英雄《しゅやく》になれぬ筈の槍使いと英雄《しゅやく》に至りし太陽《くろまく》   作:MOGOLOVONIO

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 皆様、メリークリスマス!

 原作44・ 45話目辺りの本作英人視点回となります。
 今年も後少しですが、引き続き執筆活動を頑張ってゆきます。



第22話 慟哭への決意と元凶への接触

 

ウゥーーッ!!

 

「__むッ、襲撃か?」

 

 枕より北側に置いた携帯端末を点ければ午前4時との表示。12棟の寮全てで、CEの襲来を知らせるサイレンが鳴り響いている。

 

「……寝るか。」

 

 我ながら呑気過ぎる判断との自覚はあるが、”天道寺英人は日も昇らぬ内にサイレンが鳴った程度で出動準備に取り掛かる様な子供ではない“のだ。どうせ必要とあらば、色鐘から監視中の担当隊員に指示が来て己を起こしに訪ねてくる筈だ。それ迄体を休めていよう__と決めて布団に戻り数分後。

 

「起きて下さい迦具土神!1-A出撃です!」

 

「__承知した同志犬塚、直ちに動く。」

 

 特高指定のジャージに着替えて退室__直後に人の声がスピーカーから発せられる。

 

「2年A組、1年B組、1年C組、1年D組の生徒は、教室に集合して待機してください。繰り返します、2年A組~~」

 

「上級生7組が我等と合同か。」

 

「はい2-Aは予備戦力との方針です。尚我等は他組全て出撃後に出発する手筈です。」

 

「了解だ。」

 

 そうして急ぎ足で1階に降り、1-A全員揃ってグラウンドに向かえば色鐘と装甲車数台が既に着いていた。

 

「こんな早くに呼び出してしまい申し訳ない。早速だが、軽井沢方面にてまたもCEが襲撃してきた。諸君等にはそいつ等を撃退してほしい。」

 

 色鐘が我等を見据えながら対応を説明する。されど、その瞳は己と親衛隊員とで変化しているのだが。

 

「天道寺、起こして済まなかった。だが、我々には最終的に頼れるのはお前しかいないんだ。そして、お前ならどんな状況だろうが必ずCEを討ち滅ぼせる。光で一掃するだけで、どんな敵もあっという間だ。お前は天道寺刹那の弟であり、最強の英雄なんだから、気楽に倒してこい。」

 

「応とも、奴等を消し去ってしんぜよう!」

 

「そして皆、天道寺を支えてやってほしい。頼んだぞ。」

 

「「「はい!!!」」」 

 

 斯くして我等は装甲車に乗り、上級生達より遅れて特高を出発するのであった。

 

 そうして数十分後、車が停まり、我等は降りた__のだが。

 

「天道寺、聞こえるか?其処から先は、お前1人で飛び立っていけばいい。地上の事やクラスメイトは気にするな、お前が敵を倒し尽くせば万事解決だ。」

 

「了解した。__では。」

 

 通信が繋がったまま、己を取り囲む様に待機する親衛隊を見回し__

 

「武装化ッ!__これより敵を殲滅してくる。皆、安心して待っておれ。」

 

「頑張って、英人!信じているわ!」

 

 形成したタケコプターを回して、大地から飛び立ち、上昇しながら敵の集う方向へ駆け付ける。

 2、3分でCEの進軍ポイントを射程範囲内に収める所へ到着し、上空から見下ろしながら聖剣を構える。

 

「エクスゥ、カリバーーーッ!!」

 

 発射された光の龍は、黄金に煌めきながらCEの下へと向かい、上空からの映像では地上を隈なく覆ったと見えるよう敢えて光を広げながら、然し標的以外を巻き込まぬよう精密に操縦して、CEの群れを全滅させる。

 

「__ふぅ、ざっとこんなものだな。」

 

「CEの反応が全て消滅した。よくやった、天道寺英人。流石は日本を救う救世主、最強の英雄だ。__帰還せよ。」

 

「了解した。」

 

「__迦具土神へ報告。先遣隊7組、全員緑のまま、帰投に移行する。大和万歳。」

 

「了解。此方も委細問題無しだ、大和万歳。」

 

