英雄《しゅやく》になれぬ筈の槍使いと英雄《しゅやく》に至りし太陽《くろまく》   作:MOGOLOVONIO

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 お待たせ致しました。
 今話は、5/19(月)夜→5/18(日)という流れでお届けします。



第27.5話 密かな娯楽と淤能碁呂征典(オノゴロセイテン)

 

「__そうか、武士が、姉上が装着する予定であったアレを要求したか。」

 

  今夜も己は、布団に包まりながら通信隊と連絡する。今回は、放課後宗次と平坂の黒檜山捜索への準備を兼ねたデパート内デートの話であった。

 

「正確には、本人がダメ元で聞いてみただけだったのを保科が前向きに貸し出せると約束した流れだがな。しかも本気ならしく、帰還後は許可取る為に書類探し始めてたぞ。」

 

「ほう、姉上並びに()()の遺品でもあろう筈で、個人的にも他人に預けたがらぬとの見込みであったが、いやはや。」

 

「現状2()()しか製造されていない希少品*1、“非業の死を遂げた最初の英雄”発案の装備の継承、〈機械仕掛けの英雄〉の特別性を損なう対応だ。潰すのは容易いが……」

 

「否、宿敵戯曲の好機なのだ、通るよう働き掛けねばなるまい。」

 

「だろうな。捜索に間に合わせておくか?」

 

「……いいや、まだ暫く先延ばしにする。もっと宗次の技量が、適性レベルが、周囲からの信望が、エース隊内で隔絶する程に成長してからが相応しかろう。」

 

「了解。お披露目会は後で取っておく訳か。武士の奴、本当に可哀そうな程随分な人気者だこと。今日だって、保科だけでなく、クラスメイトの女子1名、エース隊指揮担当の3年、“英人の幼馴染”と偶然出逢い、内2名は女の戦い軽くやって、“千影沢”はプレゼントの推薦した、というのが監視カメラや現地の同志から窺える今日の流れだ。」

 

「全く聞いていて飽きぬな、宗次の日常は。何れ作成する際に向けて、この日の記録も取っておかねば。」

 

「然しまさか、保科が1年生徒に惚れ込んだ上に、幾ら人外除き最強のエース隊員だからってベルト型の供与まで言及するとはな。色鐘三佐よりはまだまともだが、彼奴も一回り年下がタイプだとはな。」

 

「大した問題ではなかろう。在学中の交際は見過ごせんが、()()の手によりピラーを征服して、特高が役目を終えて解散すれば、両者は“先生と生徒”の関係から解き放たれ色恋に励んでも咎められんよ。色鐘の性癖とて、手出しに及ばぬ以上は合法なのだ、気にするな。」

 

「……お前に比べりゃそら些事に過ぎんわな、この()()()()()()()()が。」

 

「おや、何とも酷い言われようだな。己は平坂と同じく、同学年同年代だというのに。」

 

「惚けんな、2度も相対的に見れば赤子同然な年頃の野郎に魅入って今でもご執心な癖に。前世にせよ入学後にせよ、しつこい位に英雄譚(惚気話)聞かされてんだぞ。」 

 

「仕方なかろう、人類(ヒト)の輝きとは時代も年代も問わず大概心を惹きつけるものなのだから。よもや己までその例外ではなかった、のは四半世紀経った今でも意外に感じておるが。」

 

「そうかい。頼むから節度を持って、そして武士本人を視て接しろよ。あくまでも宗次__」

 

「は宗次であって、ヴァルゼライドに非ず、だろう?念押しされずとも当然常に心得ているさ。では切るぞ、大和万歳。」

 

「おやすみ、迦具土神。大和万歳。」

 

 通信を切断し、好敵手の愉快なドラマに思いを馳せ__

 

「それにしても、月夜が公共の場で宗次と接触するとは……」

 

 彼女に課せられた任務の遂行を揺るがしかねない行動、余程ストレスが溜まっている、否掛けさせてしまったのかと、昨日の動向を反省する。

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 昨日の朝、己は寮棟ロビーにて__

 

