英雄《しゅやく》になれぬ筈の槍使いと英雄《しゅやく》に至りし太陽《くろまく》 作:MOGOLOVONIO
ノン(以下略)回です。但し今回は、本作第5章にあたる、原作第8章末に於ける『聖剣使いの英雄伝説』回と異なり、宗次&陽向の帰還〜前話の間を舞台にしました。
因みに、サブタイトルの「久路保」とは、万葉集の内の1句に於ける、赤城山を指し示す単語であり、舞台となる“黒檜山”という名前の由来にもなったそうで、「黒い雷雲の起こる峰」との意味らしいです。
そして、2人の生還と成果は、ある少年と少女も知る所となった。
「そうか!黒檜山に潜むピラーの場所が分かったのか!」
「嗚呼、それで、天道寺英人。私の言いたい事は理解できるな。」
「有無!早速黒檜山ピラーを征伐しに出掛ける!後に続く必要はないぞ皆!」
「「「了解‼︎!」」」
同級生達には留守を任せ、英人がまたもや単騎で飛び立って行った。
「………ふっ、流石ね。」
そうして1年A組が意気揚々と席へ着く中、小さな小さな呟きが誰にも聞き取られることなく掻き消えていった。
声の主が思いだしているのは、廊下を歩いている最中、窓から見えたグラウンドの一幕。1クラス分の同期生と大人2人が集う中1機のヘリが降り立ち、普段見慣れている迷彩柄とは異なる制服を着ている自衛官らしき男達や、彼等と一緒に出てきた少女。そして、1人の自衛官が抱えている者の様が、脳裏に浮かび上がってきたのだ。
「……どうせ、大手柄立てたんでしょ?全く退屈させない奴ね。」
人目のつかない場所であらばケラケラと笑いそうな位に、彼女は上機嫌となった。
__本人は気付かぬ話であるが、奇しくもそれは、先程偶然にも、同時に一緒に校庭を視界へ収めた少年と似た心境であった。
ーーーー(中略)ーーーー
英人が所定の座標、黒檜山の東南側に到着した。
何時もの如く見下ろせば、森林の深緑色と岩肌の薄茶色で埋め尽くされており、ピラーの特徴たる油膜じみた虹色も光沢も見当たらない。CEの出没が起こらなければ、2025年以前と何ら変わらぬ唯の山としか思えない有り様だが……英雄は見落とさない。
「
改造されたエクスカリバーで山を覗いて発見したのは、木々の間から窺える岩肌の内、不自然に光を反射する箇所。予感的中、色合いや形状を環境へ溶け込ませるという、動物の複数種が有する隠匿技術、擬態をピラーまで身に付けていたのだ。
「心底興味深い。そして、感謝しよう我が好敵手、よくぞ此奴を見つけてくれた。」
そして、御代田町ピラーと同様に対処すべく、剣の鋒を地上の、撃つべき地点のみを狙い澄ます様に向けて光を充填し__
「エクスゥ、カリバァァーーッ!」
前回より遥かに細い光線が、周辺の自然環境を最大限巻き込まぬように放たれ、ピラーの露出した部分のみに当たり、貫いて__
「内部から灼き尽くしてくれるゥ、広がれェィ!」
コア含め殆どの部分が地中に埋まっている事を見抜いた故、光はコアだけ傷付けぬように結晶柱を内側から浄滅して、頃合いと判断し。
「❛エクスカリバァーッ、ヴェンデッタァッ❛!❛エクスカリバァーーッ、ピリオドォッ❜!」
上空から見えぬまま地下空洞に する黄金の氷は、小さな球体を閉じ込めて__
「そして更にィッ、❛エクスカリバァーッ、アルケミストォッ❜‼︎」
その氷のカプセルが、剣に引き寄せられる様に、まるでスクラップ工場で真上に磁石が降りてきた際のゴミに混じる鉄屑の如く、宙へ浮き上がって穴から飛び出た。
これが英人の新技、エクスカリバー・アルケミスト。エクスカリバー及び其処から放出される光線に宿る幻子、その性質を“互いの幻子が使用者の意思に応じて又は反発する”と変化させ、自在に動かせるのだ。
これによって英人は、コアを地下空洞から地上へと移し、回収し易くしておいた。
「……ふぅ、これで一件落着か。擬態する程の知能を持つピラーのコアとあらば、収穫も増す筈だ。」
これにて、此度の英人の仕事は終わり。
「……ふゎぁ〜、眠くなってきた。今日は早めに寝よう。」
自分の仕事を終えたとして、英人は特高へ戻って行った。
斯くして、
それは前橋市や特高に、延いては日本や人類にとっての安全確保に繋がったのだが、然し安心するには早過ぎる。
何故なら、第3の且つ物理的破壊能力を有する新種と、山の環境に紛れ潜むピラーの出現は、今後のCEやピラーが多様且つ厄介な性質を有する個体を仕向けてくる、という進化と激戦化の兆しであり……
また、生物学的に見れば同胞であろうと、地形や歴史に基づく境界で隔たれて、其々の理念や利害、民族や宗教等の異なる存在がある限り、摩擦は避けようがないのだから。
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「~~そして、次の章で外国からの転入生登場、という訳ですか。」
