英雄《しゅやく》になれぬ筈の槍使いと英雄《しゅやく》に至りし太陽《くろまく》   作:MOGOLOVONIO

60 / 82

  大変遅くなり、申し訳ございません。

 執筆に用いていたメモアプリが、突然使えなくなり急遽別の所に、今回分を改めて書き直す羽目になってしまいました。現在そのメモアプリは使用不能なままですが、新たなアプリでは今の所問題なく扱えております。



第29.5話上 救出前と夜話

 

  大沼の前に停めた指揮車の中で、32分隊と通信しながら、慌ただしく手元のノートパソコンを操作する京子の横で、緊急の判断に悩んでしまう。

 

(「どうする、ヘリを救助に回して間に合うか?」)

 

 大沼から彼等の現在地まで、直線距離なら3㎞もなく、時速250㎞を超えるUH-60Jならば、2分と掛からず到着可能である。

 

 だが問題は、救助にかかる時間だ。

 森の中であり、丁度良く着陸できる広場がない以上、空中にホバリングで浮いたまま、ワイヤーを下ろして1人ずつ吊り上げる事になる。どんなに急いでも、1人あたり3分は必要であろう。

 32分隊は12名、UH-60Jが二機だから六名ずつにしても18分、難度は上がるがヘリの両側から同時に2人ずつ吊り上げるにしても、9分はかかる計算だ。その間、CEが大人しく待っているはずもない。

 しかも、黒檜山に現れた新たなCEは、従来とは全く異なる物理的な攻撃を仕掛けてくる相手。つまり、救助中のヘリを落とされるという、最悪の危険性が高かった。

 

(「人類の有利が、また一つ無くなったか。」)

 

 足元を切り崩されていく様な悪寒を、どうにか必死に耐える。

 

 CEは脆そうな結晶状の見かけに反し、戦車砲でもなければ砕けない、異常な固さが厄介なものの、攻撃の破壊力が低いという弱点があったからこそ、人類は6年間も耐えられていた。人を意識不明の昏睡状態にする光線も、装甲車や戦車ならば容易く弾けるし、ビルなどの中が狭く頑丈な建物に立てこもっていれば、隠れてやり過ごす事も可能であった。

 実際、6年前に長野県松本市にピラーが現れた時、一度はCEに占領された長野市を、自衛隊が決死の作戦で取り戻した所、逃げ遅れてビルの中にずっと隠れていた女の子が保護されたという事があった。

 そんな、厚い壁や装甲に守られていれば安全だ、という昨日までの常識が、両刃の結晶剣によって切り裂かれてしまった。

 

(「何故、こんな急激に進化した?」)

 

 6年間、全く変化のなかったCEに、正二十面体型という新種が現れてから、まだ1ヶ月も経っていないのに。

 

(「考えられるとすれば……いや、今はそんな事を悩んでいる場合ではない。」)

 

 必死に逃げ続けている32分隊の生徒達を救う為、一先ず余計な思考を追い出し、素早く決断を下す。

 

「北ルートを探索中の第0分隊をヘリで回収、第32分隊の救援に送る。」

 

 神近生徒会長の率いる0分隊は、天道寺英人を除けば最強の幻想兵器使い集団である。レーヴァティンやミョルニルという伝説の中の伝説ならば、追ってくる両刃剣型とて容易く蹴散らして、救助や逃亡の時間を稼げるだろう。それまで、32分隊が逃げ切れるかは、難しい所であったが。

 

(「天道寺英人も呼び出すか?……駄目だな、あいつでは32分隊ごと吹き飛ばしかねん。」)

 

 入学日に木村先生が審判を務めた初試合、それに私が担当したリベンジマッチの件を思えば、救助目的で呼び出せるものか。

 英雄の看板を傷つけぬ為、工作員達にフーリガンじみた妨害をしてもらったり、自らを囮とするような真似に及んだりして、槍使いの足を引っ張ってまで、聖剣使いに花を持たせたあの件で、天道寺英人は敵を倒す為なら、平然と味方を巻き込むとよく理解できた。