「これより己は、街へ遊びに出掛けるぞ!」

 

「「「……え、えぇぇーーっ!!!???」」」

 

 と宣告した。当然、まだ〈機械仕掛けの英雄〉を公の場に出して醜態を晒そうものなら民草からの認識力蓄積を阻害し、また外界の刺激により自己陶酔に水を差す恐れが大きいと判断したのだろう。事前に通達していた同志含め、その場の皆から止めるべく婉曲的表現を浴びせられたが。

 

「いいやどうしてもだ!出掛けたいから出掛ける!あ、そうだ、タケコプターで飛んで往こう!」

 

 と言ってやれば、皆が焦燥を必死に隠しながら(或いは非同志グループへそう見えるよう装いながら)、「己と共に遊びたい(から普通に手続取って地上で行き監視しよう)」と対応を変え(賛同し)、が己に悟られぬよう気配を抑えて色鐘へ連絡し、そうして(芹沢や寮長達には根回ししていたので)無事に外出許可証を得て、一部の親衛隊員を休息兼予備に寮棟へ残して、バスで外出したのだ。

 

 そうして、CEの脅威が差し迫っているせいで、県庁所在地としては人通りが多くない、前橋市の商店街に着いて散策し__

 

ドンドンッパチパチッ

 

「おい見ろよあれってもしかして!」

 

「あー!☽☽じゃない!?それに□□も!」*2

 

「「「__!!!???」」」

 

 と事前に潜ませていた同志や録音カセット等で、非同志組の注意を引き付け、その隙に己と一部の同志は沸いた人混みに紛れその場を抜け出していった。

 

 それから己達は、喫茶店を装った指定の待ち合わせ場所に入り込んだ。

 

「いらっしゃいませ。お席へどうぞ。」

 

「オレンジジュースかミルク、最悪水を1()()頼む。」

 

「畏まりました。」

 

 共に入店した2名が椅子に座り、己は地下階へと下ってゆき、鋼鉄製の扉のダイヤルキーを、“2・5・7・8”と回して入室。

 

「高天原より天下りて。」

 

「「「火之迦具土神の星へと集わん。」」」

 

 先に入室し、テーブルを囲み座る同志達と、向かい合ってお互い会釈した。

 

「直で逢うのは初めてであるな。己は迦具土神もとい天道寺英人、態々貴重な時間を取らせた上にお待ち頂き、申し訳ない。」

 

「いえ、私もついさっき到着したばかりですし、お構いなく。」

 

 P研究所*3研究主任、九条美春と。

 

「此処の全員、密会するのも大変苦労するのだ、仕方なかろう。」

 

 現陸上(岩塚)幕僚長の副官、山崎以蔵と。

 

 他にも警察、政界、マスコミ、更にはCE教団幹部と、各々に根付かせた同志の中から指定した方々に対し握手と挨拶を行い、唯一空いていた椅子へ座って語り掛けた。

 

「さて、改めて申し上げよう。皆、多忙な中内密に集まって頂き、誠に感謝する。此度の会合にて汝等と相見えたこと、光栄に思う。……では早速、現時点に於ける瓊瓊杵維新の目標を、再度宣告しよう。」

 

 皆の固い表情を見回して、己は一度頷き語り掛ける。

 

「〈機械仕掛けの英雄〉の成熟並びに淤能碁呂征典の実用化を以て、地球上全てのピラーを我が国が掌握・改造、そして独占する。これにて日本は、CEを攻略し、他の人類種国家にも優位に立てるだろう。」

 

「……独占、ですか。」

 

「左様。先ず、己が淤能碁呂征典を長野ピラーに挿入し、生態も性質も、内部に囚われた人類種の意識も、外部に送り出したCEも須く制御下に置く。」

 

「「「………」」」

 

