英雄《しゅやく》になれぬ筈の槍使いと英雄《しゅやく》に至りし太陽《くろまく》   作:MOGOLOVONIO

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 今回も物凄い長文となりました。

 具体的な時系列はボカしておりますので、文の順番≠時系列の順番となります。文章の順番は、下に降る程迦具土神機関の中心、即ち英人へと迫る形になります。


第12.5話 機械仕掛けの黒幕と瓊瓊杵維新(ニニギノイシン)

 

「いったいどういう事ですかっ!」

 

 目の下に隈ができた状態で声を荒げる色鐘陸尉を前に、堪えながら司令として通達する。

 

「言った通りだ。これ以上の人員と時間は割けないとして、天道寺刹那の捜索は終了する。」

 

「しかしっ!こうしている間にも刹那は」

 

「君も、もう割り切るしか、ないと理性では解ってる筈だ。」

 

「くっ、そ…それは……」

 

 刹那の消息が絶ってから5日だ。未だ帰還せず手掛りさえ発見に至らぬ以上、最早生存は絶望的である。

 何より最後に確認した位置の付近は今や、CEが徘徊している。唯一の幻想兵器使いによる協力無しでは連中の掃討も、回潜りながらの捜索も困難だ。大規模な砲撃や空爆に踏切れば排除は不可能ではないが、そんな事をすれば刹那も無事で済まない上に、彼女の回収を達成できなければコストに見合った戦略的・戦術的戦果を見込めない。

 

「……だが、危険な前線で戦わせて、ずっと救けてくれた刹那を私達は救えないのか……っ!…それに、あいつの弟にもなんて言えば……。」

 

「……仕方ない、で済ましていい話じゃないが、私だけで直々に謝罪と、せめて彼女に報いる為にも今後の人生の最大限の保障を誓うさ。」

 

 1年近くになるCEとの戦い。その内後半約7ヶ月もの間、新町駐屯地の部隊で殉職者は0名と、以前の消耗具合とは打って変わって世界一安全な前線基地で在り続けた。それは、紛れもなく天道寺刹那のお陰であり、我々自衛隊が、大人が本来護るべき心優しき少女に戦いを任せてきた証でもあった。その結果がこの事態、慙愧に押し潰されそうになるが、屈する時間も権利も我々にはない。たとえ喪失感と罪悪感に苛まれようとも、必死に前に進まなければ彼女の護りたかったものさえ代りに死守することができなくなるから……、と突如、扉の開く音が大きく響いた。

 

「「影山准教授っ!!??」」

 

 司令室に訪れたのは、白衣と眼鏡を身に着ける筋肉質な壮年の男。余程のショックによるものか保科京子と一緒に部屋に閉じ籠もっていたが、彼の顔色は何ら変わらない。ただ、その瞳の色を変容させながら、笑顔で大量の紙束を抱えていた。

 

「宮田司令、この資料を、計画書を読んで下さい。」

 

「け、計画書?今まで何をしていたんだ?というか何の…」

 

「この日本を救う新たな英雄を生み出す、[機械仕掛けの英雄(へロス・エクス・マキナ)]計画ですよっ!」

 

 邂逅から凡そ1年間、その中で最高と言ってよい笑顔に気圧されながら書類を読んで……直ぐに目に入った名前と写真に絶句した。

 

「て、天道寺英人……彼に何を」

 

「簡単に言えば、あの弟を()()に仕立て上げるのですよ。」

 

「何だとっ!?巫山戯るな影山!刹那がどれだけ愛していて、護りたいと願っているか解ってるだろうがっ!」

 

 驚き怒り、襟首を掴み上げる色鐘三尉だが、影山の笑みは揺るがぬどころか説き伏せようとしてきた。

 

「知っているけどね。だとしても、あの子の跡を継いで“英雄”になれるのはあのたった1人の実の弟だけだ。赤の他人では人々が認めない。」

 

 幻想兵器使いの力の源の1つ、他者からの認識の広さと強さと方向性。最適なのは、非業の死を迎えた美しい英雄の弟という、この上なく人々の関心と同情を引ける立場である彼をおいていない。理屈は解る。

 

