法使いと共に冒険をして、邪悪な魔王を打ち倒す物語。
魔法使いや魔王などいい男に求められる最高に気持ちの良いモテモテ物語です。

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―遠い惑星、地球。今、私は異世界にいます。

―遠い惑星、地球。今、私は異世界にいます。

 

風が吹き荒ぶ草原。辺りには人っ子一人いない。

どうして私はこんな場所にいるのでしょうか。

 

思い出すのはすべての原因だ。

白い空間に煌めく日の丸。あれはそう、神様だったのかもしれない。

その時も私は疑問に思ったはずだ。なぜこんな場所に私はいるのかと。

 

けれどもそんな疑問は突然のように湧き出してきた心の焦燥によって散っていた。

なぜかはわからない。それでも私は何処か別の場所にいくことになるという予感。

 

そしてそのために必要な力を与えられる。それを選ばないといけない気がした。

理屈じゃない。完全な感覚だけの思考に、しかし私は従っていた。

 

「比類なき力、挫けない精神、荘厳な美貌!」

 

あの時、私の口は開いていたのだろうか。

ただ、私の心に突如として浮かび上がる力のイメージを強く、強く思い描いていた。

 

 

そして気がつけば、本当に知らない場所にいた。

 

澄み切った青い空。青々とした美しい草の葉。

気持ちの良い風が、まるで私の心のように強く吹き荒ぶ。

 

「さて、私はどうすれば良いのでしょうか」

 

 

その時、不意に背後から気配が生じた。

私はその時、なぜかホラー映画の一幕を思い出していた。

見てはいけないものを、それでも興味本位で覗いてしまう。

破滅の予感を確信に変えるその瞬間だ。・・・縁起でもないことを考えてしまった。

 

私は、太陽を背にして振り返る。

 

そこには陽の光を浴びて目を細める中性的な美人がいた。

その装いは魔法使い然としていて手には杖を持っていた。

なぜこのような場所に一人、美しい装いで汚れた様子もない人がいるのか。

あるいはそれは人ではないのかもしれない。そんなことを・・・

 

「ふふふ、随分と驚かせてしまったみたいだね。僕は君の予想通り。魔法使いさ」

 

そういってまるで貴族のような美しい所作で礼をする彼に言葉を返す。

 

「あなたは誰なの?まるで心でも読んでいるみたいね」

 

口にして驚いた。初対面の人間にも関わらず、軽口を叩いてしまった自分にだった。

まるで親しい友人と会話するような態度を取る自分に疑問を抱く。

そしてそれは目の前にいる魔法使いを自称する美しくも怪しい人物に対する警戒へとつながった。

 

「すまないね。僕には人を誑かしてしまう資質というものが生まれつき備わっていてね」

 

そういって軽くウィンクをする彼に、確かにと思ってしまう私がいるのだった。

 

「僕は君を求めてここまで来たのさ。ようこそ、麗しの勇者さま」

 

片膝を付き、私に傅く彼にあっけにとられる。

気づけば私の手をとって、その上に彼の手を重ねてキスをされる。

一連の動作の美しさと、優しげな心遣いに私の心は浮足立ってしまっていた。

 

「選ばれし勇者さま。邪悪を祓うという使命ある君。その旅路の共として僕を加えてください」

 

そういって微笑むその姿はこれまでに見たもので一番美しいと感じるものだった。

きっと私は生涯、この光景を忘れることはないだろう。私の心に浮かぶのは尊いという二文字だった。

 

「話しはわかりました。私の旅に加わることを許しましょう。あなたは自由なのだから」

 

私は適当なことを口にしたと後悔したが後の祭りだった。

話しなんてわかっていない。この状況を説明してほしい。

どうして私は訳知り顔で話しているのだろうかと思ってしまう。

きっとあまりにも現実離れした出来事に私はおかしくなってしまったのだろう。

 

そして私達の旅が始まった。

 

