英雄《しゅやく》になれぬ筈の槍使いと英雄《しゅやく》に至りし太陽《くろまく》   作:MOGOLOVONIO

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 本作に於ける、幻想兵器関連の仕組みや技に応用等につきましては、一部原作にない独自の設定や解釈がございます。ご了承下さい。


第17.5話中 再戦と天昇

 

  入学日より9日目。通常ならばグラウンドにて一年のA組とD組による合同訓練、といっても同時間帯というだけで区域も内容も異なり交わらぬ授業を行っている頃だが、この日だけは両組が一緒に、或いは対立した状態で実施される。

 その中身は、D組である俺こと空知宗次と、A組の天道寺英人による2度目の対戦試合だ。

 

「英人、必ず勝つのよ!」

 

「「「英人君、頑張ってっ!!!」」」

 

「応とも、任せてくれ!」

 

 A組女子全員から声援を受けながら、前に出てきた英人(ライバル)

 その途端に、同級生の男子達から殺気の昂りが感じてくる。

 

「兄弟、あのスケコマシを二度と立てないようボコボコにしたれっ!」

 

「「「うぉーっ!!!ぶち殺せっ!!!」」」

 

「勝ったらご褒美上げますよ~、陽向ちゃんが。」

 

「ちょっ、勝手に何言ってんの!?」

 

「ふぁ、ファイトです……」

 

 殆どの男子と、クラス配分でD組に於いて少数となった女子達の声援を浴びながら、俺も前に出る。

 

「では、貴様らの要望に応じ、これより天道寺英人と空知宗次の試合を始める。」

 

 審判役を務めるのは、A組の担任である三角眼鏡の女教師こと色鐘綾子。一方でD組担任の大河原先生は、何故か今日に限ってこの場に来ていない。

 

(「しかし、こんな堂々と許可されるとはな。」)

 

 英人との再戦それ自体は歓迎している、が一方でだ。

授業の時間を使って、生徒同士の口喧嘩から始まった私闘を許すなんて、兵士の養成学校でなくとも許されない行為であろう。

 だが、大河原先生は分からないが色鐘先生については、まったく止めようとせず寧ろ進んで二人を戦わせたがっているように感じられた。

 

(「これも理由が有るのだろうか?」)

 

 男女が同じ寮、A組だけの露骨な依怙贔屓。

 軍隊としても、教育機関としてもあり得ない、おかしな処置の諸々に、この試合も連なっているのだろう。

 もしも、その答えを知っている者がいるとしたら__

 

「英人、勝ったら何でもしてあげるからねっ!」

 

 人目も憚らず熱い声援を送る千影沢音姫から、昨夜の異様な気配は全く窺えず、宗次など存在しないように目もくれない。

 だが、昨日の事は夢ではなく、彼女の聞いたことがない声色も、意味深な言葉も今も耳に残っている。

 

 異質な態度も発言も、疑問ではあるが然し、今は英人との試合に意識を全て割こう。

 __無論、前回の様に第三者への被害などお構いなしな心境に陥らぬべく心掛けて。

 

 そうして英人と向き合ってみれば、何故か尽きぬ言葉を抑え込もうとしているが如く、口を強く噤んでいる。

 恐らく、クラス同士の紛争が試合の理由になったせいで、あの日の夕暮れ時みたく気兼ねない会話を自粛せざるを得ない、と判断したのだろう。

 折角の機会に対して喜びを分かち合いたい、互いにとって不本意な経緯について思いを交わしたい。そんな感情を鎮め、男らしく戦士らしく武器と闘いでもって語り合おうと切り替える。

 

「「武装化っ‼」」

 

 本多忠勝の名槍蜻蛉切が、アーサー王の聖剣エクスカリバーが、衆目の前に再び現れた。

 今度は、既に聖剣が刃抜きされていたので此方も石突を前に向ける。

 

「先生も皆も離れてください、危険です。」

 

「分かった、言うとおりにしてやろう。」

 

 色鐘先生に呼び掛けたら、尊大な態度を取りつつもA組D組両方の生徒全員を約50m下がらせてくれた。

 正面に向き直ると、英人が安堵した表情を浮かべていた。俺が言い出さなきゃ自分で呼び掛けるつもりだったのだろう。

 

