英雄《しゅやく》になれぬ筈の槍使いと英雄《しゅやく》に至りし太陽《くろまく》   作:MOGOLOVONIO

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 この話は、主人公であるカグツチの説明回ですので、『シルヴァリオヴェンデッタ』は既に完遂した方は読む必要は特にありません。一方で内容を知らず、原作のネタバレは見たくない、という読者は読まない方がいいです。

 それと、原作との矛盾点や誤字脱字、アイデア等を抱いたなら遠慮なく知らせてくれるとありがたいです。



第一章〜日はまた昇る、闇夜を越えて〜Darkest before dawn in all ages✧
第0話  新星と落日 (カグツチの前歴。『シルヴァリオヴェンデッタ』のネタバレだらけ)


 

 

  __迦具土神壱型、それは旧西暦26世紀に勃発した第5次世界大戦期において、当時の日本が発見した高位次元間より発生する素粒子、星辰体(アストラル)を利用した軍部タカ派により製造された、最高峰の生体人工頭脳と星辰体を用いた核融合機能を備えている人型人造兵器である。

 

 本来なら後続機の生産に向けた試作と敵国の重要拠点襲撃の為に用意されたそれは、しかし日本国内で開発された星辰光式新型核融合炉に大中華連合工作員が妨害のため接触し、不意に爆発。

 空間震動が地球上全域にわたって巻き起こり、日本列島はユーラシア大陸東半分諸共消失、既存文明はこの巨大災害とその後地球全土に覆われた星辰体により書き換えられる、という形で第5次世界大戦は突如幕を閉じた。

 

 __だが、迦具土神壱型とそれに、彼に命じられた使命は終わっていなかった。

 何故なら日本列島は消失したが全て唯無くなった訳ではないのだ。

 この空間震動は破壊だけでなく、多くを他所へと吹き飛ばした。例えば迦具土神壱型は、負傷しながら設置されていた日本軍の施設と共にユーラシア大陸欧州地域へ。そして日本国と国民の殆どが、星辰体の出処である高位次元に飛ばされ、地上では後に第二太陽、アマテラスと呼ばれる地球に対する星辰体の供給源と化した。

 

 故に、迦具土神壱型は日本国の兵器、大和の残した使途として目的を、第二太陽を地球上へ帰還させ世界の覇者に至らせることに設定。それに向けた技術開発と試験管から出られない自身の代行者捜索を始め、凡そ4百年もの時を経て、必要技術を構築し代行者、というよりは祖国の為に第二太陽掌握を狙う事にした協力者を見つけ、呼び寄せた。

 

 協力者の名はクリストファー=ヴァルゼライド。迦具土神壱型が飛ばされた先にて新たに建国された帝国の軍人である。彼の特徴は、1つ目は凡庸な才能と底辺な出身層であること。2つ目は、それでありながら数多の戦場で戦い勝利し、若くして英雄と評される存在。

 そして、もう一つは、2つ目を為し得た理由でもある、民の為国の為勝利の為ならどれ程困難な現実も限界も踏破し糧とし得る精神性。要は今まで観察してきた汎ゆる人間の中で、無双の域にある程の()()()()()であった。

 

「___なんだ、この男は」

 

 抱いた感想は、初めての人類種への感嘆だった。

 彼は、それまで迦具土神壱型が代行者の条件、欲に溺れず怯えで逃げず苦難に屈さず穢れを厭わぬ者、それを満たすどころか基準を上回る傑物であったのだ。

 

「いいぞ、おまえを選んでやる」

 

 斯くして、両者は結託した。

 迦具土神壱型は帝国にも彼が中心となった国家改革派にも益になる技術、星辰体を用いて超人的身体能力と異能を有する星辰奏者化の改造を授け、ヴァルゼライドは大和を一旦降ろすための素材__人間の死体を収集することになった。

 その中で時に、貧民窟の無辜の少女を忸怩たる思いで部下の手でもって殺害、回収し大和降ろしの装置に仕上げるも何故か起動せず計画は停滞。時に彼女の起動に向けたデータ蓄積並びに国家の膿粛清の為に、犯罪者の死体を素体とした星辰体運用兵器を動かすも暴走、帝都に大被害が生じたが当時大佐階級のヴァルゼライドが単身鎮圧し、結果総統就任に至った。

 

 犠牲を少なからず出しながらそれでも両者が進み続けた理由は、国家への滅私奉公姿勢であった。

 

 一方は大和を帝国含めた地球上の支配国家へと、もう一方は星辰体の供給源と旧西暦の圧倒的な技術を独占することで帝国の恒久的繁栄を。

 

 真っ当な倫理観と感性を有しながら“誰か”の為なら轢殺でき、自己の存在を礎に化すことも躊躇しない。

 

