英雄《しゅやく》になれぬ筈の槍使いと英雄《しゅやく》に至りし太陽《くろまく》   作:MOGOLOVONIO

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 お待たせして申し訳ありません。此方が、9月最初にして最後の更新となります。

 今話は、東京観光(観光するとは言っていない)回になります。


第32話 明寿(めいじゅ)と帝都

 

 

 

「__っ、………」

 

  5月31日、土曜日、天気は曇り。

 ふと目が覚めて、時刻を確認すれば月夜が起こしに来る20分前であった。

 

「……良し。」

 

 監視のシフトを思い出せば、己を見張っているのは同志組のみで、丁度よいと一度起き上がり、端末を操作する。

 

「有無……」

 

 秋葉と芹沢の何方に連絡しようか数秒迷い、双方と三者通話すべく発信する。

 

「はい、もしもし。」

 

「もしも……、校長?」

 

「高天原より天下りて。」

 

「「__火之迦具土神の星へと集わん。」」

 

「朝から済まない、本日の行程につき伝えておきたい事があってな。」

 

「何ですか?」

 

「東京へ遊びに行きたくなった。」

 

「「……はっ(はい)??」」

 

「実は、さっき突然東京を観光したい気持ちが湧き上がり眠気すら覚ましてこの時間に連絡した訳だ。」

 

「「は、はぁ……??」」

 

「その上で、これはエクスカリバー未使用で咄嗟に勘付いた推測だがな。……幻想兵器〈機械仕掛けの英雄〉第3段階に移行したと思われる。」

 

「__っ!?……左様ですか。ではその突飛な話というのは……」

 

「己が東京へ赴かねばならんのか、或いは此処群馬県から離れねばならんのか、何方にせよ早急に……、いや今回は恐らく昼間辺りになりそうだが、兎も角行動すべき事態が起こり得るのだろう。」

 

「了解。ではどうなさるつもりで?」

 

「……一先ず、この直感に従い東京へ、3期生A組全員を伴って出発する。これを校内全同志に「東京行きの急用ができた」として共有し、またそちらで事が起きれば組内同志に伝達せよ。東京の同志にも来訪の旨を伝え、協力を仰いでくれ。同志犬塚にも変換器を隠し持って動かせるよう手配を。以上が終わり次第己に知らせ、その時点若しくは▽▽時◁◁分に此処を発つ。尚不在は一般エース隊員に悟られぬよう。突然の頼み、引き受けてくれぬか?」

 

「愚問ですな。」

 

「直ちに遂行する。」

 

「感謝する。周知が済めば合図を寄越してほしい。任せたぞ、や__」

 

「切る前に1点聞きたいのですが、武士が今日外出許可を求めてきた場合、断った方が宜しいですか?」

 

 芹沢に尋ねられたが……宗次か、昨日迄申請は無かった。合理的に考えれば非常時の備えに在校させるべきだが……此処は敢えて。

 

「否、事情なくば通しておくように。同行者がいたらその者も許可せよ。……己や、武士という最高戦力を欠いた程度で容易く敗れる程柔でなかろう。他にはあるか?」

 

「ありません。」

 

「同じく。」

 

「相分かった、大和万歳。」

 

「「大和万歳。」」

 

 通信を終えた辺りで、もう直ぐ月夜が来るので狸寝入りする。

 

(「さて行程と演技は………、定まった。後は何方で事が起きるかだ。幸運を祈るぞ、エース隊の皆、同志達、そして宗次。」)

 

 すると、毎朝変わらぬ、扉の開く音が聞こえてくる。

 

「英人ぉー!土曜だからってずっと寝てないで起きなさいっ!」

 

「うっ、……おはよう月夜。」

 

「全く幼馴染に世話掛けさせないでよね。」

 

 そんな、世話焼きツンデレ幼馴染という配役をこなす彼女の顔・声・動作には、一昨日晩でクロムウェルに振り回され又誂った時の普通な少女らしさも、宗次を誘った際の真剣な信頼も、一切窺えなかった。

 

「では、着替えるとするか。」

 

「済んだら早く降りてきてよ!」

 

 と言って彼女が部屋を出てから、寝巻を普段着に替えて退室し、降りて3期生A組33名で、食堂へ向かっている、と。

 

トンッ

 

「あっごめん!ちょっと“砂粒が靴に入って”、大丈夫?」

 