 

(「味方殺しとあっては、流石に庇うのが難しい。」)

 

 政府の中には[機械仕掛けの英雄]に反対している者も多い。ただでさえ、米露中から厄介者が送られて来るというのに、同じ日本人にまで足を引っ張る材料を与えるわけにはいかない。

 

(「せめて、第12ヘリコプター隊のミサイルが残っていれば……いや、無い物を強請っても仕方あるまい。」)

 

 黒檜山の焼き払いを却下した、政府連中への怒りも今は飲み込んで、今できる最善を尽くすべく、大声で指示を飛ばしてゆく。

 

 

 

>――――――――――――――――――<

 

 

 

 土曜の午後、色鐘が黒檜山探索で出動している頃、己は凡そ毎週(或いは毎日)の様に、寮棟内で親衛隊と(双方共に無意味な接待じみた)雑談や戯れを務め、校内を周りながらこっそりと同志の勧誘や挨拶に励んでいた。

 

「はぁー、一昨日迄つまんなかったぜ雨降っててよー」

 

「私は好きですよ、雨音のリズム聴きながらも楽しいですし。」

 

「いやはや、正反対な2人がこうも仲良くやっていて、己としても嬉しいよ。」

 

 とまぁ何時も通り、中身のない話を園城焔(えんじょうほむら)風間美乃利(かざまみのり)と、間に挟まった状態で歩きながら語り合い__

 

「それで、慣れてきたかね?()()としての振る舞いは。」

 

「……少しは、ですね。」

 

「……同じく。」

 

「そうか、困難や疑念は多々あるだろうが、その際は何時でも先輩同志に相談すればよい。」

 

 今週、晴れて機関への正式所属が決まった2人、その三重仮面生活の苦労を労っておいた。

 

「ところで、黒檜山(例のP)ですが、本当に見つかるのでしょうか?」

 

「衛星からでは発見できず、然し存在するのは確実。となれば山中に潜んでいることになるが……、既存の Pとの()()も想定せねばならんだろう。」

 

「差異……とは?」

 

「CEにこれ迄の六角柱より強い正二十面体型が現れた様に、ピラーにも外観や性質の異なる個体が生じた、なんて事態も有り得ると予想しておる。」

 

「そ、そんなまさか……!」

 

 如何なる手段でそれを為しているかは不明だ。例えば木々や岩肌に溶け込むよう色合いを変えているか。或いは地上へと浅く体を出すだけでそこからCEを放っているか。

 NPにもっと長く接続していれば、分体の位置や性質の情報も抜き取れていたのだが、今更だろう。

 

「何れにせよ、探索結果或いは異変の報せを待ち続けて__」

 

 その直後、携帯端末のバイブレーションを肌で感じ、瞬時に2人の肩を叩いて演技に戻せと促す。

 

「あ、居た英人!大変よ、色鐘先生が呼んでる!大至急、黒檜山へ来て助けてくれって!CEの大軍が迫ってきたから貴方の力が必要らしいの!」

 

「何だと⁉︎分かった、直ちに向かう!己が行くから安心せよ!」

 

「頑張って下さい英人さん!」

 

「信じてるぜ、必ず勝利するってな!」

 

 と、応援を受けながら己は校舎を飛び出し、タケコプターを発現させ飛翔する。

 

「此方迦具土神、黒檜山の状況は?」

 

「第2の新種出没して、他種含め大量のCEが出現し、現地全部隊引き上げて指揮車付近に集合し、傍の大沼へ大軍が押し寄せてきてる。それを殲滅する指示が後で来るぞ。」

 

「了解した。他に異変や問題は?」

 

「武士と同級生1名、新種の引き付け役として分隊と離れてる間、崖から落ちて行方不明。」

 

「な、なんだとぉ!?それは大変だ、捜さねば!」

 

