六二式改造人間   作:ヒガシリク

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基地の住居で楽しく食事をするイロハとジロウ。その束の間の平和は敵襲を知らせる警報と共に破られた。2人の改造人間の激闘が今はじまる!


敵襲

昼時の基地の売店には、長蛇の列ができていた。料理を作るマシンが故障したらしく、性能の劣る代理のマシンと補助の料理人達が忙しそうにしている。イロハとジロウは食券を片手に、待ちくたびれた様子で雑談をしていた。くたびれたと言っても、彼女らは改造人間なので疲れているわけではない。精神的な問題である。いくら体が機械化されても、心までは機械の様にはならないのだ。

 

 

 

「ねえ、いくら自動調理マシンが故障したからって、待ち時間長すぎよ!今日はせっかく訓練が無い日なのに!」

短気なイロハが罪のないジロウに、八つ当たりの様に強い口調で言った。

「俺に当たらないでくれよ。たまにはこう言うこともあるさ」

「アタシ部屋に戻ってくるわ」

イロハはそう言いながらジロウに自分の分の食券を渡して微笑む。

「これヨロシク頼むわよ!」

ジロウは自分に拒否権がないことを悟った。

 

 

10分後にジロウはやっとのことで店員から昼食を受け取ると、イロハと生活している住居に戻る。

 

住居のダイニングにはオリーブ色の絨毯が敷かれており、その上には食事用の座卓が置かれている。

ジロウは座卓に昼食の弁当を置いた後、洗面所で手を洗う。イロハはゲームをしているのか、部屋からはピコンピコンとゲームの電子音が鳴っている。

「昼食、持ってきたよ」

「今行くー!」

イロハは襖を開けると座卓の前に座った。2人は合掌する。

「「いただきます!」」

イロハは弁当を美味しそうに頬張った。ジロウはそんな様子のイロハを見て、可愛いと感じて見惚れてしまう。共同生活を始めて幾日か経つが、彼ははGR会によりただの兵器として今まで訓練漬けの毎日を送ってきた。そのため毎日の様に近い距離で女子と関わることが無く、イロハとの生活は新鮮なものだ。

「やっぱりこれ美味しいわね」

「う、うん、、、」

ジロウは頬を若干赤らめる。

(ダメだ・・・二人きりになるとどうしてもドキドキしてしまう・・・初めはこんな事なかったのに)

そんな様子の彼をよそに、イロハは冷蔵庫から出してきた缶ジュースを一気飲みしていた。

 

 

 

国民保護隊新東京基地司令官室にて

 

基地の研究員の一人が、書類を片手に畏まっている。

 

「赤銅司令官、二人の改造人間についての報告書ができあがりました」

 

赤銅司令官と呼ばれた三十代の体格の良い男はその資料を受け取り、一通り目を通す。

 

「六二式と鹵獲したニ番機の親睦は深まっている様だな。良い傾向だ」

 

「はい。彼女らの連携は作戦遂行に不可欠です」

 

「ああ、ところでプランOMEGAの方はどうなっている?」

 

「それについては、アンチマターの精製に少し時間がかかっておりますが、それ以外は順調に進んでおります」

 

「なら良い。下がって結構だ」

 

研究員は一礼した後、鉄扉の横にある機械にカードを通す。重い鉄扉が開くと、そのまま部屋の外に去っていった。

 

 

 

 

作戦指揮室にて

 

ビーッビーッビーッ

 

中級秘密回線と繋がっている受信機がアラームを鳴らしている。

細いのっぽの職員が慌てた様子で受話器を取る。

「横道作戦指揮官!関東都警察から連絡が入りまして、市街地で敵性物体を発見。関東都中央エネルギー施設に向かって侵攻中とのこと。映像とデータはこちらです」

 

部屋のスクリーンに、15メートル程で四つ足の機械兵器が、建物を破壊しながら侵攻する様子が映し出される。その横にはスーパーコンピュータの出した敵性物体の分析結果が表示される。そこには、これが高い確率でGR会が製造した物だと言うことが示されていた。