 そんな彼らの関係は、手段において共にしながらも目的の対立により“宿敵”と互いにおいた。

 第二太陽が地上に降りて迦具土神壱型が完全復活と遂げた暁には、彼と死体を素体とした兵器、魔星による大和の代表と、ヴァルゼライド総統単騎による帝国との代理戦争を行おう。

 両者はそれを「聖戦」と呼び、来る死闘に向けて準備を進めていた。

 

「__勝つのは俺だ」

 

「__勝つのは己だ」

 

 互いに決意と敵意、同類への敬意と共感を込めてそう言い合いながら、聖戦へ着々と突き進んでいた。

 

 

 __いつからだろうか。大和の帰還のみならず、その前段階に過ぎぬ筈の、雌雄を決する闘いにも待ち遠しく感じる様になったのは。

 

 殴ってみせたくて動けぬ身体がもどかしい。

 その勇姿と自責と潔癖に尊敬の念を抱く。

 他者にも共に運命を背負わせようとしない誠実且つ孤独な在り方に聞いてみたくなる。

 

 これではまるで異常(エラー)。日本軍兵器としての命令からも忠国の使命という魔星の衝動からも外れた感情を持ってしまった。しかしそれ自体を把握しながらも完全に自覚するのは__聖戦直前にして最大の危機が双方に迫ってきた時であった。

 

 それは冥王(ハデス)。嘗て犠牲にして装置に仕上げた少女と、起動に必要だと発覚し捕え彼女と共に装置にしたある脱走兵の男が、突如絶大であり未知の悍しき力を宿し復活した運命の逆襲者(ナニモノカ)。その不条理の前に常勝無敗の英雄でさえ敵わなかった。

 

 それでも尚ヴァルゼライドは否、否と立ち上がり、最早狂っているが如く気力を盛り上げるも限界を迎え__

 

「立て、我が宿敵よッ、おまえは、ここで斃れるべきではない!」

 

 まだだ、死ぬな、カグツチは必死の形相でヴァルゼライドに叫んだ。

 そこにあった想いは、計画の破綻でも使命の失敗でも、冥王が齎す終焉でもない。それは本来、主君と祖国を脅かす敵に送るものではなかった。

 

「このようなところで終わってどうする!?貴様こそ紛れもなく史上最高の人類種、天津の使徒と相対できる唯一無二の存在だろう!」

 

 ヴァルゼライドを心から対等と感じながら、無機物にはない自我を発露させて未来を紡ぎ出す。

 

「そんな男が、ここで潰れていいはずがない!それも敗者の逆襲などと己は断じて認めはしないッ!」

 

 普段は余裕や尊大さに満ちていた彼がヴァルゼライドに、本気の敬意を、使命感以上の感情と共に、昂りが我が身の奥を貫きながら叩きつけた。

 

「ゆえに己は、そうだ__

 目指し焦がれた、未来と明日は__

 お前との聖戦、それによって意味はなく、それを演じた果てに得なくば意味がなくッ、勝利によって辿り着く、大願成就を求めているのだーッ!」

 

 大和の被造物に芽生えた本当の望みは、英雄の宿敵として二人で雌雄を決する聖戦。冥王などでは断じて代わりとなりえない。

 

「我らの紡ぐ英雄譚は、あくまで我らのものなのだから」

 

 それが、光と光の原初の誓いであるからこそ。

 

「ゆえに立て、クリストファー=ヴァルゼライド!我が宿敵、我が好敵手、尊敬すべき英雄よ!」

 

 ここで勝たぬなら許さない、だからどうか、煌めく真価を見せてくれ。カグツチの叱咤激励に対し__

 

「__ならば」

 

 その時ヴァルゼライドが命じた再起の手段は、荒唐無稽・前代未聞、その上成功した所で自らは潰えかねない代物だった。

 冥王か神星の何方かに勝利を明け渡すしかないであろう選択肢、カグツチは戸惑うが……ヴァルゼライドは双方にも勝って民に光を齎すと宣言。

 

 理屈も格差も未知も知ったことかと、死の間際に於いて尚常勝不敗を貫こう。そんな超弩級の大馬鹿者と呼ぶ他ない雄姿を示されたことで、カグツチは改めて理解し、歓喜し、ならば己も負けぬと案に乗る。

 

 正義(プラス)大義(プラス)が同調し、運命の車輪を回し、聖戦を駆動させる。それらは全て__

 

「「すべては、“勝利” をこの手に掴むためッ!!」」

 

 神星(カグツチ)が、史上最強の魔星が、心一つで健在である英雄の魂と共に再誕した。

 

 

 斯くして神星と冥王、光と闇が激突した。

 互いに力と技と願いと反発をぶつけ合い、危機に陥れば冥王は身近で優しい大切な仲間の助けで乗り越え、神星は気合と根性で覚醒して耐え抜く。

 

