僕のヒーローアカデミア ~悪戯は人のために~   作:護廷隊

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明けましておめでとうございます、護廷隊です。本年もよろしくおねがいします。旧年の末ほどから始まった本作を読んでいただきありがとうございます。思いつきで書き始めたのでどこかで終わるんじゃないかと思っていたのですが、とりあえず2桁まで進めることができた自分に驚きが隠せないです。これからも拙作をご愛読いただけますようよろしくお願いします。


11話 Hold the YU-EI Festivals

雄英体育祭。それは雄英高校生徒たちにとって最大のチャンスの場。ヒーロー科にとっては就職アピール、普通科にとってはヒーロー科への編入チャンスとなる。もちろんそれは生徒と一部のヒーロー達だけの話で、一般の人たちにとっては、様々な個性で派手に動き回る映像は中々お目に掛かれるものではなく、未来の偉大なヒーローの卵を早い時期から見ることができるただの盛大なお祭りである。

 

「体育祭が就職アピールってのは、なかなか面白いね。」

「ヒーローならではだよ。」

 

後ろの芦戸に返事をしながら相澤の話を聞いていく。なんでも今年は警備をより強化し、開催することで雄英高校は大丈夫ということにしたいという裏の事情まで話してくれたが生徒にそれを話しても良いのかは愚考であろうか。

そして昼休憩。春水はいつもと同じ切島と瀬呂、爆豪と昼ごはんを食べていた。話題はもちろんだが、体育祭についてであり、食堂のそこかしこから体育祭の関連ワードが聞こえてくる。

 

「体育祭な~、いつもテレビで見てたけどついに俺も映る側か~。」

「こういう時に目立つ個性はいいよなぁ。目に付きやすいからよ。」

「どんな個性でも、優勝すれば嫌でも目立つと思うよ。」

「となると、やっぱ狙うは優勝だよなぁ。」

「皆それ目指すから大変になるんだけどなぁ。」

 

瀬呂と切島、春水はその後も話を膨らましていくが、爆豪は黙々と目の前の激辛麻婆豆腐丼を食していた。

 

放課後―――

1年A組の教室前には人がごった返していた。爆豪が割って入るとどうにも敵情視察とのことであった。

 

「意味ネェからはよどけ、モブども。」

「とりあえず、人のことモブって言うのやめなよ。」

 

流れる様に出る爆豪からのモブ発言と飯田のツッコミをいつものことと聞きながら春水は遠目から様子をうかがう。席がドアに近いはずの春水がどうして教室を出れていないのかというと、ロッカーに荷物を取りに行き百と話している内に廊下に人が集まったということである。

 

「こういうの見ると幻滅しちゃうな。知ってるか?体育祭のリザルトによっちゃヒーロー科編入を検討してくれるんだって。」

 

廊下に立っている紫髪の少年の声が聞こえてくる。

 

「少なくとも、上ばっか見てないで足元もよく見ておかないと足元掬っちまうぞっていう宣戦布告しに来たつもり。」

 

その言葉を掛けられた爆豪はと言えば、上に登れば問題ないという言葉を残して教室を出ていく。クラスメイトは慣れているが、初めて見る普通科の生徒達からしたらヒーロー科らしからぬ言動にフラストレーションは溜まるばかりである。

 

「ごめんねぇ、爆豪くんも普段はあんなことは言わないんだけど体育祭で気が昂っているみたいだ。」

 

そんな中で春水は廊下の前にいる生徒たちの下に歩んでいく。

 

「彼もそこまで悪い人じゃないんだけどね。口の悪さだけ気にしなければただ上昇志向が強いだけの僕たちと同じさ。」

「どうでもいいよ、言いたいこと言いたかっただけだし。あんたたち以外にもトップ狙ってるやつがいること、忘れるなよ。」

 

その言葉を最後に普通科の生徒は去って行く。その後、あまりの人盛りに先生がやってきて廊下の生徒たちは教室に戻されていき、1年A組の生徒達も家に帰って行った。それから各生徒は普段の勉強に加え、体育祭に向けた体及び個性の鍛錬に励んでいく。

学校も申し込みをすれば訓練場を開けてくれるため何人かは申し込み訓練をしているようだ。春水はというと自宅の一室にて袴を着用し、個性で出した刀を膝上に置き『刃禅』を組んでいた。部屋は薄暗く、ロウソクが2本風にも揺られずただ仄かに燃えている。執事やメイドが近くにいないのか部屋の外からも音が一切しない。

気付けば、部屋ではなく別の所に移動しており、何も見えない闇に覆われていた。すると突然、後ろから誰かに抱き着かれると同時に声を掛けられる。

 

「何だい、また来たのかい?総蔵佐。」

「そう邪険にしないでよ。お花」

 

後ろに振り向きながら名前を呼ぶと、そこには花魁の格好に黒い眼帯を付けた女性が立っていた。死神時代に共に戦った斬魄刀が姿形をもった『花天狂骨』その人である。こちらの世界に来てから初めて刃禅をした時に再会し、それ以降は以前に約束した通り、お花の『遊び』に付き合う時間をとるようにしていた。そしてなぜかこちらの世界に来た時はかつての大人の姿に戻ってしまっている。

 

「確かに遊んでほしいとは言ったけどね、童と遊び続ける趣味はないんだよ。」

「そういじわるなこと言わないで欲しいんだけどねぇ。ほら、こっちでは大人じゃないか。」

「こっちの世界だけじゃないかい。」

「そう言われてもねぇ。」

「・・・精神と体が合ってないんだよ・・・あんたは。」

 

春水から離れて煙管を燻ぶり始めたお花は明後日の方を見ながら話を続ける。

 

