サブタイトルも何かOSRにできないかなと考えたりはするんですけど、OSRって難しいですね。原作開始までもう少し、プロローグにお付き合いください。
家族の温もりを分かち合った後、春水は療養に励むことにした。どうやらこの世界は自分の知っている現世とは少し違う所があるようで調べたいのだが、如何せん体が言うことを聞いてくれない。そのため、出してくれる料理は全部食べ、リハビリを熟していくことになった。また、食事やリハビリを通して外の情報や内の情報も少しずつではあるが集めることができた。まず、自分は高校1年生で雄英高校に通っており、訓練中の個性事故というもので意識不明の重体が半年以上続いたとのことだ。自分がいるこの家は八百万家というらしい。どうも財閥の家なのか、敷地が広く護廷隊舎一つ分くらいは余裕であった。自宅に講堂がある家は如何なものかと考えたりもした。次に、家族なのだが、父の八百万十、母の八百万春江、一つ下の妹の八百万百、そして京楽春水改め八百万春水・高校1年生の4人家族のようだ。といっても、家族以外に使用人も多く家の中はそれなりに人が見られたが。
そして、体も軽く動かせるようになると春水は邸内をぶらつくようになった。そのぶらつく中で、使用人たちが水を手から出したり、口から火を出しているのを見た春水は驚いた。よく見れば、皆が何かしら超能力を使えており、使用人の一人に尋ねると自分の『個性』だと説明してくれた。
(なるほど、あの時医者が言ってた『個性』ってのはこのことか。一人一人が特色を持っているから個性。面白い言葉遊びだね。僕はどんなことができたのか・・・。)
その日の夜、春水は自分はどんな個性だったのか百に聞いてみた。
「お兄様の個性ですか?確か、吸収とお母さまが言ってらっしゃったような。まさか、個性をお使いになられたのですか?」
「いやぁ、何もないんだけどねぇ。周りが個性を使っているのを見ると使いたくなっちゃうというか。」
「その気持ちは分からなくはないですけど、勝手に個性を使用するのは罪に問われますよ。ましてや、お兄様はヒーロー課の学生なのですから。」
「大丈夫でしょ。それより、僕ってヒーロー課だったのかい?」
「それも忘れてしまっていたのですか?お兄様いつも担任の教師が睨んできて個性が使えないとおっしゃっていたじゃありませんか。」
「いやぁ、雄英高校の学生であることは覚えていたんだけど、それ以外はさっぱりでね。困ったもんだよ。」
「私もお兄様が個性を使っている場面をしっかりと見たことがなかったので・・・。お力になれずすみません。」
「大丈夫だよ、百ちゃん。おかげで僕がどんな個性を使っているのか分かったんだから。」
自身の個性が『吸収』と聞いた春水は、どのような物をどのように吸収するのか考えながら百との会話を続けていった。百はというと、どうやら今年雄英高校を受験するようで、自分の後輩に必ずなると息巻いていた。
――――――――――――
後日、今日は回復した旨を雄英高校に伝えるため学校にきていた。これまで袴で通していた春水としては、洋服それも制服を着ることなんて義骸でもなかった経験で、どこか真央霊術院のことを思い出していた。
(まさか、またこうして学院に行くことになるとはね。)
事前にアポは取っていたため、職員室に向かうとすぐに校長室に通された。
「八百万君、まずは回復おめでとう。あれから体調はどうだい?」
「まぁ、今のところは問題ないかな。」
春水は校長である根津と話しながら、自分の目覚めてから今日までのことを簡潔に説明していた。
「うんうん、順調に回復しているみたいだね。ただ、親御さんからの連絡にあったように個性がまだ使えていないみたいだね。」
「一応『吸収』だってことは分かったんだけど、どんな感じに吸収していたのかが分からないままで困ってるんだよ。」
「そこで!君の個性使用時の映像を今日は見てもらおうと思うんだ。」
「それは助かる。是非、見せてもらいたい。」
春水としてもこの体の個性を見ることができるまたとないチャンスに喰いつくように根津校長にお願いした。
「いいのさ。迷える生徒を助けるのも教師の役目だからね。それじゃ、これがそのビデオだよ。」
言うが早いか、根津は天井からスクリーンを下ろしてきてビデオを再生し始めた。映像には雄英高校の体操服を着た春水の姿と白い紙が二枚映されていた。
「これは、個性訓練の映像で今まで君は片方の手で掴めるものしか吸収できなかったんだけど、この映像では両方の手で同時に吸収できるように訓練をしているものさ。」
「僕は掌からしか吸収ができなかったのかい?」
「そう聞いているよ。容量としては二階建て家屋1件分だったかな。片手だけなら。」
随分と狭い範囲だけでしか吸収できないのだなと思うと同時に容量はそれなりにあるのだなと感じる春水。映像では2枚の紙が春水の掌に吸われたと思うと、春水の体が震えだし白目を向きながら後ろに倒れていくのであった。
「これが君が長い間療養が必要となった個性事故の場面でもある。」
「僕に・・何が起こったのか分かるかな?」
「おそらくだけど、両手での吸収に脳が追い付かなかったかキャパオーバーのどちらかだと専門機関は考えているよ。」
その一言を受け、春水はしばらく黙りこみ、提案をした。
「根津校長、紙を一枚頂いてもいいかな。」
「・・・やってみるんだね。」
根津は春水の前にA4サイズの白紙を置き、春水は紙に掌を置いて念じてみた。
(さっきの映像では皺つきながら掌に吸収されていった。おそらく掃除機のように吸っている可能性が高い。なら、掌で吸い取るように・・・!)
