英雄《しゅやく》になれぬ筈の槍使いと英雄《しゅやく》に至りし太陽《くろまく》   作:MOGOLOVONIO

10 / 82
 大変遅くなりした。
 就職活動については、前回の後内定通知を頂いた別の就職先に勤めることに決めました。
 また、大学の講義や試験も一通り終え、執筆投稿することに致しました。
 ただ、引越準備や成績発表待ちにつき、また暫く先に次話作成を行うかもしれません。


第8話 公開と憶測

 

 2025年の秋、昨年まで天道寺家の恒例行事であった紅葉狩りも果物狩りも行われず、己は新町駐屯地内とそこからの景色のみ、刹那は駐屯地と対CE戦への出動の間でのみにおいて季節の変化を見続けてきた。

 気温は下がり、我等姉弟と基地の面々との関係もすっかり馴染んでいる中で、最も大きな変化といえば__

 

「おぉォーー!我ながらカッコいい!」

 

「ほぅ、戦場で激しい動きをこうも鮮明に撮影できるとは中々のものだな」

 

 インターネットへと刹那の__幻想兵器使いの対CE戦を流すということであり、今は子ども代表として本来部外者である筈の己も含めてその第一回を視聴し出来映えの確認を行っている。

 

「流石にCEとの戦いに撮影専門で人を残すわけにはいかないのでな、ドローン使って撮ってみたのだが…」

 

「ここまではっきり映ってるなら人目に晒しても問題なさそうね。激しい動きも何度も放たれる光も支障なし、と」

 

「よし、これをネットの動画サイトへ流すことにしようか。既に大臣の許可はとっているが、流す前には改めて他の者に確認してもらうが、子ども受けも良好だし大丈夫だろう」

 

 刹那担当となっている色鐘も保科も、そして幻想兵器開発者にして公開発案者だという影山も高評価を出した戦闘動画。運動能力と外見を除けば刹那に似合わぬ程の激しくも華々しい活躍を終えたところで終了した。

 

「それじゃ行ってくるよ、刹那も先日忙しかった分、ゆっくり休んでくれ」

 

 そう言って立ち去る影山。元々隊員から彼の話を聞けばかなり多忙を極めているらしく、この後も予定が詰まっているのであろう。残った我らは一先ず休憩してから部屋を出ることにしたが__

 

「色鐘陸尉、保科殿、ところでこの動画は、誰でも視聴できるのか?」

 

「ん、ああ。無料動画投稿サイトにタイトル付けて流すから検索すれば誰でも見れるぞ」

 

「やっぱりお姉さんが日本や私たちに英人君のため格好良く頑張ってるとことか気になるの?」

 

「気になるのはその通りだ。過酷で危険な戦場で姉上が傷つき怯えているか、自衛隊の方々に迷惑を掛けていないか心配でな」

 

「はは…大丈夫だよ、動画みたくちゃんとバッサバッサと倒してるし、京子ちゃんも綾子ちゃんもみんなも支えてくれてるから」

 

「…前から思ってたんだが、英人って結構姉に厳しいというか対等というか心配性というか…」

 

「__ふむ、確かにな。姉上は割と繊細でドジで優しくて抱え込みやすいので、ここに来る前では既に、この様な対応を自然ととるようになっていたのであろう」

 

「ここに来る前…刹那もそんなこと言ってたわよね?大人っぽいとか頼もしいとかも」

 

「え!?ちょっとそれは…内緒にしてもらうの忘れてた…う、うん。頑張り屋だし色んなことに詳しいし勇敢だししっかりしてるし真面目だし」

 

「そろそろ食事の時間だ、己は腹が減ったし色鐘陸尉も保科殿も忙しかろう。姉上よ、一旦中断してくれ」

 

「あ…うん、分かった。行こうか」

 

 斯くして我ら4人は部屋を出て食事を取り、姉弟は自由時間を過ごした。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 戦闘動画のネット公開とは言ったものの、何故か政府の公式サイトやアカウントではなく、まるで戦場に潜んでいた何者かが勝手に撮影したかのように、初めて見るアカウントから発信されていた。

 

 忌々しき怪物であるCEを美少女が光剣でもって撃滅する映像。まるで現実性より創作物としての魅力を優先した特撮作品が如き動画に対して、政府も駐屯地の者達も、本来自らが管理し公開又は処罰すべき案件であるというのに、動くことはない。されど駐屯地では、上層部やネットによく触れる者に刹那と仲の良い者も動画の件を把握している。つまり政府や自衛隊に影山は、敢えて公式に公開するのではなく、民間人の無断撮影無断投稿によって幻想兵器使いとCEとの戦いを民草に知らしめたいのだろう。

 

 だが何故だ?例えば政府や自衛隊・防衛省が大々的に発表できない理由としては、幾らCEとの戦争状態にあるといえど今は21世紀、少なくともエネルギー資源の枯渇や大国の敵対により日本のみならず様々な国が存亡の危機に瀕していた第5次世界大戦中よりは経済も人心も切羽詰まっておらずまた倫理的制約は緩んでいない以上民間の1高校生を未知の兵器技術運用並びに最前線の戦闘要員に立たせることへの反発は、世論でも政界でも相当大きいことが予想される。よって反撃の象徴や画期的発明と宣伝し難いのであろうか。

 それを踏まえれば出処を隠し流出の体を取る理由について、信憑性を曖昧にしつつ幻想兵器や希望をジワジワと民草に認知させ、いざ公表する際に少しでも受け入れ易くする策、だと思われる。