「現世ではお祭りがあるそうだね。」

「ん?」

「今度は、据え膳はやめておくれよ。この前のあの黒いの、久々に楽しめそうだったのに。」

「あの時は周りも少し危なかったからね。」

「ふん、あんたなら迷惑かけずにできただろうに。」

「どうだろうねぇ?」

「白々しいね。次はわっちも楽しませておくれよ。」

「頑張ってみるよ。」

 

視界に霞が掛かったかと思うと、もとの部屋に戻っていた。ロウソクを消して刃禅をやめ、部屋の電気をつける。禅が終わると汗で袴がしっとりとしているため、近くに置いていた着替えを持ち風呂場に向かった。誰も入っていないことを脱衣場で確認し風呂に入る。汗を流し終わったあと、それなりに広い風呂につかると疲れが抜けだしているかのようにややリラックスした表情に変わる。徐に周りを見ると、

 

(いつの時代も・・・風呂はいいねぇ。)

 

湯船に注がれる湯と湯船からは少し柚子の香りが漂ってくる。今日の入浴剤に柚子が使われているのだろうか。体を少し動くだけで淵からは湯が零れ落ちていく。静かな浴室には天井から水滴の落ちる音が時折聞こえる。嗅覚と聴覚、目を閉じれば視覚も余計な情報を取り入れない分リラックス効果が強く感じられる。少しの浮遊感を脳に感じながら京楽は物思いに耽る。

 

(体育祭・・・ね・・・)

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

「皆準備はできているかー!?」

 

体育祭当日、1年A組の控室では委員長の飯田がいつもの如く皆に声を掛けていた。服装は公平を期すためとのことで全員体操服を着用している。開催までもう少しということで控室の中もやや緊張感に包まれている。その中でも、紅白の髪色をした轟が緑谷に近づいていき宣戦布告していた。

 

所かわって会場ではプレゼントマイクの実況で盛り上がっていた。

 

『雄英体育祭!ヒーローの卵たちが我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!どうせオメェーラこいつら目当てなんだろ!?ヴィランの襲撃を受けたにも関わらず鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!1年A組だろぉぉぉ!!』

 

その声と共にゲートが開くと大きな歓声とともに1年A組の面々がステージに入ってくる。

 

「すごい歓声だねぇ。」

「実況もプレゼントマイク先生のようですから皆さんのテンションも高いのでしょうね。」

 

続いて他のクラスも入ってきてグラウンドに全クラスが整列すると、生徒たちの前にある舞台には黒い鞭をもったミッドナイト先生が上ってくる。

 

「高校に18禁ヒーローがいていいのか?」

「いい!」

「情操教育目的になるんじゃないかなぁ。」

「そこ!静かにしなさい。選手宣誓!生徒代表、爆豪勝己。」

 

持っていた鞭を一閃して生徒達を静かにさせると開会式を進めるために爆豪を呼びつけステージに上がらせる。

 

「彼が選手宣誓をするのかい?」

「あいつ一応入試で1位だったからな。」

ヒーロー科の入試な(・・・・・・・・・)

 

横から聞いていたらしい普通科の女子が嘆息しながらこちらに声を掛ける。

 

「せんせい。オレが1位になる。」

「絶対やると思った!!!」

 

この時、1年A組の心は一つになった。

 

「調子のんなよA組オラァ!!」

「何故品位を貶めるようなことをするんだ!!」

「このヘドロヤロー!!」

「せめて跳ねの良い踏み台になってくれ」

 

首を親指で掻き切るようなハンドサインをした爆豪は、何かの覚悟をもった顔でステージから降りて列に戻ってきた。

 

(控室でもそうだったけど、皆何かしらの覚悟を持ってるんだねぇ。)

(あんたにはないのかい?)

(皆ほど強い覚悟はないかなぁ。強いて言えば、百ちゃんの雄姿を近くからカメラに収めることかなぁ。)

 

「あでっ!」

 

花天狂骨と話していた春水の後頭部を軽い衝撃が襲い、後ろを振り返るも後ろには何食わぬ顔で並んでいる常闇しかいない。

 

「どうかしたか?」

「いや、後ろに何か当たらなったかい?」

「俺には何も見えなかったが?」

「そうかい。」

 

後ろ頭を少し掻きながら前に向き直る。所は少し離れて女子列。

 

「どしたのヤオモモ手から銃口なんて出して。」

「いえ、なんとなく。」

 

そこには手から銃口を出していた百とそれについて聞いている芦戸の姿があった。

 

(なんでしょう、少し嫌な気がしてついついお兄様に空気砲を撃ってしまいましたわ。)

「さーてそれじゃあ早速第一種目行きましょう!!」

 

そんな生徒達の様子を無視しながらミッドナイトは事を進めていく。

 

「雄英ってなんでも早速だね」

「いわゆる予選よ!毎年ここで多くの者が涙を呑むわ(ティアドリンク)!さて運命の第一種目!!今年は……」

 

お茶子のツッコミを無視したミッドナイトの背後に映し出されたスクリーンと共に、ドラムロールが生徒と観客を煽る。

 

「コレ!」

 

バンッ、とドラムロールと電光掲示板の回転が止まると『障害物競争』とデカデカと表示される。

 

「計11クラスでの総当たりレースよ!コースはこのスタジアムの外周約4km!我が校は自由さが売り文句!ウフフ……コースさえ守れば構わないわ!」

「何をしたって・・・ね。」

 

予選から色々と起こりそうな未来に思いを馳せ、春水はスタート地点に向かうのだった。

 

 

 

 

 




読了ありがとうございました。次回から本格的な体育祭になるかと思います。
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