英雄《しゅやく》になれぬ筈の槍使いと英雄《しゅやく》に至りし太陽《くろまく》   作:MOGOLOVONIO

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 第17.5話、これにて終わりです。

 感想や指摘に質問等、お待ちしております。



第17.5話下 暴挙への心配と太陽との約束

 

 

  ……ああぁぁぁーーっ!」

 

「!?……びっくりしたぁ~。目が覚めた?」

 

 何時の間にか瞼を開けて叫べば其処には、見知った天井と白衣の養護教諭。

 

「………驚かせてすみません。京子先生、ですよね?ここって、保健室でしょうか?」

 

「ええ、どっちも正解よ。それと、運ばれてきた理由は試合中の幻子干渉能力の枯渇による気絶。でも損傷もあったわよ。」

 

「……試合、そうだ勝敗はどうなりましたか?みんな無事ですか?」

 

「まったく……貴方以外全員大丈夫よ。試合は……審判やってた綾子先生が言うには、貴方が気絶したことによる天道寺英人の勝利だった、らしいわ。」

 

「……そう、ですか……。」

 

 誰一人傷付いていない結果への喜びと、ライバルに二度も敗北したことへの悔しさと、何処か納得したような清々しさで胸が満ち、口元が緩み歪んでいくのを感じていた。

 

「やれやれ、君は危うく死にかけたのよ。」

 

 そう言って京子先生に指をさされた箇所を見れば、両手と両足と四肢の首に包帯が巻かれていた。

 

「骨は折れていませんが。」

 

「包帯巻かれてるとこ、どれも負荷が掛かり過ぎて擦り傷や捻挫を負ってるのよ。」

 

 少し怒った顔の京子先生から手を叩かれ__

 

「痛っ……」

 

「人並に痛みは感じているのに、どうして前回も今回も無茶をするのかしらね。」

 

「すみません。」

 

「剣振るってる相手に集中幻子拳使ったり、エクスカリバーのビームの上に乗っかったりして。」

 

「あの技、そんな名前だったんですか?」

 

 幻子装甲を拳に集めて相手の装甲を打ち破る、という俺の秘策に、‘集中幻子拳’なる技名がついていたのか……

 

「そっか、知るはずないわよね……。」

 

「えっ?」

 

「こっちの話よ。とにかく、あの技は先に編み出した人がいて、それを見たとあるロボットアニメ・オタクが命名したのよ。」

 

「そうでしたか。」

 

「あまり驚かないのね?」

 

「俺が考え付く事なら、他の人が先に考え付いて当然ですから。」

 

 子供の頃、画期的だと閃いた槍技が、まだ習っていなかった空壱流の技に有ると聞かされ、ガッカリと気落ちした時に、自分が特別でない事は悟っていた。

 

「まったく、君は若いくせに自分をわきまえすぎね。あれだけ強いのだから、もっと図に乗っても罰は当たらないんじゃない」

 

「「慢心すれば歩みが止まる、常に餓えていろ」と爺ちゃんが言ってましたから。それに……」

 

 英人にまた負けた。

 技を準備し、相手の猛攻を突破し、アラームの発動まで追い込めたものの、最終的に倒れたのは俺の方だった。

 その事実は決して揺るがない。負けた空知宗次は、天道寺英人よりも弱い。

 そして何よりも……

 

「彼奴は、強い。」

 

 思い出して、武者震いか戦慄か或いは両方か……それを自然と発した俺に、先生が苦笑を向けてくる。

 

「空を飛び回ってビームをぶっ放つ相手だもんね、確かに怖いわ。」

 

「いえ、そちらではなく、あいつの精神と………兎に角、心が強い。」

 

 本当は「頭脳が強い」と続けたかったのだが、知力に関しては何故か英人から口止めを望まれていたので、言葉にせぬよう留めた。

 

「聖剣の威力も、光線以外の手段で空を飛んでいたのも………そういえば、どうして英人が飛行できたのか、先生は分かりますか?あの時の俺は、下から見上げるか突進するかで分からなかったのですが、外野からならもしかして何が起こったか見えたかもしれませんし。」

