大学生になった瞬間、平穏は崩れ去りました   作:99.9%果汁

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二度あることは三度あるって言うけど、二度目が無い場合は詰み

「ふんふ~ん」

 

 

 

 珍しく今日は、4コマの授業中3コマが休講になったため、一限目の授業が終わるや否や、そそくさと大学を後にした。

 しかも、今日はバイトも休み。バンド練や他バンドの練習を見るなどの予定も特に入れていない。

 かなり久しぶりの完全なオフ日だ。

 

 大学の帰りに近所のスーパーで飲み物とお菓子を少々。ついでに、数日分の食料も買い、家に帰った。

 さらに、シャワーも浴び、寝間着の状態に戻り、机の上にはジュースとスナック菓子、手元にはベースが一本。さぁ、今日は何を練習しようかと、スマホでYouTubeを開いた瞬間、YouTubeの画面とは言えない画面に切り替わる。ようするに電話が掛かってきた。

 

 そして、画面の中に表示された文字は『黒川伊澄』という面倒事の予兆を促す4文字。

 

 

 

「ふぅ…よしっ、何も見なかったことにして寝よう!」

 

 

 

 手に持ったベースを戻し、布団へと足を運ぶ。

 僕は何も見てない。面倒に巻き込まれるくらいなら夢の中へ行こう。

 

 そう言い聞かせながら布団に潜った瞬間、質素なインターホンの音が流れる。タイミング的に言えば、かなり最悪と言っていいだろう。

 普通に考えれば、ベタ過ぎて出ていくのも萎える。

 

 

 

『桜岡さん、○○運輸でーす!荷物お持ちしましたー!』

 

「よし」

 

 

 

 漫画やアニメだと、今の流れ的には玄関ドアの先には、伊澄君がいるんだろうけど、あいにく声の主的に全く伊澄君ではないことは分かった。それだけで安堵できる。

 面倒ではあるが、身体を起こし、玄関のドアを開けた。

 

 

 

「あ、やっぱりいた。電話したんだからちゃんと出てよ~」

 

「」

 

 

 

 ドアの先にはいるはずのない伊澄君が不敵な笑みを浮かべていた。

 え?なんでいるの?なんなら配達の人は?

 

 

 

「あ、荷物とかそういうの嘘だから」

 

「は?」

 

「いやー、あんなベタな奴で出てくるとは思わなかったけど、案外結羽ってチョロいよね~」

 

 

 

 いや、待て待て。なんで僕の家の住所を知っている。僕の住所知ってるのって美咲とハロハピだけのはずだぞ!

 

 

 

「あ、住所はまりなさんから聞いたよ」

 

「」

 

 

 

 あの悪魔はどれだけ人のプライベートを晒し続けるんでしょうか?

 てか、僕あの人になんかしたかな?あんまり覚えが……。

 

 

 

「ちなみに、この前遅刻した罰だって言ってたよ」

 

 

 

 あったわ。しっかりとあったわ。

 いや、あの、遅刻したのにも理由があるんですよ?それなりに深い事情というか事件が。

 

 一応、冬辺りから髪を染めたりとしてるじゃないですか。それはもうピンクに水色に緑色、黄色、銀色と、なんともまぁ5色もあって1人で戦隊ヒーローが出来ちゃうね!ってくらいには時間と手間を掛けて辱めも受けた出来事があったんですよ。

 まぁ、これに関しては過去の事なんでね?もう諦めました。ぶっちゃけね。

 

 ただ、あの時の状況を配信していたせいで、今じゃ街を歩けば「あの人ってアレじゃね?」とか、「サウブロの人じゃん」とか「パスパレに気に入られてる奴じゃん」とか色々と指を刺され、気づかれ、声を掛けられるんですよ。

 そりゃあもう、天皇陛下さん達もビックリみたいな?パパラッチを受ける世界的スターも「He's crazy!」って口にするくらいには声をかけられるんですよ。僕も一度パパラッチのカメラ奪って逃走してやろうかな。あ、ちなみにここまでは流石に冗談ですからね。

