英雄《しゅやく》になれぬ筈の槍使いと英雄《しゅやく》に至りし太陽《くろまく》   作:MOGOLOVONIO

46 / 82

 皆様、あけましておめでとうございます。令和6年初投稿となりますが、今年も連載頑張ってゆきます。

 そして、元旦からの震災や空港の事故等でお亡くなりになられた方々やその遺族の方々にはお悔やみ申し上げます。


 ノン(以下略)ですが、今回は何時もの感想会と異なり、番外編と称して本編最新話より数時間後の、とある迦具土神機関同志達の会話を、第三者視点で描写させて頂きます。



【護国の剣神と兵達の英雄譚・第5章❲誰が為に逢魔ヶ時来たれり❳】+番外編其ノ壱

 

  嘗て無辜の人々の営みで栄えており、6年前からは災厄の根源と化した松本市、其処へ遂に英人は辿り着いた。

 その地に自ら齎した闇黒と静寂と無数の髑髏の中心で聳え立つ、禍々しい7色の光を放つ8角柱の結晶体。

 

 スカイツリーすら超えるその巨大結晶こそが、人類の敵CEを生み出す元凶、ピラーであった。

 

「__お亡くなりになられた同胞達よ、申し訳ない。まだ今の己では、皆の無念に応えてやれぬ。」

 

 それは正確な自己分析に基づく謝罪であった。大量のCEを容易く浄滅してのけた英人のエクスカリバーは、然し眼前の元凶に対し撃破するには無力であり、傷1つ付ける事すら能わぬと、冷徹に限界を把握している。

 それ故、直ぐにでも祖国と人類の仇敵を打倒したくとも、決して叶わぬ己の不甲斐無さを物言わぬ骸へと詫びる他なく__

 

「よって、今夜はせめてこの結晶柱を徹底的に調べ尽くし、奴等を深く知り何れ齎す我等の勝利へと繋げてみせるとも。それでどうか妥協して頂きたく願う。」

 

 否、態々英人が、一部の協力者以外に何も言わず無断でこんな夜に特高を抜け出してまで訪れたのは、死者達への追悼と長野ピラーの視察だけではない。

 

「征け__エクスゥ、カリバァーー!!」

 

 聖剣から発射された光は、試合や2度の戦場にて放った黄金龍の如く、必要最小限に細められ標的のみを飲み込むよう丁寧に操縦された光線ではなかった。

 

 その光景を例えるなら、光の洪水であった。地上で屯する大量のCEを浄滅し得る程度に、薄められ拡げられた黄金光が、生きる巨塔に浴びせられる。

 

 されどピラーは、何事も起こらぬかの様に健在である。然し英人は聖剣から流し込みながら、想定通りの現状を見据え続け__

 

「3、2、1、__今だッ!」

 

 剣を構えて光の中へ突入し、ピラーの根本へ一直線に降り進む。

 

「❛エクスカリバーッ、ケラウノスゥ❜!」

 

 叫びながら聖剣を、より鋭く長く大きく更に丈夫にさせた。

 更に同時に、接触した物体の構造や成分の測定及びピラーを構成する物質の採取機能を追加し調整を働きかけて、到着した。

 

「征くぞ、長野ピラーッ!」

 

 斯くして英人は、CEとの戦いに決着をつける為ではなく識る為に、刺突の構えで勢いよく差し込み、サンプル採取と内部解析を挑み__

 

「ぐゥッ、がぁァァッ!?」

 

 直後英人の脳内へと急激且つ大量に何かが流し込まれ、前橋市内ピラーの時と同様に、されど比較にならぬ程激しく、情報と意識の大渦に晒されてしまった。

 

 __絶望が、恐怖が、未練が、快楽が、拒絶が英人の心へと直に触れ、跳ね除けんと訴えてきて。膨大且つ多種多様な記憶が幻想兵器を通して、激流として情報処理能力の限界を上回りかねん程に襲い掛かってきた。

 

 拙い、離れろ、接続を断て!このままでは敵の巣で気絶しCEに襲われるか、ピラーに吸収され同化してしまう!

