英雄《しゅやく》になれぬ筈の槍使いと英雄《しゅやく》に至りし太陽《くろまく》 作:MOGOLOVONIO
今回は、原作26話目から27話目迄の11日間のある日に於ける、迦具土神機関同志となった1人の原作キャラの視点でお送りします。
人の勧誘方法等については、自分で言うのもなんですが自信がありませんので、疑問や指摘等がございましたら遠慮なく送って下さい。
「~~では、少々ぶらついてくるぞ。何、何時もの時間には食堂へ着いておくのでな。」
「全く、もう慣れたけど英人ったらほんと自由気ままなんだから。(目を離さず見張ってなさい、それと承知しているだろうけど。)」
「待ってよ英人~、私も付いてっていいでしょ!(無論、心得ております。)」
「なら私もよ!今日はどの辺に行くの?」
……当然といえば当然だけど、警戒されてるわね。
監視役に立候補し、
「今日は……何処行こうか?」
「え~決まってないの?この前もそうだったじゃん!」
「大丈夫だって咲!どうせ夕食には遅刻しないって、ねぇ英人!」
「応とも、何より2人が共にいてくれるからな!」
3人で仲良さげに談笑しながら廊下を歩いて……此方への注意が途絶えた事を確認。
「本当に、毎日が両手に華とは、皆己を好いてくれるのだな!」
英人が、横列の真ん中から私達を肩で抱いて、小気味良く3回叩いてくる。そんな彼に私は返事をする。
「……それで、何方に向かわれますか?
「先日は1-Bにて正式に引込みましたが、如何なさいますか?」
「本日は3-Dの広瀬悟を勧誘、ついでにクラス内の同志の様子もざっと確認だ。」
「「ではいつも通りに。」」
機関以外の者に捕捉されない状況下にて、私と咲は、同志迦具土神から今回の予定を聞いて、気を引き締める。
__特高第3期生に於けるA組は、現2・3年生や同学年他クラスとは異なり予め配属を既定されている。
[機械仕掛けの英雄]では、
その工作員は、情報の秘匿性確保は勿論のこと、忠実で優秀な工作員と感情的で強力な幻想兵器使いという
迦具土神やおじさんの話だと、CEによる被害で孤児が大量に発生し、加えて経済と財政の逼迫や悲観的展望により児童養護施設の運営資金削減や保育士の精神状態悪化が全国的に蔓延した中では、施設にとっても孤児にとっても有難い話なので了承を得やすい、とのことだ。
とはいえ、幻想兵器使いの適応力は適性の大小関係なく併せても、凡そ5千人に1人の割合なので、幾ら孤児が多数居ても見つけ出すのは容易ではない。然も工作員として育成する途中に適性を失い任につけられなくなる恐れも十分あるので、予備を含めれば候補者は30人だと到底足りない。
となると如何にして秘匿性を保ちつつ孤児以外から募るか、という課題が浮上するのだが………迦具土神機関が、人脈を駆使して存在を露呈させることなくこんな提案を持ち掛けてきたのだ。
「[機械仕掛けの英雄]を知る政治家や自衛官の子供、または信頼できる親戚の子供からも適応者を探そう」と。
後で迦具土神から聞いたところ、計画立案に関与した保科現養護教諭達現場の者は、機密保持への懸念と、計画の柱たる
この様な経緯で私や咲等何人かが、適性検査を受けて合格し、A組配属に向けて孤児達とは別に育成され、何とかこうして特高に来ているのだ。
……機関が提案した真の動機は、迦具土神と秘密を共有し活動を補助するべく、A組内に元からの同志を送り込むことにある、なんて裏話は、現担任にして特高の戦闘面を統括する色鐘先生等の、同志でない者には伝えられていない。
どうやら、孤児選抜組に対しては情報収集のみに徹しており、養成体制への干渉を行っていないせいで、[機械仕掛けの英雄]に沿った誘導や外させない為の監視という本来の任務に忠実だという。それ故に、現時点では機関の活動に於ける障害であり、全員を
という事情を知らされ抱えている私と咲は、3-Dの教室前に到着し、クラス内の同志に前以って閉めさせたドアを、初め2回一呼吸置いて3回ノックする。
「__何だ一体?」
その言葉と共に廊下に出てきたのは、勧誘対象の友達にして同志の1人、吉野太知。
「調子は如何かね、同志吉野。本日は事前通達通り来たのだが。」
「委細問題無しです。では呼びます。」
そう言って彼は教室に戻り、私達はその場から少し歩いて機関専用の隠し部屋に移動し咲を監視役として部屋の前に待ってもらう。