「え~っ、これじゃあ英人君の勇姿が見れないじゃないっ!」

 

「アホか、また巻き込まれたらどないすんねん!」

 

「わざと巻き込まれる位置に立って、また宗次君の足を引っ張るつもりなんじゃ……」

 

「うわ~、やりかねないです~」

 

 周囲に目をやると、A組は文句を漏らしながら、同級生は粛々と距離を取っていた。

 また陽向達は、A組の動きを監視するようだ。

 

「では行くぞ、始めっ!」

 

 審判の合図により、遂に待望の再戦が開幕した。

 

「「……フゥー……」」

 

 初めの数秒間、俺と英人は互いに静かに深呼吸し、意識を集中させながら相手を観察する。

 見たところ、肉体には僅か一週間程度の間隔とはいえ鍛錬した形跡が殆ど無いようだ。あの夕暮れ時に「鍛えておけ」と言った際の困った様な顔が想起されるが、やはり何か事情でもあるのか?

 だが尚更注意せねばなるまい。自身の不利(体と技)に付け焼き刃を施すよりも、有利(智謀)を重視し此方の想定や実力差を超えてくるに決まっている。

 

 どう挑んでくるかまでは分からないが、用心を最大限に深め、蜻蛉切への握力を強める。

 そして__

 

「うおぉぉぉーーーッ!」

 

 先攻は前回同様英人から。槍の間合いに飛び掛かるが、初動も俺にとっては前回同様遅い。

 

「ふっ!」

 

 呼気と共に槍を繰り出して、相手の胸を易々と捕らえ__幻子装甲を掠めるだけに留まったのか直撃には至らず迫ってくる。

 

「はあァッ!」

 

「くっ!」

 

 地面を踏み締め剣を斬りつけてくる英人に対し、回避行動を取りながら槍をカウンターとして振り回して__互いに幻子装甲を掠める程度に収まって、近距離戦闘に移行することに。

 

「かあッ!せいッ!」

 

「ちっ、やるなっ!」

 

 距離を詰めんとする剣士の連続攻撃を、槍で全て受け止めながら後退しつつ反撃の機を窺う。

 予想通り、想像以上の攻勢だ、初戦よりさらに正確に俺の隙に剣を捻じ込まんとし、加えてどれも防御を想定しているらしく剣を引いてはまた斬ってを円滑に繰り返し、俺が距離を取ることも突きを放つことも防ごうとしている。

 

 それ自体は問題ない。分析能力も予測能力も尋常じゃないのは既に知っているし、近接戦闘ならば、とっておきがあるのだから。

 だが俺は違和感を覚えていた。それは、剣の威力が前回以上に強いことだ。

 身体能力は見立て通り微々たる成長に過ぎず、練習試合を重ねて剣の取り扱いに慣れたとしても、一週間程度の変化などたかが知れている。実は剣術の才能を宿していた?それは多分ないだろう。少なくとも剣道全国大会の常連だと語った妖刀使いの陽向に比べれば、菲才もいいところに思われる。

 __では何だ?使い手の英人に要因が無いのなら、エクスカリバーそのものが強くなったとでも言うのか?

 それにおかしな点はもう一つ、突きの感触__

 

「考え事か?余裕を持たれて当然の格差だが、兎と亀は知っているだろう?」

 

「__済まない、でもそんなこと言っていいのか?ハンデを捨てさせるなんて。」

 

「それは己も考えたが、まぁ、勝てるのなら本気の宗次相手が望ましいのでな。」

 

「……ふっ、御立派な高望みは英雄らしいけど……せめて後悔はしないでくれ!」

 

 もう守勢は止めだ、危険に身を晒してでも勝ってやる!

