英雄《しゅやく》になれぬ筈の槍使いと英雄《しゅやく》に至りし太陽《くろまく》 作:MOGOLOVONIO
ノンフィクション(ありのままとは言っていない)回第3話です。今回は、原作の22話目に該当します。
「てめえ、俺のクラスメイトを何て言った!」
「アンタこそ、何で英人に酷いこと言ったのよ!」
昼休み後半、1年生の教室前の廊下にて、剛史と音姫が言い争っていた。
さらに剛史の傍には豊誠が、音姫の傍には都子が、そして両者の後ろにA組とD組の面々が、1人ずつ欠いた状態で睨み合っていた。
その不在の2名が初日に試合を行って以来、接点のなかった組同士が何故衝突しているかといえば……
「俺の友達、俺達のクラスメイトを「卑劣漢」呼ばわりしやがって!」
「そっちこそ、「ボロ負けした弱っちい奴」って罵ったこと謝んなさいよ!」
宗次と英人、2人の益荒男に対する非難が原因であった。
「と、取り敢えず落ち着こう2人とも、もう少ししたら授業だし、大体この場にいない人の悪口なんて…」
「D組は黙ってください!」
「優太はいいのかよ!本来勝ってた筈の宗次を馬鹿にされたんだぞ!」
D組委員長の優太は間に入ろうとしたものの、都子からも豊誠からも撥ね退けられた。
特に、豊誠の発音を前にして優太は思わず口ごもってしまう。
「そ、それは確かに、俺だってクラスメイトをけなされてよく思わないわけがない、けど……」
実のところ、D組は誰も彼も“天道寺英人の勝利”という判定結果より“空知宗次の優勢”を、程度の差こそあれど印象付けられていたのだ。優太とてその認識は有しており、故に同級生の仲や立場という点を除外しても、心情的には剛史の側にある。
「やっぱり結局身内を庇ってるだけじゃないですか!」
「それはてめえらの方だろうが!同じクラスで持て囃してる奴があんな勝ち方したって、よくも偉そうにできんな!」
「負け犬連中の負け惜しみにも程があるわよ!強情過ぎて話にならないわ!」
益々燃え盛ってしまう2対2の言い争い。相手方への敵意は、互いの後方のクラスメイトにも空気として伝播し彼等の表情を険しくさせてゆき__
「「騒がしいぞ、何があった??」」
話題となっていた英人と宗次が、其々の教室から出てきたことで、火花散る廊下空間を一時落ち着かせた。
「あ、ふ、2人共……、実は……」
両クラスの者達から視線を向けられつつ、優太が2人へと、なるべく中立的且つ感情の籠らぬよう心掛けながら説明を行った。
すると、英人も宗次も難しい顔をしたが直ぐにお互い向かい合って、頷き身体をその場の全員と向き合う姿勢に変えて、言葉を発する。
「事情は大体分かった。一先ず剛史、豊誠、それにD組のみんな、俺の為に怒ってくれてありがとう。」
「音姫も都子も、A組の皆も、己の名誉を守らんとしてくれて感謝する。然しこの場は冷静になって欲しい。」
「揉め事は学校の平穏や、後の戦友の仲を崩すからな。それでも争いの火種が燻っているなら……」
「己と、宗次で再び試合を実施し、改めて白黒着けておくのは如何かね?」
「「「………え???」」」
英人の提案に、さっきまで険悪な雰囲気になっていた両クラスの全員が、一致した反応を思わず示した。
「ど、どうしてまた試合を、って話に…?」
「都子よ、それはだな。弓月殿曰く、此度の紛争は己と宗次の初試合に於ける勝敗と、実力の上下に関する見解や評価の差異が衝突した故だ、という解釈で良いか?」
「あ、あぁ大体そんな感じだよ、な?」
「「……ま、まぁ……」」
憤怒や嫌悪が、一時の間だけでも困惑で塗り潰されたせいか、音姫と剛史は、先程とは異なり大人しげに肯定した。
「だったら、もう一度俺達2人で勝負して、何方が強いかはっきりさせようと考えたんだ。だからその時まで、俺に関してでも英人に関してでも、強いか弱いかで言い争うのは止めてほしい。」
「「「…………」」」
英人と宗次、2人の冷静で何処か通じ合った態度と言葉を前に、クラスとは関係なく全員が沈黙していた。
「だ、だけど再戦なんて先生や特高は認めてくれるのか?初日のはあくまでクラス分けされる前の組み合わせだし。2度目の戦闘を、クラス間の揉め事を抑える為にやるなんて……」
「豊誠……確かに了承してもらえるかは分からない。唯、申し込んでも絶対に許可しない、と決まった訳でもないしものは試しという奴だ。……それに、純粋に対立を沈静させるだけが目的じゃない。」
「「「……どういうこと???」」」
音姫、剛史、都子、豊誠の疑問へと、英人と宗次は笑顔で答える。
「「単純に……我が好敵手(俺のライバル)ともう一度闘いたいからだ。」」
