英雄《しゅやく》になれぬ筈の槍使いと英雄《しゅやく》に至りし太陽《くろまく》   作:MOGOLOVONIO

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第15話 謝罪表明と初日終了

 

「迦具土神、特高初日の会話となる訳だが、先ず全同志に対して申し上げるべき事があるのでは?」

 

「嗚呼、では___本日の初戦に於ける暴挙、大変申し訳ない!!全ては己の不徳の致すところだ!」

 

  遅刻せぬよう特高へ運んでくれた同志に次いで2度目の謝罪を、秋葉殿並びに録画配信用カメラ越しの同志達に示す。

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 試合を終えて、身体に残る痛みを表に出さぬよう堪えつつ校舎へと、他の新入生より一足先に入って階段に腰掛け、月夜ら親衛隊に汗を拭かれつつ休憩する。暫くすると、グラウンドから保科と遠藤以外の全員が戻ってくる。

 

「天道寺君、大丈夫ですか?この後地下の部屋に1年生全員戻って、クラス分けと寮の割振りを行います。問題なければ一緒に来てもらいますが、疲れているなら……」

 

「平気だ、体力は回復したので合流させて頂くとしよう。音姫も、皆も、己を態々気遣ってくれて感謝する。」

 

 近寄ってくる木村が今後の予定を伝えながら心配を掛けてきたので、立ち上がりつつ応答し、囲んでいる親衛隊に礼を言う。

 

「……って、英人ったら何言ってんのよ!?私はただ幼馴染として放っておけなかっただけなんだからね!」

 

「あたしは英人の闘いぶりがカッコよくって気になったから、気にしないで!」

 

「…私は、刹那のファンだったから、弟を見過ごせなくて。」

 

 と口々に、台本にない台詞を上手く返してくれた親衛隊に笑顔を向け、木村の後方にて待機中の新入生らへと合流する。

 憧憬や心配に嫉妬と、何れにせよ注目を彼らから集められながら共に地下へと行き、先程と同じパイプ椅子へと座る。

 

 そうして教師陣から各自にクラス*1と寮を割り振られ、今日は早めに寮棟へ入って親睦や休息に専念し2日目以降に備えよ、との通達を語って解散となった。

 

 己は予定通りA組の9番棟を言い渡され、親衛隊員らを連れて校舎を出て寮棟へ着き皆入った__瞬間に彼女等へ告げる。

 

「嗚呼すまない、今気づいたのだが、日が暮れる迄時間が余っているな。折角だから己は独り校舎内を探検していくぞ。音姫や皆は先に9番棟へ行っておいてくれ。」

 

「「「………へ???」」」

 

 突然の言葉に啞然とする隙に、無邪気で好奇心旺盛かの如き態度を作り、来た道を走って戻る。

 またまた申し訳ないのだが、己には校舎内で為すべき用事が2件あるのでな。

 

 と、走りながら隠し持っていた小型通信機を作動させ、校舎内の同志に通達する。

 

「今単身校舎へ遡行中親衛隊の通報や追手への対処頼む、それと保健室の状況報告も求む」

 

「了解同志教員にも指示する、保健室は現在保科と睡眠中の生徒計2名」

 

 やがて校舎に戻った己は、通りかかる同志の教職員には目配せしながら通信室の扉前に辿り着く。

 

 ノックを3回、2秒後に2回。

 

「開いてますよー。」

 

 無言で入室し扉を閉め、迷彩服を着た数名の男女に向き合う。

 

「__高天原より天下りて。」

 

「「「火之迦具土神の星へと集わん。」」」

 

 ズレなく一致して返された合言葉により、特高の通信部隊が同志のみで構成されていることを確認する。

 

 

 そして最初に、その場の同志全てにも、入口から正面奥に置かれた起動中のカメラにも目をやり、深く土下座し謝罪を述べたところで、顔を上げるよう命じられた。

 

「……ではその暴挙の理由や原因をお聞かせ願おうか。言い訳の機会でなく今後の再発防止の為に。」

 

「第一に、当時の己は空知宗次という格上の対戦相手への勝利しか頭になく、周辺並びに宗次殿自身に及ぼす被害を考慮しないまま力の限りを解放した。第二に、幻想兵器の出力が「英雄・天道寺刹那の弟」やエクスカリバーとしての認識力(テオリア)による増幅量の事前予測を上回っていた。第三に、己の身体能力が唯でさえ男子平均に過ぎぬ上全身に痛み疲れが蓄積されており、光刃の制御に限界があった。」