「次に、()()()()成し遂げた、CEの鎮静化及び昏睡者の復活という成果を全世界に公表し、プログラムを各国に売り込む。幾ら救いの手であろうがそれを差し伸べているのが国家である以上、二の足を踏む国も現れようが、その際はサイバー空間やCE教を通して同意させるべく働き掛ける。」

 

「……現地国の、昏睡者の魂を人質にでも?」 

 

「流石に国内外の評判を貶め、余計なリスクを背負う故、確実に全員解放させるとも。兎に角こうして日本国は、汎ゆるCEの脅威を鎮め、眠り続けていた人々を目覚めさせた救世主として国際的な威信を強め、そして。」

 

「「「………」」」

 

「我が国は各地のピラーから、魂魄解放前に読み取った記憶(情報)、結晶塔の内側を調整して幻想再現器(シミュレータ)として活用することで得られる科学的知見を、自国へ接続させ操作・吸収し、これを秘匿する。以上が、現状想定されるピラーの活用法にして、瓊瓊杵維新の和了(アガリ)である。質問を許可する。」

 

 そう告げて、手元の砂時計をひっくり返せば、最初に美春が手を上げた。

 

「……淤能碁呂征典の実用化についてですが、あくまで誰であれCEの迎撃を気にせずピラーに接触できる、との前提に基づいての質問ですが。プログラムを使用可能な者を、迦具土神(ヘロス)だけに限るのか、幻想兵器使いなら適性レベル問わずとするか、非幻想兵器使いでも挿入できる位にするのか、汎用性に於ける目標レベルをお聞かせください。」

 

「できれば非幻想兵器使いでも可能に、だな。己が直接挿入に臨めない事態は十分あり得る。とはいえ、優先すべき課題ではない。最低限、己だけでも扱える程度に仕上げてくれたならば有り難い。」

 

「ありがとうございます。」

 

 次に挙手したのは、山崎であった。

 

「ピラーの制御、CEの鎮静化と言ったが、その口ぶりからするとピラーそのものだけでなく、尖兵たるCEも自在に、それこそ自衛隊員の様な()()、とは別の兵士として運用することが可能である……、そう言外に唱えたと受け取ってしまったのだが、間違っているか?」

 

「……己もCEの兵士化(その活用法)は思案した、が結論から述べると、目指さぬ方針に決めた。理由は後程天安河原に乗せるので、確認してから問うてもらいたい。」

 

 ……CEを戦力として運用するには、ただAIを搭載するが如くプログラムを入力するだけでは足らぬ。その為には、CEの内部へ認識力の源兼操縦を務める装置が__人の魂が必須となる。

 然し先ずCEへ魂を転入する技術が求められ、そちらは演算する取っ掛かりさえないのが現状だ。

 仮に生み出せたとして、用いる魂魄自体は囚われた者等の内還るべき肉体()を失くした分で数を賄える。が、彼等の大多数は平凡な市民であり、鍛え抜かれた自衛隊員や警察官が居ても精神性は人の域を出ぬだろう。彼等をCE(結晶体)に移そうものなら__果たして認識力供給と操縦を可能とする程自我を保てる者が、指分も確保できるかどうか。しかもCEの体で日本や民草に仇なす不良品は当然現れよう。そして自我を維持し暴走せぬ個体が奇跡的に存在したとして、それが兵士・兵器の役割を過不足なく担えるとは考え難い。おまけに他国のピラー__現地国の人間の魂を用いれば、当然彼等の国彼等の故郷を優先し日本の国益さえ害するのは目に見えている。

 さりとてCEをピラーから中継し操るのは、出力・燃費・負荷の面から非現実的で、一定の行動原理を課した上でCE毎の個性を解放させ働かせるのは、自我や反発の芽生えにより暴走を招きかねん。

 

 ……といった事情を省いて伝えれば山崎は。

 

「……了解した。では後日拝見するとしよう。」

 

 納得して頂き、他の面子も考え込む表情を見せた。

 

 その後も、予定されるXデーの期日や計画の現実性、遂行に向けて自分や組織の為すべき仕事等を尋ねられては答え、やがて砂時計の砂が全部落ち切った所で起立した。

 