 

 そう本能が警告を発し、頭脳が予測を弾き出し、故に英人は已む無く中止せざるを得ない。

 ……天道寺英人が、真に祖国と民草と未来へ全霊を捧げる()()()()()でなければ。

 

「__まだ、だァッ!!」

 

 敗けてなるものか、たとえ限界を迎えようが、意識の濁流を受け止めようが、その程度 で我を失う訳にはゆかぬ。そう決意して、気合と根性を溢れんばかりに振り絞り抗おうとしたのだ。

 

 何故斯様な無理無茶無謀に挑んだのか、そんな問いは愚問だろう。

 如何なる苦難が立ち塞がろうと、祖国に光を齎し導き数多の犠牲や希望に報いる迄は、宗次(好敵手)との誓いを成し遂げ乗り越える迄は__

 

「絶対潰えぬゥッ!勝つのはァッ!己だぁァァッ!!」

 

 その叫びに呼応し、頭脳も幻想兵器も覚醒を果たして、情報の収容が拡張し処理能力も上昇していきながら、更に深く突き刺し、もつと大量に正確に、抜き取れるだけ抜き取らんと踏ん張り、遂に__

 

「__よし、エクスカリバーの容量限界迄必要分収集できた。敵に囲まれん内に離脱し撤収せねば。」

 

 そう判断し剣を素早く引き抜き、タケコプターを回して飛翔しピラーから離れ、特高への帰路に向かった。

 

 

 この出撃は、結果として“英雄の放つ浄滅の光でさえも長野ピラーには通用しない”という絶望や失望を、何も知らずに監視していた一部の者に齎し、それにより英人が幻想兵器使いとして一時的な弱体化に陥る事態も招いてしまった。

 

 それを、日本の勝利が遠のきかねないリスクを承知で挑んだ英人の内心は如何程かというと。

 

「__済まぬなエース隊の皆よ。己は此度の分析に専念する故暫く戦えん。だが信じておるぞ、貴官等ならば如何なる不測の事態が生じようと、護国護民の責務を全うできると。」

 

 戦友達の実力と誇りを信頼し、一騎当千の英雄が不在でも必ずCEの脅威から守り通せてみせる筈だと託す想いに満ち溢れていた。

 

 

 __英人は予感していた。長野ピラーから得た成果が、意識を奪われ悠久の眠りに閉ざされた世界中の人々を解放するのに役立つ事も。自分のいない戦場でまたも好敵手が武功を挙げる事も。

 

 ()()は知らない。その好敵手の武功は単なる槍働きのみならず、絆と知恵と歴史に基づく采配である事も。

 __敵の理解による祖国の勝利という大義の裏で、新たに希望が奪われ嘆きを引き起こす事も。

 

======================

 

「~~と、あくまで貴女の存在は出さず自己判断で飛び出した扱いになるでしょうね。」

 

「それが天安河原からの通達ね、了解。」

 

 夜道に溶け込みながら走る黒塗りの護送車内、両手を手錠で繋がれた少女が、見張り役として右隣に座る迷彩服の女性へと頷いた。

 

「それにしても良かったな、迦具土神が無事に帰還できて。収穫もたんまりあるそうだぜ。」

 

「当然よ!我等が同志、日本と人類の未来を切り拓く英雄だもの!」

 

「立場も行動も英雄って感じじゃないけどね。親飼代議士を取り込んだ手法は聞いてるわよ?」

 

「確かに否定はできないわ。だけどそれでも、おじさんの悪事を止めてくれた上に贖罪の切っ掛けを与えて下さったのは事実だから、今でも感謝しているの。」

 

 左側に座る女も、運転する男も深夜のドライブを楽しむが如き空気を構成している。

 

 

 日付変更線を過ぎた頃、特高は「職責と規則を破ると知りながら立場を濫用し天道寺英人に色仕掛けで無断出撃を唆した為に拘束した犬塚霧恵」について、防衛省の諜報機関で取調に掛けるべく東京都へ秘密裏に届ける決定を下した。