 

「なら、反省を示して頂くべく再発防止策を提示してもらおうか。」

 

「第一に、周辺被害は常に想定し危険予測を怠らない。第二に、如何に困難な状況であろうと緊急性が無い限り決して他者に危険を及ぼしかねない大規模攻撃は実行しない。第三に、自身の体調や幻想兵器の状態は常に把握しておく。」

 

 問い詰める秋葉通信部隊隊長に対し、膝を着いて答えてゆく。

 

「成程。ではもし暴挙を起こしたとして、それで重傷者や死亡者、或いは物的損害が生じた場合はどうする?」

 

「金銭面では、事前に機関のネットワークで公表した己の口座から、補償なり対処費用なり幾らでも用いてくれ。身体や生命に被害が及んだ際は、犯罪者として突き出しても構わない。罪状が浮かばなければ、機関の非合法活動の責任を己1人にのみ押し付けてくれ。己に為せる償いは命を懸けても全うしよう。」

 

 そう言い切った所で秋葉殿は撮影を停止した。

 

「……理解した。これ以上は時間の無駄なので終わりにしよう。此方は機関のネットワークにて公表する。もし批判や質問が来たらその都度報告する。」

 

「改めて、誠に申し訳ない。今後一切、斯様な暴挙は起こさぬと、祖国と機関に誓おう。」

 

 そして立ち上がり、今度は此方から尋ねることにする。

 

「ところで、今年度の入学に於いて異常や問題は確認されたか?」

 

「いえ、迦具土神や試合以外では今のところ確認されていません。新入生の適性レベルも幻想兵器も、全員が常識的な範囲に収まっています。試合相手の空知についても、純粋な“蜻蛉切”とDクラス相当に過ぎません。」

 

 PCを見て再度己に顔を向ける関口准陸尉から報告を受けたが、宗次の幻想兵器の位に感心する。

 

 原典の知名度や性能に逸話、試合中の分析を鑑みれば、本多忠勝殿や製作者たる藤原正真殿には悪いが、幻想兵器として下位に当たると予想していた。

 

 そして事実Dクラス相当という評価であったが___裏を返せば、その程度の武器でエクスカリバーや英雄の弟を追い詰めてみせたのだ。

 

 認識力に大きな格差がありながらも宗次は、長く実直で真摯な努力と、積み重ね磨き上げた心技体と、古くより受け継がれ洗練されてきた空壱流槍術なる武術の伝統で以てして、己を敗北必然な段階まで追い詰め、更に我ながら強大な威力を備えた光刃から観衆(誰か)を護り通してみせた。

 

「クッ、フハハハ、全くあの漢はやはり強いということではないか。運命や幻想に選ばれし存在を、自らの努力と意志と技巧により圧倒し民や友を命懸けで救った無名の益荒男。槍使いを主役に据えた英雄譚(サーガ)を紡ぐならば、実に相応しい序章の筋書きであろうよ。」

 

「……同志?いきなりどうしたのですか?まさか試合中に頭を殴られたせいで支障を来したのですか?」

 

「__おっと同志加藤よ、もう痛みは引いているので大丈夫だ。単なる独り言故、気にするな。ただ対戦相手が予想以上に強く、日本国民にそしてACE隊同期に居るのだと思えば頼もしく又誇らしくなったのだ。」

 

「順々承知の筈ですが、[機械仕掛けの英雄]に沿うのみならず迦具土神が絶対的な力を得る為には……」

 

「無論、其処を違えるつもりはないさ同志原田。己は如何なる強敵や困難に対抗馬が待ち受けようと、()()()()()()()にして()()()()()()()()で在り続けるとも。」

 

 [機械仕掛けの英雄]の要とは、天道寺英人に対し人々の希望や期待を一身に集中させ、長野ピラーを撃滅可能な程に幻想兵器の力を増強・凝縮させることにある。

 政府や6年前時点の影山が欲する戦力とは、戦術兵器に到底届かぬ出力の幻想兵器使い数百ではなく、空前絶後の単騎という決戦兵器に他ならない。

 

 ___凡そ、かどうかは兎も角自らの意志と武力で到達した点に於いて異なるが、アドラーの英雄(我が宿敵)を想起してしまうな。生憎己の場合、奴程立派な経緯ではないが。

 

「__とはいえだ。強者がACE隊に所属していれば、その分隊や民草の被害は抑えられ、己の負担も減るというもの。」

 