 こんな見た目の人を天皇様が観てるとか悪影響しかないんで、もし観てるなら今すぐSPさんに止めさせて貰いなさい。そうしないと僕が撃ち抜かれます。

 

 まぁ、そんな事が最近多くありまして、遅刻も仕方ないよねってまりなさんに伝えたところ、笑顔で某Vtuber大好きプロレスラーの大○ス○ル式羊殺しを食らいました。

 

 まさか、あんな形で食らう事になるとは思っていなかった。 

 

 

 

「んで?今日は何用で?」

 

「んー、特に用は無いんだけど、1人で寂しくしてないかなーって」

 

「君は僕の彼女かなんかなの?」

 

「違うよ?僕男だし、結羽が彼氏とかちょっと同性として頼りないよね」

 

「僕、わざわざ人の家来てまで喧嘩売ってくるスタイルの人初めて見た」

 

「てかさぁ、お客さんが来たのにお茶の一つ出さないのぉ~?」

 

「ここまで、図々しいお客も初めてかも」

 

 

 

 伊澄君はそう言いながらずかずかと部屋の中に入っていき、まるで自分の部屋のようにくつろぎ始めた。

 結局何しに来たのこの人。僕、寝るかベース弄るかしたいんだけど。

 

 

 

「で、本当に何しに来たの?」

 

「いやー、今年ももうあと少しじゃん?だから、今年最後のライブはいつにしようかと思って」

 

「最後のライブはって今年、もう半月しかないと思うんだけど?」

 

「とりあえずクリスマスにでもやろうかって思ったんだけど、結羽は…あ、聞かなくても無いか」

 

「おいこら」

 

 

 

 何が『聞かなくても無いか』だよ。一応、クリスマスですよ?僕にだって予定の1つや2つくらいありますとも。見くびられては困るんだけども?

 ……え?じゃあ、予定ってなんだって?

 フッ…、そんなの聞かなくても分かるだろ。一日中、引き籠もってチキン食べながらはしごアニメしますが?同士なら皆そういう過ごし方が一般的でしょ?

 え?違う?同士にするなって?はっはっは、面白いことを言う。彼女もいない奴が1人歩いてたら、後ろ指さされて鼻で笑われますわ。

 じゃあ、彼女作ればいいじゃんって?出来たら苦労はしないんだよ!!(血涙)

 

 

 

 

「結羽、さっきから百面相してるけど大丈夫そ?」

 

「これが大丈夫に見える?」

 

「全く見えない。…まぁ、他のメンバーにも聞いて決まるとは思うんだけど、とりあえずクリスマスは開けといてね」

 

 

 

 伊澄君はそう言いながら本棚の漫画本を物色し、一冊を取り出すやいなや読み始めた。え?そのまま残るの?

 てか、何普通に居座ってるんですか?何普通にくつろいじゃってるんですか。

 あと、そのジュースとお菓子どっから出した。

 

 

 

「あ、いただいてるよ」

 

「いただいてるよじゃないと思う」

 

「んー、僕的にはド○ペよりペ○シの気分だったんだけどな~」

 

「いや何、人の飲み物勝手に飲んだ上で文句言ってんだよ」

 

「まぁまぁ、ほら結羽もいつまでも立ってないで座りなよ」

 

「だからここ、僕の家だからね?」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「じゃあ、僕帰るねー」

 

「いや、ほんとに何しに来たの君。人ん家の漫画読みながらお菓子とド○ペいただきにきただけじゃん」

 

「美味しかったよー。今度来たときはペ○シの準備よろしくねー」

 

「よろしくねー、じゃなく自分で買って来いよ!てか、また来るのかよ!」

 

「あははー」

 

 

 

 結局、お昼過ぎまで人の家で漫画を読んでいた伊澄君は帰って行った。ほんと何しに来たの君。ただ、漫画読みに来た人になってるからね?