「恥ずかしい話だが、初戦は俺の敗北だ。でもだからこそ、此奴に必ず勝ってみせたい。」
「己も、宗次の闘志と決意に応じてみたいのだよ。そしてその上で、次もまた勝利してみたい。身も蓋もなく言ってしまえば、再戦は我等2人の
「まぁ、だからという訳ではないんだが……この場は取り敢えず、俺と英人の顔に免じて喧嘩しないでくれ。」
その直後に英人と宗次ほ頭を下げる。
貶し或いは庇った対象自身がこの姿勢なのだ。A組もD組も皆、罰の悪そうな表情で口を閉ざし……やがて1人が言葉を発する。
「……しゃあないな、ほな兄弟がそう言うんやし、解散せえへんか?」
「……仕方ないですね。英人から抑えてくれって頼まれたんだし。」
「そ、そうだよな。剛史、教室に戻ろう。」
「……あぁ。けどな、俺達の宗次の方が強いってこと、覚えとけよ」
「上等よ。今は引いてあげるけど、そっちこそ英人を侮辱したこと、後で後悔してなさい。」
斯くして、A組とD組の対立は、英人と宗次の2戦目へと引き延ばされた。
そうしてお互い、自らの教室へと戻る中___
「「覚悟しろ、
自分の方だと、闘争心や対抗心を静かに、されど熱く燃やす英人と宗次。
2人は背中を向け合いながら、双方共に確信している。
相手は間違いなく、前回よりも成長し、加えて必勝の策を構築していると。
そしてその思いは何方も正しい。
故に、あの黄昏時に確定された誓戦は、智謀も執念も技巧も出力も、全てが初戦を上回る試合に__或いは
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「……A組D組全員って、この話の廊下広過ぎじゃない?」
「どうせクラス間の対立という展開ならば、A組の者等も登場した方が盛り上がる、という意図だそうだ。」
「……この書き方、俺達にも非があるように読めるんだけど。」
「機関を代表して謝罪しよう。唯、編纂に携わった同志達の弁護をするのであらばだ。」
当時の紛争により生じた蟠りがすっかり消え去った様子で、剛史や豊誠に音姫、それと宗次は、英人からの裏話に耳を傾ける。
「事実をありのまま書けば、己の所属するA組の印象が悪化させてしまう。D組が罵倒するだけという[機械仕掛けの英雄]に合わせた描写は論外。ならば己と、宗次を其々が尊敬し自慢に思うが故に衝突した構図に変更し、なるべく両クラスとも印象を落とさぬよう描写する、とのことだ。」
「俺としては、そもそもクラス間の対立なく、円満に対戦しようって流れで、
「そ、そうか……。……それと、改めてごめん。」
「?何故謝るんだ?豊誠も申し訳無さそうな顔向けてくるし。」
「あの日の俺達、お前の前で英人に対して、「弱っちい奴」だの「忌忌しい光」だの散々罵った上に、ネットへ悪口まで書こうとしたことさ。」
「宗次が尊敬していることや英人の強さとか、知らなかったとはいえ、憧れてる人を貶して……ホントは否定して、俺等に怒りたかったんじゃないかって今でも思うんだよ。」
「……そうだな。確かに俺は、お前達2人に苛立ちや不快感を覚えていた。英人は凄くて立派な男で、幾らクラスメイトだからって誹謗中傷を書き込んだり馬鹿にしたりするのは許さない__そう叫びたい気持ちは間違いなくあった。英人に初日の件を口止めされることも、俺が剛史や豊誠にクラスのみんなへと友情を感じることもなかったら、きっと掴み掛かってたかもな。」
「「……それと英人、何も知らずに罵倒して本当にごめん!!」」
「気にせずともよい。あの時の己はA組に対して、発覚せぬよう咎めずにいた以上、当時のA組の者等の言動行動は己にも責任がある。大体、初日の件は己の不徳、暴走が齎したものだ、非難されて当然よ。そなた等の同級生にして我が好敵手が止めてくれねば大惨事であったのだ。」
「………いや、それは英人が叫んでくれたからで、誰かを守ろうって頭の片隅にも存在しなかった俺のことなんて」
「だとしても、ありがとう、宗次。」
「何かあったら俺達の探偵事務所に来てくれよ、本心を我慢させてしまった詫びに、タダで依頼受けてやっから。」
「………
「任務の一環だったのだろう?そう落ち込むな、
次回は、【英雄譚】の再戦を、英人が何をやっていたかも含めて書き記します。
1話分に於いて、小説本文の文字数が1万超えとなる場合
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前半後半等と文章を分割すべき
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制限内なので1話分として投稿してもよい