「済まない、もう時間が来てしまった。己はこれから地上へ戻る。皆は協議なり雑談なり、或いは帰るなり自由にやってくれ給え。再三申し上げるが、唯でさえ多忙且つ重責な本職の裏で、こうして同志として勤め上げて、共に祖国の勝利という大義へ邁進して頂き、本当に感謝している。それでは、大和万歳。」

 

「「「大和万歳。」」」

 

 そう別れを告げて1階へ上がり、待機中の同志から親衛隊の捜索状況を聞き、所在を非同志組の多数から悟られぬよう移動し、途中()()()()()()()()()()()し……

 

「おっと、皆、随分騒がしいがどうかしたのか?」

 

「「「……っ!!!???」」」

 

 と素知らぬ顔で捜索中の月夜等の所へ姿を現せば、

 

「「「__あ、英人(君)(さん)!!!」」」

 

 怒りや不満を必死に抑えながら、愛しい探し人に出逢えた喜びに溢れる笑顔を取り繕う彼女等へ、その技量と気概を内心称えつつ抱き合い、全員揃って特高へ帰還した。

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

(「……いやはや、宗次には本当に感謝せねばならんな。」)

 

 戦場では言わずもがな、平時に於いてもクラスの精神的支柱となり、1期・2期生からも頼りとされ、月夜や保科に対しても日々のストレスを和らげる拠り所を担ってくれている。

 間違いなく、宗次は世間的には兎も角、少なくとも特高・エース隊に於ける()()には確実に至る、旧西暦21世紀の武士(もののふ)であり……

 

(「より一層、負けてられぬな。己も己の為すべき使命と責務を果たし、好敵手に相応しき勝者たらねばいかん。必ずや、瓊瓊杵維新を完遂してみせよう。」)

 

 祖国の為に民草の為に、光の為に未来の為に、同志の為に好敵手の為に……

 

(「如何なる大国もCEも脅かしてこようが、勝つのは、己だ。」)

 

 そう独り言ちて、眠りに就く。

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 その翌日夜。

 

「武士が模擬戦闘で装甲消失させたぁ!?」

 

 よもや、自分の行いがちょっとした衝撃を伴い返ってくるとは思いも寄らなかった。

 

 

*1
元々、腕輪型だけを影山が用意していた理由としては、手首から脈拍などのバイタルデータを取り、使用者に異常が無いか調べる為に過ぎない。刹那の発案が通り彼女が無事なまま幻想兵器使いの数が増していけば、ベルト型変換器も量産されていたかもしれんが、彼女のMIAと[機械仕掛けの英雄]に基づく3年間に及ぶ幻想兵器使いの不在に於いて頓挫した。エース隊発足後も、隊員には時間稼ぎが求められ多少であっても戦闘の支障を無くすベルト型は活躍の場を与えぬ様に、また己にとっても例外ではないが特撮風の装備だと一部の層にしか外見的評価を得られず万人受けする形ではない、として既存の腕輪型1種のみが提供されている。

*2
非同志組の本来の名前や出身地等は全て把握しているが、それらの情報は当人の隙を生むのに効果覿面だ。その上で、自分を呼んでいる訳ではないと思わせる工作も備えておる。

*3
某所に建造した、機関の有する保管・研究・開発施設。政府等表社会に知られている施設がCEのコアを取扱うのに対し、此方はピラーのコアを収集・分析する世界初にして唯一の場所。





 感想や質問に指摘等、何時でもお待ちしております。

 [淤能碁呂征典]の名前の由来は、日本神話出典の淤能碁呂島(オノゴロトウ)というイザナギノミコト&イザナミノミコトが国生みにて最初につくり出した島になります。
 何故その島を採用したかといいますと、どうやら其処が現実の日本に於ける淡路島辺りではないかとされ、島から「水晶」が採れる、との情報を見つけたので、迦具土神壱型の由来となる日本神話や水晶じみた外観のCE・ピラーに因みました。

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