「___何より、彼の存在は、瓊瓊杵維新の裏で用意してきた()()に於ける絶好の候補たり得るのだ。喜ばしい僥倖だぞ。」

 

「「「__ッ!!!???それは……」」」

 

「おい()()、その当人がもう直ぐ保健室を出そうだぞ。お前の事だ、暴挙の被害者にも接触する予定だったんじゃないか?」

 

「何!?そうか報告(かたじけ)ない、悪いが今から彼にも感謝と謝罪、可能なら懇願の口止めしに行く、失礼する!」

 

 校舎から出てしまえば人目により付きやすくなり、“[機械仕掛けの英雄]が敗者へと謝罪する”などと台本や傀儡の設定にそぐわぬ行動がし辛くなる。一刻も早く宗次と接触せねば!

 

「「「お気をつけ下さい、大和万歳!!!」」」

 

「大和万歳、貴官らも無理なさらぬようにな。」

 

 と、慌ただしく部屋を飛び出るのであった。

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 それから出入口付近にて、第三者不在の状況で宗次と接触した。

 俺が救けられたのは英人のお陰、英人は悪くないし俺より凄い、だから感謝したいのは此方の方だ、といった反論に押され、懇願の黙秘を了承して頂き、そして__

 

「また今度、俺と蜻蛉切、英人とエクスカリバーで試合がしたい。そして__次は、俺が勝つ。」

 

 との宣戦布告に次も己が勝つと告げてから、言えぬ事情があるとはいえ至極もっともな言葉を投げ掛けられ悩みながらも承り、宗次は恐らく1-D用である12番棟に向かうべく夕陽の差し込む出入口を出ていった。

 

 宗次の態度には、元々の期待に反し幻想兵器による暴力を振り回すだけの凡庸な素人であった己に対する侮蔑も、友や無関係な者を害さんとし自身の鍛え上げた武を捻じ伏せた光刃に対する恐怖も一切存在しなかった。

 否、寧ろ試合中以上の尊敬や闘志が燃え盛っているのが伝わってきたのだから、全く大した武士(もののふ)よ。

 

 __それにしても、奴の告白が事実であったとしても、極端なまでに己を讃え自らを卑下する姿、何処かの“破綻者”をこの時にも連想させてくれるではないか。

 一応あの決意を踏まえれば、自己評価の低下による幻想兵器の弱体化が生じていようと、意志と執念でそのマイナスを上回る可能性も期待されるが__1-Dの様子も気に掛けておくべきか。

 

 

 と思案しつつ、今度は校長室へ足を運ぶ。折角入校したのだ、挨拶するのは当然の礼儀なのでな。

 

 階段を上がり、校長室前に着いたら、先程同様に()()()()3()()()2()()()()2()()行う。

 

「入り給え。」

 

「失礼する。」

 

 扉を開けて入室すれば、校長室らしく豪勢な、然しそれでいて軍人らしく質実剛健な様を両立させた部屋の奥にて、芹沢元防衛大学校学校長が待ち構えていた。

 

「__高天原より天下りて。」

 

「火之迦具土神の星へと集わん。」

 

 そして彼もまた、機関の同志である。

 

「座ってくれて構わんよ。初めての闘いで疲れたろう。それと謝罪は時間の無駄なので不要だ。通信隊から今しがた動画が届いて視聴したからな。金輪際あの様な危険は起こさないでくれ。」

 

「嗚呼、順々承知だとも。反省と誓約に嘘偽りは欠片もない。ところで、貴官の表裏の業務と()()は如何かね?問題があれば()()()()として解決に向けた手配を行うが。」

 

 ソファに腰を下ろして尋ねてみれば、笑顔で首を横に振ってくれた。

 

「“聖剣の英雄”を途中まで圧倒した新入生と、例の光を除けば順風満帆だよ。2・3年は殉職者や退校者を出してこそいるが、全体で見れば戦果も士気も人気も安定且つ好調。同志や協力者以外は[機械仕掛けの英雄]に気付かず、そして機関の存在は他の教職員に対しても完璧に秘匿出来ておる。同志からの質問や要望はあるか?」

 

「__“アレ”の候補を見出したが故、1-Dへの注視を頼む。現時点では大して目立たぬだろうが、もし何れ対CE戦に出撃した際、ひょっとしたら興味深い武功を挙げるかもしれぬぞ。」

 

「__!?何と、あんな一見御尤もな論理に基づく無茶苦茶なことで評判な計画を!?……例の新入生を指し示すのだな?」

 