 

 20回目の斬撃を防ぎ、次撃に移るべく剣が引かれたのを確認し__瞬時に両手から槍を放し、拳に意識を集中させ握り締める。

 

「__ッ!?」

 

 以前の蹴撃みたく察知した英人の顔を見据えて__もう遅い、一歩で剣の間合いを飛び越え、2歩目で懐へと入り込んだところだよ。

 

「はっ!」

 

 気合一閃、渾身の拳をがら空きとなった脇腹に穿つ。

 

「ぐはっッ!」

 

 怯んだ隙へと更に、右、左、正拳、裏拳、掌底、あらゆる打撃を休みなく胴体に叩き込み、反撃の間を与えない。

 

「ぐっ、があぁァァーーッ!」

 

 それでも必死に堪えた形相になりながら、左手で裏拳を放ってきた英人。

 それを回避すれば、剣を光らせながら突き出そうとし__俺は右手の掌底を、迫る剣の柄頭に放つ。

 

「飛べっ!」

 

‘空壱流体術・牙弾き’

 

 握りが甘い片手持ちの剣が、柄を弾かれロケットのごとく掌から吹き飛び、英人の背後の地面に突き刺さった。

 その瞬間を見計らい、前蹴りを放って突き飛ばし、互いの距離を開けさせつつ右腕の幻想変換器に手を伸ばし、再起動させる。

 

「武装化っ!」

 

 地面に投げ捨てた蜻蛉切を一度消し、再び手の内で形成する。

 映助達との訓練で何度も練習し、体に覚え込ませた宗次だからこその素早い再形成。

 英人もそれを実行__させる間も与えぬよう迅速に追撃する。

 

「はっ、はっ、せいっ!」

 

‘空壱流槍術・絶三段’

 

 心臓・喉・眉間という当たれば絶命確実の急所を全て貫く、無慈悲な三連突きを、ありったけの敬意と殺意を込めて喰らわせる。

 

「がっ、ぬわぁーーーッッ‼」

 

ブゥーッ!

 

 悲鳴を上げて倒れる天道寺英人の右腕から、幻子装甲の限界を知らせるアラームが鳴り響く。

 

 俺達の()()の終幕を告げる鐘だった。

 

「か、勝ちました……っ!」

 

「よっしゃあ、流石はワテの兄弟やっ!」

 

 映助達同級生の大歓声に、思わず振り返って皆の笑顔に歓喜が湧き上がり__即座に対戦相手へと顔を向け直した。

 うつ伏せの状態になって、顔は上がらず__されど、地面に着いた掌が動いたように見えた。

 その後方には、エクスカリバーが今も突き刺さっており__何だと?

 

 自らの手元に目を移せば、蜻蛉切がまだ握り締められていた。だがそれはおかしい、何故なら。

 

(「訓練試合に於いて、幻子装甲の半減でアラームが鳴れば、その時点で変換器が自動的に停止されて互いの幻想兵器が消失する。それは先生の説明だけじゃなく、同級生相手の試合全てでそうなっていた。」)

 

 だから通常なら、とっくにエクスカリバーも蜻蛉切も消え去っている筈なのに現実はこれだ。

 設定のし忘れ?それとも意図的な仕様か?彼奴自身は兎も角、特高はどうも“天道寺英人”を特別扱いしている様だが、だとしたら尚更万が一の死亡を招く処置などやってはいけないだろう。

 分からない、昨夜に続いてまた分からないことだらけだ__が、然し、それよりも今は。

 

(「英人はまだ負けていない。精神面でも、幻想兵器も。即ち勝負は継続されているんだな。」)

 

 再び英人に視線を戻せば、初戦と同じく懸命に立ち上がろうとしているのが、感じる未だ途絶えぬ闘志から分かる。

 それに彼奴は、まだあの光刃を顕現させていない。即ち全力を尽くして闘ったとは言い切れない筈だ。だったら、俺もまたライバルと同じく、相手の本気をこそ乗り越えた上での勝利を、と高望みしながら待ち続け___

 

「見たか、これが散々落ちこぼれ扱いされたD組の底力やっ!」

 

「…………」

 

「ほら綾子先生、早う宗次の勝ちやってA組に言ったって。」

 

「…………」

 

 親友の声に顔を向ければそこには、無言で固まっていた審判の色鐘先生が肘でつつかれていた。

 見渡せば、A組の面々も皆、試合前の騒がしさとは一転して凍り付いたように無言だった。

 そして審判は、ゆっくりと右手を上げ__自分の三角眼鏡を頭上に乗せる。

 

「眼鏡、眼鏡はどこだ?」

 

「何でやねんっ!」

 

 ………何だこれ?