 非常事態の報せで起こされた芹沢校長は特高職員として働く自衛官から、運転手1名と見張り役として女性2名を指名した。そして犬塚は手錠のみならず、自害防止の為猿轡も咬ませられ目隠しもされた状態で、此時の様な取調を要する重大な違反者が現れた場合に備えた専用の車に乗せられ、特高を出発したのであった。だが__

 

「やっぱ猿轡ってキツいのか?見てたら息苦しそうだったけど、あれは演技だったりして。」

 

「まさか。迦具土神の命(大義の為)でなければ一生御免よ。」

 

「承知とは思いますが、降車時には目隠しもよだれ付きのコレも装着して下さいね。」

 

「分かってるわよ。はぁー、やれやれ。出迎え全員が同志じゃないって面倒ね。」

 

「流石に仕方ない話だけど、態々泥被って学生生活からも迦具土神様の下からも離れる決断しときながら、歓迎されないばかりか白眼視されるのは堪えるてしょ。」

 

「どうせクラス内の同志の誰かがやらざるを得ない()()だし、前線以外の仕事もあるそうなんで心配ご無用。」

 

 車内に居るのは全員が迦具土神機関の同志。年齢・性別・立場・出身、そして加入経緯に序列無く、故に到着迄対等に気軽に談笑する。

 

「しっかし取調*1っていったらカツ丼でも出るのかねぇ、前に親のビデオで昔の刑事ドラマ観てたら美味そうな料理出てたけとも。」

 

「いやアレ実際の警察では出しませんし、女の子に朝食で食べるには重過ぎますよ、ねぇ。」

 

「そうね。食べるならドライフルーツ入りコーンフレークとアロエヨーグルトがいいわ。米は当分やめてほしいの。」

 

「……あぁ~、A組だけ和食縛りだったっけ。でも一流食材を一流料理人が飽きないよう工夫して提供してんでしょ、羨ましいわ。」

 

「それでも毎日3食よ、元々コーンフレークが大好物なのに入学からずっと会席料理……事前に知ってたし贅沢だって自覚はあるけど、和食は値段品質問わずでもぉうんざり。」

 

「ホントに贅沢だな、迦具土神を見習えよお嬢様。今夜から研究し尽くす迄、食事はアレのみだぜ?毎日コンビニおにぎり生活とどっちか選べと言われりゃ断然後者だって位の。」

 

「同感です。味無し匂い無し彩り無し、費用と栄養と保存性だけが取り柄の固形食……幾ら非常用シェルター常備の食料とはいえ……」

 

「……その辺迦具土神に聞いてみたら、「安心せよ、少なくとも己にとってはアレで十分だ。というより6年前から食べ始めたが結構気に入っておるのでな、“人”生で至上の好物と言っても過言ではない位だ。」……っさ。」

 

「えぇ……何時もの高級料理より〜?てか隔離前の迦具土神様の食事ってどんなんだったっけ?」

 

「新町からの付き合いだって言う同志秋葉から聞いたんだがよ。……駐屯地内では隊員と同じ飯、その前は避難所の炊出し、そんでC天道寺家で普通に暮らしてた頃は普通に美味い家庭料理、だとよ。刹那()も同じこと言ってたし間違いない筈だぜ。」

 

「……それらよりもお気に入りの食べ物が……ね。迦具土神の味覚センスも私達を超えているのに、効率性最優先の姿勢には敬服するわ。」

 

 そう言い終えた所で少女は、オレンジジュースを飲み干してストローから口を離し、前方へと声を掛ける。

 

「そういえば貴方、同志秋葉とは仲良いの?」

 

「ま~な、出逢ったのは特高に配属からなんだが、気分落ち込んでた際に奢ってくれたのを機に、特高職員としても同志としても世話してくれたのさ。それに俺、あの人から機関(此処)へ誘ってくれたんだぜ。」

 

「それは初耳でした。特高やエース隊の通信系統業務全般に加え、同志としても情報の収集・秘匿・改竄や特高内同志の連絡網に外部との中継、此等一切を統轄する立場として敬意を懐いておりますが。」

 

「……同志秋葉、ねぇ。あたしはちょっと……」

 

 その発言により、2名が後部座席左側へと顔を向け、運転手も聞き耳を立てた。

 

