英雄《しゅやく》になれぬ筈の槍使いと英雄《しゅやく》に至りし太陽《くろまく》   作:MOGOLOVONIO

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 第3章、開幕です。

 感想や指摘に質問等、お待ちしております。



第三章〜光闇の天竜と武頼の地虎〜the azure or black ✧
第18話 鋼の夢想起と眩しき信頼


 

 「~~~であるからして、我等が大和の偉大なる文化的遺産よりあやかりし、本装備を付属させるべきであると申し上げます!」

 

「……再三伝えた筈だ、その案は却下だ。」

 

 青白い蛍光灯に照らされる冷徹な空気の広間、鋼の壁と床と天井に囲まれた中で口論する白衣と軍服。

 作業を緩めず然し意識を向ける者達は、服装性別年齢に関係なく皆またかと言わんばかりの態度を示している。

 

「何故ですか⁉日本が此度の世界大戦を制するのに相応しいでしょうに!」

 

「ならばこそだ、幾ら新型核融合炉を開発したといえ、真にエネルギー資源の不足が解決されるのはまだ先のこと。あらゆる地域国家を巻き込んだ終わりの見えぬ戦争、消耗される資源や将兵、そして時が経てば他国も新技術を開発しかねん。我々には決戦兵器を使って遊んでいる暇などないのだよ。」

 

「ですが、迦具土神にも、開発予定の戦闘・殲滅特化型星辰体運用兵器にしても、飛行手段を備えておくことは合理的処置でしょう!機動力の向上や活動範囲の拡大は当然として、自主的な帰還能力があれば運用データの確保も容易です!」

 

「それは理解できる。できるがね、態々その装備を採用する合理的理由がないと回答しているのだよ。頭上に悪目立ちする小型プロペラを装着し、そこから星辰体を用いて飛行させる?無駄としか思えんよ。大体星辰体で飛行や浮遊が可能となるなら、本体にその機能も内蔵すればよかろう。」

 

「ぐっ、むぅ……」

 

「とはいえ、空にも活動範囲を広げさせるべきとの意見は採用させていただこう。壱型への導入は難しいが、その試験運用のデータを参考としつつ、後続に搭載できるよう検討させている、という対応は開発チームの1人である以上承知だろう?」

 

「……はい、仰る通りです、山崎元帥。」

 

「分かれば宜しい。では諸君ら、私は戻るが引き続き頑張ってくれたまえ。全ては我らが祖国日本を、世界大戦の覇者へと導く為に。」

 

「「「はい!!!」」」

 

 そう労って鋼の箱庭を退室する元帥と数名の軍人を硝子越しに見送れば、企画の採用にまたも失敗した白衣が己の正面にある椅子に座り、調整作業を再開する。

 

「仕方ないですよ先輩。確かに20世紀の超大物古典を現実に再現する理想は、私も科学者として、それにファンとしても大いに共感できますが、今はあらゆる敵国を征伐して生き残りを目指すことが最優先ですから。」

 

「英人、英人―!」

 

「嗚呼、そうだな。他国の首都に日の丸を掲げさせられるよう、切り替えていくさ。」

 

 そう言って向き合っていた顔を互いに自身が担当する機器へと戻す男女。

「ねぇ英人、早く起きなさいよー!」

 然し片方の眼には妥協や納得の色ではなく__

 

「そうだ、最先端の生体人工知能(バイオコンピュータ)が搭載されているんだ。せめて壱型に、この設計図を入力させて、試験運用中に実用化へ向けた演算や検証を行えるように__

 

「英人!!起きなさい!遅刻するわよ!」

 

 

「__なっ⁉………朝か。嗚呼音姫よ、苦労かけるな、申し訳ない。」

 

「全く、早く着替えなさい!やっぱり幼馴染の私がいないとだめじゃないの?」

「いやはや、毎度毎度感謝する。急げば間に合うな。__あの夢、つまりそれが原因なのか?」

「……?夢がどうかしたの?」

「いや、まだ寝ぼけていただけだ。気にせずともよい。」

 

――――――――――――――――――――――――

 

 昨日、待ちに待った好敵手との闘いの後のことだ。

 あと僅かで槍を穿ち自らより先に地に落とそうとした宗次は、恐らく有する認識力を使い果たしてしまい精神力も限界を迎えてしまったせいか、対処する間もなく敗北寸前に追い詰められた己の眼前にて突如気絶してしまった。

 蜻蛉切を消失させ幻子装甲も纏わぬ状態で落下しかけたが、間一髪で手を掴み地上に降ろしたお陰で、グラウンドに激突させずに済んだ。

 

 そんな我等の事態に対し、審判の色鐘は呆気に取られていたが、己が反応を促せば気を取り直して裁定を出した。

 __予定調和というべきか、ルール通り宗次ではなく、最初にアラームを鳴らした筈である“天道寺英人の勝利”として。

 A組は胸をなでおろし、直ぐに己に詰め寄って賞賛を雨あられの様に浴びせてきた。

 一方のD組は、A組も勝敗も構うことなく一斉に宗次を抱えて校舎へと駆け込んでいった。

 