「無茶言うな、“英雄(へロス)”はそんな面倒やらない設定だ。気紛れって建前も使うなよ、自発的行動は疑心を招く、瓊々杵維新を揺るがすな。」

 

 ぐうの音も出ん讒言だ、破る訳にいくまい、……ならば。

 

「問題ない、発覚せん新技(手段)がある。殲滅と並行して仕込んだら直ぐ帰還する。彼等の最後の座標を伝えよ。」

 

「“へロス”から外れない方法だろうな。だったら送信しておくぞ。大和万歳。」

 

「安心してくれ、バレはせん。大和万歳。」

 

 一旦通信が切れ、直後に色鐘からの要請連絡を受けて、ヘッドセットのディスプレイから、消息を絶ったという位置を確認する。

 

「……よし。」

 

 そうして予定地点に到達し、夕陽に照らされた大沼と、その先にて蠢くCEの群れを見下ろす。

 エクスカリバーの遠視機能で観察してみれば、なるほど六角柱共の中に、正二十面体のみならず今迄見ない形状__細長い刃物状の新種が紛れ込んでおる。とはいえこの程度ならば、光線ついでの新技使用も十分可能だ。

 

「エクスゥ、カリバァーーー‼︎」

 

 というわけで射出し、CEの群れへと1体残らず浴びせて__

 

❛エクスカリバー・ヴェンデッタ❜!そして、❛エクスカリバー・ハイヴゥ❜‼︎」

 

 光線の先端部分に対し、上側を衛星から隠すようにそのまま形を保たせて、下側を粒に__己の死後唯一地上で存命の魔星(アフロディテ-No.θ )に倣うのであらば蜂に、次々と分離させて、低空飛行で散らばせておく。

 

「はぁ、はぁ、……後は、意識を保ちながら待つのみよ。」

 

 光線を放ち終えれば、CEは影も形も見当たらなかったので、幻想兵器を引き続き起動させつつ聖剣を消滅させて、己は特高へ帰還する。

 

(「__まだだ、未だ解いてはならん。限界を超えてでも、宗次達の生体反応が探知される迄、耐え抜いてみせる。」)

 

 尊敬すべき宿敵の如く、好敵手の如く、護国の戦友を救う為、じわじわと疲労を感じる精神へと鞭を打ちながら。

 

 

 

>――――――――――――――――――<

 

 

 

  夏も直前となった五月下旬といっても、夜ともなれば気温はぐっと下がる。 支給された防寒ジャケットを《2枚》着込んだ事や、谷底で風が入ってこなかったお陰で、あまり寒くないけども、私は未だ眠れずにいる。

 少し前まで何時間も気絶してたから眠気が湧いてこない、のはある。大好きな宗次君が隣で寝ていて、不埒な想いや妄想が止まらないのもある。……だけど、それ以上に眠れないのは、その彼が、その格好が__

 

(「だ、大丈夫なのかな……、()()()1()()で過ごして……!」)

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 結局私の思い過ごし、過剰な妄想でしかなく、ただ本当に文字通り寝るだけ(それでも嬉し恥ずかしい)となり、私も横になった途端に。

 

「ところで平坂さん、寒くはないか?」

 

「ん、まぁちょっと冷えるけど、寝るのに問題はないかな。でもどうしたの?火でも点ける?」

 

「いや、こんな狭い谷底で焚火でもすれば、二酸化炭素が溜まって酸欠になる恐れが大きいからできないな。……そうだ、新品のジャケット、俺の分も使ってくれ。」

 

 そう言って宗次君は、防寒ジャケットをバックパックから手渡してくれたけど。

 

「いやいや必要ないよ私のジャケット(コレ)だけで十分よ!そんな事して宗次君が風邪をひいてほしくないし!」

 

「気に掛けてもらって有り難いが、俺には不要だから受け取ってほしい。丁度、試したい防寒対策があったからな。」

 

「た、試したい事って?身体を冷やさない事?」

 

「その通り。()()()()()()()()()()()して熱を逃さず夜を過ごせるか、さ。」

 

