その全容や如何に!?
広いが無機質なコンクリート部屋の中央に円柱の水槽がある。その水槽は透き通った朱色の液体に満たされており、時折下方から空胞が湧いている。泡の一つが高い丘のように盛り上がった、白い円形のものに当たって、幾つもの泡に分裂した。更に湧き上がった泡はそれの中央あたりのピンク色の突起を刺激した。
(んっ…)
液体に浮かぶ一人の少女、イロハは瞼を開く。
(此処はいつ入っても落ち着くわ)
イロハは自分の右腕に目を向けてから昔から何度も見た、無駄はないが殺風景な部屋、もとい整備室もう一度ぐるりと見渡した。
(右腕の接触不良がGR会のコンピュータウイルスによるものだったとはねぇ。一時的にとはいえ死んだふりをするウイルスを作るなんて、GR会の技術はとんでもないわ… まあ、早期に発見できたのが不幸中の幸いかな)
米国のイエローストン国立公園は、紅い終局以来立ち入りが禁止されている。それ故、以前ならなら観光客の多く訪れる季節だと言うのに、ひっそりと静まり返ってていた。野生動物すらいなくなってしまったのか、虫の羽音すら稀にしか聞こえない。時折地鳴りがして石が踊る。あたりは立ち籠めるガスで霞んでいた。と、ひときわ大きく地が揺れたかと思うと、そこ一帯は轟音とともに爆炎に包まれた。空高く登る分厚い火山灰の雲は雷鳴を轟かせ、米本土をじわりじわりと包み込んでいった。
日本政府は米国に救援を送ろうにも、それが出来ない状態にあった。何故なら、イエローストン噴火の翌日、突如として日本中の火山活動が活性化したからだ。この影響で富士山が噴火し、周辺地域は甚大な被害を被った。
世界中でもこの様な災害が多発し、各国は混乱に陥っていた。都市部は崩れ落ちたビルが積み重なり交通を遮断し、発電所が暴走。更には地割れに街の一角がのみこまれて消滅するなどの、壊滅的被害を受けている。
「赤銅司令、プランに必要なすべての準備が整いました」
司令官室の椅子に深く腰を掛けていた赤銅は立ち上がる。
「時間が無い、急ごう清流君」
清流は頷くと急ぎ足に彼と共に司令室を後にした。
エレベーターで地下深くに降り立った二人は、格納庫を埋め尽くす一つの巨大な宇宙船を見上げた。
「物質増殖装置による反物質の大量生産が無ければ、この宇宙船は飛び立つことすら出来ませんでした」
「ああ、それもこれも全ては君があってのことだよ。君がいなかったらプランOMEGAは完成しなかったのだ。さあ、行こう紺碧の国へ」
二人は互いの手を固く握り、宇宙船の乗り込み用の赤い橋を渡っていった。
文明が滅びる寸前、多くの人々が光の柱が空高く伸びるのを目撃したそうだ。
次回予告
飛び立つ宇宙船は計画を実行に移す。
地上に残されたイロハとジロウ。
果たして二人の運命やいかに!
最終話「終局」
次話もお楽しみに!