英雄《しゅやく》になれぬ筈の槍使いと英雄《しゅやく》に至りし太陽《くろまく》 作:MOGOLOVONIO
ノ(以下略)、第5回です。
今回よりサブタイトルからページ数を表記しません。理由としては、ノ(以下略)の文章量が毎度原作より多くなっており、ページ策定が難しいと判断したからです。御了承下さい。
前橋市内北東にて、英人は単騎でピラーと対峙する。
「此れが、ピラーか。」
見据える先には、ありふれた平穏な街に侵食し、田畑や家々を我が物顔で蔓延りながら無辜の民草を襲う尖兵を放つ、美しくも歪で悍しき結晶塔。
彼にとっては、善良な一市民に過ぎなかった両親も、誰かの笑顔の為に勇気を振り絞り戦い抜いた姉も奪い去った仇の同類であった。然しながら、その胸中に滾る想いは__
「奴等の生態も、目的も、秘める可能性も己はまだ知らん。そして知らぬまま、殲奴等なりの意義も生命も一切合切殲滅する。せめて我が意識の中だけでも無碍にせんと約束しよう。」
これから外敵として屍も遺らず殺し尽くす相手に対する、無知の自覚と罪業の覚悟。
「そして奴等の犠牲のみならず。この地で奪われし人々の生命、思い出、誇り、生業、希望。その総てに報いるべく、何としてでも明日の光を勝ち取らねばなるまい。」
顔の見えないというだけで確かに存在する、護るべき民衆に対する責任と未来を希求する意志。そして__
「己は信じている、戦友達の奮戦を、宗次の常勝を。ならばこそ討ち果たそう、この時を日ノ本による逆襲劇の狼煙に変えるべく!」
護国護民の使命を全うするエース隊と尊敬する好敵手に向けた無償の信頼、人類を脅かす脅威に抗い続けている祖国への愛国心。
彼に怨恨は皆無だ、常に前を向き決して過去に囚われないから。彼に我欲は皆無だ、生来より自発的に滅私奉公を貫き他者の礎となるのを苦にしないから。
故にアーサー王の聖剣に選ばれて、光輝でもって応えてくれるのは必然だった。その心に一握の闇すらなく、骨の髄迄
さあ人々よ、刮目せよ。
謳い上げるは英雄譚、日はまた昇ると示されるのだ。
「煌めく未来を切り拓かんッ!❛エクスゥッ!カァリバァァーーーッ❜!!!」
シュゴオオオオオォォォォーーーーッ!!
聖なる光の放流が、大地にも建物にも掠りさえせぬよう制御されながら発射され、巨大な結晶の柱に叩きこまれる。
それは強力なバリアさえ容易く打ち破り、ピラーを原子の光に分解する。
「見ろ、ピラーが、誰も壊せなかったあれをついにっ!」
「天使様……いえ、あの方こそが私達を救ってくれる救世主様なんだわっ!」
逃げ惑う中でその神秘的な光景を目にした人々は、誰もが迷わず確信した。
薔薇色の超科学で蒼穹を翔けて、黄金の聖剣を振るう英雄。
彼こそが、天道寺英人が人類を救う救世主なのだと。
そして、同じく黄金に魅せられながらも更に一歩進んだ想いを懐いた者が、別の場所に居た。
「ぶはっ!」
戦禍で荒れ、人の気配が殆どない住宅街の車道上。
其処で上下逆さに転がっている装甲車から、宗次が顔を出し、晴れ渡る天空を見上げた。
「「「殺す気かっ!!!」」」
「………」
怪我せずに済んだものの、本来外敵のみを滅却する筈の光線に吹っ飛ばされてしまったのだ。呆然と顔を上げている宗次を除く5人の勇士全員が、口々に怒りや恐怖を露わにする。
「ふざけんなや、マジで死ぬかと思うたわっ!」
「そもそも、何でここにあの人がいるんですか!?」
「助けに飛んで来たんつもりじゃないの~」
「それで味方に殺されたら世話ないわよっ!」
「ひ、酷いです……」
彼等の身に起こった危険を鑑みれば至極最もな態度であったが……1人だけは別だった。
「く、ふふっ、あはははっ!」
宗次は突如、腹を抱えて笑い出した。
「うおっ!?どしたんや兄弟、珍しいな。」
「いや、可笑しくてな。」
「オカシイのはあのスケコマシの頭やろ、金玉引っこ抜くぞあのガキャ!」
「アッハハハハッ!」
今だ空の彼方に向かって叫ぶ親友と異なり、宗次の心は喜びに満ちていた。
命令を破り死地に来て身勝手な自分を救けてくれた、傍にいる5人と彼等を見送ってくれたであろう委員長に対する、感謝と友情。
確証は無くとも絶大な信頼故、更には光線の被害がひっくり返り掠れた程度の装甲車と自分達の微々たる負傷だけという結果への深読み故の、英雄に対する憧憬や感謝。
孤独な死闘を渇望し、孤高の天頂を目指した少年は、この時自分が独りではないと気付けたのだ。
大地で隣り合う仲間達と、蒼天を駆けるライバルの存在は、右手の重傷など気にも留めぬ程に、彼の心を明るく優しく満たしていった。
斯くして、この4月末より日本と人類の反撃が始動した。
そして英雄と武士、彼等と共に在らん者達の英雄譚が、
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「いやはや、当時は非常に焦ったのだよ。出陣方面と反対側にCEが出現したと聞いてから、気が気でなかったのだ。」