「__………なんて?」

 

 突拍子もない発言を、想像したこともない発想を、サラッと告げられ呆気に取られてしまった。

 

「幻子総合に断熱性を付与して、身体の熱が逃げないようにするつもりだ。ちゃんと聞けてるか?やはり平坂さんの方こそ体調を__」

 

「心配してんのはこっちの方よ!いきなり何変な事言ってんの!?」

 

「別に大して突飛な案じゃないだろうが……、嗚呼そうか、平坂さんは知らないか。」

 

「えっ?」

 

「入学から3日後の放課後、俺は保健室へ質問しに訪ねたんだ。」

 

「ほ、保健室って、京子先生のとこ!?な、何を聞きに言ったの!?」

 

「幻子装甲の仕組みだ。……ただ、この内容は先生に他言無用と口止めされているから話せないが。」

 

「言って。正直に話して。絶対誰にも何処でも明かさないって約束するから。でないと私、宗次君に防寒着、2枚とも無理矢理にでも被せるから。」

 

 自分のジャケットも携えながら(振り返ってみれば大胆過ぎる位に)グイグイ迫ったら、流石に観念してくれたのか信用してくれてるのか。

 

「わ、わかった済まない。内緒にするんだぞ。……幻子装甲は幻想兵器同様に幻子干渉能力、即ち人の精神力が基になっている。」

 

「うん、それで?」

 

「その幻子装甲の根本たる人の精神、その中身は自身の防御本能であり、負傷や苦痛に死亡を忌避する気持ちが、全身を纏う見えない鎧として具現化する、らしい。こんな感じの回答を頂いた。」

 

「へーそっかー、知らなかったなー。……それだけ?他に何か、向こうから尋ねられたり求められたりはした?」

 

「聞かれたのは質問の理由だけだ。要望も口止め以外ない。因みに動機としては幻子装甲の応用法の参考が欲しかったから。実際その応用で、初陣の時正二十面体型複数体相手に生き延びることができた。でもって、幻子装甲の話が終わったら、その時点で退室して寮に戻った。」

 

「……ふぅん、なら、その点については感謝しないとね。……それで、宗次君の防寒対策とやらにどう関係があるの?」

 

「嗚呼、“防御本能”が忌避しているのは痛苦、故に幻子装甲が弾いているのは外部からの衝撃、この因果関係は理解できるか?」

 

「うん、私だって痛いのも傷付くのも嫌だし、剣道で慣れるまでは相手の振るった竹刀に怯んで及び腰になってしまう事もあったわ。それで、原理がその通りだとして?」

 

「だがな、防御本能が__身体や生命を守ろうとする性質が、我が身から遠ざけようとするのは痛覚だけか?出血や打撲以外に恐れるものは?例えば今夜この地に必ず訪れるのは……」

 

「寒さ、低温状態での衰弱……ってこと?」

 

「そう、だから防御本能が体温の低下予測にはたらいて、幻子装甲が熱を遮断し身体から逃げないようにしてくれる。これが防寒対策の理屈だが、納得したか?」

 

 そんな、理路整然とした風の宗次君を見て、信じそうになった、けども。

 

「……それ、本当に上手くいくの?」

 

「確証はない。そもそも変換器を装着しながら暑さや寒さに晒される機会がなかったから、丁度今なら試せる訳だ。」

 

「いや、いやいやいや、ぶっつけ本番で初挑戦って、もしできなくて風邪でも引いたらどうすんの!?それに幻想兵器も幻子装甲も、眠ったり気絶したりすれば自動的に消失して変換器も電力消費節約(スリープ)モードになるって授業で習ったでしょ!」

 

「問題ない。俺にとっては幸いな事に、眠気は感じておらず、体力は有り余っていて、環境も熟睡に適さない地面ときたものだ。たった一晩、寝ずに明かせば済む話だ。あと、万が一CEが付近に寄って来た際にも対処し易い。」

 

「其処まで無理も無謀もしないでよ!出来るかどうかわからないままやって失敗したら__」

 