東へ西へ、北へ南へと古今東西へと旅をした。

蒼き龍を鎮めることもあれば、白き虎を調教し、赤き鳥をお供にしては、亀の霊獣を奉り、

偉大な十二の獣の長との交流や争い、時には破れ支配されることもあれば、

下剋上を果たし、その主従を逆転させたりと寄り道なども確かにあった。

姫をさらう邪悪なドラゴンを討伐しようとして何故か同棲することになったりもした。

地底に住まうドワーフの武具を求め、新緑美しい森に住まうエルフを尋ねれば、

世界樹に住まうハイエルフへと伝承を伝え聞くこともあった。

宇宙人と交流したり、超能力者と遭遇したり、未来人に不吉な忠告をされることもあった。

異なる法則の世界へと繋がるゲートを開いて地獄の悪魔らと争い敗北し辱められることもあれば、

裏をかいて汚名返上し悪魔たちと契約をして新たな力にもした。

天使たちの住まう天界へと意図せず踏み入り、聖剣を手に入れるも、

不思議な力で、過去へと戻されたこともあった。

七つの大罪を背負う強大な敵との接戦もあれば、魔王四天王の神算鬼謀に苦しむこともあった。

 

思い返せば、語り尽くせないほどの冒険の旅路だった。

 

そうしてついに世界を支配しようとする魔王との戦いが始まった。

 

その戦いはこれまでの冒険の集大成だった。

ともに戦う仲間たち、つないだ絆。手に入れた装備やアイテム。

そして、それを成し遂げるだけの力と精神。

 

このいずれかが欠けていれば、この魔王との戦いはきっとすぐに終わっていただろう。

しかし私は過去の冒険、敗北の記憶と屈辱を糧にしてさらに強くなった。

私は勝つ。決して負けはしない。魔王の好きになんて絶対にさせない。

 

そんな思いが表情に出ていたのだろうか。魔王が口を開いた。

 

「美しい。そなたも余のモノとなれ。さすれば永遠の喜びをその身と心に刻みつけてやろう」

 

偉そうで傲慢な言葉も、その邪悪で強大な力と声、そして妖しいほどの肉体美。

その組み合わせの前では驚くほどに様になっていた。

この魔王の行いは私の価値観でいっても、この世界の常識でいっても邪悪の極みだ。

その罪を背負う魔王の姿は、まさに魔王だ。つまり邪悪だ。

美しいその姿に魅了されるな。その誘いに乗ってはいけない。

それなのに、私はなぜか、その声の、力ある言葉を前に、振るう剣の速度が落ちる。

 

魔王は嗤う。声なきその表情は、とても邪悪で美しく、妖しかった。

 

ふと思う。人は生まれながらに滅びへと向かう生き物だと。

そんなどこかで聞いたようことが今になって思い浮かぶ。

 

私の目の前に選択肢が現れた。そんな気がした。

 

 

 

『魔王の提案を受け入れる』

 

→『魔王の提案を受け入れない』ピコッ

 

 

 

私は叫ぶ。挫けない精神をその言葉で表現する。

 

「私は勝つ!魔王ッ、その身に背負う罪を今ここで雪ぐ時だ!!」

 

その言葉とともに剣を振るう。そこからは光の息吹の奔流が放たれる。

それは邪悪を打ち滅ぼす神の剣。勇気ある者の正しき心の前にこそ、その力を開放する。

伝承に語られし聖剣。私はその力は今初めて開放した。それは驚きとともに私に勝利を運ぶ。

 

「それでこそ、勇者か。だが心シロ、余は尽きぬ。人の心に邪がある限り!何度でも...」

 

そう言って嗤う魔王の姿は、破滅的な美しさで、間違っていれば、

私はそれに永遠に囚われていたのかもしれない。それが不幸か否かはもはや神のみぞ知る。

 

「せめて安らかに眠るが良い魔王よ。人の心より生まれし悲しき化身よ」

 