「あの子に引っ付いて此処に来た際検査したから、適性が有るのは分かっているよ。後は幻想兵器の力を引き出せるように、それに相応しい“教育”を施してやればいいのさ。これ迄の観察では()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のはネックだけど、6年間じっくりしっかり()()すれば十分だ。」

 

 幻想兵器使いの力の源の1つ、感情的で思い込みが激しい人格。人間としては問題が有ろうと、単なる兵器なら上質な性根に変える必要がある。理屈は解る。だが……

 

「貴様っ!この人でなしがっ!」

 

 刹那の弟だから、だけではない。英人もまた共に半年以上も生活を共にし、私を含め駐屯地の皆から愛されている。それに、彼に手伝ってくれた、相談に乗ってくれた、刹那を支えようと頑張ってきた、との声は司令としてよく聞いており、私が見てきた中でも貢献してくれたと言える戦友の1人なのだ。そもそも子どもを大人の都合で使い潰すなんて真似は許されない。色鐘三尉の怒りの拳は私の思いも代弁してくれるものだった、が影山は頬で受け止め平然と言い返した。

 

「他に日本を救う方法があるというなら、教えて貰えるかな?他に容姿も才能も性格も備えた、相応しい逸材が居るなら紹介してくれるかな?」

 

「くっ……!」

 

「………色鐘三尉、下がってくれ。」

 

 当は無かった。対案も出せなかった。色鐘も、私も。保科も或いはこんな葛藤を抱えながら、それでも唯一無二の術と判断を下して、立案に協力してきたのだろうか。

 

「あの弟は戦わせるのにまだ肉体が成長してない。切りよく高校一年生まで待つとすればあと5年。それだけ時間が経って日本が疲弊していれば、他国が妨害する可能性は大きくないでしょう。いや、ピラーをどうにかする手段が見つからず、泣きついてくるかもしれませんね。」

 

「影山准教授、貴方は……」

 

「まずは予定通り、日本中から幻想兵器を使えそうな子供達を集めましょう。施設の準備や世間を納得させるのに時間が必要でしょうから、あの子の弟が高校一年生に上がる時、先輩が揃っているように、今から3年後くらいには開始したいですね。」

 

「だが、今回の件で幻想兵器は隠しておくべきでは……」

 

「いえ、むしろ積極的に見せるべきですよ。どうせ刹那以外に使わせた所で、幻想兵器は大した威力を発揮しない。この程度なら脅威にはならないと、他国にハッキリと見せつけるべきなのです。」

 

「それと、あの弟を守るために、親衛隊を育てるのも良いですね。どうせなら全員女の子にしておけば、流石に自分が特別だという思い込みが激しくなるし、色香で上手く操縦できるでしょう」

 

「そんな人道に劣る真似を……」

 

「大丈夫ですよ、政府が認めるよう僕が()()しますから。それに、CEに襲われて家や両親を失くした子は他にも沢山居ます。そこから探せば誰にも迷惑はかかりません。」

 

 反吐が出るような計画を喜々として語り続ける影山。

その暗く濁った瞳を覗き見て、戦慄しながら私も色鐘も悟ってしまった。

 刹那を失った時からこの5日間、悲しみに浸るのではなく憎悪を滾らせていたのだと。何も変わっていない外見とは裏腹に、眼前の男こそが、最も内面を変貌していたのだと。

 以前から人の心情を加味せず、倫理など忘れたような事を提案していた。だが刹那とクラウ・ソラスの戦法やロボットやヒーローにお菓子の話を楽しそうにしていたりと、最低限の人間らしさを残していたこの男が、その刹那の喪失によって本物の怪物と化したのだと。

 

 彼と彼女の間柄は、自分の予想も超える才能に興味を抱き、自分の計画を実現できる優れた器として評価していた、それだけの認識なのかもしれない。

 だとしても、天道寺刹那という少女は、影山明彦という男にとって、唯一かけがえのない存在だったのだ。

 

「さあ、僕達の手で日本を救う“英雄”を作り上げようじゃないかっ!」

 

 両手を広げ高らかに宣言する影山の姿は、酷く悍しい異形にも、憐れで痛ましい復讐者にも見えてしまった。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「……夢か。影山が私に、刹那の仇を討てと迫ってきたのか?」

 