「……まさか、装甲車内で既に把握していたなんて、とんだ節穴だったみたいね私。」
「気にするな、月夜。私も、京子も、当時“迦具土神機関”の存在自体知らずに傀儡師のつもりだった面子の多くが同じだったのさ。」
「ありがとう、英人。ピラーを倒してくれて、心配してくれて。」
「というかやっぱりこの時も、宗次君無茶し過ぎ!私達に黙って抜け出して正二十面体もいる大群と戦って、あんな大怪我負ってさぁ!」
「ワテらを気ぃ遣ってのもあったんやろうけど、避難誘導中に居らんこと分かった時ホンマ慌てたんやで!」
「みんな、本当に申し訳ない。巻き込ませたくないと勝手に決めつけ、避難誘導という本来の任務を押し付け自分本位な真似を犯してしまった。」
「それだけじゃなく、右手が酷くケガしてたんですよ!アレ気付いてどうしてこんなことにって……」
「私も混乱しましたし……一樹さんがもつと涙流して、陽向ちゃんが心配込めて怒ってたんですよ……!」
その話題に変わり意識を向けられたところで、宗次が皮膚に古傷の少々遺っている右手を前へ掲げ皆の視線を集め、安心させる様に笑顔を浮かべる。
「大袈裟だな全く。3日後には完治した程度の傷だし、蜻蛉切を出せない状態で正二十面体を倒せたんだから安いものさ。」
「いや〜至る所が出血してて指先まで擦り傷で覆われてるのは、軽く済ませられないですよ〜。私も見たことない怪我でしたし〜。」
「……改めて聞くけども、どんな状況だったんだ?当時は。」
現場に居た者達の様子に対し、とんでもない凄まじさを感じた優太が、恐る恐る質問した。
「ひっくり返った車を6人で戻して、エンジン着け直して出発して直ぐのことだったんだが。」
「…後ろで座りながら…陽向ちゃんが左側の宗次さんに……」
「こっそり左手添えようとしたんですよね~。」
「……うん。それで、触れた瞬間……カサつきと湿り気を感じたの。何でかって思って。」
「「宗次君、ちょっと右手見せて?」との声が聞こえたので、挙げられた手を見たら……宗次さんの手が赤黒っぽくなってたんです。」
「んで運転席にも伝わっとった妬ましい空気が、途絶えたと感じて数秒後やったかな。右手の怪我がと2人分の悲鳴がしたんわ。」
「どうしてボロボロにって大声で聞かれたら「CEを貫手で倒した」と答えて、痛くないのか詰め寄られて問われたら「痛むけど余裕で我慢できる」と答えて、幻想兵器はどうしたと何時も以上に震えた声には「形成できなかったから手に装甲集中させてコア砕いた」と答えて、装甲纏ってたのに傷だらけな理由を間延びなくドスを効かせて尋ねられたら「指先だけでも届けること優先して負荷の軽減を後回しにした」と答えた。」
語りながら思い起こして、少し青褪める5人とは対照的に、張本人は喜びと呆れの混じった表情で淡々と説明していた。
「ホンマびっくらこいたんで振り向いた直後に、京子センセの通信が掛かって来てたんや。」
「偶々再度確認しようと繋げたのがそのタイミングだったんだけど、こっちもこっちで大混乱したのよ。幻想兵器使いとして初めての流血沙汰だった訳だし。」
「俺としては、その事実が衝撃的だったがな。兵士である以上、戦場で血が流れるのは当然だとばかり。」
「仕方あるまい。幻子装甲は汎ゆる衝撃を生身の身体に届かせない。そしてCEは
「……仲間達だけじゃない、あの日の逆転は、英人のお陰でもあるからな。」
「「「__えっ???」」」
瞬間、会場に犇めく大多数が|英人
「英人が幻想兵器や幻子装甲の可能性を示してくれた。英人からどんな奇跡も“為せば成る”って教えてくれた。厳しい孤独も逆境も限界も、決意と勇気と理想を貫けば乗り越えられるから__
宗次が爽やかに言い切った直後。
「「「…………………」」」
「………其処まで伝えたつもりも、当時励みになる程の傷を負った覚えもないのだが。」
「?」
集められる冷たい視線と、思わぬ好敵手の姿から、珍しく困惑する英人であった。
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因みに性格や立場上同窓会に集うであろう原作ネームドの一部については、此処でも参加しておりますが本編にてメイン昇格する位に絡みが増える迄は、存在や台詞を描写しません。
その為本編に於いて、現時点では第3期生との接触回数2回に留まる麗華も、そもそも来日しておらず名前も未登場な英国人ヒロインも、またとある原作キャラ達も、描写されていないだけでこの集いに参加しております。
1話分に於いて、小説本文の文字数が1万超えとなる場合
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前半後半等と文章を分割すべき
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制限内なので1話分として投稿してもよい