横道ソウタ、国民保護隊の作戦指揮官を務める、責任感が強く、部下思いの人物。彼はスクリーンに映し出された物を見て顔をしかめる。

「GR会の連中、こんな物まで造るなんて・・・ご苦労、現場にはイロハとジロウ君を向かわせてくれ」

 

 

イロハとジロウの住居にて

 

二人は食後のデザートでも食べようかと、冷蔵庫の中の菓子を選んでいる最中であった。

「アタシはこのチョコアイスにするわ」

「じゃ、俺はミントで」

 

デザートのアイスを食べようとする二人だが、その時部屋のスピーカーから警報と共に音声が流れる。

 

「総員戦闘配置につけ!繰り返す!総員戦闘配置につけ!」

 

イロハは忌々しそうにこう言う。

「アタシにデザートを我慢させた罪は重いわよ!」

 

作戦指揮室で二人は敵性物体についての説明を受けている。

 

「つまり、エネルギーセンターの破壊で新東京市のみならず関東都全域を混乱に陥らせることが敵の目的ということですか?」

「そうだ。GR会は政府転覆を目的の一つとしていると聞く。今回の事件は機械兵器の起動実験を兼ねた攻撃とも分析できるがな」

「まあ、どちらにせよアタシらがあのデカブツを破壊したら良いんでしょ?」

「ハハハッそうだな。イロハ、気をつけて、しっかり頼むぞ」

 

 

 

 

2人の俊足は瞬く間に敵性物体の近くにたどり着いた。2人は今、敵性物体に気づかれない様に路地に隠れている。敵性物体の通ったあとはひどい有様だった。逃げ遅れて踏み潰された民間人、もしくは警官、軍人のだろうか、瓦礫と共に幾つかの赤い血溜まりと肉塊が飛び散っていた。

惨状を見たイロハは、その美しい眉間にシワを寄せる。

「酷いわね、これ。敵が機械なのが憎いわ!苦しめて苦しみぬかせてから殺せないじゃ無い!」

「GR会は本当にこんな悪い組織だったんだ!ああ、こんな事をするなんて、許せない!いや、知らなかったとはいえそれに所属していた自分が憎い!」

ジロウは頭を抱えて苦しそうな表情になる。それを見たイロハはジロウを叱咤する。

「バカ!そんなに悩むんなら、任務遂行して罪滅ぼしをしていると思いなさい!それで良いでしょ!?」

イロハの言葉でジロウの表情が少し楽になる。

「そう・・・だな、うん。ありがとう」

「じゃ、さっさとあいつを倒して、デザート食べるわよ!」

「おう!」

 

 

 

イロハは物凄いスピードで駆け、敵性物体の足の関節を目掛けて蹴りやパンチをくらわす。ジロウは敵性物体の体に上り、敵の対空レーダーや武装を破壊してゆく。

 

「くたばりなさい!」

 

イロハが何度目かの攻撃をすると、敵は足元から崩れ落ち、動かなくなった。

 

「やったねイロハ!」

「いや、油断は禁物よ・・・ほら!」

 

ボン!

ボン!

ボン!

ボン!

 

敵性物体は使い物にならなくなった脚部の根元を爆破して排除した。そして楕円形の胴体は中央センターを目指して転がり始めた。




用語解説

調理マシン 基地の食堂に置かれている機械で、材料を入れると3種類だけだが、自動で料理を作る。稀に故障することがあるので、予備の機械や料理人が用意されている。

六二式 六二式改造人間の「六二」は、イロハがR62年に人体改造したことに由来する。

次回予告

中央エネルギーセンターを目指して進行を続ける敵性物体。
その勢いは改造人間たちの限界を超える物だった。
必死に抵抗する2人の改造人間。苦悩する横道。
果たして彼の下した決断とは!
次回、六二式改造人間
「手も足も出ないが」


※次回予告やってみたかったんです!次回もご期待ください!
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