 何を今更。嗚呼解ってる。天道寺英人、刹那の弟を英雄(兵器)に変え果てさせてでも、日本を護ってみせる。私があの思い出深き新町駐屯地から離れた今でもだ。

 

 それにもう1つ、()()()()()()に誓ったのだ。日本を救うと。日本に全てを捧げると。

 ……時間が来た。通信を繋げる。合言葉を告げる。

 

()()()()()()()()()

 

火之迦具土神の星へと集わん

 

 ()()()()()()()()()、それが陸上自衛隊陸将補宮田大介の裏の顔だ。

 

 以前、大学生となった私の末っ子に恋人ができて、紹介された当初は贔屓目かもしれないが大人しく優しい息子にお似合いの、綺麗で礼儀正しくも親をCEに奪われた娘だと言ってた。

 ところがその彼女が実は、あのCE教の信者だった。しかも息子の愛と優しさに漬け込んでカルトに誘惑して教徒に陥れ、最期にはあの忌々しき長野ピラーの、両親を()()()()()()()()()()()()()()結晶体の群れに魂を愛し合う男女共に捧げましょう、と心中させる腹積もりだったというのだ。

 

 私が一連の事情を知ったのは、その日の晩に掛かってきた電話、封鎖線を潜り抜けた直後に発見、拘束し親元へと身元確認や受取の連絡によるものだった。急いで駆け付けたところ、2人とも無事だった上に、その場にいた警察官が説得してくれたのか息子もあの女も反省と後悔と感謝で一杯な様子になっていた。久しぶりに泣きながら、息子と抱擁した後、その警察官が秘密の話を持ち掛けてきた。

 曰く、自分は()()()()()()の一員だと。機関の情報網と同志のお陰で民間人を救けられたと。そして機関から急遽命じられたので、警察官としてでなく機関構成員として()()()()()()()と交渉を行いたいと。

 そうして話されたのは驚くべきことに、本来彼には知り得ない筈の[機械仕掛けの英雄]と、当該計画に携わっている私に“日本をより良き勝利へ導く為”と“刹那を殺し息子やその恋人も殺そうとしていたピラーをより確実に討つ為”に同志になってほしいという誘いだった。

 

 苦悶し熟慮した末に、私はその申出を受け入れる選択を選んだ。

 家族を救ってくれた恩義、うら若き少女の刹那に続き我が子まで奪おうとするピラーへの義憤。今思えば、もっと幼い英人を残酷な形で利用している自分や自衛隊への後ろめたさが、計画以上の成果に繋げることで軽くなってくれるのでは、なんて身勝手な気持ちも要因だったのだろう。

 

 現在私は、機関の許可のもと、将官に昇進して新町を離れている。私に課せられた裏の役割は3つ。第一に組織の情報提供、第二に東部方面隊全体に関する活動やヒト・モノ・カネを機関に都合よく動かすよう働きかけること。そして第三に、もし“不審・不穏・不明な存在”が接触してきたら前後に必ず極秘で報告すること。最後は何を指し示すかは不明だが、機関や計画を厳重に秘匿する注意喚起だろうか。

 

 一方で新町駐屯地の後任には、御世辞にも心象の良くない後輩が駐屯地外から配属されることになった。尤も、[迦具土神(カグツチ)]と名乗る機関の中核は人事について、彼もまた同志の1人だから心配御無用、だと伝えてきたので一先ず信じることにしよう。

 

 ……特高には、色鐘も、あの時は大学院生だった保科京子も、元通信科新町派遣隊隊長の秋葉も配属された。流石に、唯の小学生で刹那の弟なだけの天道寺英人と親交のある駐屯地の人間に特高勤めをさせる訳にはいかないのでその3人のみだ。寧ろ何故[機械仕掛けの英雄]を知り得ない秋葉が、特高に異動することになるのかは不明だが、その旨を迦具土神に伺ってみた所、許容されたからには何かあるかもしれない。

 

 何れにせよ、私は自衛官として、加えて機関の同志としての使命も果たすまでだ。

 家族の為にも、駐屯地で戦い抜いてきた部下達の為にも、日本の為にも、刹那の為にも……救けてくれた迦具土神機関の為にも。

 

 

>――――――――――――――――――<

 

 