「え、い、いや、別に嫌ってはいないわよ。ただ、何となく……迦具土神様と気が合うってゆうか、気に入られてるってゆうか……」

 

「……あぁ、それは組内同志(こっち)も感じてるわ。傍にいてるとな〜んかあの人には特に心を許してるっぽいもの。」

 

「やはり役職の重要性でしょうか?それとも、新町からの付き合いな上に、確か聞いた所初めての同志だそうなので、それもあるとか。」

 

「……う〜ん、なんつーかそんだけじゃないって印象だなぁ。実は最近その辺質問したんだけど、その際ははぐらかされて、次の日顔を合わせた時言ってきたんだよ。」

 

「「何を??」」

 

「「表裏の任務に支障を来さぬ限りで迦具土神の秘密を察せたらいいだろうな。」……だってさ。」

 

「……秘密、です、か?迦具土神は国内外の様々なスキャンダルや機密情報を把握し、機関の暗部も掌握しておりますが……」

 

「いんやそんな大層なもんじゃない……らしいぜ。「秘密と言っても知って何か変わる訳でも、直接的に立場が上下する訳でもない、単純に明かす必要がないからバラさないだけの話だ。祖国の勝利の暁には同志全員に告白するそうだし、面倒なら気を長くして待ってればいいんじゃないか?」ってさ。」

 

「……何それ?知っても知らなくてもどうでもいいけど知ったら仲よくなれる、的な?」

 

「クラスで共に過ごしてるけどそんな感じの秘密の当ては思い浮かばないわね……」   

 

「一体何でしょうかね?ヒントとかも聞かれました?」

 

「全く。限られた機会で見抜けなきゃ認められないだろうって返されて、それでおしまい。……どんな秘密だろうな。」

 

「う〜〜ん、……少なくとも到着迄には絶対出ない問いね。」

 

「あ〜あ残念。後々分かったら私にも教えて?」

 

「どうやってだよ?外部との連絡は同志秋葉や当の迦具土神に検閲されっから下手な考察は伝えらんねぇし、そもそもこんな遣り取り認めてくれるかも怪しいぜ。」

 

「……そうね、ま、何れ迦具土神が教えてくれるならのんびり外で待ってるわ。」

 

「志願しない限り、きっとのんびりもらえないと思うけど。……ところで、さっきから俯いてどうしたの?」

 

「ん?……嗚呼、秘密について考えていたのですが、ひょっとしたら……」

 

 女性が顔を上げた瞬間、今度は後部座席右側へと注目が集まった。

 

「「「ひょっとしたら???」」」

 

「………我等が同志迦具土神は、“天道寺英人”は、文字通りの“機械仕掛け”ではないでしょうか!?」

 

「「「………は???」」」

 

「いえ、実は”天道寺英人“という存在は政府が秘密裏に生み出した、対CE戦用の人型生命体か何かで、食事の嗜好も人間と感性が違ってて、深謀遠慮もコンピュータを埋め込まれたからで、幻想兵器の適性の高さも予め調整され……たか……ら………」

 

「「……………」」

 

「そういやあんた、SF好きで前の休暇も雑誌買いに付き合わされたのよね。それで並んでた際物書きが趣味だって。」

 

「………別れの時に備えての冗談ですので、つまらなければ忘れて、下さい……お願いします……」

 

「「………」」

 

 現在、東京都内国道。目的地に到着する迄後8分。

 その残り時間は、到着間際の挨拶以外、終始無言であった。

 

 

*1
トレーニング機器や幻想兵器の特訓スペースに学習教材、テレビやDVDに漫画や小説の揃った快適な秘密部屋に籠もりつつ、機関の指示を受け取り内容次第では同志以外にバレぬよう抜け出すこととなる。





 感想や質問に指摘等、今年も募集しております。

 それと、次回から新章突入致しますが、其処では英人視点を主に描く今迄の形式から変更します。
 詳細は第4章をお待ち下さい。

1話分に於いて、小説本文の文字数が1万超えとなる場合

  • 前半後半等と文章を分割すべき
  • 制限内なので1話分として投稿してもよい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。