転がりながら侵攻を続ける敵性物体を、2人は走りながら追いかけていた。
「ちょっとこれはマズイわね」
「あんなのに轢かれたら、いくら俺ら改造人間でもタダじゃ済まない」
「悪かったわね、ジロウ」
「え?」
「アタシの判断ミスよ。あんな移動の仕方をするって少し考えたらわかったのに、敵を少しみくびっていたかもしれない」
「そんな、謝ることないよ」
「アンタ、優しいのね・・・それはそうと、アタシに奴の侵攻を少しでも遅らせる作戦があるわ」
「流石イロハ!それで、どんな内容?」
敵性物体の進行方向に、手前から順に軽自動車、普通車、中型トラック、大型トラックと自動車が山の様に並べられている。トラックの中には、至急基地から運ばれてきた爆薬が仕込まれている。
「ハァ、ハァ、ヒィ、フゥ」
「ご苦労さま!」
自動車たちを並べ、爆薬を積み込むという重労働を終えたジロウは息を切らしている。その隣には少し汗ばんだ程度のイロハが立っている。
「これで準備は整ったわ!ジロウ、ここを離れるわよ」
「わかった」
敵性物体は地響きを立てながら自動車の山に転がってゆく。それの通った後はアスファルトが砕け、所々砂地が露出している。
「今だわ!」
イロハは手元にある爆薬のスイッチを押す。
ドドドォン!
敵性物体は巨大な爆発に飲み込まれた。
戦闘指揮室にて
「よっしゃ!」
スクリーンの映像を見た誰かがそう叫んだ。
横道はスクリーンをじっと睨みつけたまま動かない。
爆煙の中から先程よりもゆっくりだが、侵攻を続ける敵性物体が現れる。
「おい、第三次防衛計画の設備はどうなっている!使用できるか!?」
近くにいた丸眼鏡の職員が答える。
「横道指揮官!あれは安全面に関する試験がまだ終わっていません!」
他の職員も言う。
「いきなり実践で使用するのは危険です!」
「わかっている!安全面以外の試験は合格しているんだな!?」
「はい、そうです。ですが・・・!」
試験が完全に終わっていない設備を使用するなど、安全面を考えたら普通は使用するべきではない。しかし中央エネルギーセンターにあの敵性物体の侵攻を許してしまえば、より大きな被害が出るのは目に見えている。
横道は険しい表情をして言う。
「仕方あるまい、特別仕様対戦車壕を起動させる!」
イロハとジロウに通信機で連絡が入る。
「ジロウ、遠くに退避するわよ」
「わかった」
二人はものすごい速さで安全域まで駆ける。
「そういえばイロハ、その特別仕様の壕ってどんなの?」
「アタシも名前しか聞いたことがないわ」
「そっか・・・」
と、無線が入る。
「イロハとジロウ君、安全域にいるとは思うが、念のために対ショック態勢を取る様にしてくれ」
「「了解」」
横道は敵性物体が、特別仕様対戦車壕の効果範囲に侵攻してくるのを、じっと待っていた。
敵性物体はついにその効果範囲に入った。すかさず横道は指令を下す。
「特別仕様対戦車壕起動!」
ズズズズン!
大規模な爆発とともにアスファルトに亀裂が走ったかと思うと、道路に四角形の大きな穴が開き、敵性物体は壕の効果範囲内の地面と共にに急降下していった。急降下する地面に圧縮された空気が外に押し出されて暴風を巻き起こす。それは爆風と合わさり威力を増した。
イロハとジロウは爆風に飛ばされない様に、地にしっかりとしがみつく。
この特別仕様対戦車壕は、関東都や新東京市の重要施設の近くに備え付けられているもので、壕の地盤だけ爆破で他と分離できる様に設計されている。深さは百米を超えるので登る事はままならず、更に、落下する地盤と共に叩きつけられた敵は、その衝撃で大打撃を受ける。
「映像を切り替えます」
画面が切り替えられたスクリーンには、落下の衝撃で潰れた敵性物体の姿が映し出された。横道や指揮室の者たちは、ほっと息をついた。
横道は無線を使い、イロハとジロウの安否を確認する。
「イロハ、ジロウ君!無事か!?」
「ええ、アタシもジロウも平気よ」
「そうか、ならよかった」
基地に戻り今回の戦闘に関する書類を一旦書き終えた二人は、調理マシンが復活したので食堂で夕飯を食べた後、住居で昼に食べられなかったデザートを楽しんでいた。
「一仕事した後のアイスは美味しいわね」
「そうだねぇ・・・そういえば、イロハはいつ改造人間になったんだ?」
ジロウがそういった瞬間、イロハの表情が曇る。
「今は答えたくないわ。でも、いつか答えてあげる」
「そっか・・・」
次回予告
旧北海道でGR会直属部隊による大規模な反乱が発生する。
派遣される2人の改造人間は己の信念を胸に戦う。
明らかになってゆく2人の過去。
立ちはだかる新しい改造人間。
2人の運命やいかに!
次回「北國」
次回もよろしくお願いします!