そういって私は剣を振り払い、そして鞘に収める。争いは終わった。用済みの私はただ去るのみ。

私の前に立ちふさがる魔法使いに、思わず歩みを止める。

 

「勇者さま。使命の遂行、心より祝福申し上げます。その旅路は伝説として語り継ぐこと、ここに約束いたしましょう」

 

そういう彼は、最初にあった時の美しい姿のままで、何一つ変わりはなかった。

この長き旅路に最後まで付き合ってくれた彼にお礼をいう。

 

「ありがとう。私もあなたと共にいられてよかった。私は幸せ者ですね」

 

そういって微笑む私に、なぜか彼はこれまで一度としてみたこともなかった悲しげな表情をする。

そして魔法使いはその手にもつ杖を掲げる。そこから溢れ出る魔力は尋常ならざるもので、

私は驚く。これほどの魔力を彼が持っているなんて私は知らなかった。

なぜ?戦いは終わった。彼がなにをしようとしているのか私には分からなかった。

ただ言えることがあるとするならば、なぜ魔王戦の時にその魔力を使わなかったのか...

 

「さようなら、勇者。悲しき人よ」

 

私は彼の初めて見る顔に、今日はまったくもって初めてのことばかりだ。

そんな、この状況では見当違いともいえる考えに思わず笑みを浮かべてしまう。

 

光があった。あたりはシロで埋め尽くされる。そうして最後に日の丸を見た気がしてそこで...

 

 

 

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ピリリリリピリリリリリ

 

目覚ましの音で目を覚ます。私の手は目覚まし時計の上に乗っていた。

今日も朝から学校だ。今日はたしかテストの日だったかな。

うーん。背伸びをすると体が言いようのない気持ちよさが広がる。

そうしていつもどおりの日常が始まるのだ。

お母さんのご飯の声が聴こえる。今日も食パンに目玉焼きにサラダだろう。

 

いつも食べているはずなのに、なぜか久しぶりに食べるような気がした。

 

妹が二階から降りてくる。目をこすりながらで夜ふかしでもしてたのだろうか。

お父さんの顔を洗ってきなさいという声に片手を振って挨拶をする妹がいて、

なぜだろう。私は今とてつもないノスタルジーを感じていた。そして帰ってきたんだという気持ちになる。

 

わからない。なぜかはわからないがとても安心している気がする。

いつもの光景なのに、それがたまらない嬉しくて幸せで、なんでか知らないけど涙まで出てきてしまう。

 

お母さんもお父さんも驚いていて、こっちに来た妹も目を大きくしてびっくりしている。

私もびっくりだ。家族に心配されてしまって、でもそれがたまらなく幸せで、言葉にならない。

美味しい朝ごはんも涙と幸せで味がわからない。私はただただ、

 

「なんでもないっ、なんでもないわっっ...」

 

そうつぶやくことしかできなかった。

 

 

 

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―――全てを識る魔法使い。それは夢か幻か。ただその結末だけは確かにそこに存在した。

 

「さあさあ、皆々様。僕は魔法使い。勇者の冒険の旅路を付きゆくもの。そして語り継ぐもの」

 

魔法使いは笑う。美しい姿で人を誑かすその所作で言葉を歌う。

 

「始まりがあれば終わりもある。さて、ではその間は、選ばれなかった選択はどうなったのだろうね」

 

それを知っているのは僕だけかな?そう続ける彼はやはり笑顔のままでいて、

 

「僕は語り継ぐもの。そしてそれには受け聴く者が必要でね。どうだろう?全ては皆々様次第だ」

 

知るも自由。知らぬも自由。ただ僕は求める者に語り継ぐだけ。

 

そういって魔法使いは姿を隠す。あとに残るのは暗闇のなか浮かぶ一冊の本だけ。

 

さて、その本の厚さを知るのはきっと、それを求めるものの声だけだろう。


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