英雄《しゅやく》になれぬ筈の槍使いと英雄《しゅやく》に至りし太陽《くろまく》   作:MOGOLOVONIO

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 凡そ2年以上も投稿が遅れてしまいました。
 
 矛盾や誤字脱字、2つの原作に関する質問があれば、遠慮なく感想欄に送ってください。



第1話 逆行と転生

  ――世は複雑怪奇、塞翁が馬。

 

 世界はままならなく無限の可能性を秘めている事は知っているつもりだった。経験もした。

 

 第5次世界大戦も日本も世界文明も己も、あの大破壊(カタストロフ)で吹き飛ばされたこと。

 

 天津降ろしの代行者選定で、運命といえる英雄と出逢い、自我に目覚めたこと。

 

 過去の過ちからの逆襲劇が、我らの英雄譚を滅ぼしたこと。

 

 そして、それでも英雄は諦めずに立ち上がり、聖戦への誓いと勝利への進撃という、己にとっての生きる意義を示してくれた。

 

 故に、己は何が待ち受けようと進み続ける。

幾年の時を経ても、如何なる術をもってしても___

 光のために、誰かのために、未来のために、宿敵と今度こそ英雄譚を紡ぐために。

 

 

 されど、己ですら驚くべき事態に見舞われるとは。

まさか___

 

「英人ー!マカロン作ったから食べよー!」

 

 まさか、旧西暦21世紀前半の日本人(アマツ)として生を受けることになろうとは。

 

 

______

 

 

 

 旧西暦、それは己が創られた時代であり、第二太陽(アマテラス)星辰体(アステリズム)も存在しない、資源不足に悩まされながらも科学文明の発展を阻害されなかった過去の話である。

 尤も、今は2025年。己はおろか、製造した山崎伊三郎元帥ら日本軍タカ派の軍人も科学者も生まれていない。まだ第三次世界大戦すら迎えておらず、大和を守るのは“自衛隊”であり…つまるところその過去に遡ってしまったわけだ。

 

 そしてもう一つ、己がアストラル運用人型兵器“迦具土神壱型(カグツチいちがた)”ではなく…新西暦において高貴とされる人種たるアマツのご先祖、純粋な日系である人類種の“天道寺英人”として生まれ変わったのは如何なる因果であろうか。

 

「英人、頑張って作ったけど美味しい?」

 

「ああ、実に美味だ。何時ものことながら、姉上は料理が上手いな、母上もさぞ誇らしかろう。」

 

「あら、褒めてくれてありがとね、英人。」

 

「刹那も上達してるな、流石だぞ。」

 

 天道寺家は、日本列島群馬県在住の、極々普通の一般家庭である。強いて抜きん出た点があるとすれば、今の己を含め極めて容姿端麗であることだが、周囲の評判の良さで留まる程に、今世の両親はとりたてて普通の職業、普通の能力、そして普通に善良な程度の精神性だ。

 

「体育祭で優勝を取って、家事も上手で優しくて、将来も安泰ね。」

 

「いや、知力が足りん。テストで赤点ギリギリだったようでは、日進月歩の社会を乗り越えられぬぞ姉上よ。」

 

「うっ、い、いいもん。素敵な旦那さんに養ってもらえたら……」

 

「言っとくが、まだ彼氏も認めはしないぞ、こんないい娘を生半可な男が養うなどと甘い考えは通さん。」

 

 姉上、天道寺刹那もその一人だ。黒く艶のある長髪に、傷もしみもない綺麗な肌、一流職人の作製した人形が如く整った目鼻立ち、更に理由なき天賦の肉体的素質と凄まじい才能を持ちながら、学業面では劣等もいいところな頭脳と、家族思いで優しく真っ直ぐな“だけ”の性格。実務・精神の両方を支えてくれる誰かがいれば競争の激しいスポーツ分野で名を挙げられるかもしれぬが、少なくとも我が英雄(ヴァルゼライド)の様に単騎で修羅や魑魅の場で生き残ることはできまい。

 とはいえ、時代も国家も違うのだ。血統派だった頃のアドラー帝国なら過酷でも、平和と自由と福祉の充実した旧西暦2025年の日本であらば彼女の様な善良な民草の方が相応しい……などと、奴なら自虐を交えて称えるだろう。

 

「そういう英人は、国のため滅私奉公、が将来の夢だっけ?堅苦しいけど立派よね。」

 

「そうだ、今は両親や地域の大人や先輩方に育てていただいている身だが、己は日本に、大人も子供も併せ皆に役立てたいのだ。」

 

 __今度こそ、第5次世界大戦も聖戦も叶えられなかった願いを、主たる大和に繁栄を。それが己の存在意義なれば__

 

「ほんと昔から頼もしいな、だけど無理も背伸びも程々に、のびのび今を生きるのも大切だぞ。」

 

「そうよ、親孝行は有り難いけど、英人も刹那も、生まれてきてくれただけで私達は幸せなんだから。」

 

「お父さん…お母さん…大げさだなぁ、嬉しいけどさぁ。」

 

 今を生きる、生まれただけで幸せ、か__

 

「……分かっている。家族を悲しませるような生き方はしない。」

 

 己にとっては理想や全体利益を目指し“勝利”することが“生きる”ことであり、身近な者と過ごす日常の幸福に甘んじるなど好かん…がしかし、今は家族がいて運命を背負わぬ子供の“英人”であるのだ。いつか、大戦や大破壊といった時代の変わり目に遭わぬ限りは、身近な者たちの安寧が少しでも良くなるよう助けながら、日々の努力を積み重ねるだけで済ませよう。

 

 

 そう考えたのは、己の今の立場や能力故の限界からであった、などと断じるのは甘過ぎる自己評価だろう。

 たとえ第三次世界大戦が23世紀の出来事であり、天災や国際的事変はその間にあれど、21世紀中に日本全国が深刻かつ大規模に巻き込まれるような出来事は、兵器製造時に入力された情報の中に存在しなかった…としても、それだけの、予定外なだけで想定内に収めておくべきであろう事態を想像しなかったのは、大和の守護星として恥ずべきことなのだから。




 因みに本作カグツチは光の奴隷であり、ロボットですが、光の英雄ながらも真っ当な人間性を宿すヴァルゼライド閣下、身近で大切な特定の他者のために運命ヘ抗う闇属性の夫婦、そして英人として出生時から共に過ごしてきた天道寺家の影響で、人間らしい暮らしや考え方への理解が備わっております(共感や優先をするとは言っていない)。
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