 

 そう尋ねてみれば、京子先生が困ったような難しい顔をしてくる。

 

「………そ、それはね、……もし自分の負けた試合の様子を確認する勇気があれば、明日にでも担任の先生に申し上げて、撮影した動画を視聴した方が早いわ。……正直言って、私も、研究者として情けない話だけど、困惑してるし。」

 

「はぁ、了解しました。そういうことでしたら、大河原先生に明日申請して今回の反省がてら確認してみます。」

 

 幻想兵器に詳しい筈の京子先生ですら不明な上に言葉で説明し辛い……何があったんだろうか。

 

「話を戻すけど、何で心が強いって思ったの?」

 

「彼奴は、幻想兵器の性能を除けば本来敵わない相手である俺に、勝利を微塵も疑わず絶対成し遂げようと果敢に攻めてきました。前半でも、アラームが鳴る程に攻撃を喰らい倒れ伏した後も。」

 

「………」

 

「どれだけ実力差を示されようと、彼奴なりの本気が打ち破られようと、決して諦めず、己は必ず勝つ、勝ってみせると揺るがず更に決意を燃やしてきました。」

 

「………」

 

「爺ちゃんは昔こう言ってました。「殺し合いに於いて恐ろしい奴というのはな、格差や現実を幾ら突き付けられても折れず挫けず、愚直に盲目的に自分の勝利を信じ続ける大馬鹿者だ。そんな手合いは息の根を完全に止めない限り、寧ろ此方に敗北を予感させて怯ませる。といってもこれは父からの受け売りだがな。」と。」

 

「……つまり、天道寺英人は、()()()()()()()()()()()()()()()、ってこと?」

 

「はい、それを指して「強い」と評価しました。」

 

 ……もう一つの、英人の心の強さには言及しないよう強く意識した。此処で其方も讃えてしまえば、英人のお願いを破ってしまう様な気がしたから。

 

「……そう、成程ね。ま、とにかく、集中幻子拳はもう使わないこと。あれは幻子装甲を一点に集中させる分、他の部分が疎かになって危険なのよ。」

 

 京子先生は、軽く溜息を吐いて俺の包帯まみれの手をもう一度指でつつき注意した。

 

「以後気を付けます。」

 

「お願いね。……ところで、エクスカリバーのビームに四足歩行で飛び乗り走ってたそうだけど、あれってどうやったの?」

 

「説明するのは簡単な話です。‘集中幻子拳’と同じ要領で、両手だけでなく()()()()幻子装甲を集中させました。」

 

「………え?」

 

「あの光線は、集中幻子拳と多少なりとも拮抗できそうだったので、両足に幻子装甲を集中させればあの光に一瞬でも立てるかも、と考えました。」

 

「えっ?」

 

「それで、当然あの光は高速で流れる上に幻子装甲の靴だと直ぐに壊れて沈むので、その壊れる前に跳んで着地、という表現は変ですが足が宙に浮く間に幻子装甲を集中させ張り直し、素早く駆け登るよう心掛けて走りました。」

 

「……?」

 

「因みに四足歩行なのは、両足2本だけだとあの細い激流を上手く駆け登るのにバランスが悪すぎると考えたから、両手にも同様の張り方と動かし方で駆使しました。」

 

「…………」

 

「(刃を砕いた時の彼奴みたいに)咄嗟の思い付きで挑戦してみましたが、案外何とかいけました。流石に流れる光の道を遡って走る技は空壱流にはない筈ですし、‘空壱流歩行術・這鯉登(しゃりとう)’と名付けてみます。どうでしょうか先生。それとも此方も、既に誰かが考え付いてましたか?」

 

「……………」

 

 顔を上げて沈黙し続けること1分、下して真剣な表情で俺を見据えて口を開く。

 