  僕は、朝日雄也。凜華の夫で、天道寺英人の新しい父親だ。

 

 

俺の真の名は、○○○○○。警察庁警備課局公安課より派遣された、妻役の彼女と共に、天道寺刹那の弟を[機械仕掛けの英雄]に相応しいよう“教育”するのが役割だ。

 

 内容は、兎に角甘やかして煽てて驕り高ぶらせ、「大人びた神童」を堕落・幼児退行させて、感情が激しく思い込みの深い幻想兵器使いとして最適な人格へと形成させることだ。

 

 正直言って、体や頭は使わないものの、長期間も様々な精神的負担を受け続ける様な仕事だ。俺に国への忠誠や職務意識が無ければ、若くして出世レースから外れてなければ、高待遇が約束されていなければお断りしたいところだ。

 

 それでも忠実に任務を遂行する。元気ハツラツで無邪気で新たな我が子に過保護な父親の仮面を被り続けてみせる。幸か不幸か、当の天道寺英人は事前情報を読み込んだ感想以上に成熟し、聡明で芯の強そうな、外観以外小学生に見えなさそうな少年だった。困難だが、もしかしたら人生で最も手応えのある仕事になりそうだ。

 

 ……そんな、慢心や過小評価の過ぎる思いは半月も経たずに消失した。

 

 優しく礼儀正しい神童だ、と認識しその知性と人格に触れる中で後ろめたさや勿体無さが柄にもなく芽生えてきた頃、義理の息子は……否、我らが()()はこう仰せつかった。

 

「○○○○○係殿、△△△△△係殿。お話があります。」

 

 彼が知らぬ筈の私の本名も、俺も知らされていない凜華(妻役)の本名も、更には階級まで聞かされた。しかもその後に語られたのは、自分達の本当の家族の話だった。

 俺の父は、松本市の交番で避難誘導中にCEに撃たれ、その躯すら放ってかれて今や埋葬もされずに白骨死体。母は黎明期のCE教に唆され、市へと独り勝手に向かいその仲間入りだ。

 彼女の両親は、CE恐慌によって職を失い多重債務に陥った。まだ学生の妹もバイト漬けとならざるを得ないが、探すのも稼ぐのも苦労している。

 そんな事情も語られた後に、眼前の子ども(ナニカ)は……

 

「義父上殿、義母上殿。己は日本も、そなた等も救いたい。故に、[迦具土神機関]を紹介しておきたいのだ。」

 

 俺のCE教に対する恨み、妻役の家族が抱える貧困、それ等を招いたピラーへの怒り、出世コース復帰の可能性、本来の任務遂行と機関への協力に関する国への貢献度の比較、等を説かれ、そして俺達2人は……了承した。

 

 それでも初めは、英人(子ども)に演技や言伝を教え込み彼の裏で何かを企む存在を探ることが動機だった。駐屯地に居たときから彼と長時間の接触ができ手元から離れて尚操り人形に仕立て上げられる者、その内彼が述べた情報を知り得る又は調べられる人間。ひょっとしたら計画を定めて俺達を就かせた政府中央が、何らかの意図で俺達を騙しているのかもしれない。

 そう疑いながら英人の要求を呑み続けていたが……やがて悟った。彼は利用されてなんかいない。寧ろ彼が俺達も、駐屯地に居る“同志”も、そして政府や自衛隊すらも意のままに把握し操って利用する、謂わば()()だと。現に彼は、いや迦具土神は監視兼護衛の役目を担う近所一帯の住人全てを、同志や協力者に変えて機材の運搬や状況の隠匿に携わっている。最早この地区は、政府の目の届かない機関の秘密基地へと変貌している。

 

 そして俺も、妻役の△△も、“あくまで日本や日本政府を救う為に秘密の活動と使命を担っている”という大義の下、警察庁の指示や責任以上に機関の計画を優先している。表向きには義理の両親、裏では[機械仕掛けの英雄]と変える教育係、そんな関係を装いながら実情は、機関の同志であり天道寺英人(迦具土神)の忠臣に移り変わった。

 同志迦具土神が実行するとあらば組織の規律も理念も二の次だ。たとえ警察庁へのハッキングや勧誘であろうと躊躇なく手伝い、仲の良い同僚や民間人も冷徹に騙して利用する。とはいえ、機関の同志や協力者の全貌は迦具土神しか把握していないので、「或いはその騙した相手も機関の者かもしれぬぞ」とは迦具土神の弁だ。

 

 ……それにしても、何故[迦具土神機関]という名称なのだろうか?

