英雄《しゅやく》になれぬ筈の槍使いと英雄《しゅやく》に至りし太陽《くろまく》 作:MOGOLOVONIO
西暦2031年4月29日、日本列島本州群馬県前橋市。
普段はのどかな町の中が、今や悲鳴と怒号で埋め尽くされていた。誰もが背後から迫ってくる死から必死に逃げていた。
「待って、パパ、ママっ!」
親とはぐれた少女が助けを求めたが、手は差し伸べされず、後ろから走ってきた男に突き飛ばされた。
「邪魔だガキ、退けっ!」
「きゃあっ」
少女を気にも止めず男は人波の前へ逃れようとする。
しかし突如、背後から走った赤い光線が、男の体に突き刺さった。
「ぎゃあああぁぁぁ―――っ!」
断末魔の悲鳴を響かせたかと思うと、男は急に糸の切れた人形のごとく倒れこむ。
その体には傷跡一つ見当たらず、心臓はゆっくりと鼓動を刻み続けている。だが目からは光が消え、口は二度と言葉を発さず、心を失った生ける屍と化していた。
かつて、科学的には確認されていなかった、生命の根幹を奪われたが故に。
「あ、あぁ……」
少女は目の前で起きた惨事に言葉を失いながら、見えない手で引っ張られるように背後を振り向いた。
人の姿が消えた物寂しい道路に、ポツンと浮かぶ透明の六角柱結晶。大人の身長ほどもある巨大な結晶の中心では、赤い球体がうっすらと光を放っている。
出来の悪い合成写真のような、非現実的な物体。
だが、それは間違いなく男の精神を殺した存在であり、世界に滅びをもたらす人類の敵。付けられた名はピラー。
「い、いや……」
恐怖のあまり竦み上がる少女を、まるで睨み付けるように、結晶内部の赤い球体がギョロリと動き、再び死の光線を放たんと輝き始めた。
「誰か、助けて……っ!」
どんなに祈っても、この世界には人を救ってくれる優しい神様などいやしないのか。
__否
シュゴオオオォォォ―――ッ!
轟音と共に、黄金の龍が天から舞い降り化外を喰らうが如く、少女に襲いかかろうとしていた結晶が、遥か先の空の向こうへと吹き飛ばされた。
「えっ……?」
爆風で激しく髪をなびかせながら、少女は自分を救った光の出所を求め、空を見上げた。
地上の惨劇などまるで感じさせない、青く澄み切った空。
そこに、一人の少年がたたずんでいた。
天空にてもう1つ太陽が昇っているかの様に浮く姿。手には何れ来る未来を夢想させる程に1片の穢れ無き黄金の剣。
「__そこまでだ。」
その姿の美しさ、宣告の雄々しさに心を奪われ、呆然と見上げる少女に気づき、少年は手を振り不敵に笑ってみせた。
__そう、嘆きは終わり、英雄譚は始動する。
「遅れてすまない。だがもう大丈夫だ。__己が、我等が全て守り抜こう。」
そう断言し、町の外部にいる結晶の本体に向かって飛んでゆく。
天に描かれる黄金の軌跡を、少女はいつまでも追いかけながら悟る。
あの少年は…人々を救うために立ち上がった、偉大なる人間。
「英雄……」
少女は、そして空を見上げた全ての人々が知った。
彼こそが、人類の敵を打ち倒し、自分達を救ってくれる救世主なのだと。
これは、地球の危機を救った1人の英雄だけを紡いだ物語___に非ず。
「ぶはっ!」
少女の居た場所より遥か先、突如畝ってきた黄金光で転げ吹き飛ばされた車の中から、槍を担いだ1人の少年が、人の意地を密かに滾らせながら這い出てくる。
「……平然と、あの程度でここまで……だがそれでも俺は……」
闘志を燃やす彼の声は、天翔ける英雄にも、地上からそれを見上げる人々にも全く届かない。
__今はまだ。
これは、英雄の陰から昇り他者を惹き付けながら歩んでゆく、ある槍使いの物語であり__
「まだまだ足りぬ。研究に収集に鍛錬、勝利からは逃げられぬ、とはよく言ったものだな。まぁ何であれ、進み続けるのみだ。」
___日向で煌めき日陰で蠢く、再び昇りし神星の野望の軌跡である。
本作は、小説家になろうとカクヨムに記載されている完結済みWEB小説『英雄《しゅやく》になれない槍使い』が原作に、light社より全年齢版も販売され、後続編2作登場につきシリーズ完結した18禁ゲーム『シルヴァリオヴェンデッタ』がクロス先の二次創作となります。
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いや流石にそれは無理あるのでは?