「それ、金輪際やっちゃダメ。削られること前提で両手両足に集中させてあのビームの上を走るって、もしタイミングがずれたり幻子装甲が張れなくなったら生身の状態であの光の奔流に沈むわよ。そんな事態になれば命さえ…最悪遺体を君の家族へと返すこともできなくなるわ。今後もし試合を天道寺君と行う際も、そしてたとえ実戦であっても何処であっても絶対、必ず禁止よ。」

 

「そうですか、了解しました。」

 

「絶対、絶対だからね。そもそも集中幻子拳だって、興味半分で真似されて取り返しのつかない怪我を負わせないよう授業でも決して教えないことにしているの。重ねて言うけど、集中幻子拳は少なくとも学校内では禁止、「シャリトウ」とやらは永久に禁止よ。というかあんな暴挙、後にも先にも例なんてないし、考えた人もいないわよ。」

 

「分かりました。」

 

 深く頷き返しながらも、残念だなと感じていた。

 

「はぁ……よろしい。あと、もう直ぐで放課後だから来るわよ。」

 

「?来るって誰がですか?」

 

キーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン!

 

 尋ねた直後に、今日の授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。

 

「勇敢に闘ったクラスメイトを心配してくれた子たちよ。」

 

 「クラスメイト」ってことは英人じゃないのか、でも俺なんかを……

 

コンコン

 

「入っていいわよ。」

 

「「「失礼します!!!」」」

 

 扉を開けて入室してきたのは、陽向、神奈、剛史、豊正、映助、一樹、心々杏の5人。皆俺の同級生だった。

 

「宗次君、起きたの⁉無事なのね!」

 

 最初に陽向が口を開き、笑顔で俺に迫り__

 

「宗次さんっ!」

 

 それより速く一樹が、俺の胸に飛び込んできた。

 

「よかった、このまま目が覚めなかったらと思うと、ボク……っ!」

 

「心配かけて悪かったな。」

 

 大粒の涙を俺の為に流してくれる一樹の頭を、撫でながら謝り、出入口に目をやる。

 

「あ、う……」

 

「う、うほーっ!」

 

 陽向は何故か中途半端な姿勢で固まっており、その横では神奈が何故か奇声を上げていた。

 

「あちゃ~、何やってんですか~……」

 

「兄弟、ちょっとそこ替われやっ!」

 

「何か、元気そうで良かったぜ。」

 

「改めて、試合させてごめん。」

 

 頭を抱える心々杏に騒ぎ出す映助、無事を素直に喜ぶ剛史に律儀に謝ってくる豊正。

 

「いい仲間を持ったわね。」

 

「……はい!」

 

 こんな俺の無事を願ってくれて、こんなに賑やかに接してくれる俺の同級生達。

 微笑する京子先生に、笑顔で頷き返した。

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 彼らが言うには、他の同級生も皆心配しているが全員で保健室に訪ねては俺にとっても京子先生にとっても迷惑になりかねないので6人が代表して見舞いに来た、とのことだ。

 先生は、明日には治るだろうけど今夜は安静にしておくべく寮でなく保健室で過ごしなさい、との旨を伝えられた。それで彼らには回復と出席を誓って寮に戻ってもらい、少しして先生が、上司に呼ばれたと言って退室した。

 

 もう暫くすれば、夕食用の弁当が届けられるので、のんびり休もうと___

 

コンコン

 

「保科京子先生は不在ですよ。」

 

「その声は宗次か、保科教諭はおらぬのだな。入っても構わぬか。」

 

 __ッ⁉その大人びた声は、まさか来てくれたのか⁉

 

「__入ってくれ。」

 

「では失礼する。__無事、ではないが元気そうだな宗次よ。」

 

 英人が、俺のライバルが漆黒の長髪をたなびかせ入室してきた。

 

「怪我の具合は如何かね?」

 

「両手両足に擦り傷や捻挫ありだが明日には授業出席できる位に回復する、だそうだ。英人の調子はどうだ?」

 

「委細問題ない。体力は元通りだ。試合のダメージも既に回復した。」

 

「良かった……それと、今日の試合、決着着いたんだよな。」

 

「嗚呼。今度は途中で第三者が巻き込まれずに済んだ。それでだ、己として告げたいことがある。空知宗次よ。」

 

「そうか、俺もだ。天道寺英人。」

 

「「今回の勝負、お前(貴様)の勝ちだ。」」

 

 ……え?