数分後、吉野と広瀬が訪れる。当然ながら、広瀬の方は謎の部屋と下級生3名に困惑しているようだ。
「な、なぁ太知、エース隊の真実がどうこう言ってたけど、何で天道寺刹那の弟が……」
「……そうだな、これから知らされる話はお前にとって酷なものだ。それでも、俺の親友にはどうか聞いてほしい。」
「__広瀬悟殿、結論から申し上げるとこの特高では、戦功や姿勢を問わず、己しか英雄譚の主役に成れぬように
「__っ⁉」
迦具土神は[機械仕掛けの英雄]について、怪物退治の主演が決まり切っている点と1-A以外のエース隊の裏の位置付けを重点的に、淡々とした態度で伝えてゆく。
聞かされる広瀬はというと、やはり徐々に憤慨と絶望が体から溢れてきている。隣の同志も、表情が険しくなると共に親友に対する憐憫が見て取れる。
「__黙って聞いてたけどなぁ、ふざけんなよてめぇ、俺が、俺や太知達の頑張りなんざ関係なく勝手に
「っ待て!」
突如迦具土神に掴み掛かろうとして、直ぐに取り押さえんと__
「その通りだとも、広瀬殿。況してや、元演劇部のそなたにとっては至極正当な主張だ。」
「んなっ!?何でそんなことを!?」
迦具土神は、襟首を掴まれながら左手で私を制し、言葉を紡ぐ。
「気持ちは解る、などとほざく資格はないが、少なくとも経歴だけなら既に知っているさ。元千葉県立▽▽中学演劇部員、広瀬悟。熱心に稽古を努めるも顧問や部長からの不当な嫌悪により出番を傍役のみ許され、それも少数回に留まることも。」
「__っ!?………知った上で、かよ……」
「悟……」
「……知ってる訳はどうでもいい、それで、主演に努力なく選ばれた英雄様が、態々バラして、俺を馬鹿に…」
「否、寧ろ己は尊敬しているのだよ!広瀬殿の姿勢、信念、責任感を!」
「………え?」
呆気にとられた広瀬へと、迦具土神は語り掛ける。
「部の権力者から疎まれ、努力も意欲も無碍にされた不遇の身。不満や失望を溜め込んで当然の状況。ならば何故、木っ端役やられ役を真剣に演じていたのだ!?」
「__み、見た、のか?」
「3年間に於けるそなたの出演、全てとはゆかぬも録画媒体を覗けた計5回。物語の中では気にされぬ立場を、物語や観客の求めし通りに全力で全うする様をな。」
「……な、その言い方、どういうつもりで……」
「無論、称賛だ。視聴した中でのそなたからは、客への意識と劇の責務、そして役に不要と鎮め込んだであろう情熱しか感じられなんだ。嫉妬、不満、演劇自体への嫌悪は微塵も見えなかった。」
「……だ、だからって、演劇部の態度がエース隊の、脇役の更に脇役なD組の俺に何の関係が……」
「では聞こう。せめてCEとの戦いで華々しい役をと夢見て入学し、その脇役たるD組と相応な幻想兵器に選ばれて、進級してもクラスは変わらず。結局不遇なのは演劇部と同様で、嗚呼やってられんと投げ出したことはあるか?」
「……ねぇよ、モブだとしても、換えの利く一般兵だとしても、不貞腐れて怠けちまえばみんなに迷惑掛かって台無しになるだろ。……演劇部だって、観客ガッカリさせて劇に少しでも欠損生んじまうんは……」
「その誠実で真摯な在り方こそ、己が打ち明けた理由なのだよ。そなたなら、自身に非のない脇役としての現実を突き付けられようと、決して打ちひしがれず努力と責務を貫けると確信したのだ!__斯様な人間に如何なる資格が与えられるか知っているか?」
「___
「………何だよそれ……買い被りか……誤魔化してんじゃないのかよ……」
「悟、お前が怒って当然の話だったけどな。__彼も彼で、
「__どういうことだ?」
「[機械仕掛けの英雄]は、天道寺英人という1人の人間を、英雄の弟だという先天的事情だけで、
「………じ、じゃあ目の前のコイツは……」
「そんな運命を理解した上で、甘えも落ち込みもせずに只管、“日本を救える英雄”を懸命に全うしようと頑張ってきている男だ。父さんの件や演劇部を理解しても尚夢と努力を諦めない親友の様にな。」
「まぁ兎に角だ、己はそなたを信じ、そなたの親友を信じているからこうして接触を試みた訳だ。__大丈夫か?」
「……大丈夫なもんか、こうなりゃもうヤケクソだっ、脇役だろうが裏方だろうがやってやらぁ!俺は広瀬悟、未来の役者、どんな立場も熟してくれるわっ!」
