英雄《しゅやく》になれぬ筈の槍使いと英雄《しゅやく》に至りし太陽《くろまく》   作:MOGOLOVONIO

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  総合評価が520ptに到達しました。皆様、今後とも応援宜しくお願いします。

 この第6章では、久々に本作主人公視点メインに切り替わります。
 尚、これまでは主人公以外の視点で送る回について、基本的に○○.5話として取り扱ってきました。ですが今後は主人公のみならず、迦具土神機関同志の視点で送る回もメインに含めて投稿します。




第6章〜エントロピー渦巻く伏魔殿〜Full metal high school ✧
第30話 列強からの転入生と揺らぐ誓約


 

 

  5月29日木曜日、我等3期生A 組は何時も通り教室にて全員揃ってHRの開始を待ちながら、然し普段と異なる気配を密かに醸し出している。

 

(「もう数分で、米露中の刺客3名が此処に、英国及び影山からの刺客が1名D組へ来訪する予定だ。」)

 

 4日前にて岩塚幕僚長から芹沢校長を通して色鐘へと伝えられた、転入生の来校日。非同志含め親衛隊の皆も、彼女より聞かされて、対応を頑張って練り込んでいた*1模様だ。

 

(「融通が裏目に出ぬよう警戒は必須だが、上手くいけば取り込み利用できる。幸いにも、昨日迄で勧誘が順当に進んで来た。」)

 

 それはそうと、D組編入予定の、(髪と目の色の組み合わせだけは宿敵と同じである)シャーロット・クロムウェルも気掛かりだ。影山が絡んでいる以上、他3名と違って持参してきた幻想変換器にも仕掛けがある筈だ。本人の意思や宗次との交流次第では、奴が祖国日本よりも、たとえ属人的意識に基づく場合であれ英国寄りの姿勢を取って、己や特高の秘密に幻想兵器の応用法も共有しかねない。

 即ち其れは、己にとっての、迦具土神機関にとっての、大和にとっての敵に回るも同義であり__

 

(「……まぁ、個人的にはそれも一興か。ククッ。」)

 

 と考えていたら、色鐘が入室してきた。

 

「「「おはようございます!!!」」」

 

「おはよう。皆、揃っているな。」

 

 其処で色鐘は一呼吸置いて、教室内の全員へ(実際は己だけに伝えようと)話し掛ける。

 

「今日は、お前達に良い知らせを持ってきた。……本日、外国から転入生が3名、このクラスへやって来る。何れも幻想兵器使いであり、新しい仲間にもなる者達だ。」

 

「て、転入生ですか!?」

 

「海外から来てくれたの!?」

 

「おぉ、それは実に喜ばしい話だ!」

 

 などと、白々しい反応を口々に色鐘へとぶつけておけば、彼女は待っていたとばかりに足を鳴らした。

 

「静かにしろ。……さぁ、入ってこい。」

 

 そして扉を開けて入って来たのは。

 

「Hey!Japanのミンナ、ヨロシクゥ!ワターシは、アメリア・フィリップス、アメーリカから来たのデース!」

 

 ウェーブの掛かった長い金髪の少女が。

 

「はじめまして、ロシア代表、アナターリャ・バラノフ。」

 

 白銀色の整った短髪の少女が。

 

「中国出身のハク・メイファン!みんな、よろしくネ!」

 

 漆黒の髪をツインテールに束ねた少女が。

 

「さて、突然の話ではあるが、1年A組の皆には、今後彼女達3名と一緒に生活し、勉学や特訓に励み、そしてCEと戦ってもらう事になった。」

 

 それから色鐘が、説明を開始した。

 

「この地で暮らすにあたって他国の人間ということで困っていれば、親切に助けてやって、共に過ごす仲間として支え合ってほしい。ただ、だからといってお客様扱いする必要はない。先程の通り、彼女達は日本語が上手でな、それに幻想兵器使いとして戦場に立ちCEと戦う覚悟も硬い。祖国の為人類の為、先んじてCEの脅威へ抗うエース隊の若き英雄達の為に来日してくれた理由であり、必ずや良き戦友に成ってくれる者達だ。」

 

 と、其処で色鐘が己の方を向き、話を続ける。

 

「以上で、アメリア・フィリップス、ナターリャ・バラノフ、ハク・メイファンの転入に関する説明を終える。……と、堅苦しい空気は此処までにして、1限目は予定を変更して彼女達と馴染んでもらう時間にする。この教室内で好きに会話なり遊びなりしてほしい。」