 機関所属より1ヶ月後の日、迦具土神本人に聞いてみたところ、こう答えてくれた。

 

「日本神話に於いて、火之迦具土神は伊邪那岐神と伊邪那美命との間で最後に産まれた。然しその際、母親の伊邪那美命を不幸にも死に到らしめ、父親の伊邪那岐神の手により赤子の段階で命を絶たれた。そして本人の明日を失ったその血肉から多くの神が生まれ、神の世は栄えていった。」

 

「別に姉上が誰と婚姻関係を結んでいた、なんて訳では全くないが__こう喩えられないかね?」

 

「天道寺刹那という英雄伝説の始まりとなる女性の逝去、それと引換えに己という新たな()()が誕生した。されど影山明彦や協力した大人達、という伝説を創った者の片割が己に、人生という尺に於いて序盤と呼べる状態の子どもに対し、自らの都合で人としての自由な未来を途絶させた。その甲斐あって、幻想兵器使いという伝説の出演者が多数、そしてCEに打ち勝った日本の繁栄が己の犠牲の対価により齎された。」

 

「__と。その己が中核になる枠組に相応しいと考えたのでな。嗚呼、自惚れだのカッコつけだのと貶してくれて構わぬよ。」

 

 ……絶句を避けられない説明に感じられたのは、私だけでなく△△も同じなようだった。

 

 [機械仕掛けの英雄]改造計画についてもそうだ。

 機関の指針として迦具土神本人の打ち立てた[瓊瓊杵維新(ニニギノイシン)]。その内容自体は不安や疑念を抱かせる要素が多いものの、迦具土神ならやってのけるとの信頼も確信が大いに優り、反対する気はない。一方で、その名称についてもまた伺ってみれば……

 

瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)は出生に於いて、迦具土神と直接的な繋がりはない。即ち、以前説いた喩えにて己と、[機械仕掛けの英雄]とは関係のない外部の存在だ、と言える。」

 

「また瓊瓊杵尊は、現在国のルーツとして奉っている天照大神の孫にして、荒れる地上世界の平定をその女神から命じられ降臨、そして現地の神より国を譲り受け繁栄を齎した。__まぁ実際には“奪った”との解釈もあるが。何れにせよ、機関名とこの計画内容で肖るには丁度良い、と考えたのでな。」

 

「そして“維新”__19世紀後半における一連の改革を指し示す言葉だ。其処で日本は、旧弊を打破してでも世界の荒波や恐るべき列強諸国に立ち向かってゆこうと足掻いて戦い変革し進んでみせた。我らもこの21世紀に於いて、ピラーによって閉塞と消耗に喘ぐこの国と世界を切り拓き、強大な他国に負けぬ日本を築き上げよう、との決意表明だ。」

 

「一方で明治維新の折、国家や君主の正統性確立、国民の意識統合が図られた。その際重要視されたのが神道、名称の引用元として用いてきた宗教だ。当時の政府はその神道に対し__国民の信仰や神社の在り方に皇族の伝統儀礼等、様々な面で変革を試み、“日本国独自にして古来からの宗教”という位置付けに据えようとした。その結果、暴走や論争が勃発した政策があれば頓挫した政策も存在した、がその変革の中にはだ。」

 

「__明治時代以前より続いていた文化や慣習である、という印象が明治政府の思惑通りに定着し継続されているものもある。その政策自体の是非は兎も角、神道に纏わる伝統の一部が政治的に改造・作成されあたかも昔から続いているかのように世の人々から認識されているのだ。この[瓊瓊杵維新]も国益の為に、始動以前より進められている[機械仕掛けの英雄]を改造し、乗っ取って、人々がまるで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()完遂させる、との意味合いも込めたのだよ。」

 