 その後、疲労を堪えながら座学や昼食の時間を過ごし、食後に()()以外から捕捉されぬよう通信室へとノックして入室。

 最古参の同志が1人、空の弁当を机の脇に置いて座っていた 。

 

「試合見たぞ、お疲れ様。他の隊員は室外にいるが、どうかしたのか?」

 

「同志秋葉、休憩時間中に申し訳ないのだが、己から事前の報告がある。」

 

「事前の報告、ということは私の意見お構いなしの既定行動か。内容は?」

 

「試合相手であった空知宗次に……()()()()として接触する。」

 

 瞬間、表情が険しくなり、圧も発せられた。

 

「理由は何だ?二度の試合で気に入ったからか?」

 

「それもある。が、奴への警戒も理由だ。己や特高制度に、自ら不審点を曝け出した()()と、疑惑を抱きかけている。試合中には[機械仕掛けの英雄]に相応しからぬ評価を口外せぬよう頼んだものの、後で納得させる建前が正直思いつかん。ならばいっそ探りを入れられたり疑念をばら蒔かれたりする前に、実直な性格を見込んで、情報を第三者に漏れぬよう開示し、協力ないし黙認してもらおうとの所存だ。」

 

「……拒否や約束違反、或いはそいつからの情報漏洩が生じた場合はどうする?」

 

「名残惜しいが宗次には退()()()()()を取ってもらう。開示前にリスクの説明を行い、いざとなれば()()()()()()()も辞さない。納得してくれたか?」

 

「……ま、いいさ。“維新”の不安要素を抑えられるなら。だが加具土神自身はどうなんだ?()()()()の候補なんだろう?」

 

「気遣いは不要だ。たとえ同志になろうとも()()()()()()()()()のでな。或いは、面従腹背の可能性もあるとしたら__クックックッ、ま、放課後にでも訪ねてみるさ。嗚呼、その際には()()()()()()()として、保科教諭を暫く宗次から引き離すよう伝達してくれ。」

 

「………はぁ、了解。ではもう昼休憩が終わるので。大和万歳。」

 

「頼んだぞ、大和万歳。」

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

「……詮索されぬよう宗次に話す予定、だったのだがな。」

 

 風呂に1人浸かりながら、夕方の保健室での会話を思い起こす。

 

 先ずは己に黒星をつけてのけた勝者に賛辞を贈る、筈だったが宗次は己を勝者と認識しており、言い合いの末勝敗着かずとの扱いで互いに妥協した。

 

 次に試合を振り返ってみれば、やはり刹那が考案し影山が命名した‘集中幻子拳(ピンポイント・ファントム・パンチ)を宗次も使用していた。尤も、本人はそのことを知らず単独で発想に至ったという。

 一方で光線の上を走ることができたのは……予想通り、本人曰く‘空壱流歩行術・這鯉登’だが、よくもまぁ斯様な無茶を実戦したものだ。その勇気と執念と自信、少なくとも自己評価の低下による幻想兵器使いとしての弱体化は杞憂で済みそうだが、当然保科から厳重注意されたそうだ。

 

 そうしてもう一つの用件を、試合中の口止め願いから始めようとしたが__よもや、[機械仕掛けの英雄]や[瓊瓊杵維新]に抵触する推察を語り、その上で己に対する詮索を行わないと言ったのだ。

 月夜が昨夜忠告として述べた「絶対無敵の英雄」を用いつつ、己に対する穏やかな声色ながらも確固たる信頼の言葉を掛けてくれた。

 

 その上で奴は、エース隊最強を目指すと、戦友達を守り通すと頼もしい宣言を発し__「誰にも何にも気を遣わなくてよくなった時」にて挑戦し勝利すると、不遜にも宣ったのだ。

 

 ___結局、己は宗次に告白せぬまま長い別れを告げて立ち去った。

 

 奴が詮索しないと誓ったから、明かす必要のなくなったが故信じて選択を迫らなかった。その面は確かに存在する。

 しかしながら、それ以上に己は__機関に関わる者としてではなく、自らの道を邁進してほしいと願っている……のだろうか。

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 そんな思いを報告して、胸に秘めつつ眠りにつけば、奇妙な夢に浸ってしまい月夜に余計な手間を掛けさせてしまった。

 そのせいで急いで着替えて走り、1-A教室へ到着する。

 

「色鐘先生、遅れてしまい申し訳ない。」

 

「まだ始業前なのでそう畏まらなくてもよい。あぁそれと、千影沢が引っ張ってきてくれたのか?」

 

「ええ!まったく私がいないとダメなんだから!」

 

「いやはや感謝している音姫よ、幼馴染でいてくれて本当に助かる。」

 

「お前たち、もう直ぐ時間だから席に着け。」

 

 色鐘の指示を受けて我等は着席した。

 

「これより本日の授業を始める。……とその前に、昨日も語った話だが。」

 

 色鐘が視線を、()()()()()へ数秒だけ向けて戻した。

 

「改めて、天道寺英人よ、A組に喧嘩を売った他クラスの野蛮で卑劣な輩との闘い、実に素晴らしい勝利であったぞ。」

 