「有無、問題ない。(伝播完了、か。では、始めよう。またも迷惑掛けてすまんな。)」

 

 当たってきた同志斎藤へ密かに目配せして、静かに息を吸う。

 

「……ところで皆、今日の予定はあるのか?」

 

「……?予定って……」

 

「ウ〜ン、……Oh,でしたらアヤト、お願いがあるのデスガ。」

 

「奇遇、私もアヤトに用がある。」

 

「ほう、このメイファンに被せるとはいい度胸ネ。」

 

「「「えぇっ!!!???」」」

 

「3人共とは、どの様な希望なのだ?」

 

 そこで3人は、他より先駆けんとする様子で口を開く。

 

「「「ワターシ(私)(メイファン)と一緒に、東京観光へ行きたいデス!(の。)(アル!)」」」

 

「「「……は、はぁぁぁーーー!!!???」」」

 

 ……丁度よかった。何たる偶然か、いや、これも認識力の判断に関わる事柄か?

 

「おぉ、そうか!東京観光したいのか!相分かった、では早速今から往こう!」

 

「「「……え、えぇぇぇーーー!!!???」」」

 

 と、女子29名分の叫声が、周囲に人っ子1人いない校舎迄の道に響き渡って……いる中で同志から一斉に、実行を確認するように目線を送られた。

 

(「嗚呼、伝えた通り東京へ向かう。皆応じてくれ。」)

 

 意向を無言で発信する様に、小さく頷いて、建前を並べ立てる。

 

「ち、ちょっとて待ってよ東京って!?」

 

「幾ら何でも遠いし、いきなり過ぎるわよ!」

 

「問題あるまい、今日も明日も休みなのだ、この英雄、天道寺英人が羽根を伸ばして構わんだろう!」

 

「いやでも、万が一CEが襲って来て、ヘボい隊員連中じゃどうにもならない事態になったら……」

 

「タケコプターで飛んで駆け付けるだけよ!己なら東京からでもあっという間だ!」

 

「凄いアル!そんなかっこいい英人の姿、是非間近で見てみたいネ!」

 

「で、でもさ、態々あんな遠いとこへ出掛けなくても、この特高内には楽しい事美味しい物が色々沢山あるんだし、転校生も来たばっかでまだ馴染めてないんでしょ!」

 

「ううん。此処での生活も、アヤト達との付き合いも、アヤトのお陰で、思ったより早く慣れた。」

 

「ワターシもデスヨー!それに、折角ジャパンへ来れたんデス!アヤトと、観光したいデース!」

 

「と言ってるだろう、兎に角、遊びに行くと決めたら必ず行くのだ!」

 

「「「……っ!!!………」」」

 

 誠に申し訳ない、己が強情に主張しては、[機械仕掛けの英雄]の関係上逆らえない故、斯様な我儘も止められんのだ。どうか堪えてほしい。

 

「……そ、そう、分かったわよ!私も一緒に行くわ!東京に行ってみたかったし、何より英人をほっとく訳にはいかないもの!」

 

「わ、私も!」

 

「ならアタシもだ!みんなで目一杯楽しもうぜ!」

 

 と、内心がどうあれ満場一致で東京観光が決定されたので、早速校門へぞろぞろと向かってゆく。

 

(「頼むぞ皆、己が居らずとも完全勝利を掴めるのだと信じている。」)

 

 それから、正規の手続きを取らずに無断で(といっても根回しはもう済ましてくれたお陰で、警備担当者に「困惑しつつも止められない」という体の演技で送り届けてもらったが)、特高を抜け出しバスに乗って前橋駅へ向かい、其処から電車で高崎駅に着いてから新幹線で乗り換えた。

 

「おぉ、初めて乗車したが、実に速いな、新幹線というものは。」

 

「窓からの景色、ソウビューティフォーデース!」

 

「えぇ、そうね。」

 

「静かだし、乗り心地もいい。お願いしてよかった。」

 

「それもこれも、英人のお陰ネ!」

 

 1車両を事実上の貸切状態にして座席に着きながら、如何にも無邪気に騒ぐ学生旅行グループ、という空気を、我等は各々の心境で作り出していた。

 

「東京に行けるのは嬉しいですが、どの辺を訪ねる予定ですか?」

 