 その後、機関からの緊急通信は入る事なく、黒檜山方面の異常を伝える報せもなく、拍子抜けする程順調に、勝利の凱旋を果たしたのであった。

 

 __戦争の常識が変化し快勝の伝説が挙がる度に、存在意義の喪失を感じ入ってしまう者が生じてしまうのは、歴史の常であるのだという事を直接見るとは知らずに。

 或いは稀代の名刀が、時代遅れの鈍らに堕してしまったとの絶望を、星辰体越しに見てしまった時の如く。

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 己の飛び立った場所に降りて、待機中の親衛隊から称賛の嵐を浴びながら装甲車に乗り特高へ帰還。

 待っていた色鐘からも賛辞を贈られながら教室に戻り、昼食の時間を迎えた頃に食堂へ訪れた__のだが。

 

「「「………………」」」

 

「___、………」

 

 先に着いていた上級生達の内、待機命令の出ていた2-A以外、即ち1-Aと同じ戦場へと出陣した者等全てから、視線を向けられた。

 其処に感謝も憧憬もなく、詰められていたのは不満・嫉妬・諦観・厭悪。表情は一同に暗く、それでいてぶつける正当性が用意できずに抱え込まざるを得ない、複雑な心境を自覚の有無はどうあれ浮かび上がらせていた。

 

「さっ食べましょ英人!今日の素敵な活躍をお祝いするのよ!」

 

「__嗚呼、皆で存分に楽しもうではないか!」

 

 重苦しい空気とその原因に気付いた、と悟られてはいけない。[機械仕掛けの英雄]は、その他大勢の雑兵の嘆きに何ら頓着せず、有象無象の脇役を知らぬ存ぜぬと踏み台にする輩でなくてはならないから。

 

(「……前世を思い出す。」)

 

 戦争形態を一変させる、己が天津下ろしの過程兼代行者用の餌として開発した、新西暦故の人体改造技術、星辰体感応奏者。

 ヴァルゼライドとの契約後彼や宝瓶(アクエリアス)を通してアドラー軍に提供されたが然し、万人志願すれば万人至れる訳ではない。

 

 2人で共に戦い続ける事を誓っていた竹馬の戦友が、片側にのみ適性が存在した所為で待遇や配属先も変化して仲が拗れてしまう例を見た。

 武勇に長けた一族(ムラサメ)に於いて歴代最高峰の強さを有し、愚直に剣を愛し剣に愛されていた筈の男が、適性を持たぬと発覚した所為で嘆き憤り、それでも時代に抗い自らの星に頼らぬ武勇を誇示すべく血統派対改革派の表沙汰にできぬ抗争に飛び込んだ挙句、新時代の兵の力に心折れて一線を引いたという__そんな、星に選ばれなかっただけで脱落した猛者を数多見てきた。

 

 軍事に問わず、技術革新が生じた世界に於ける歴史の常だから仕方ない__等と切り捨てられた際、理屈では納得しきれないのが人の性というもの。

 況してや、第1期生は幻想兵器使い主体の対CE戦のノウハウを構築できていない中、仲間を喪いながらも過酷な戦争に身を投じてきたのだ。己が何ら苦も無く、CEを掃除するが如く浄滅する光景を見せられては、打ちのめされてもおかしくない。 

 

(「__後程、上級生の同志達に伺ってみるか。」)

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 隙ができ次第、同志に自身並びに組内の心中を尋ねるメッセージを送信し、放課後彼等からの報告を確認する。

 

(「__やはり、2-A以外はどの組も無力感と諦観に打ちひしがれているか。残念ながら、予想を覆してはくれぬな。」)

 

 同志以外の胸の内は大概同じで、エース隊員としての誇りを崩し掛けているだの、此れ迄の努力と戦功の意義を疑っているだの、第1期生の一部に至っては「英雄さえいてくれたら同級生と別れずに済んだのに……」と虚しく嘆く者もいた程だ。

 

 一方で同志本人の調子は如何かといえば、[瓊瓊杵維新]の成就や、日本と機関(我々)の勝利に近づいたと喜び意気込んでいる__ものの、中にはそんな自分と、裏側の一切を知らぬまま落ち込む同級生(戦友)との間で溝を感じて思い悩む者も出てきた。

 