 教室内の親衛隊員全員からも、称賛の目を向けられる。

 

「やはりお前は、天道寺刹那の弟であり、日本も世界も救う英雄に相応しい聖剣使いだ。何れ、この特高全体に於いても最強の存在になれる。おめでとう。」

 

 単なる生徒間の試合に於ける勝者としてではなく、同級生の少女の思いに応え今後の活躍も期待させる希望の象徴。それがお前なのだと煽てる色鐘と、その言葉を肯定するかの様な表情を作って見せてくる親衛隊。ならば己が振舞うべき態度とは__

 

「有無。皆が信じ、応援してくれたお陰で、己は新たなる幻想兵器を獲得して飛翔し、逆転勝利を果たすことができた。最早己に敗北は有り得ない、絶対に常勝無敗の英雄として救ってみせる!」

 

 我等が祖国と民草の為に、人類の明日の為に。己が必ず夜明けを齎すと信じて、その日迄努力と勝利を積み重ねながら待ってくれる好敵手の為に。

「そうか、良い心掛けだ。ではタブレットを起動せよ。」

 

 1限目となる数学の講義を聞きながら、ふと別の事に思考を巡らせる。

 

 ___飛翔と言えば、何故“タケコプター”を顕現させたのか。

 

 経緯としては、“己の勝利”を望む方向性で認識力が高まっていたこと、宗次を打倒するには空を飛ぶ位は必要だとの危機感、そして勝利への渇望と決意による自身から発せられる認識力の増大を基にして、脳内に浮かんだ幻想を現実へ変換させた、というものだ。

 

 然しそれは、飛行能力を有する第二の幻想兵器を生み出せた理由である。旧西暦25世紀(製造年)では古典作品なれど、21世紀前半では幾ら有名であろうと幻想兵器の原典となるには些か早いのではないか。

 

 そう疑問に感じてはいたが、今朝の夢が迦具土神壱型製造過程に於いて実際にあった出来事であれば合点がいく。

 恐らく迦具土神壱型()の人工知能には、あの開発チームが1人によって独断且つ秘密裏にタケコプターの設計図と思考検証プログラムを仕込まれていたのだろう。それが大破壊後も深部に残り続けていたものの、機体は身動きが取れない状態にあるせいで活動中の検証が叶わず、己の頭脳は大破壊後の地球環境把握や大和(カミ)降ろしに代行者捜索等へと用いられ深層に封じられたままだったのだろう。また、その地球環境や物理法則は星辰体により改変され、空気抵抗の増大で人類が空へ飛び立てなくなり、飛行用の技術を引っ張り出す意味も喪失された。

 

 よってタケコプターの情報が内蔵されているとは、夢を見る迄予想も自覚もなかった。それが先日の闘いの中で引き出されたのであろうな。

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 __さて、この日より約2週間、己はフットサルによる部隊戦の備え、クラス内での試合による幻想兵器戦闘の上達に励んだ。また、()()()()()()()に協力してもらいながら、他の親衛隊員に気付かれぬようエース隊員の一部へと接触し、機関へと勧誘した。

 

 一方で宗次は、変わらず問題なく鍛錬を積み、D組同級生と親交や理解を深めていた。

 機関専用の隠しカメラや盗聴器、芹沢校長を通して伝えられる担任の大河原による監視報告。これらからは、特高や1-Aへ詮索する素振りがなければ、疑問点や違和感を吹聴する様子もなかった。即ち機関が把握する限りに於いて、宗次は約束を自然体で遵守している訳だ。安心したが、念の為大河原からの報告は続けさせておこう。

 

 

 そして、旧西暦2031年4月29日、己にとって6年ぶりの外界にして散々同志を待たせた点でも記憶に刻まれている前橋市。

 己や宗次達第3期生の初陣にして、()()()の晴れ舞台が其処で開かれる。

 

 

 





◯❛エクスカリバー・ケラウノス❜:本作オリジナル技にして形態。剣から放出される光線を凝縮させ、剣を纏って光り輝く刃へと精製させることで、一回り大きく長く
重く鋭いビームサーベルとなる。それだけでも槍のリーチに迫るレベルだが、刃状に光を飛ばして軌跡に数秒遺らせる性質も得たお陰で、中距離戦闘が可能となった他、光線の発射を即座に実行できるようになった。その分認識力の消耗が激しく、英人は再戦以前に構想していたものの、自身や聖剣に対する正の認識を更に集める必要があった為、再起後にA組や色鐘、そして宗次から期待が高まらなければ発動も維持も困難だった(不可能とは言っていない)。名称の由来はギリシア神話そのものではなく、前世の宿敵が目覚め扱う異能、❛天霆の轟く地平に、闇はなくガンマレイ・ケラウノス❜である。



 因みに、序盤の山崎元帥の口調や、タケコプターのデータ内蔵については、本作のオリジナル設定となりますのでご了承下さい。

1話分に於いて、小説本文の文字数が1万超えとなる場合

  • 前半後半等と文章を分割すべき
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