 

 一旦話を止めて、色鐘が3人へ顔を向ける。

 

「まぁそんな訳だ、3人共、緊張しないで仲良くやってくれ。大丈夫だ、この1年A 組は、人生で見たこともない位、優しくて賑やかで結束力の強いクラスだ。何より、唯一の男子、天道寺英人は、我等エース隊が誇る最高にして最強の英雄だ、何かあれば何時でも、とは言い過ぎだが彼に頼れば多少の事は何とかなる。」

 

「Wow!天道寺って、もしかしてあの、天道寺刹那のbrotherデスカー!」

 

「……道理で、とても格好良くて、頼もしそう。」

 

「この国に来てホントに良かったネ!」

 

「そこまで褒められると恥ずかしいものだが、期待に応えてやらねばならんな!」

 

「……もぉぅ、英人ったら……」

 

「では、私はこれにて失礼する。2限目は普段通り授業を行うから、その時には全員着席しておくように。」

 

「「「はい!!!」」」

 

 と言って、色鐘が一足先に茶番劇から抜け出した後、3人が一斉に迫って来る。

 

「デハ改めて……ハジメマシテ!アヤト!」

 

「これから、よろしく。」

 

「一緒に戦っていこうネ!」

 

「……有無!此方こそ宜しく頼む!」

 

 初めてのタイプの美少女を前に照れる初心な少年、の表情と仕草を入学当初同様に何とか演じつつ、挨拶を返した。すると“堂島咲”が誰にも悟られぬよう己へ目配せして、此方へ寄って来る。

 

「ねぇ、3人はさ、出身国の何の辺から来たの?」

 

「ワターシは、生粋のニューヨーカーデス!」

 

 アメリア・フィリップス、出身地は△△州♤♤市。

 

「私は、モスクワ。寒いけど、良い所。」

 

 ナターリャ・バラノフ、出身地は▷▷州♡♡町。

 

「生まれも育ちも北京アル!」

 

 ハク・メイファン、出身地は▽▽省♧♧村。

 

 その後非同志含めた親衛隊による質問責めを受け、三者三様に偽情報を吐き出した後、再び3人共己へ顔を向けてくる。

 

「ミンナ、スッゴク賑やかデース!」

 

「あの先生の、言う通りだった。」

 

「このクラスなら、上手く馴染んでいけそうネ!……それで。」

 

 3人は、己の手を一斉に掴み、息を吸って。

 

「「「次は英人(アヤト)の事、聞かせて(クダサーイ!)(ネ!)」」」

 

「……分かった。では語るとしよう。」

 

 そうして己は入学日からの記憶を、捏造や隠蔽混じりで話す。

 

「先ず、家族皆を喪ってから預かり育てて頂いた義理の親の下を離れて、この特高へやって来てだな。」

 

 2人は今、あの6年間過ごした家から東京へ戻り、昇進して現職を懸命に取り組む傍ら、同志としての使命を全うしている。影山達や警察庁には感謝せねばならん。

 

「門前で、此方、幼馴染の音姫と再会したのだよ。」

 

 偶然にも、その場を宗次と遠藤映助(その親友)が目撃していた事も覚えておる。

 

「入学式を終えて、最初に姉上が使用し活躍していた、幻想兵器が配布されて、相手を選んで試合する事になったのだ。……が、その時挑戦してきたのが。」

 

 ……済まん、宗次。

 

「卑劣で野蛮な槍使いでな、己のみならず姉上まで罵倒して一時は追い詰められたのだが、己の怒りに応えてくれたのか、エクスカリバーが力を解放して、見事勝利した訳だ。」

 

 ……何が「見事な勝利」か。護るべき戦友・民草に危害を加えかけて、「卑劣」も「野蛮」とも程遠い対戦相手に命懸けの尻拭いをさせておきながら。

 

「それから音姫達クラスの皆と、直ぐに打ち解けて楽しく学園生活を送っていたのだが、4月中旬に例の槍使いと奴の所属するD組が、喧嘩をふっかけてきたのでな、またも試合する事になったのだ。」

 

 月夜が宗次に興味を引かれて、あの校舎裏へ時折訪れるようになったのもその頃からであった。

 

「まぁ、結果として、己は空を飛べるようになり、再度勝ち抜いてみせた。」

 