「まぁもう1つ、維新にて旧体制たる幕府の人間が、粛清されずに政府の役職に採り入れられたというケースも存在するからな。己としては、[機械仕掛けの英雄]に携わる、機関との関係を築いておらぬ者達に対しては冷遇や排除を行わず、国と民と勝利の為に貢献しようとの姿勢や努力を評価して立場の保障を誓おう、との意志を暗喩したのでな。大変長い説明であったが如何かな。」

 

 ……理解はした。でもだからこそ、俺も彼女も笑みを強張らせるしかできなかった。

 

 

>――――――――――――――――――<

 

 

「〜〜と、説明したら“両親”は1回で納得してくれたよ。いやはや義父上も義母上も素晴らしい理解力だよ。やはり、唯一人だけの子どもの教育係に6年間も拘束されるのが実に勿体無い位だ。」

 

「それは何だ?機関名で再三由来を疑い問い質し、我等が秘密主義な同志の()()を引き出した私への嫌味か?」

 

「まさか。彼等は彼等で優秀であり、貴官も貴官で素晴らしく、上か下かと決めつける意図はない。わかってくれ秋葉殿。」

 

「別に構わん。大体、証拠が無ければ信じて欲しいとの迫真さも無い前世語り如き、知ろうが知るまいが機関の仕事とは無関係だ。」

 

「そう受け取って頂けたなら幸いだよ。然し、流石は元新町派遣隊隊長。各種能力は無論だが、己との表裏両面における長い付き合いの賜物、と呼ぶべきかな?」

 

「……決定した機関名を告げられた際、本当にそれだけかと聞いてもお前はあれ以外の理由を否定した。私とお前の2人きりの状況になってから問い詰めて、観念したのか答えてくれたが……」

 

「「ならば語ろう。但し今から話す事は、我ながら荒唐無稽で信憑性の皆無な長話だ。まぁ、己の頭脳や精神に行動理念を少しでも納得できるもっともらしい理由付け、とでも飲み込んでおけばよい。」__で始めたのであったな。あの時の貴官は予想通り、信じられないといった表情を浮かべていたぞ。」

 

「その通りだ。何せ、自分の前世は遙か未来に造られた兵器ってだけでもとんでもないがその後に日本が吹っ飛んでからはもっとだ。けど、先天的な超天才にして精神的怪物だ、ってのも十分嘘みたいな話だし、語り自体は論理立ち且つ自分語りの体験談としては上出来だ。それに、たとえ全てが物語として面白い位の法螺話か妄想だとしても、それを羞恥心が一切感じられないまま流暢に述べるような子どもなら、機関の中核に相応しい知力も、何方の計画でも要となる幻想兵器使いに必須だという思い込みの深さも、両立して合格だからな。」

 

「即ち、真偽がどうあれ己を信用するに足る、と判断してくれた訳か。誠に有り難い。ならばこそ、己は貴官を含め、同志として或いは中心として信用し託してくれている構成員の皆に応える為にも、ピラーや[機械仕掛けの英雄]に外国との戦いを勝ち抜き、我等が祖国日本の勝利と繁栄と安寧を是が非でも築き上げねばならぬな。背負うものの重さが再認識できたぞ。」

 

「そうか……なぁ、()()()()()()、今更だがお前は本当に本気で、日本を救う英雄(兵器)になるつもりか?」

 

「無論。己は元よりこの日本を救う兵器として創り出され、そして骨肉の一片に至るまで日本の勝利と民草の笑顔に捧げると誓ったのだ。喩え我が身が屍と化そうとも、それが誰かにとっての明日の幸福を齎す礎に繋がれば、それこそが我が存在意義の達成と喜んで受け入れよう。」

 

「……愚問だったか。なら我等同志は、英雄様が生きて明日の誰かの笑顔を見られる為にも尽力するまでだ。」

 

「__己の言える台詞ではないが、無理は為さらぬようにな。()()()()。」

 

「そちらこそ。()()()()。」

 

 




 感想や指摘、疑問に誤字脱字報告等、お待ちしております。
 次話より遂に第二章、原作本編へと突入します。

 因みに、構成員から迦具土神に対する言葉遣いや態度には規定や方針がなく、命令遵守や機密保持等さえ守ってくれれば自由です。それ故、同じ同志でも、人によっては敬語で臣下の如く対応する者がいれば、気軽に話し掛け皮肉や文句を平然とぶつける者もいます。
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