「どうもありがとう」
22号のパイロットは、敵の哨戒をしていたジロウに礼を言うと、救命装置に繋がれた先輩パイロットと一緒に軍用車両に乗り込んだ。
ジロウはガタガタガタとエンジン音を響かせながら国防色の軍用車両が遠ざかって行くのを見守った。
そして、
「ごめん、イロハ。やっぱり俺、イロハのこと放って置けないよ!」
決意を固めたジロウは地を踏み締め、前へと進む。
「ママ!」
イロハはそう叫んだが、前方から来るのはあの恐ろしい大男である。
「いや!ママはどこなの?」
大男は一人ではなかった。金髪の子分らしい男がいた。それでも幼いイロハにとって充分に大男である。
「こいつ、売り飛ばしたら・・・」
「一千万円は・・・」
ニヤリと口元を不気味に歪めた大男は、イロハに近づいて乱暴しようとする。
「いやあ!」
ドォン!
背中に強い衝撃を感じたイロハは意識をはっきりと取り戻す。敵の攻撃で宙を舞ったイロハが地面に叩きつけられたのだ。イロハはまた意識を失う。すると、今度は横腹に強い痛みを感じた。敵の改造人間が彼女の横腹を思い切り蹴り上げたのだ。
「何寝ているの!?キミは僕に遊ばれるんだよ。楽しませてよね!!」
飛び上がった敵はつま先をイロハの右脚の膝に向けて勢いよく突き出す。イロハの体は疲弊して上手く動かなかった。
バキッ!と音がして、彼女の長く美しい脚は醜く歪んでしまった。
「ギャアアアァッ!」
(お、おかしい!痛覚信号のフィードバック率が下がらない!)
あまりの痛みに叫び、苦しむイロハを観て敵は愉快そうに言う。
「キミが動いたから、変な所を踏んじゃったよ。でも痛いだろう!?痛覚信号関連のプログラムをキミが意識を失っている隙に、いじっておいたんだよ!」
「な、なんてことを・・・」
「もっと苦しんでいいんだよ?」
「や、やめて」
「嫌だね」
敵はイロハのもう片方の脚を踏み砕かんと、攻撃の用意をしていた。
遠くから何度も悲痛な叫び声をキャッチしたジロウは最大限の速さで駆けていた。
(あの叫び声はイロハのだ!敵の改造人間に酷い目に遭わされているに違いない!)
ジロウの胸は怒りと不安でいっぱいだった。
ジロウはやっとの事で彼女の元に辿り着く。
「ああ!イロハ!?」
彼が現場で見たものは両足を残酷にも曲げてはいけない方向に折り曲げられ、右腕を今にも引きちぎられようとしているイロハの姿だった。
「や、やめろよ!」
「お!いいところに来たねぇ2番機君。今から僕を痛めつけた1番機ちゃんの悪い腕を千切ってあげるところなんだよ!」
息も絶え絶えの小さな声でイロハは言う。
「な、なんで戻ってきたのよ・・・」
「仲間を見捨てられるわけないじゃないか!今助ける!!」
ドスッ!
敵に飛びかかったジロウだが、リミッターを解除した敵の鉄拳に呆気なく突き飛ばされた。
「キミも後で彼女と同じ目に合わせてあげるから、心配しなくていいよ!」
敵はそう言いながらイロハの右腕を引く力を強める。
「やめろ!!」
ジロウは必死になって叫ぶ。
今にも引き千切られそうな彼女の右腕を見て、彼の脳裏に記憶が蘇る。
(あの右手はイロハに初めて会ったとき俺を抱えた手、訓練の成果が悪かったときに俺を打った手、成績が良かったら背中をバシバシ叩いて褒めてくれた手、北海京に来る途中の飛行機でタラの燻製を取った手、そして、俺を退避させるときに、俺の頬を撫ででくれた手!)
彼は勝てないと解っていつつも、彼女を救うためにもう一度攻撃を仕掛けようとした。
ブチブチブチィ!
遅かった。イロハの右腕は肩のあたりから千切り取られてしまった。
ジロウは自分の中で何かが崩れ、邪悪なものが沸き上がってくるのを感じた。
「ウワアアアアアアアアアアアァ!!」
国民保護隊新東京市基地極秘研究室にて
司令官の赤銅は2番機であるジロウに取り付けた観察用マイクロマシンから、女性の側近と信頼のおける科学者と現場の様子を伺っていた。
「ついに発動した様だ」
「ええ、プランOMEGAがこれで大きく進みます」
「D機関の発動は正常なもよう」
「あの博士は面白いものを作ったな」
「ええ、強力なデストルドー(破壊衝動)をきっかけに発動するとは」
「1番機は手厚く修理、保護するとして、用済みの鹵獲した2番機はどうします?」
「まあ、我々に貢献した功績は大きい。D機関取り出しの後、修理して今まで通り運用する」
「わかりました」
次回予告
怒りを爆発させるジロウ。彼は衝動のままに敵を破壊する。
進む計画に呑まれて行く二人の改造人間達。プランOMEGAの正体とは。
人類に明るい未来は来るのだろうか。
次回 「死闘の末に」
次回もよろしくお願いします!