 いやはや、あの時は危うかった。光線を駆け上がってきた宗次の槍ときたら、1秒でも認識力切れが遅れていれば、命中して耐え切れず地面へ墜落し、今度こそ立ち上がれず敗北して、[瓊瓊杵維新(ににぎのいしん)]の再構築にも動かねばならんかった。とはいえ、意識を失った奴の手を、急ぎ掴み取って救けられたのは幸いだったが。

 ……そして、夕方、宗次は態々己に対し、秘密の詮索をしないから何れ来たる日本の勝利の後に試合に挑もう、と約束してくれた。誠に、己には勿体なき高潔な武士(もののふ)であることよ。

 

「それから先月末、我等A組は初陣を迎えてな、軽井沢方面でCEの群れを撃砕してみせた。然し突然、色鐘先生から、前橋市の街中にピラーが出現したから、単騎で向かってほしいと頼まれたのだ。それ故己は飛翔し、現地のCEも、そしてピラーも倒した。」

 

 その一方で、宗次が単騎で正二十面体型含め26体撃破、見事に避難民や疲弊したエース隊員を守り通してみせた。嗚呼、それと奴の救援に駆け付け瀕死のCEを倒した後の第32分隊が帰還している所へと、車両損傷に対する責任の相対的軽減を兼ねて、車や乗員の被害が最小限に留まるようにちょっかいを掛けたものだ。

 

「その後、クラスの皆と一緒に青春を謳歌しつつ、近辺の山で生えたという小型ピラーも倒してきた、といったところであろうか。」

 

 ……省略や捏造は多々あるが、ともあれ語り終えれば、3人共ときめいた様子を作って視線を向けて。

 

「……Very cool, and fantastic!やっぱりアヤトはホンモノのHeroなんですね!」

 

「アヤト、凄い。間違いなく、世界一の英雄。」

 

「心から、英人に逢えて良かったネ!この調子で、世界なんて必ず救えるアル!」

 

 とまぁ矢継ぎ早に煽ててきて__

 

「だ・か・ら、アヤトの活躍、もっと聞かせて欲しいデース!」

 

 色仕掛けの一番手にフィリップスが、己の右腕に抱き着いて、胸の谷間へはめてくる。

 

「ア、アメリアよ、胸が当たって……」

 

「Wow、当ててるデスヨ?」

 

 悪戯っぽく笑い返す様には、己が目論見通りの感情を抱いているとの確信が籠もっていた。

 すると、今度はバラノフが背後から迫ってきて、頭を自身の胸に抱きかかえてくる。

 

「私も、アヤトの話、詳しく聞きたい。」

 

 小さいが良く通る綺麗な声が、耳元に掛けられたので振り返ってみれば……

 

(「__眼の色も髪の長さも異なるが、新品の名刀が如き銀髪……」)

 

「……アヤト?どうしたの?」

 

「あ、否、(くすぐ)ったかったのでやめてほしいのだが。」

 

「そう。」

 

 死想恋歌(エウリディケ)、いやヴェンデッタを急に連想し、演技が途切れてしまった。然し幸いにも疑われずに済んだらしく、更に腕の力が強くなる。

 かと思えば、正面からメイファンが己の身体へ乗っかって来る。

 

「退くネ、白面共!英人の嫁はこのメイファン一人で十分ネ!」

 

「ま、待て!?メイファンこそ退いてくれんと拙い__」

 

 ……ふとその顔と髪を見遣れば、生粋の漢人系であるのがよく分かる。欧州に根付いた華僑がルーツであるものの、大破壊(カタストロフ)によって大中華連邦(祖国)の大地も国民も消滅してしまい、力も数も僅かとなった同胞でなく、第二太陽の権威と恩恵で成り上がってゆく日系人(アマツ)へ社会的にも血統的にも混ざってきた淡家、その末裔たる__

 

「……ど、どうしたネじっと見つめて!?もしかして、私に惚れたアル!?」

 

「す、済まない悪かった、ぼんやりしていかんな、日本人代表としてシャキッとせねば……」

 

 青みがかった黒髪の魔星、氷河姫(ピリオド)を思い出して沈黙してしまったらしく、咄嗟に誤魔化そうとしていると、月夜の気配を察知した。

 

「こらーっ!私の英人から離れなさいっ!」

 

 そう言って月夜は、嫉妬心を装って他国の工作員から決戦兵器を引き剥がさんと、己の空いた左腕を掴み引っ張ってくる。

 

「そうよそうよ!転校生だからって英人を独占しないでよ!」

 