 

「あー、眼鏡がないと何も見えんな。」

 

「自分で頭に乗せたやんか!それに、変換器のアラームが鳴ったやろっ!?」

 

「アーアー、きこえなーい。」

 

「ネラーかっ!」

 

 「ネラー」とやらが何かは不明だが、耳を塞いで無視する姿はまるで小学生であり、美女美少女に弱い映助も厳しくツッコんでいた。

 

「もうええわ、兄弟、そのスケコマシにトドメ刺したれっ!」

 

「いや、刺しちゃ駄目だろ。」

 

 困惑しながら俺は英人に視線を戻す。

 審判にあるまじき、どころか大人の女性として心配すらしてしまう先生の言動行動は、異常極まりないが取り敢えず試合を終わらせる気のないことだけが理解できた。

 個人的には、このまま英人が立ち上がって全力の闘いに臨んでくるまで待機していたい。

 唯それは俺の我儘に過ぎず、その為にD組の皆を延々と付き合わせる訳にも、この後の授業を大いに遅らせる訳にもいかない。

 

 悩んだ末に、折角の機会なのに勿体無いし英人には悪いけど、気絶する程度の強さで殴って試合を終わらせよう、と決めて足を上げ___その瞬間。

 

「まだだ!!」

 

 グラウンド中に轟いた、と感じてしまう位の声量と意志。その出処はやはり、嘗ての如く土の付いた身体を起こしてきた、俺のライバルにして目標から。

 

「宗次よ、実に見事な反撃であったぞ、称賛しよう!だがな、己は如何なる障害も踏破し敵も制覇して、何が何でも祖国と民草に勝利の栄冠を捧げると誓ったのだ!よって此度もまた宣誓しよう!勝つのは、己だあァッ!!」

 

 何処までも誰よりも眩しい笑顔、焔を宿して俺とその先の未来を見つめる瞳。

 あの時と何も変わらず、()()()()という現実を理解し、それでも尚決めたからこそ()()()()を成し遂げると微塵も疑わない馬鹿みたいな理想と信念。

 その雄姿が見たくて何時かも分からぬ再戦を待望し、その進撃を打倒したくて修練を今まで以上に努めてきた。

 ならばこそ__

 

「背後の剣を取れ、遠慮は不要だ、勝つのは俺だからな。」

 

「よかろう。__後悔するなよ、2度目の敗北を。」

 

 そして聖剣を地面から抜いて、両手に持ち正面で構えて光らせる。あの光刃で逆転、なんて二番煎じは通じないぞ。第三者は巻き込まれないよう離れているんだ、鈍重な大技風情で負けはしない__

 

「エクスカリバーッ!ケラウノス!!」

 

 __刃抜きされていた聖剣が、俺とぶつかった際に発した無謬の黄金光を、文字通りの“刃”として纏って煌めいた。

 英人は、不敵な笑みを浮かべて宣告する。

 

「さぁ征くぞ、第二ラウンドの幕開けだ。」

 

 英人は、迎撃準備を済ませた俺へと駆け寄ってきた。そして槍の間合いに迫って、俺が突きを放とうとした直後、その間合いへと一歩前で地を踏み締め剣を振り被り__下がれ!

 

「はあッ!」

 

「なぁっ!?」

 

 第六感に従い急遽後退して正解だった。煌めく光刃が、俺の胸元へと飛んできた!