 

「「………??」」

 

 戸惑いを浮かべる英人(勝者)を見つめる。色白な肌が、窓から差し込む夕陽により薄らと橙色に染まっていた。

 

「宗次よ、何を言い出すのだ?己の変換器の方が先にアラームを鳴らしたではないか。」

 

「そんなもの、幻子装甲が半減した報せに過ぎないだろ。双方共に心ゆくまで闘い抜いて、俺が先に気絶した。だから俺の負けだ。」

 

「何を言うか、あれはあくまでも試合、ルールの下での勝負だ。ならば先に敗北条件を満たしてしまった己が負けなのだ。」

 

「でも審判はあの場で勝敗を決めなかった。つまり試合はあの後も続行していたから、敗北した訳じゃない。だから俺は勝っていなくて、お前は負けていない。違うか?」

 

「しかしだな、たとえ試合の形式に則れば己の勝利だとしてもだ。アラームが鳴って暫くするまで己は倒れ伏していた。その間に宗次は容易に加減して止めを刺し勝負を終わらせることができた。にも拘らず貴様は己が立ち上がるまでずっと待って頂き、そのお陰で逆転の機会を掴めたのだ。故に、貴様が如何な魂胆であろうと己は容赦されて打倒に追い込めた以上、真に勝利を自らの手で得たとは言えぬよ。」

 

「それを言うなら前半で注意してくれたことも、何より普通に狙い撃たず態々長時間も光線を維持しながら曲がりくねらせるなんて力を消耗させる真似して俺に反撃の機会を与えてくれたことも、どう説明するつもりだ?それで力尽きて落っこちて倒されて負けた際、言い訳に使う意図じゃないだろうな。」

 

「何を言うか、己は宗次の配慮に感謝して、飛行というハンデを持つ者としてせめて少しでも公平に___……一先ずこの問題は、棚に上げておかぬか?延々と続きかねん予感がするぞ。」

 

「……確かにな。ならいっそのこと、今回は勝敗着かず(ノーカウント)ってことにしないか?」

 

「ノーカウントだと?」

 

 疑問を浮かべてきたライバルに、試合結果への扱いに対する俺なりの妥協案を述べる。

 

「先に装甲が半減してアラームを鳴らしたのは英人、先に気絶し戦闘不能になったのは俺。だったら俺達の第2戦は、勝敗に含めないで置いとこう、て思ったんだがどうだ?」

 

「ふむ……成程。両者共に意見を引かぬ以上、その結論で今日は済ませるべきだな。」

 

 取り敢えず、この話はお終いだとお互い一呼吸ついて、話を切り替える。

 

「それにしても宗次よ、前半での痛打と後半でエクスカリバー上の四足歩行、あれは如何な原理であったのだ?」

 

「簡単に言うと、通常体全体に張ってある幻子装甲を拳に集中させて殴ることで、相手の纏う幻子装甲を貫通して攻撃を身体へと届かせたんだ。まぁ、保科先生が言うには‘集中幻子拳’って既に誰かが編み出していたやり方だったが。」

 

「そうであったか。」

 

「それで、お前の出した光線を走れた訳だが、その集中幻子拳の要領で両手両足に幻子装甲を集中させて一瞬でも着地、或いは着光できるようにして、集めた装甲が壊れる寸前に手や足を離しては張り直すことを繰り返しながら駆け登ったからだ。」

 

「………真か?その話は。」

 

「本当さ。此方は誰も考え付いてさえいない新技で、名前は‘空壱流歩行術・這鯉登’とついさっき保科先生との会話内で命名した。尤も、先生からは今後の使用を禁止されたがな。」

 

「………はあぁ……」

 

 英人は、深く溜息をついて、まるで説明した後の京子先生の様な表情を向けてきた。

 