 予定か、東京と内陸部の何方で事が起きるか見通せんが、一先ず先に言い出した奴等の意向に従いつつ、同志達に監視させ、できれば挨拶回りもしておきたい所だ。

 

「ワターシはスカイツリーデス!」

 

「私は、銀座。」

 

「メイファンは当然浅草ネ!」

 

「「「………」」」

 

「そうか、どれも面白そうであるな!」

 

「「「………」」」

 

 何の魂胆あってか知らぬが、3人共バラバラな希望を宣いおって。月夜どころか同志達でさえ、不安と不満を隠そうと必死ではないか。

 

「と、ところでアメリアさん、ナターリャさん、メイファンさん、特高での暮らしには慣れましたか?」

 

 と其処で、同志花山が質問した。

 

「Yes!アヤトのお陰でバッチリデース!」

 

「特高での授業も、寮の住心地も、最高。」

 

「美味しいものも、楽しいことも、英人や素敵な友達も全部揃ってるネ!」

 

「そうか、それは良かった。」

 

 少なくとも特高での環境に適応できた、という点だけは見た所本当らしい。

 

「何か、不満や疑問はまだ残ってありません?」

 

 同志陸辺が尋ねると……、何やら3人共口を噤んで、悩んでいるかの様に顔を上なり下なり傾けていた、かと思えば。

 

「……食事は、最初は驚きマシタ。さ、最初だけデスヨ!」

 

「……アレが、ワビサビ、なるものかと……」

 

「とっても綺麗に揃えられてて、感動したネ。」

 

「そ、そうか……」

 

「た、確かに私達も、入学当日は凄い衝撃を受けたわ。も、勿論、今迄見たことも味わったこともない位豪華だったからね。」

 

「ま、まぁ仕方ないぜ、食いもんだけじゃなく畳とか庭園とかほへーってなったし。この戦いが終わったら、弟子入りとか頼めるかな……

 

 まさかの、否当然の回答を前に、我等一同は笑みを浮かべ……というより顔を引きつる他なかった。奇しくもこの時、己を含め日常的に仮面を被って付き合い続けてきた全員の素顔が晒された様に思えてきている。

 

(「全く、同志宇気め……、両計画に支障を来たす程ではなく、立場や能力に動機も考慮すれば処罰せず事後承認してやったものの……」)

 

 よもや、工作員養成所どころか親衛隊参加予定である同志の身内の女子達に対する報告すらも、「サプライズ的に(もてな)した方が本心から驚き感動して、演技が一層本格化するから好都合です!」との理屈で隠蔽しておったのだ。実際の所機関や計画に支障が出た訳でなかったものの、呆れるしかなかったわ戯けが。

 

「と、ところで、アメリアさん、ナターリャさん、メイファンさんは日本に来る前、どんな感じだったのですか?」

 

 と、微妙な空気が充満した車両内をどうにか改めようと同志風間が質問して、三者三様にカバーストーリーを並べ立て一応改善されてきた、のだが然し。

 

「__にしても東京か〜、私、()寿()()()()()()()()()()()()()()()()()()〜。」

 

「__ッ!?」

 

「神宮?神宮って確か、日本の神様に祈る所?」

 

「そうだけど、そんな神社はなかった筈よ。明治と間違えてんじゃない?」

 

「あれ、そうだったごめん音姫!」

 

 と、同志斎藤が返答した辺りで。

 

「……皆、少々席を離れる。腹が、その、な。」

 

「えぇ、いいわよ。」

 

 己は座席を立ち、隣の車両にある便所へ移動する。

 急遽駆り出された、民間人に扮する自衛隊員が素知らぬ顔で監視兼護衛の為張り付いておるので、異性故行動を共にできぬ親衛隊も、安全を任せられる訳だ、が。

 

「おっと、済まない。大丈夫か?」

 

「嗚呼、問題ない。」

 

 うっかり軽く当たった()()()()接触し、短い会話の中で密かに通信用端末を受け取り、大便用のトイレに入り鍵を閉め、外に音が漏れぬよう通信を始める。

 

「内陸で何か?」

 

 __「明寿」とは、第5次世界大戦勃発時より1代前の元号であり……異常事態が内陸部、現在旅行(出動)している東京方面とは反対側で発生しているとの意味である。

 

「長野ピラーから約500体軽井沢方面へ侵攻中、現在確認される限り六角柱のみ。その他異常なし。」

 