「平坂さん、さっき言っただろう?“心一つで何でもできる”と。俺は必ず、寝ずに耐え切ってみせるし、防寒も果たして無事に朝を迎えてみせる。決めたからこそ実現させる。」

 

 そう言って宗次君は、私の両手を掴み取って__

 

「ひゃぁっ!!??」

 

「言い換えれば、この好機をさらなる成長に、CEをより討つ為の足掛かりにさせておきたい。だから頼む、俺を信じてくれ。」

 

「__っっ!?わ、わわわ、分かったわよ信じる信じるっ!」

 

 ……結局、私は押し切られてしまい、ジャケットを受け取って、自分のを着用し貰った分を掛け布団代わりに寝そべった。宗次君はその後、傍の岩に上の制服を干して仰向けになった。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

(「やばい、嬉しくて恥ずかしくて、期待と心配がせめぎ合ってるみたいで眠れない……っ!」)

 

 遭難して救助も来ず、何時CEが襲ってくるかも知れない危機的状況。冷気と眠気に苛まれているだろう彼の、普段見られないシャツ1枚で横たわる貴重な姿への興奮と不安の所為で、胸の鼓動は収まってくれない。

 

「……眠れないか?」

 

「う、うん。宗次君はもう眠い?被ってるジャケット持ち帰っていいんだよ。」

 

 目を瞑ったままの宗次に声を掛けられ、陽向はビクリと背を震わせつつ頷いて聞き返す。

 

「問題ない。体力が余っていて眠気はきていない。寒さは未だ防げていないが、もう暫くでコツが掴めそうだ。平坂さんこそ大丈夫か?」

 

「わ、私は平気よ。……宗次君こそ、遠慮も無理もしなくていいわよ。」

 

「心遣い、痛み入る。」

 

 それからお互い黙り込んで、夜空を見上げてみれば、木々の間から微かに星々が輝いてて__

 

「綺麗だな。」

 

「うん、こんな時でもなかったら、ロマンチックな天体観測なんだけど。」

 

 そんな事を言いつつも、手は星空に向かって自然と伸ばされていた。

 

「そういえば、平坂さんとこんな風に、2人でゆっくりと話した事はなかったな。」

 

「そ、そうだね。」

 

 確かに、授業や作戦ではD組の皆が居るし、休日等に遊んだりする時は、心々杏や神奈、遠藤君・斑鳩君・委員長の7人で居る事が多かった。だから、完全に2人きりというのは本当に初めてで__改めて意識してしまい、顔が火照ってくるのを感じながら、照れ臭くて別の話題を振ることにする。

 

「そういえば、宗次君の故郷ってどこなの?」

 

「あぁ、俺の故郷は__」

 

 告げられたその名を聞いて、思わず首を傾げる。見覚え聞き覚えがないか記憶を探ってみた、ものの。

 

「……あの県にそんな村あったっけ?」

 

「本当に山奥の田舎だからな、特産品も無いし、知らなくて当然だ。」

 

「う~ん、どんな所か想像つかないわね。」

 

「そう言う平坂さんは、何処の生まれなんだ?」

 

「私は千葉よ、千葉県千葉市。」

 

「千葉か、都会だな。」

 

「うん、まぁ、都会なのは否定しないけど。」

 

 寧ろ、宗次君が田舎と思うような場所って何処なんだろうか。

 

「だが千葉だと、6年前は大変だった*1んじゃないか?」

 

「う〜ん、……どうだったかな?お父さんとお母さんがテレビを見ながら、心配そうに話していたのは覚えているけど、私は「学校が休みでラッキーッ!」としか思ってなかった気がする。」

 

 当時私は10歳、小学校4年生だった。謎の結晶体が現れて襲ってくるなんて、まるで映画のような現実を真剣に受け止めるのは難しかったに違いないや。

 

「そうか、俺はどうだったかな……」

 

「槍術の練習をしていたとか?」

 

「多分そうだろうな。平坂さんはその頃から剣道を?」

 