 

「かあッ!ふんッ!」

 

「くぅっ、ちぃっ!」

 

 槍の間合いに入るか否かのギリギリの距離のまま、疲労が感じられつつも更に狙いの性格になって剣を振るう英人から、後退しながら機を窺う。

 

 剣は確かに一回り大きくなってリーチも伸びているが、一目見た時から既に想定に組み込んでいる上に、まだ蜻蛉切には及ばないと計測した。今もそれは間違っておらず__そして回避を強いている危機感の正体も理解した。

 

 それは飛ぶ斬撃、或いは留まる残光。

 英人が聖剣を振るう度に、薄く淡くされど危険と感知する光刃が俺の装甲間近に迫ってくるのだ。然も空振りの軌跡に光が浮かんでおり、その位置に此方が近づこうとする判断を鈍らせ、1秒程経過で消える頃には必ず奴が次の攻撃に移ろうとしている。

 

 ならば先程同様に槍で剣を受け止め又はかち合わせて距離を詰めれば__としようにも、その行動を取るには懸念が邪魔するのだ。

 __あの煌めく剣とぶつかってはならない。そうなれば蜻蛉切は、直接的に力の込められた一撃で斬られてしまう。

 確証など一切ないにも拘らず、必然的な未来予測だとどうしても感じてしまう懸念。

 

 再び英人が攻勢へと移行し、俺は只管回避に専念させられる。本来拙い戦況だが__観察は済んだ。

 

「……ふっ、認めるよ英人、お前は凄い。けどな、この程度で勝てると信じているのか?神算の素人剣士の癖に。」

 

 光刃や聖剣を避けながら、擦り痕や汗に付着した土すらお似合いの化粧に感じられる紅顔にのみ向かって、煽り混じりに問い掛けた。

 

 __何せ、‘エクスカリバー・ケラウノス’とやらには幾つもの欠陥が存在しているのだから。

 何処かぎこちなさが見て取れる身体の動作、得物の刃渡りが拡大した上に高エネルギーを纏っているせいか大振りな攻撃、加えて恐らく通常より膨大な幻子干渉能力の消耗。

 以上を踏まえれば、躱し続けて体力や干渉能力が切れるのを待ち、そこで隙を晒した瞬間に前進し、距離を詰めて槍なり拳なりを穿てば問題ない。__尤も、先程の拳撃や槍技でまたしても装甲に関する違和感を覚えたのは不安要素だが。

 

「__2点申し上げよう。先ず、頭脳への称賛は他所に言わんでくれ頼む。」

 

 ………何故だ?と剣を振りながら俺だけにしか聞こえぬよう語ってきた英人へ、瞳で伝えた。

 

「__訳は後だ。それとな__準備段階はもう終わりだ。」

 

「__⁉」

 

 再び鳴り響いた第六感の危険信号、咄嗟にこれまで以上の勢いで跳び下がりつつ防御本能(幻子装甲)を奮い立たせる。

 

「かあァッ!」

 

 聖剣は振り下ろされ、地面に光刃が衝突する__直前、一際眩しく輝きを放つ。

 

ドォゥ―――ン!!!

 

「っなあっ⁉」

 

 突如、振り下ろされかかった地点から光が爆ぜて吹っ飛ばされた。どうにか上手く着地し体勢を整え正面を向けば__英人が、爆発の衝撃を利用したのか俺より高い所に飛んでいた!

 何が起こったかは不明だがそれより次の手だ。落下中を狙って攻撃すべく、注視しながら構えて__

 

「__まだだァッ!」

 

 __鼓膜にも魂にも轟いた二度目の大喝破は、空中から発せられた。

 見上げれば英人は、何と更に上空へと昇っていく!

 

「何が、どうなっている……⁉」

 

 聖剣から光を撃ち出しジェットエンジン代わりにした、訳ではない。光線の軌跡は見当たらず、エクスカリバーはさっきまで振るっていた時と同じく光刃を纏うのみで発射していない。それに、宙を浮く姿は極めて安定しているのが解せない。

 

 理屈は不明だが今はそれ以上に、危うい現状をどう乗り切るかが最難問だ。

 俺にも蜻蛉切にも、飛行手段や遠距離攻撃は持ち合わせていない。このままだと光の空襲は免れない。英人のことだ、正確且つ苛烈に光線を頭上から放ってくるに決まってる。時間経過で力を使い果たし地上に降りてくるかもしれないが、それまでに避け切り耐え抜ける保証はない。万が一達成出来たとしても、後に残るは空襲被害で荒廃したグラウンドだ。修繕費用や授業への支障、最悪の場合第三者の巻き添えも考えられる以上、()()の意地や誓いを優先するのは………

 

