英雄《しゅやく》になれぬ筈の槍使いと英雄《しゅやく》に至りし太陽《くろまく》 作:MOGOLOVONIO
ノンフィクション(事実ありのままとは言っていない)作中作第2弾です。
感想や指摘に質問等、お待ちしております。
特高入学より3日目、朝陽が照らすグラウンドにて、1人走る少年がいた。
「ふっ、はっ、はっ、……」
空知宗次、彼はどの生徒よりも早く、しかし普段通りの時間に目覚め、故郷の村で育っていた時からの日課であるランニングを行っていた。
「あと5週、ペースを上げてみるか。」
やる事は今も昔も変わらない。毎日の鍛錬を欠かさず、気力体力の向上に努める。
その習慣は宗次個人にとって性に合うものであり、また空壱流槍術継承者として当然の義務でもある。
それは何も変わらない。だが一つ付け加えるのなら……
「英人に勝つ、次こそ勝つ、だからもっと速く、強く。」
本来格下の弱者でありながら、自らに食い下がり逆転勝利を果たした、新たな目標にして尊敬すべき好敵手。
それが天道寺英人に対する宗次の印象になっており、以前よりも一層努力する理由になっているのだ。
初日の黄昏時、互いに誓った再戦の約束。何時叶うかはまだ予想がつかずとも、その日に向けて毎日欠かさず体を鍛え、技を磨き、心を養う。よって日課の修練は、十数年も貫徹していながら今まで以上の意欲で取り組んでいる。
「……ふぅ。今日の走り込みはこれでおしまいだ。本当は槍術も練習したいんだがな。」
宗次は足を止め、無人のグラウンドで呟いた。
「よし。今日の放課後には、実家から練習用の木の槍を届けてもらえるよう学校に頼んでみるか。」
取り敢えず担任の大河原先生にでも相談を、と考えながらグラウンドを駆け足で立ち去る。
「……今度は、何をしてくるんだろな。」
その呟きには、好敵手に対する多大な、それでいて確実な警戒と期待と信頼が籠っていた。
英人もまた絶対に、何時か訪れる再戦に向けて身体を鍛え上げようと日頃の努力を怠らないだろう。
然し、技と体は日々の積み重ねによってこそ磨かれるが故に先達が後続より優位に立つ、という普遍的な真理が彼に待ち構えている。
元々既に努力を絶えず積み重ねてきた玄人には、つい最近から決意に目覚め努力を始めてきただけの素人が敵う訳がない。
イソップ寓話に於いては、先天的に足の速い筈の兎が途中で居眠りし、鈍い筈の亀の地道な前進により敗北を喫する羽目になった。されど現実では、元から能力的に優位のある立場の者は誰しも惰眠や慢心をしない、など有り得ないのだ。少なくとも
故に宗次はこう予想するのだ。英人は勝利の為に対策を講じると。
宗次にとっての警戒対象は特に3点。英人の頭脳、観察眼、そしてあの光刃に秘められし可能性。
対戦相手の身体能力や動作の癖に技巧を解析し、実力の開きを実感しながらも冷静に思考を巡らせ、僅かであれ実際に生じた隙へと狙い斬りつけてみせた初戦前半。
伝統と経験に基づく槍使いの武とは異なり、炯眼と知恵と工夫と度胸で素人なりに、そして素人とは思えない程高度な頭脳戦こそが英人の戦法にして武器だと理解している。
エクスカリバーも然りだ。宗次にとって、あの光刃の威力と規模、それ自体は恐れていない。真正面から受け止めようものなら如何に宗次の頑健な体力と意志があろうと耐え切れない、がそれだけだ。溜め時間や大振りな動作に幻子干渉能力の消耗と、「当たらなければどうということはない」程度の他愛もない技でしかない。
されど、果たしてエクスカリバーは光を放出し押し潰すだけしか出来ないのか?弱点など既知であろう英人がそれだけの用途で満足するのか?
「彼奴は、剣の刃を意識的に砕いてみせた。ならあの光刃も、同様に変容させてのけるかもな。」
幻想兵器は人の精神に影響を受けて形成されるという。ならば前回の様な、単なる力押しの光線兵器で留まってくれる保障はない。
幻想兵器の底知れなさ、聖剣使いの発想力と集中力。それらを鑑みれば、未知故の警戒心が湧き上がるのは宗次にとって当然の心情だ。
「だとしても俺にできること、すべきことは変わりない。日々精進、それのみだ。」
改めて決意を固めて、宗次は寮に到着し__
「兄弟!今までどこで何やっとったんや⁉」
「宗次君遅い!もう校舎に向かわないと遅刻するわよ!」
「……もうそんな時間だったか。御免、待たせてしまって済まない。」
自分を探していた同級生達と合流し、時間を忘れて自主練に励んだせいで心配や迷惑を掛けてしまったことに気付いて反省する羽目になった。
皆に 責を受けながらどうにか朝礼に間に合った宗次だが、行動と意欲を話した結果全員が、程度の差こそあれ朝練習に賛同し、翌日以降の1-Dに於いて毎朝の習慣を確定させたのであった。
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「……なぁ兄弟、あの朝って、こんなこと考えとったんか?」
「ああ。取材の際に話した通り書いてくれたんだな。」
「……宗次君、何というか、すっごく、天道寺に対して、その……」
「いやはや宗次よ、あの時点の己をこうも評価して頂けたのか。嬉しい限りだよ。」
映助と陽向と英人は、ノンフィクションと銘打った事実上の小説を手に持ち宗次へと話し掛けた。
「当たり前だろ。英人は祖父以外で初めて対峙し、黒星を俺につけてきた
「いや、あんな理不尽な進化想像すらできないから。私でさえ予想外だったわよ。」
呆れた様子の月夜が言葉に返せば、1-D皆が同調する表情を宗次に向けてきた一方で、彼等とは異なる思いを英人が語る。
「然し弛まぬ努力姿勢は無論だが、己とエクスカリバーに対する考察もまた、実に的確で素晴らしい。文中では己の「炯眼と知恵」を評価し警戒していたとあるが、宗次も相当優秀だぞ。」
「……心からの賞賛、ありがとう。それにしてもしっかりと記載してくれたんだよな、制作担当は。」
「後からこの描写について聞いた話だがな。強大な幻想兵器と未熟な肉体の差異が目立ちがちな己と、武術という優位が備わっていながらそんな弱者に敗北した宗次、その両者を何方も持ち上げる際に有効だと判断したらしい。たとえ台詞に比べて地の文の割合を大幅に増加させても敢えて描写しようと決めた、とな。」
「成程、俺は兎も角英人が単に奇跡頼りだと見做されるのは許し難いから、そういう配慮なら嬉しいよ。」
笑顔で話し合う2人に、月夜が胸中に湧いた疎外感を脇に置いて近寄る。
「……ところでラッキースケベ展開は
「「___必要か⁇」
「「「………否定できない(ひん)……」」」
月夜を始めその場の全員が、言葉を重ねたのであった。
CV:戸塚和也「男女2人きりの混浴回?美少女のサービスシーン?あるわけねえだろ、そんなものッ!」
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前半後半等と文章を分割すべき
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制限内なので1話分として投稿してもよい