 しかしその覚醒は、迦具土神壱型(兵器の機体)に多大な負荷を与えた。よって彼に限界が訪れる。根性論による覚醒という名の幻影(エラー)、その代償が遂に、己の咎への報いと共に心身へと差し迫り__

 

「立てぃ、カグツチ!貴様は、ここで斃れるべきではないッ!」

 

 必然の滅びを止めたのは、ヴァルゼライドの魂による叱咤激励だった。

 

「我らの紡ぐ英雄譚は、あくまで我らのものなのだから」

 

 宿敵への想いと聖戦に向けた誓いは、アドラーの英雄もまた同じであった。決戦も勝利も、それでこそ輝かしく、たとえ生命と意識が燃え尽きかけようと、絶対に忘れはするものか。

 

「ゆえに立て、迦具土神壱型!

 我が宿敵、我が好敵手、打倒すべき魔の恒星よ!」

 

 これで勝たねば宿敵足り得ない。そのことが大和の神星にとって、最高の励みであった。

 

「応とも。誰にモノを言っているッ!」

 

 よって、生物や機械の必定すらも克服せんと覚醒、進化。勝利の為に、最早星光の異能という枠さえ超越した謎の異界現象を生み出し、未知の存在へと至りかけながら王手を掛けた。

 

 

 ところが、相手の際限なき覚醒を冥王は予想し、神星としては想定外且つ絶対に選べないある手段でもって__敗北の斬首を決めた。

 

 胴体から離れた頭部だけになっても、カグツチはせめて残った力で、大和に主君を高位次元から救いあげるのだと願ったその時、

 

「不要也__任ヲ解コウ、桃源郷ハ此処ニ有ル」

 

 届いた念波は第二太陽から伝えられた、自身の存在理由を否定する吉報。

 

 __日本と日本軍含めた国民は、世界の覇者を望んでいない。高位次元にて第二太陽になったことが、中津国にて普遍にして必定の苦しみから解放してくれた救いだった。

 __自分が独り課した使命とは、永久の極楽から引き摺り降ろすだけの、只の余計なお世話でしかないのだ。

 暇を与えられるという、国と主の為戦い抜くことだけが存在意義である兵器にとっては絶望的な結末。

 

 ___大和の通達だけが、彼の脳内に響いたのならば。

 

「いいや、まだだ」

 

 新西暦にて邂逅し共闘した宿敵、その意志が横から殴りつけ、熱く雄々しく、そして馬鹿らしい語りかけをする。 

 時間の開きがある以上、日本の幸福と自身の使命との違いが出てもおかしくない。それに、創造主に望まれなかった程度で何故歩みを止める。

 

「決めたからこそ、果てなく征くのだ。それ以上の理由など我らにとっては必要ない」

 

 人生を決意に殉じてひたすら突っ走る生き様は、人間として破綻しつつも憧れを禁じ得ない輝きであった。

 カグツチにはそれが、尊敬すべき無謬の光にして、暗黒の深淵へと差し伸べられ引き上げてくれた救いの手の如き漢となったから。

 

 宿敵には負けられない。絶望してなどいられるか。何故なら己は、聖戦にて雌雄を決する英雄の好敵手故に。

 この想いによって、カグツチは再び立ち上がった。

 

 今度こそ、自らの意志で天津を地表に降ろす。

 それは可能か否かだけでなく、主君にとっての要不要の問題ですら、既になくなった。

 

 “勝利”とは進み続けること。

 これが神星と英雄の掲げた勝利の形。だからこそ1人と1体(木星と恒星)旅路(たたかい)は終わらない。最早この死すら決意の歯止めにならない。復活であれ蘇生であれ輪廻であれ、次の機会に繋げ、勝ってみせる。諦めない限り世の道理など蹴散らしねじ伏せ突破できるのだから。

 

 その時に対峙するならば、カグツチは英雄であってほしいと願う。光と光を競い合い、汎ゆる神話を過去にする二人の大戦争を脳裏に描く。

 

 

 では、またいつか。

 

 あの世の果てで奇跡を億ほど起こした先に。

 

 「聖戦の成就を、さあ___」

 

 

________________________

 

 これが、迦具土神壱型の旅路(きせき)

 

 彼は闘い続けると誓った。大和に再び拝し捧げるために、宿敵との聖戦を演じる為に。全ては、誰かのために、勝利する(進み続ける)のだと。

 

 そして___不条理は3度巻き起こる。新たなる出逢いと別れと試練を用意して。

 

遠未来のバイオコンピュータはその頭脳をもったまま人間の赤子に転生したようです

  • ならば21Cの機械へのハッキングは簡単!
  • いや流石にそれは無理あるのでは?
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