 だが、発案者の影山は、叡智宝瓶(アクエリアス)*1や一部の軍人にて時折見掛けた、常識的で真っ当な建前を備えて意見を通す政治力や理解力と、裏で非凡非常識非人道的な過程や目的を考案し隠してまで遂行する狂気や発想力に意志、そして建前と魂胆を両立させ実現させる頭脳や技能を持ち合わせる部類であると、己は見做している。その様な男が世論の反発緩和だけを目指して考え付いたようには見えぬ。

 

 __幻想に光の剣といえば確か、学校での友の1人に誘われて家にお邪魔した際、偶々見掛けた、それらが登場したとあるゲームが気になったな。“英雄”を題材としているが故であったが…

 待て、そういえばそのゲームの設定に興味深く今引っ掛かるものがあったような。それは…

 

_()_()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 無論、根拠も理屈も存在しない連想に過ぎぬが、元々未知の力や技術であり、また己の精神力が関係するのであらば、他者の思考や心情が影響を齎す可能性もゼロではないのかもしれぬ。何れにせよ、刹那の報告を含めて情報収集を続けるのだが…

 

 影山や政府に自衛隊は、力の増大に伴う危険性も把握しているのだろうか。

 

 星辰奏者は、星辰光と感応することによって発動値に至り全力を発揮するが、発動する力の差が大きければその分身体への負担が増大し、反動の大きさと本人の気力と耐久力次第では命すら危ぶまれる。人造惑星は身体の耐久力も力も調整も可能であるがそれでも負荷は掛かる。それでも如何程の負荷をも奮起の糧にする者(ヴァルゼライド)はいるが、彼とて心は不死でも身体の限界は存在したのを目の当たりにした。第一刹那に強大な力を制御し乗り越えられる程の、気合も根性も狂気もあるとは到底思えぬ。

 

 現在、日本が危機的戦況に瀕しており、覆す為に彼女の奮闘や強化が不可欠であるのならば、やむを得ない犠牲だ。たとえ己が彼らの立場であろうと、或いは刹那の立場であろうと唯一にして最善の選択として決意し実行、そして如何なる咎も危険も背負ってゆくさ。

 しかし刹那では、それだけの期待と責務を前に押し潰される懸念は大きく、その事態が後の戦いに悪影響を及ぼす恐れも否定できぬ。何せ彼女は既に、世話役でもある色鐘や保科等、愛すべき大和の民にして能力も気概も未来も優れ日本を更に支える人々にとって大切な子どもであり戦友に成ったのだ。そんな者が国に使い潰されては、愛国心や責任感に罅を入れるやもしれぬ。圧倒的な+を前に霞む程度だとしても、−は可能な限り最小限にすべきであろう。

 

 __それに、

「逆説的に 英雄個人の奮闘で救われた後の世とやら、そこにいったい何の価値があるというのだ。」

 

 聖戦に向けてのある日の夜、己を含めた強大なる魔星に対して誰にも本心や真実を伝えぬまま単騎で連戦しアドラー帝国に勝利を捧げる気概のヴァルゼライドに問うたことがあった。

 国と民の為にと、たった独りで過酷な闘いと運命に挑み、友との関係も寿命も捨てて、そうしてまで得た勝利の栄光と褒賞の一切を自己に還元せぬ決意の英雄。その奴の努力と功績と犠牲を対価に、絶大且つ恐らく永久的な繁栄を手にする無辜の民草。

 ヴァルゼライドは、何故他者との共闘を求めぬのかとの疑問に単騎故の効率性を返した。尤もその判断を無謀で済まさぬ程の実力も実例も奴は備えており、また民と国に対しても英雄1人の不在如きでは零落などしまいとの信頼や敬意を向けているのであるが。

 

 兎に角だ、もしたとえ大和の民草や政府に自衛隊であろうと、それが合理的であろうと、支援や協力を怠り独りだけの献身に甘んじる体たらくを晒そうものなら、己としては見過ごせぬ。

 取り敢えず今は、その英雄の奮闘の利益を享受する側にいる“英人”は、その様な事態を警戒しながら刹那の心身両面での健康維持に気を配り、疑念や思考を悟られぬよう注意深く情報収集に励む責務があるな。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 そうして残りの秋は、本人の慣れや支えてくれる者らによって必要性が薄れゆく精神状態観察、人心のさらなる把握や現在の社会制度・科学水準の理解の為の勉強、駐屯地の隊員職員に対する手伝いや交流、そして刹那や隊員との会話に盗み聞き、加えて刹那達が出陣し戦闘を終え帰還した後常に()()()インターネット上に投稿されているCE撃滅映像及びその評判の確認による情報収集を続けていた。

 

 “光剣でもって怪物CEを爽快に斬り伏せる謎の美少女”、本来ならばフェイクニュースにすら使われぬ御伽話が、SNSなどの水面下において、軍事的情報としてではなく娯楽的話題としての扱われ方ではあるが、日本国民や僅かながら外国人に広まり知られるようになっていた。

 その変化を把握したのは、群馬県新町駐屯地から出ずとも雪を直接見ることが可能になった頃であった。

 

*1
アドラー軍の第十一研究部隊。嘗てロストテクノロジーを保有するカグツチと関係を結んでおり、帝国の表裏両面において科学技術分野で貢献してきた。所属する研究者や技術者には、マッドサイエンティスト呼ばわりされる程の優秀な際者が多い模様。




 質問や批判に、何方か又は両方の原作に関する話でも構わないので、感想を募集しております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。