「相違ない。別に待遇を変える必要はない。まだ候補段階に過ぎぬし__何より、凡百の兵士から勝手に一際輝いてみせる者にこそ相応しいからな。」

 

 数秒黙りこくって、溜息1つついてから返答する芹沢。

 

「……では、一先ず担任となる大河原へと「[機械仕掛けの英雄]の邪魔になる可能性があるので、彼の様子を私に報告せよ」と指示しておこう。後、もう寮に向かった方がいいのでは?もう直ぐ日が沈むというのに、何時までも親衛隊(1-A女子達)を待たしては迷惑を掛ける上に計画へ支障を来しかねんぞ。」

 

「そうか、了解した。では今日はこの辺で退室させてもらおう。また何か用が出来れば直接間接何れかで伝える。同志もそうしてくれ。では無理のない範囲で頑張ってくれ、大和万歳。」

 

「迦具土神も今夜は体を休めなさい、大和万歳。」

 

 挨拶の後、己は校長室を退出した。

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 __さて、校舎を出てみればもう宵闇がすぐそこまで迫っており___

 

「英人!全くこんな遅くまで私や寮のみんなを待たせないでよ!」

 

「済まなかった、音姫よ。つい探検に夢中になってしまったのでな。早く戻って、これから暮らす皆へ謝罪せねばなるまい。それと、迎えに来て頂き、感謝する。」

 

 散々待たせてしまった親衛隊や寮長に申し訳なく思いながら、2人で9番棟へと歩いて行くことになった。

 

 寮棟に着いてみれば、内心の不満や不安を隠す親衛隊員全員から、英雄の凱旋と言わんばかりに手厚い歓迎を受けた。

 

 寮長からは個室番号と入浴制度を説明され、また食事について通常学生は学年クラス問わず学生食堂で全員*2行うものの入学日の晩と翌朝だけは弁当が用意され寮内で親睦ついでに食べる、と言われた。

 

 斯くして、彼女らとの会話に花を咲かせながら、贅沢な献立の弁当を共に頂き、食べ終え話し終えた後、9番棟唯一の男性として1人浴場にて体を洗い湯船に使って体を休め、用意された部屋着に着替えて出たら自室となる3階の303号室へと入る。

 

 

 6畳間の1人部屋、興味津々な様子で見回し一周してからベッドに倒れ込み___ヘッドホンを装着。

「無事部屋一人着、カメラ設計通りの位置全確認。」

 

「了解、カメラ映り問題なし、A組皆疑う素振りなし、加具土神より報告は。」

 

「無し、唯同志以外に悟られず鍛錬時間求む。」

 

「……無茶仰る。善処します。」

 

「では疲れた故もう寝る、同志も無理なき範囲で休み給え、大和万歳。」

 

「畏まりました。大和万歳。」

 

 

 ___本当に、今日は良くも悪くも様々な出来事に満ちていたな。

 

 6年間も寝食や謀略を共にした義理の両親と別れ、前橋駅で軽挙によりバスに乗り遅れ駅の全同志に迷惑を掛けてしまい、登校すれば益荒男と評すべき猛き若人と出逢って挑ませてくれた上に己の暴走を止めて頂いた。それから通信部隊の下へ訪れて謝罪と反省を撮影してもらい、保健室から無事な状態で退室した宗次から宣戦布告を承り、芹沢に挨拶、そして9番棟にて隠しカメラに囲まれながらベッドの上と。

 

 ___不甲斐なく申し訳ない失態ばかりであったが、明日以降に無用な迷惑を振り撒かないよう戒めて、反省を活かさなけれななるまい。

 

 確か、2日目の予定は、午前7時丁度に月夜がこの部屋に己を起こすべく来訪、それから1-A教室にて色鐘の挨拶とCEに関する簡単な説明、次直ぐにジャージに着替えて訓練、その後座学講義で間に食堂で昼食、最後に1-A分の幻想兵器の試し合いを実施して寮に戻る、であったな。

 もう眠りについて、心も体も頭も休ませねばなるまい。

 

 

*1
原則として、幻想兵器の性能に応じて分けられ、D,C,B,Aの順に強力な幻想兵器に選ばれた者が配属される。但し特高設立3年目に於ける1-Aのみは幻想兵器の性能ではなく、天道寺英人と親衛隊員として入学した少女達の計30名が予め配属されるよう決まっている。

*2
2031年度には3学年合計約450名。





 
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