「「よっ、千両役者!!」」
「……天道寺英人、だっけか。お前案外ノリいいな。てか結局話してくれた理由って?」
「__己は、[機械仕掛けの英雄]という台本に沿いながら、脚本の想定を上回る程の最高傑作に昇華させたいのだよ。CEを絶滅させ日本も世界も復興へ舵を切りめでたしめでたし?その様な
「おいおい、無理矢理据えられたそうらしいがなぁ、それでも台本に文句言うとか傲慢じゃねぇか?」
「傲慢結構。それで己としては、演者達に1人でも多く己の共犯者__
「そういうことだ。黙っていて悪かったな。勧誘ではあるが……あんな話の直ぐで言うのも申し訳ないが、
「ホントにヒデェ話だなオイ。こんな奴が親友とか……ま、受けるぜその誘い。もう知っちまった以上今までの振る舞いは難しいし、天道寺英人の熱弁に励まされもしたからな。……待てよ、あの語り、お前なりの
「否、あれは嘘偽りなき本音だとも。__というのが嘘か本当かは、自ら見極めることであるがな。自信の程はあるか?」
「………お前が、俺より遥かに上手い演技者なのはよく分かった。加わらせてくれ、脚本泣かせのアドリブ機関に。」
「“迦具土神機関”ってのが正式名称さ。……悟も「同志」と呼んで構いませんか?迦具土神。」
「よかろう。広瀬悟、もとい同志広瀬、我等迦具土神機関は、未来の千両役者を歓迎する。今後は日常生活に於いても徹底した演技が求められるぞ、覚悟せよ。__それと、最後の返事は凡そ常に、「大和万歳」であるからな。」
「つまり、厳しい修行って訳だな。__❳
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その後、私達は部屋を出て、同志吉野と同志広瀬は寮に戻ってゆき、此方も咲と合流して9番棟へ向かう。
「お疲れ様でした、迦具土神、それと」
「私はいいわよ、突っ立ってただけだし。」
「そう謙遜なさるな。咲も、見張り実に大儀であった。」
「有り難きお言葉です。」
そんなこんなで、夕陽の差し込む廊下を歩きながら、私は昔のことを思い出す。
……私には、現与党の国会議員を務めているおじさんがいる。
元々無名で貧乏な大家族だった自分達の中から唯1人、名を轟かせ金を稼ぐという野心と、家族や職場の労働者の様な貧乏人を救うという理想を掲げて、ジバンもカバンもカンバンも持たぬ身で政界を志し、様々な苦労や障害を乗り越え到達してみせた一族の誇りだ。そう母上から聞かされたものだ。
その影響か、時折遊んでくれるおじさんの人柄か、私も小さい頃から「おじさんの様な頑張り屋で社会を良くする政治家になりたいです!」と将来の夢を言っていた。
でもある日、勝手にこっそりおじさんの家に忍び込んだ際、外国人らしい人を見掛けて、覗き見してたらおじさんや秘書達が困った様な顔をしていて、その後電話で誰かと話していた。不安に思って内緒でネットで調べてみたら、他国から誘惑されただの他の政党と内通されただの、そんな不穏な情報が、見たことある顔や聞いたことのある名前と共に入ってきた。
その時の私は、優しくて頑張り屋で家族の誇りななおじさんが、そんな真似する訳ない!……と信じない様にしていた。でも一方でこんな疑心も抑えられなかった。おじさんだって人間で、汚い大人で政治家だからおかしくないし、何も持たない身で成り上がったなら清廉な方が不自然だ……と。
家族にも友達にも他の大人にも、当然おじさんにも明かせなかったその葛藤が、突然横からやってきた迦具土神によって解決されて見抜かれたのを今でも最もはっきり覚えている。
疑ってしまいながらも信じたい気持ちのままに、バレないようまた侵入しておじさんと来客達を隠し見ていた途中、いきなり黒スーツの男が複数乗り込んで、警察だ署までご同行を、なんて言って外国語で騒ぐ来客を無理矢理にでも連れて行ったのだ。
「ご協力感謝します」と2人残った黒スーツがおじさんや秘書に頭を下げていたけど、どっちも物凄く困惑していて……
「__お嬢さん、かくれんぼかな?」
内背の短い(といってもおじさんや秘書より高い)方の“警察”が私を見つけて引きずり出して、かくれんぼでも鬼ごっこでも負け無しだった私は驚くばかりだった。おじさん達も驚いてたけど、それ以上に何処か申し訳無さそうな印象を懐いたのは気の所為じゃなかった。