「……恐らく重ね重ね注意されたろうから短く済ませるが、極めて危険で無謀な行動だぞ。厳禁も当たり前の処置だ、あの場で深手を負う、否死なれる事態なぞ御免被る。」

 

「ああ、やらない。先生にもお前にも誓う。唯、あの場で勝利への最善手はあれ位しか思いつかなかったし……大体、無謀なら英人に言われる筋合いはないぞ。」

 

「……何だと?」

 

 意識が目覚めてから、試合内容を思い返して、技の解説で幻子装甲の理解も深まったお陰で、試合中の違和感の正体も推測できた。それは__

 

「英人、槍技の時も集中幻子拳を喰らった際も、()()()()()()()()()()()()()()()()()()だろ?」

 

「__ほう、その考えに至った経緯は?」

 

「試合中は、何故か掠めたり奥深くまで衝撃が届かなかったしか分からなかったけどな。その時の光景を記憶から見返してみたら、命中させた箇所が薄く発光していたことに気付いたんだ、俺が集中幻子拳を発動した際の拳と同じように。お前は集中幻子拳と似た理屈で、攻撃が当たると予測した部分に幻子装甲を集中させ、ダメージを最小限に抑えていた。違うか?」

 

「__正解だよ、我が好敵手よ。己は宗次の動作傾向等を解析し、攻撃が放たれると察知した直後に命中箇所を算出し、瞬時に幻子装甲をその部分へ寄せた。これで宗次の猛攻もどうにか耐え忍ぶことができた。」

 

「でもそれって、俺の当てる位置とずれていたら、素の状態で攻撃を受ける羽目になるぞ?危険性で言えば英人も大概だ。対戦相手のパターンを完璧に覚えて、動作を瞬時に予測し意識を集中させる。困難極まりない応用法だし、ずっと続けてのけるには相当自信がないと無理だろ。」

 

「__否定はせんよ。然し、強敵(宗次)相手に勝とうと思えば、単純に回避行動を取るより可能性の高い戦法であったのでな。それにだ。」

 

 英人が夕陽に照らされながら、ベッドで横たわる俺の顔を、改めて見据えるように宣言する。

 

「如何なる大言壮語だろうが、何度でも宣い、実現させようとも。何故なら己は決めているのだよ、如何なる障害を踏破し、難業を達成し、勝利を掴み取ると。そう決めたからこそ成し遂げる、決意しているが故決断を信じられる。心一つで為せば成ると信じ抜く限り、己に不可能など存在せんのだ。」

 

「___ぷっ、は、はははっ!」

 

 ……天道寺英人、お前は本当に、誰よりも賢くて、そして誰よりも大馬鹿者だ。

 こんな強者に俺は挑んで、こんな好漢に俺は負けて、こんな妄言に俺は感動して、あぁまったく。

 ………そうだな、よし、決めた。

 

「__そうだ、宗次よ。試合中に口止めした話についてだが」

 

「それだけどさ、英人。身体を鍛えていなさそうな件についてもだが、人に__俺や、先生や幼馴染にも言えない秘密を抱えているだろ?」

 

「__嗚呼。」

 

「それで、お前は日本を苦しめてきた長野ピラーを、6年に渡り自衛隊でもエース隊の先輩方でも倒せずにいる怪物を撃破して、祖国と国民に光を齎したい。そう考えて入学したんだよな。」

 

「然り。」

 

「ならきっと、その秘密は日本の勝利に関わるもので、俺の存在が邪魔になりかねないものかもな。」

 

「__何故だ?頼もしい強者が戦友でいるというのに、そのせいで邪魔になると?」

 

「……なんとなくだ。唯、そう推察したから俺は__お前の隠し事を問い詰めない。」

 

 英人、驚愕が顔に表れているぞ?日本を救う英雄のとんだ無様に、思わず口元が歪んだ。

 

「……何故その結論に至った?」

 

「お前は“絶対無敵の英雄”として、王道を切り拓きながら突き進めばいい。そっちの方が、俺の故郷や大切な人達も助かりそうな予感だってするしな。」

 