「然り。この章ではCEのみならずピラー自体にも進化の可能性が存在する点も演出されている。その上で、更に外国との、即ち同じ人類種同士での交流或いは謀略も並行して描写する展開となっておる。」
「そうか。……CEやピラーの進化、外国との接触、か。」
「お陰でこの今がある。いやはや世の中というものは全く分からんな。」
優太、英人、宗次が当時を思い出しながら話し合っている所へ、陽向、麗華、京子、月夜が寄ってきた。
「……それにしても、2人共無理し過ぎじゃないか?夜中にずっと幻想変換器を起動させ続けていたなんて。」
「有無、あれだけ長い時間夜更かしした事はなかったのでな、流石に苦労したとも。入学迄の6年間でさえ、急用で起こされる事はあったが、健康に成長する為にと早寝早起きは徹底してきた。とはいえその時は緊急事態故に、見つかる迄只管意識を保ち張り巡らせてみせると無茶へと及んだが、探し人は発見でき、認識力の消耗も己自身のみで賄えたので良い経験であった。」
「そうだな、お陰で俺も隔熱甲を習得し、擬態していたピラーの発見で、黒檜山の自然が最小限の被害で抑えられた。陽向さんや心配掛けた皆に態々救けてくれた英人と救助隊には悪いと思っているが、俺にとっては怪我の功名だった。」
「……本当に、ヘリ乗る前迄寝てなかったのよ。しかも夜中は制服干してシャツ1枚の状態で。ほんっと気が気じゃなかったんだから。というかハイヴとやらで山ん中捜索できたなら、初めからそうすりゃいいじゃない。」
「確かに山の近くで使えば、より広範囲・低負担で探せたのだが、1週間以内に気紛れを口実で外出したばかり故、疑念を抱かれる真似はできなかった。一応、エース隊への試練兼息抜きの為にもと山中探索を許可したが、両刀型の出現は兎も角2人の遭難には驚いたとも。」
「因みに去年聞いたんだけど、“蜂”は宗次君達に接近して探知し情報を受け取った時点で、幻想兵器毎解除して報告したら直ぐに眠ったらしいよ。それでその蜂がやって来る方角次第だと、擬態していたピラーを先に見つける事になって、宗次君の救助は朝にピラーを消し去って安全を確保した上で本格的に行う可能性があったと。確か、そうでしたよね。」
「嗚呼。まさか落下地点がピラーの潜伏地と近い場所だとは、流石に予想外であった。心底、無事で安心したものだ。」
「でも、幻子装甲に断熱性を付与したり、エクスカリバーの光線にセンサー機能を継ぎ足したり、今更だけどよくそんな事ができたわね。幾ら思い込みが幻子の現象に反映されるといっても、本当に実現できてたなんて……」
「当然であろう?心一つ、思い一つで実現させてみせると思い込めば、幻子はそれに応えてくれるのだよ。尤も、己も宗次の場合も、自身から湧き上がる認識力だけでは足りず、外部からも供給されてこそ成し遂げられた訳であるが。」
「やはりか。本当に、信じてくれていた皆には頭が下がらないな。」
「あの時普段より遥かに目覚めが悪くて遅かったのも、起こしてから随分眠た気だったのも、帰って来たら直ぐに自室へ篭ったのも、寝不足の所為だったのね。……ところで、何なのこの私の心情描写は?」
「嗚呼、取材内容を基に制作担当が想像してみた結果であろうな。次いでに、今後の展開の伏線の意図もあるだろう。何か間違っていたか?横目で見ておったが安堵や感心を秘めている様に、己は思えたのだが。」
「……ノーコメントで。」
感想や質問に指摘等、何時でもお待ちしております。
他の章より短くなりますが、切りが良い為次回から新章に突入し、視点を宗次から英人(及び彼以外の迦具土神機関同志)が2章ぶりに主となるよう戻します。
○❛エクスカリバー・アルケミスト❜
❛エクスカリバー・ヴェンデッタ❜の発動を前提にした技の1つ。剣から放たれる光線を構成する幻子に対し、磁石に類似する性質を付与する。これにより、N極対S極の如く引き合わせる事も!同じ極同士の磁石が如く反発させる事も、任意で作動・変換する事ができる。
例えば今話の本文に記されている様に、❛エクスカリバー・ピリオド❜で精製した光の結晶を、手に持ち固定した剣へと引き寄せ浮遊させられる。一方で剣先の前に結晶があれば、反発させ弾丸の如く高速で飛ばす事も可能。
尚、現段階では実際に磁力を付与されている訳ではないが、認識力の増大・集中並びに使用者の科学的イメージを伴った思い込みがあれば、幻子に磁力が備わり鉄やニッケル等へ作用し得る。
元ネタは、本作主人公に暇潰しのネタを提供した代わりに理想郷を実現させてもらったが想い人の意向を優先して取り消した、残念だけど顔も心もイケメンな、エロゲの親友ポジ。
本作品に触れる前に、原作となるネット小説は読んだことあるか
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