「大体、英人さんが困ってますのよ!幾ら何でも距離詰め過ぎです!」

 

 他の親衛隊員達も、同調する振りをしながら月夜に協力すべく迫って来た。

 

「皆、か、勘弁してくれんか!?」

 

 よって、己もこの場の空気に応じて、非同志組や他国3名の想像する“英雄像”に沿った反応を返しておく。

 

 

――――――――――――――――

 

 

「……はぁ~っ、誠に面倒極まりない、あんな三文芝居、もう飽き飽きするわ。」

 

「お疲れ様、迦具土神。特高生活序盤みたいな愚痴だな。」

 

「色香で迫るばかりの幼稚な誘惑、自国のステレオタイプそのものな設定、おまけに親衛隊の対応も……、全く翌日以降も続くとなるとうんざりだ。」

 

「おいおい、国政や権力闘争の舞台、政府中央棟(セントラル)内を24時間365日4世紀も観察してきたなら、ハニトラ位慣れっこだろ?それに、蘇生させた配下には、歓楽街の女王蜂もいたと以前言ってたじゃないか。」

 

「どれも()()()()、であったがな。……まぁ、10代前半の男性に対する としては、上出来であったろうよ。……嗚呼、それと、親衛隊内の同志達へ、「見事な演技であった、大変だろうが今後とも宜しく頼む。」と労いの言葉を伝えておいて貰いたい。最近加入した者達も、確りトリプルフェイスを保っておる。誇らしい限りだ。」

 

「了解した。この後送信しておく。ところで、校舎裏で武士と“音姫”、加えてクロムウェルが接触、会話したぞ。記録は午前の試合映像と併せて送るから、自分で確認してくれ。」

 

「おぉ、何とも興味深い話題であるな。……それで、本日把握できる限りの情報からして、貴官の印象は如何であったか?」

 

「それは__ちょっと待て、クロムウェルの寮室から外部への発信を探知した。」

 

「そうか、捕捉と解析__」

 

「もうやってる。僅かに流れ始めた段階だが……、特高内部の音声と映像、恐らく変換器から盗撮・盗聴したものだな。現時点では妨害する必要はない、だっけか。」

 

「有無、1生徒の知り得る程度の内情であれば、遮断せず泳がしておく方針に、変わりはない。無論、送信内容が異なってくればその都度対処するが。」

 

「了解。暫く様子見だな。それに幻想兵器も、本人はB組相当の適性にも拘らずA+の性能を発揮していた。流石にブラックボックス状態で調べる事はできないが、やはり変換器に何か色々仕組んでいやがる。その辺の分析は頼むぞ、お前以上の適任はいないだろう。」

 

「分かった。では引き続き送信を解析、次いでに記録してもらいたい。同級生から見る宗次の日常、非常に気になるのでな。」

 

「……やれやれ。なら、余裕できたから話を戻すぞ。……シャーロット・クロムウェル、彼女は……、唯の()()()()()だ。勇気も優しさも備えた無邪気な少女、刹那に近い感じだな。」

 

「ほう、姉上にか。であれば工作員の線は?」

 

「恐らく白。どうも単純に、ピラーとの戦いへの参戦や日本への憧れを動機にしている様に思えた。当然、見る目が節穴だった可能性もあるが……取り敢えず、自分で判断してくれ。」

 

「有無、そうしよう。では任せたぞ、大和万歳。」

 

「大和万歳。」

 

 通信を切り、端末を覗けばグラウンドでの試合映像、校舎裏の映像が届いていた。

 己は其れ等を視聴し、訝しみ、感嘆し、笑いを噛み殺し、そして__

 

「__そう、か。宗次よ、誠に感謝し申し上げる。嗚呼全く、弱音など吐いてはおられんな。あんな不格好では、我が好敵手にして目標たる益荒男に、合わせる顔が無いだろうが情けなし。ならばこそ、己は現状を堪え機を窺い、大和の勝利へ邁進せねばならん。絶対に、奴と誓い合った、あの日の約束を果た__」

 

 ………果たすべく、祖国の繁栄を築いた(己が成長し切った)後、で………?

 

 

*1
同志の話によると、クラス内の刺客に対する監視は勿論の事、己への接触や誘惑を、可能な限りヘロスの機嫌を損ねず不審に思われぬよう妨害する方針へと決まったらしい。また、英国の刺客に関しては、難易度や負担の問題から、校内の隠しカメラや大河原三尉・白浜寮長の監視で留める事になった。





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