瞬間、紙は皺付き掌から吸われていった。春水は体の中に何かが溜まる感覚を感じながら個性を使用できたことに一つの達成感を感じていた。それと同時に、自身の個性に一つの仮説を立てた。
「できたみたいだね。」
「へえ、これが個性か。・・・うん、校長紙をもう2枚もらってもいいかな。」
「あの映像を見せた意味が分かってないのかい?」
春水の提案に対して根津は難色を示しながら、目を据わらせた。
「個性の危険性ってことでしょう?大丈夫、理解しているよ。それに、今のと前回、それと校長先生の発言からある仮説が出てきたからちょっと実験させてもらいたいんだよ。」
春水は真剣な表情で根津に頼み込む。その瞳に覚悟を決めているのが見えたのか、根津はため息をつきながら妥協案を出した。
「分かったよ。ただし、危険だと判断したらすぐに止められるように一人立会人を呼ばせてもらうよ。」
「それでさせてもらえるのなら。」
根津はすぐに電話を掛けて、一人の教員を呼び出した。
「授業中に申し訳ない、相澤先生。」
「大丈夫です。それに俺もこいつの担任でもありますから、無茶をするなら止めなきゃいけない。」
校長室に入ってきたのは無精ひげを生やした猫背の男であった。
「でだ、八百万。前回は俺も監督不行き届きもあったから申し訳ないと思うが、今回はどういう考えがあってやろうとしている。」
「言わなきゃダメかい?」
「言わないなら個性は使わせん。」
しばしの静寂が両者を包み込んだ後、春水はため息をついた。
「しょうがない。説明するとしよう。まず、僕の個性『吸収』。これは、手に触れたものなら限界はあるけどなんでも吸収するというものだ。今僕は紙を吸収してみたけど、吸ってみると体の中に何かが溜まる感じがしたんだ。この溜まるってのがミソだ。溜まるものはどうしたらいい?そう、吐き出さなきゃいけない。見た所、僕はこれまで吸収ばかりして、吐き出すことがなかったんだろうね。それで積もりに積もって・・・爆発した。自分の命を守るために意識を失わせてね。このことから、僕の個性は『吸収』だけじゃなくて、『放出』する力もあると思うんだけど、どうだろう?」
根津と相澤は黙々と春水の考えを聞き、二人で目を合わせた。
「一理あるな。この映像を撮る前からお前は体調不良を訴えることが多かった。今思えばあれは、SOS信号だった可能性がある。」
「それに、溜め込むことでキャパオーバーしたと考えると色々繋がる要素も多いしね。ということは、今から」
「そう、両方から吸収してすぐに放出する。それをやってみようと思う。」
言いながら両掌を紙の上に置いた。
「つらくなったらすぐに言え。個性を消す。」
「君はそういう個性もちなんだね。」
「記憶の混乱は事実のようだな。そうだ、細かい説明はあとでしてやるからやってみろ。」
「りょうかい。」
春水は、両掌に神経を集中させ、先ほどと同じように掃除機をイメージしながら個性を発動させた。するとすぐに、2枚の紙は吸収されて何かが器に溜まる感覚を感じ取る。今度はその器から今出した手にその何かを出すようにイメージすると手に熱を帯び始めた。と、同時に初めてのことによる脳への負荷から頭痛が起き始める。苦しそうな表情をする春水を目に、相澤は個性を、根津は連絡を入れようとしたその時。手から目を遮るほどの光が現れたかと思うとすぐに消え、春水の手には二振りの何かが握られていた。
「これは・・・。」
眩しさから回復した二人がそう呟いたのか、春水がモノを見て呟いたのかは分からない。少なくとも、彼の手には刀が二振り、より具体的にいうなら、京楽春水はじめ全ての死神が持つ浅打が一振りと、彼と彼の親友ともいえる男だけが持っていた脇差が1振り握られていた。
(また、君たちと共に戦えるのかい。)
京楽は自身が出した二振りの愛刀に似た刀に、死神時代の相棒を少し重ね哀愁を漂わせたのだった。
読んでくださりありがとうございました。京楽の個性が吸収と放出で書ききった後に、あれ、これ双魚理じゃねってなりました。