 一先ず迦具土神として、直接的にせよ同志の大人を通してにせよ彼等のメンタルケアを図りつつ、彼等に対しても、身近な範囲で周囲の精神状態の安定化に努める事を望むと通達しておいた。

 

(「__場合に依っては、エース隊全体に、刺激を与えてやる必要があるかもしれぬな。」)

 

 ()()()()()()()の存在が齎すであろう、依存や怠慢、存在意義の喪失。

 其れ等を和らげて、人間としての尊厳を懐いて自ら立ち上がり戦い抜く誇りと責務を再構築させる、そんな機会を待望するか、それとも機関(此方)で用意しておく事も考えておこう。

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 5月8日、木曜夕方。前橋市北東の市中ピラーの情報を完全に整理し、()()()()へ進む準備を万端に遂げたのを機に、己は芹沢へとある伝言を申し入れている。

 文章で伝えたい相手はは、親衛隊内の同志が1人、犬塚霧恵。

 通知自体が機関内に於いても秘中の秘となる、その文面は__

 

「我が頼もしき同志、犬塚霧恵。そなたには、“()()()()()()()調()()に於ける出発の偽装工作”を担って頂きたく存じ上げる。己は明日日没後、特高を1人で秘密裏に飛び立ちタケコプターで長野ピラーに接近し、認識力の弱体化を承知の上で単騎破壊の失敗を装い、ピラーへとエクスカリバーを挿入し情報を獲得、そして日本の勝利へと更に歩みを進める所存である。そなたには出発直前にて己と同志のみの状況を成立させて、さも色仕掛けで唆して勝手に長野へと向かわせた、との経緯を取り繕って松本市に到着する迄の時間を稼ぎ、且つ“天道寺英人”の自発性を隠匿して頂きたい。」

 

 長野ピラーを理解し、祖国の勝利を目指すべく密命を下す。

 

「又、本件によりそなたに、そして同志親飼の今後に一切の不利益を齎さぬ事を約束する。両者の取調には何方も機関の同志を宛てがい、そなたには特高追放程度の処罰で済ませ、親飼は元々疑惑程度に残しておいた野党や外国との接触を探らせつつも潔白と結論付けさせ、政治生命に傷を付けぬ旨を保証する。そしてそなたには以後、望むのならば()()()()()()()()使()()として機関を支えて頂く予定である。尚本通達は、事前に同志親飼へと連絡しており、彼曰く「迦具土神と霧恵の判断に一任する」との返答を承っている。そなたの選択を待望する。大和万歳。」

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 5月9日金曜日、天気は晴れ。

 間もなく日が完全に沈みそうな頃、大概己に張り付き好意を主張していた月夜が見当たらなくなった。

 恐らく宗次相手にストレス発散目的で出向いたのだろうが、全く都合良い。尤も普段の観察で、そろそろ向かう頃だとは予測していたのだが。

 

 夜になってから、己はひっそりと階段を降り、背伸びしながら右腕の変換器を見る。

 問題なさそうだ、さて返答によればもう直ぐる筈だが、犬塚は何やら警戒されているのか、同志でなく竜宮が傍にくっついていたのが気掛かりだ。

 

「__あっ、英人さん!」

 

「おォ、霧恵よ、どうかしたの__」

 

 1階で待ち構えていた霧恵は、突進して抱き着いてきて、その目を見遣れば態々涙を浮かべており、耳元へと近付けて__

 

「竜宮は昏倒させ1階トイレに軟禁、直ぐ駆け付けて来るので直ちに出発を。」

 

「感謝する、保障は任せろ、大和万歳。」

 

 彼女は顔を離し、渾身の演技を発揮する。

 

「今まで我慢してたけど、私実はお父さんもお母さんもお兄さんも、友達みんなもCEに奪われてっ!だけど英人さんの活躍を見て思ったの!貴方なら今直ぐにでも憎き奴等を滅ぼしてくれるって!」

 

「おォ、そうであったか!気付いてやれなくて済まなかった!」

 

「ううん、いいの!それよりお願い!みんなの仇を、長野のピラーを倒して、日本を救ってっ!!」

 

「応とも、これより日本を救いに征かんッ!待っておれ長野ピラーよッ!」

 

 振り向き目を合せるのは一瞬のみ、急ぎ外へ飛び出て幻想兵器を発動し、特高を発つ。

 