「………」

 

「その代わり、元々望んでいた方の勝利を果たした暁には……俺と闘え。」

 

「___は?」

 

「俺はこのまま停滞する気なんてない。英人以外のエース隊の誰よりも強くなって、どんな幻想兵器よりも蜻蛉切の名を特高内に轟かせる。CEとの戦闘に出陣すれば、どんな戦場でも生き残って勝ち切って、クラスの皆を守り抜く。」

 

「………」

 

「そして何時の日か、お前が誰にも何にも気を遣わなくてよくなった時に、改めて太陽(ライバル)に挑み、こう宣誓して実現してやる。」

 

「たとえ相手が、日本を救い夜明けに導いた英雄であろうとも__勝つのは俺だ。」

 

 ベッドから見上げて、どんなに視界に入る光が眩しくても怯むことなく告げ、数秒後。

 

「__ふっ、よかろう。その申し出、受けてやろう。貴様は己に秘密を迫らない、己は何れ宗次と勝負する。約束するが然し、最後の発言は前回同様不可能だ。何故なら__勝つのは己だ。」

 

「ありがとう。そして上等だ。俺のライバルなら、()()()()どんな言葉も叶えてしまえるだろうよ。」

 

「「最後も」だ、間違えるなよ我が好敵手。__では、本日は失礼する。お互い、身体を休め十全に回復しておかねばな。」

 

「分かった。お互い頑張ろう英人。……()()()()()、な。」

 

「__嗚呼、我等の祖国が光で照らされしその日迄、健闘を祈る。」

 

 その言葉を最後に、俺のライバルは退室した。

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 それから数分後、京子先生が疲れた様子で戻ってきた。

 

「ごめんなさい、長いこと待たせちゃって。」

 

「構いませんよ。でも何かあったのですか?」

 

「……ううん、大丈夫。大した用件じゃないわ。そっちは体調に問題ない?」

 

「はい、俺も大丈夫です。長引いた理由もこれ以上は詮索しません。」

 

「そう、分かったわ。問題なければ今夜はここでゆっくり休みなさい。それと、夕食用の弁当よ。戻る前に次いでってことで頼まれたの。」

 

「ありがとうございます。そろそろ腹が減ってきた頃なので助かります。」

 

「気にしなくていいわ。それじゃ、私はここを出るけど、呼び出したかったらコールボタン押せばいいからね。」

 

 そう言って京子先生が退室した後、弁当を開けた。

 大盛りの鮭海苔日の丸弁当で、とても美味しく感じられた。

 

(「……暫くは、英人と再戦できないだろうし、此方から会いに行かない方がいいかもな。」)

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 実際、この日より数ヶ月間は、英人と直接語り合う機会がなく、況してや再び聖剣と名槍を交わし合うこともなかった。

 

 4月17日の黄昏時に異なる対応をしていれば、或いは交流や共闘ができたのかもしれない。

 

 ……それでも俺は、英人にあの様な提案をした決断を、後悔していない。

 

 




◯❛空壱流歩行術・這鯉登(しゃりとう)❜:本作オリジナルの技。作中説明通り、集中幻子拳の応用で、手にも足にも幻子装甲を集中させて4足歩行で走る。これにより、エクスカリバーのビームの上を駆けることができ、また川の激流も、身体が熱にさえ耐えられたなら溶岩の上も疾走することが可能。弱点は、着ける手足にのみバリアを張る状態になるせいで、身体は無防備と化し、攻撃を受けたり手足を滑らせ落っこちた場合は命すらタダでは済まないこと。加えて今回のビームのように着けた幻子装甲の靴を直ぐに壊してしまうものの上を走る場合、壊れる寸前にその手や足で跳んで離し、宙に浮く僅かな時間に張り直す必要があり、タイミングを一度たりとて外さずに駆け抜けねばならない。


 今後は本文に記された約束により、作品終盤になるまで原作主人公と本作主人公との絡みがありません。
 一応、両者が今後も交流する場合の√も考えてはおりますが、その話については後々語ることにいたします。

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