「……ま、」

 

 顔を上げて何とか大声量を振り絞って「参った」と言おうとし__蒼穹から堂々と見下ろす英人の唇が、動いて見えた。

 

(「……あ・ん・し・ん・し・ろ…ふ・よ・う・だ……?」)

 

 何故かそう読み取った俺は、ライバルを信じて降伏宣言を唾と共に飲み込んで注視する。

 

「エクスゥッ、カリバァーッ!」

 

 そして英人が光線を俺に向かって発射し、予想される着撃地点から急いで飛び去り__

 

「曲がれぇィッ!」

 

「何っ⁉」

 

 光線が俺を追跡するように畝って迫ってきた!遠ざかろうと走るも、光はまるで蛇の如く、地面スレスレに追跡し、逃げる内に何時の間に同級生達の前までに来てしまった!

 

 ここでまだ逃走を続ければ、英人の消耗で反撃の機が訪れるかもしれない。だが駄目だ。彼らを巻き込ませる訳にも、英人に罪を負わせる訳にも、今度こそ我欲と熱中のあまり取り返しのつかない惨事を放置する訳にも!

 

 __そう判断し叫ぼうとした瞬間。背後に迫る光が突如上向きに畝って、俺の真上に昇ってきた!

 

「くっ、無茶苦茶だ!」

 

 横に走って逃れようとすれば、大蛇の如き光がさっきまでの地点に降りてはまたも追い駆けており……いや、これって、まさか……

 

「誰も何処も、傷つけるつもりはないんだな……!」

 

 そう、光線はずっとグラウンドを少しも抉ることなく低空で蛇行している。然もさっきもだが、俺以外には決して接近すらしないように曲がり迫っている。

 つまり英人は、第三者やグラウンドを傷つけることなく、俺を今この場でこの光線によって倒そうと__俺達以外を巻き込まず邪魔もされずに決着をつけようと光を操りながら放っているんだ。

 

 ならいいだろう__その勝負、受けて立つ!

 

 グラウンドは今や、光の大蛇が這い回っているように無事な空間が狭められている。当然英人の消耗も激しかろうが、俺だって体力が徐々に擦り減っているし、自分の装甲で光に耐えられるとは到底思えない。

 よって、常識的に考えれば俺と奴のスタミナ勝負で、何方かが先に力尽きて落下し攻撃されるか光にぶつかり倒れるか、という決着になるだろうが……そんなつまらない終わり方はお互い御免だろ?だから……

 

「ふぅぅーーー………、っはっ!」

 

 ご丁寧に天へ登る道を作ってくれたんだ、利用しない手はない!

 俺は両手にも、更に()()()()意識を集中させ、幻子装甲を分厚く丈夫にと念じながら、蜻蛉切を棒高跳びの要領で地面に突き刺し用いて、正面に立ち塞がる光線の軌跡へと跳び乗る!

 

「「「なあぁッ!!!???」」」

 

 上空からも側面からも声が聞こえてきたが、今は後だ。四足の獣として大蛇の背を駆け登り、発射し続ける英人へ一心不乱に向かう!

 

「よもやそう来るとは。ならば追い着けエクスカリバーッ!」

 

 解除という選択肢を選ばず蒼穹で待ち構える英人、背後から轟音と気配を発し迫ってくるらしき光線。なら光より速く、奴に辿り着き今度こそ倒してやる!

 

「はあぁぁぁーーーっ!」

 

 揺れ畝り捻じ曲がる光の道を、加速しながら駆け登り、目前に見えた瞬間、英人の顔が歪んで見えた。

 

「こうなっては、済まぬそ__」

 

「まだだっ!」

 

 光線を引っ込めて足場を奪う気か?だがもう遅い、両手が浮き両足が光の道に着いた状態で俺は叫ぶ。

 

「武装化っ!」

 

 踏み締め勢い良く跳躍、両手に再三槍を携えて、聖剣の構えが甘くなった英人へと突貫する!

 今こそ、空壱流と俺の本気をライバルに叩き付け、“絶対無敵の英雄”に、敗北を与えて超える為に__

 

「勝つのは、俺だぁ――――___」

 

 





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