 総ては日本の為民草の為勝利の為未来の為、そして同志犬塚霧恵の忠義に報いる為に。

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 妙義山上空に到達した頃、変換器から通信が入る。

 

「特高通信隊より報告、色鐘が千影沢からの連絡で起床。又同志犬塚は拘束中__「ご武運を」との伝言です。大和万歳。」

 

「__了解、同志犬塚に感謝と敬意を。己はこのまま松本市へ向かう、。大和万歳。」

 

 __そして、松本市に入り、間もなく長野ピラーを視認する程に近付いてきた、所で、一旦停止し地上を見下ろし目を遣れば。

 

 其処は街()()()

 6年前は他所と変わらず人が住み、行き交いながら音を騒がしく発していた。県の中央らしく活発な経済活動が行われ、自動車も電車も動き、こんな月のない夜でも光に満ち溢れていた。

 

 其処には死の世界が広がっていた。

 路上には無数の骨が散らばり、片付けてくれる者も埋めてくれる者も皆骸と化した所為で野晒しにされている。建築中のビルも伝統的な家屋も、皆等しく寂れて荒廃しているのが見て取れる。そしてまだ夜半ばだというのに、地上は静寂に包まれていて、己の輝きなくば闇黒で覆われていた。

 

「__済まない、大和の民草達よ。せめて己がそなた達の犠牲と無念を、しかと心に刻み付け生涯忘れず、そして奪われた希望と未来に報いるべく、生きとし生ける同胞達と何れ生まれくる生命に永き大いなる幸福を齎してみせる。故に、その魂に勝利を捧げるその日迄、どうか少しでも安らかに眠り給え。」

 

 __十秒の黙祷を終えて、祖国と人類のより良き明日を切り拓くべく、市内中央にそびえ立つピラーへと更に接近する。

 

 そして遂に、長野ピラーへと到着し、エクスカリバーの光を充填。今回は直接討ち滅ぼす為ではなく、そう外から見えるように演出しながらピラーを密かに調査する事が目的である。

 

「__征けッ!エクスゥ、カリバァーーッ!!」

 

 充填の完了した聖剣を振り被って、光線を薄く拡げる。覆われてゆく全長7百m超えの結晶柱、ついでに調査の障害として浄滅してゆく地上の大量のCE。

 

(「3、2、1、__今だッ!」)

 

 剣を構えて光の中へ突入し、ピラーの根本へ一直線に降り進む!

 

「❛エクスカリバーッ、ケラウノスゥ❜!」

 

 叫びながら聖剣を、より鋭く長く大きく更に丈夫にさせてゆき、同時に機能の追加と調整を働きかけ__到着。

 

「征くぞ、長野ピラーッ!」

 

 刺突の構えで勢いよく差し込み、サンプル採取と内部解析を__

 

「ぐゥッ、がぁァァッ!?」

 

 直後、前橋市内ピラーの時と同様に、されど比較にならぬ程激しく、情報と意識の大渦に晒されている!

 

 __絶望が、恐怖が、未練が、快楽が、拒絶が己の心へと直に触れ、跳ね除けんと訴えてくる。膨大且つ多種多様な記憶が幻想兵器を通して、激流として情報処理能力の限界を上回りかねん程に襲い掛かっておる。

 

 拙い、離れろ、接続を断て!このままでは敵の巣で気絶しCEに襲われるか、ピラーに吸収され同化してしまう!

 

 そう本能が警告を発し、頭脳が予測を弾き出し__

 

「まだ、だァッ!!」

 

 敗けてなるものか!たとえ限界を迎えようが、意識の濁流を受け止めようが、その程度で我を失う訳にはいかんのだ!