 いや、僕としてもいつもの様にダル絡み的な奴がなかったからいいんだけどね?

 最初は何してくるか疑ってた僕も途中からベースの練習したり、買ってきたラノベ読んだりするくらいには気を緩ませてたけどさ、本当に何しに来たの?

 こう言ってはなんだけど先が怖いからね?振りじゃないからね?

 

 

 

「あ、そういえばさっき将斗にもクリスマスの予定聞いたら、クリスマスなら大丈夫だって」

 

「相変わらず行動が早いことで」

 

「てことで、まりなさんにも連絡してクリスマスライブ開催決定したから」

 

「…は?」

 

「ちなみに、セトリはこれから決めていくから完成したら連絡するね」

 

「そう言ってライブ前日とかに連絡するパターンだよね。もうその手は分かってるんだよ?」

 

「あはは、もうそんな事はしないよー。……多分」

 

「ねぇ、今多分って言った?多分って」

 

「じゃあ、また来るねー!」

 

 

 

 またもや、唐突ライブが決まってしまった。いやね、ライブ自体は嫌いじゃないのよ。本当に。

 そりゃあ楽しいし、練習してきた曲を披露出来る訳だし、皆と騒げるしね。すっごく楽しいのよ。

 ただ、さっきも言ったようにセトリが出来た上でこちらに来るのがかなり遅いわけで、大体僕がヒィヒィ言いながらやってるって言うね。

 歌詞だって地味にちゃんと覚えるの大変なんですよ。演出的にも曲調だったりアレンジしたりとかだって一応はしてるんですよ。もうほんと、毎回が助けてド○えもん状態でやってるんだから、たまには少しくらい余裕をください。

 

 

 

「なんか、ドッと疲れた。一先ず、昼寝するか…」

 

 

 

 布団に入ろうとした瞬間、再度玄関のチャイムがなった。今度はなんなんだ。

 

 

 

『桜岡さん、○○運輸でーす!荷物お持ちしましたー!』

 

 

 

 ねぇ、嘘でしょ?また、来たの?『また来るねー』って言ってから5分経ってないからね?君、いつからそんなポンコツキャラになったの?ねぇ、知ってる?男のポンコツキャラってかなりのイケメンじゃない限り許されないんだよ?後ろから刺されるんだよ。知ってた?ちなみにソースは僕。

 てか、忘れ物かなんか?普通に来てよ。なんでまた同じ音声で来ちゃったのよ。流石の僕でもその日に2度も来たら覚えるよ?

 とりあえず、面倒くさいし居留守するか。残念ですが、僕はいませーん、本日はお帰りくださーい。

 

 

 

『桜岡さん、○○運輸でーす!荷物お持ちしましたー!』

 

 

 

 しつこく鳴るチャイムと玄関ドア先からの音声。こちとら、無駄な疲れが来たせいで少し寝かせて保身ですけど。てか、寝かせてくれません?

 忘れ物ならちゃんと明日渡してあげるから財布とかじゃ無さそうだし、明日にしてくれ。

 そう思いながら伊澄君にLINEを送るが、一切既読がつかない。

 さらには、鳴り止まない外からの音とチャイム。流石の僕も少し苛ついてきた。

 

 

 

「はぁ…、今度は何用d…」

 

「あ、桜岡さん荷物お持ちしましたー」

 

「」

 

「こちらに判子またはサインお願いしまーす」

 

「あ、はい…ありがとうございます」

 

「こちら荷物なんで確かに渡しましたー」

 

「あ、はい」

 

「じゃあ、失礼しまーす。……チッ、イルナラサッサトデテコイヨ。インキャガヨ」

 

「」

 

 

 

 ……最近の配達員さんって怖いんですね。いや、僕が疑ってすぐに出て行かなかったのが悪いんだけどさ。悪口言わなくても良くないですか?僕、泣きますよ?泣いちゃいますからね?

 しかも、配達員さんの見た目も相まって少しちびりそうになったのは内緒です。

 

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