あの時の私が、何故か妙に冷静なまま全部話してしまったところ、引っ張り出した方の男がしゃがみ込んでこう話してくれた。
「おじさん達には、日本を脅かす外国人や裏切ろうとする日本人を捕える手伝いをしてもらった」「おじさんを信じる気持ちも疑う姿勢も立派だけど、親戚であっても勝手に家に入るのは犯罪だよ」……後者はおじさんが、前回も今回も妻が招いただけだって誤魔化してくれたけど、反省してみんなに謝ってそれで黒スーツの2人組は帰っていった。
……その後、おじさんは正座しながら私に、「本当は疑いの通り悪い人達と繋がっていて自分も逮捕されるべき立場だった」「だからこそあの警察の方々が分からない」と語り掛けてきて……
その直後に掛かってきた電話で、私達は真実を知った。
「改めて、感謝し申し上げよう。貴方のお陰で我々は、大和に仇なす者を排除できた上に、父親想いの聡明な少女に絶望を齎さずに済んだ。」
__迦具土神機関、それが静謐ながらも威厳に満ちた声の主にして、黒スーツの“警察”を動かした秘密結社だった。
おじさんにもその場の秘書にも、加えて私にも話してくれた内容を要約すると__おじさんのバイタリティや実績や家族愛に対する賛辞、過ちを犯して向き合わされた咎人だからこその期待、そして私も含めての機関への誘い。
おじさんは私に目を遣り、アイコンタクトして一呼吸起き__
「「同志と名乗る資格を許されたのであれば、此方こそ宜しくお願い申し上げます。この御恩は一生忘れません!!」」
「__では恩返しとして、我等と共に祖国と、同志達が救いたいと願う民草に貢献するべく、とある提案に協力して頂けぬか?」
__これが私にとって、[機械仕掛けの英雄]を知った瞬間であり、[瓊瓊杵維新]に携わる名誉を授かった場でもあった。
「さて、己は腹が減っておるが2人はどうだ?いや、淑女に対してこれは不躾であったか。」
「構いません。我等は女である前に迦具土神の同志です。今更その程度で傷付く程軟なプライドは宿しておりません。」
「私も咲と同じです。恐らく空腹であることも。」
「なら良かった。もう直ぐで。」
「「うん、食堂だね!!」」
夕陽に照らされる廊下を歩く私達の、今浮かべる笑顔に嘘偽りはないだろう。
__
情熱と誠意に溢れながらも正確に計算され尽くした振る舞い。失敗や不幸や悪事等“恥”と自認される要素さえ含めて称賛し尊敬すると全身で伝える説得法。嘗ての私もおじさんも、それによりどれだけ省みて励まされ魅了されたことか。
だからこそ私は、我々同志は、
「おっそーい!全くどこほっつき歩いてたの英人!」
「いやはや済まない、また迷ってしまってな。」
今この時も永田町で、「罪を償い心を入れ替える機会を授けて下さった恩義を決して無碍にしない」と誓って防衛強化と福祉向上を働きかけている
「ほら英人、夕食をみんなで一緒にと待ってたのよ!」
「嗚呼感謝する。さぁ、食べにゆくか。」
「はい!英人、私もう待ち切れないよ〜!」
「待たせてた1人だったのに呑気なものね咲……。ほら
「………あっ、ごめん音姫!今行く〜!」
それが迦具土神機関同志が1人、
○特高3期生A組に於ける本作の構成
影山がCE被害により生じた孤児から招集し教育して、幾名もの脱落者を出しながらも[機械仕掛けの英雄]用工作員として完成できた月夜達(多数派)+[機械仕掛けの英雄]に於ける現場の大人達の反対を押し切って信頼性の高い政治家・自衛官の親族から選抜され養成された霧恵達(少数派)
本作では、後者全員が機関の同志であり、当然諸々知らされた上で機関構成員以外を欺きながら、マンセーハーレムの面を被った英人監視要員を装った迦具土神の忠臣として暗躍を支えております。
またその為、前者の全員に加えて1-A担任の色鐘は、強引に押し切られた提案の裏側も、迦具土神や同志についても予想だにさえしておりません。
1話分に於いて、小説本文の文字数が1万超えとなる場合
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前半後半等と文章を分割すべき
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制限内なので1話分として投稿してもよい