 ヴァルゼライド(宿敵)との聖戦を果たす迄は、祖国(大和)に今度こそ栄光を捧げる迄は、宗次(好敵手)との誓いを成し遂げ乗り越える迄は__

 

「絶対潰えぬゥッ!勝つのはァッ!己だぁァァッ!!」

 

 その叫びに呼応してか、幻想兵器も脳細胞も、情報の収容が拡張し処理能力も上昇していくのを感じながら、更に深く突き刺し、もつと大量に正確に、抜き取れるだけ抜き取らんと踏ん張り__

 

「迦具土神!相模原の12ヘリ隊接近中、直ちに撤収を!」

 

「__承知した、十分収集できた故離脱する。」

 

 剣を素早く引き抜き、タケコプターを回して飛翔しピラーから離れる。

 

「迦具土神、松本市○○にてヘリ隊が地上に降りて回収予定。尚□□番ヘリを同志が操縦。」

 

「了解、そちらに搭乗すると伝えてくれ、大和万歳。」

 

「……通達しました、そのヘリが担当しますので報告は中で頼みます、大和万歳。」

 

 通信が終了してから数分後、指定の場所で待機している第12ヘリ隊が視界に映り、地上に降りて回収される。

 

「高天原より天下りて。」

 

「火之迦具土神の星へと集わん。」

 

 運転手と挨拶を交わし、此方から特高の通信隊へ繋げる。

 

「此方迦具土神、無事搭乗。特高到着後、挫折を装い例の間に閉じ籠もって情報の整理解析に専念する、大和万歳。」

 

「了解、校長含め特高内全同志に通達する。部屋の準備は抜かりない、大和万歳。」

 

 通信を終えた所で、情報処理途中につき展開し続けていたエクスカリバーを、一先ず解除する。

 此の時に向けて、建設業者に極秘に造らせた空間を、遂に用いるのだ__と考えながら身体を暫し休ませていたら。

 

「__迦具土神、後3分で特高到着です。どうか疑われぬようお気をつけ下さい。それと改めまして、長野ピラー調査任務、お疲れ様でした。」

 

「有無、此方こそ夜中に付き合わせてしまい申し訳ない。せめてもの詫びとして、後で部隊全体に残業手当を支給する。」

 

「感謝します。此度の出動が、一時の弱体化と引換えにしてでも日本の勝利に繋がると信じております。大和万歳。」

 

「応とも。必ずや、貴官等の苦労にも、そして6年間に於ける無辜の民草や自衛官達の犠牲にも報いてみせる、大和万歳。」

 

 そう告げて、無事に第12ヘリコプター部隊が特高の校庭に着き、開く扉から降りる。

 待っていたのは、仮眠中に起こしてしまった色鐘、宗次との会話を中断させてしまった月夜や機密保持目的とはいえ事後に知らせてしまった同志達1-Aであった。

 

「……あ、英人!いったい何処に__」

 

「……………」

 

「お、おいどうした!?そっちは校舎だぞ!」

 

 本来なら皆に迷惑を掛けてしまったと謝罪すべきなのだが、申し訳ない気持ちをおくびにも出さぬよう、一直線に校舎へと走ってゆく。

 他の一切に目をくれることなく向かう先は、校庭との出入口から左奥にして1階の隅にある「避難用扉」。

 色鐘等に捕まる前に開けて照明の点いていない通路に入り、十歩先にて右側の壁のドアノブを掴み入室して内側から鍵を掛け、照明を点ける。

 

 其処は特高に災害等が生じた際のシェルター__にして、機関専用の隠し部屋に繋がる空間である。

 中には水や、6年間愛用していた長期保存用固形栄養食を保管、特定の手続で天安河原に接続可能なPCを設置、更には地下に降りる為の隠し通路を用意してある。

 

 __さて。此処で暫し今夜の収穫を整理・分析しピラー研究の進展に励むとしよう。

 

 奪われた希望に報いる為に、弔わすらされず捨て置かれた骸の山を背負いながら、犠牲()繁栄(笑顔)に変えてみせる。

 

 __故にエース隊(兵達)へ願う。存在意義の喪失に打ち拉がれる余裕が、常にあると思うなかれ。

 英雄()が戦えずとも、怠けて挫けて護国の役目から背いてはならぬぞ。敗北や屈服の罪深さ、大いなる力や民草の守護の重責、弱さを承知で脅威に立ち向かう理由、然と心得よ。

 

 祖国と民(大和)は、唯一無二の決戦存在に依存せずに自立し抵抗できると信じているのだから。

 

 





 感想や指摘に質問等、何時でもお待ちしております。

 次回はこの話の裏側を、宗次ともう1人の視点で描く予定です。

1話分に於いて、小説本文の文字数が1万超えとなる場合

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