「その少し後からかな。CEの1件から犯罪率が高くなったとかテレビで見て、心配したお父さんに勧められたのが切っ掛けで__」

 

 __気が付けば緊張が取れて、打ち解けた様に話し込んでいた。故郷の事、両親の事、友達の事、好きな本やゲームの事と、様々な事を2人きりで語り明かした。そうして数時間が経ち、ようやく眠気が襲ってきて、私は自然と口を噤み、宗次君からも睡魔に襲われたのか気遣ってくれたのか、声が聞こえなくなってきた。静かな、でも心地よい沈黙の中で、漸く意を決して言葉を紡ぐ。

 

「ねぇ、宗次君。」

 

「何だ?」

 

「あのね、私、私は……苗字じゃなくて、名前で呼んでくれるかな?」

 

 「マジヘタレです~っ!」と心々杏からツッコまれること間違いなしだと、頭の片隅では自覚できる位情けないけど、それでも今の私にとって切実な願いを、何とか絞り出せた。      

 すると宗次君は、優しく微笑んでくれて__

 

「分かったよ、陽向さん。」

 

「うん、ありがとう。」

 

 呼び捨てじゃないのは残念だけど、今はまだこれで良いかと、満足そうに笑みを浮かべる。そしたら気が緩んで、瞼が閉じてゆき__

 

(「……宗次君、愛してる。たとえ世間で有名にならなくたって、世界を救わなくたって、私にとっては格好良くて優しい()()だよ。」)

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 そして、普段より早い朝を迎え、結局一睡もしなかったらしい宗次君と一緒に、ピラーを見つけ救助ヘリに回収され、特高に帰る途中で宗次君は寝ちゃった。グラウンドについたら,クラスのみんなや大河原先生に、何故か3年のヅカ女や行き遅れ先生も迎えに来て、幾らか挨拶してピラーが潜んでいた場所を伝えた。その後宗次君が保健室に運ばれていった一方で、私達は遅めの朝食を食べたら眠くなったから寮に戻ってまた寝た。

 

 ……嬉しい事、大変な事、衝撃的な事がこの2日間に立て続けて起こったから……、ううん、それは言い訳ね。結局私は、宗次君が大好きだと、心の中で主張して、ずっと目で追っていたのに……

 __彼が私に誓った言葉が、頼もしさだとかロマンだとか、そんな綺麗な響きとは()()()()()()()()()()()()()()()()……なんて、自分から察せなかったんだから。

 

*1
後程宗次君から、松本市に出現したピラーから、大量のCEが溢れ出てきた当初、一時は首都近郊の住民も避難が呼びかけられた、とのニュースを聞いていたそうなの。





  感想や質問に指摘等、何時でもお待ちしております。
 次回は、5/25(日)の裏側について描写します。

○❛エクスカリバー・ハイヴ❜
 エクスカリバーの派生技の1つで、❛エクスカリバー・ヴェンデッタ❜による幻子の性質干渉を発動した上で使用できる。放った光を小さな粒に変えて操作する。粒は使用者の意識通りに動くマニュアルモードと特定条件のみ設定すれば後はそれに従う以外無軌道に動くオートモードがあり、また感覚の共有迄はできないがCEや幻想兵器等強力な幻子の反応は使用者に伝わる。その性能は1粒に込める光の濃度(=認識力の込め具合)に左右され、数はこの回の時点で凡そ最大百万。但し❛エクスカリバー・ピリオド❜と同じく使用者が幻想兵器を展開し続けなければ維持できない上に、今回の様に莫大な粒を長距離且つ広大な区域で何時間も稼働させる、となればオートモードであろうが気力と体力の疲弊や認識力の枯渇は免れない。
 元ネタは、金属製の蜂使いにして原作主人公もその義妹兼√ヒロインも好みに思っている、嘗て地域宗教出身の少女。

本作品に触れる前に、原作となるネット小説は読んだことあるか

  • はい
  • いいえ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。