「了解、此方は問題なし。出動状況は。」

 

「2、3期B待機他全出撃方針。尚外出中の武士・先山・神近ら▷名は遅れて御代田町で合流予定。現状帰還を急ぐ必要性は低いらしいが如何に?」

 

「彼等に任せる、未だ東京観光したい衝動(の危機の懸念)は消えておらん。状況の推移や要請は引き続き同志へ。大和万歳。」

 

「大和万歳。」

 

 そう言って通話を終えて、端末を置き残してトイレから出て、何食わぬ顔で席に戻る。

 

「皆、待たせたな。……おぉ、綺麗な景色だ。」

 

「全く英人ったら。……!?」

 

 月夜は、疑っておらぬ様子で言葉を返したが、直後特高からの報せを受信したのか表情が一瞬だけ強張った。

 

「……ごめん、ちょっと、ね。」

 

「嗚呼、構わんぞ。」

 

 そう言って己と同様に隣の車両へ移動した。まぁ、今更引き返した所で間に合うかどうか。何より己も行きたいと主張していた以上、CEが攻めてきたからと岐阜・長野方面へ戻るよう伝えれば機嫌を損ねて他国工作員に好意が寄ってしまう事を恐れるだろうな。

 

 

 斯くして、我々は東京に着いたが……なんともはや。

 

「おぉぅ、此れが、東京であるのか……」

 

 聳え立つ数々の摩天楼、往来する無数の人々、それを効率的且つ安全に采配する交通システム。

 画面越しの光景よりも、入力された25世紀時点の情報よりも、圧巻の衝撃が全身に響き渡ってきた。

 

(「文明レベルの退化を考慮しても、帝都とてアドラーの辺境出身者が訪ねてみれば、同様の印象を抱くのだろうか……。嗚呼、あの鋼の箱庭、硝子管(フラスコ)から10世紀も出られず外界と直接触れ合う機会なく途絶えた前世が、至極勿体無く思えてくる。」)

 

 伊三郎元帥が生まれ育ったという約3世紀先の東京も、それに帝都も、己はついぞ自らの足で踏み締める事がなかった。こんな感慨を覚えるとは、いつの間にか身体のみならず精神も、すっかり人間へと変わったものだ。

 

(「……それにしても、宗次に見せれば如何に反応するのだろうか。調べた限りでは、今の歳になる迄村の周辺の町にしか出ておらず、大都会だと大層驚いていた前橋市以上の規模の都市への来訪経験はないそうだ。果たして、己同様に感動するのか、或いは困惑し苦手意識を懐くのか……」)

 

「アーヤ―トーサーン!どうしたんデスカ?」

 

「__ぅおっと、済まない。」

 

 とその時、フィリップスが抱き着いてきて、思考が戻された。

 

「いつもいつも、英人から離れなさいよ!」

 

「その通り。アメリアは、しつこ過ぎ。」

 

「そ~言うナターリャこそ、勝手にこっそり手を握ろうとするんじゃないネ!」

 

「あ〜!音姫も、アメリアさんもナターリャさんもメイファンちゃんもズルい!」

 

 と喧しく己に寄っかかりながらも、全員周囲の視線を気にしていた。我等の名前を知られて騒ぎを起こされてはならず、それでいて程良く羨望を抱かれる様にしているのだろう。

 一方で、視点を遠くに合わせてみれば、監視要員として配置された同志が見掛けられ__

 

「__!?………」

 

 白いワイシャツの襟元に巻かれた灰色のネクタイを見て、口を閉じたまま頭を縦に振った。

 ネクタイの色は戦況の暗示。灰色の意味は、「小型ピラー不在なれど新型CE出現、救援はまだ不要」であり……不安や安堵に期待を胸の奥底へと秘めて、同級生達に向き合う。

 

「……では行くぞ!先ずは~~」

 

 ともあれ、新幹線内のくじ引きで決まった順に周るべく動き出し__異変が生じたのは、電車を乗り換えるべく大手町駅で降りた直後であった。

 

「__っ!?………」

 

(「__何だ?急に東京観光の意欲が霧散して、代わりに特高へ帰りたい気持ちが湧いてきたが……もしや!?」)

 

「………」

 

 自然な風に見渡せば、同志は皆灰色一色__戦況の変化はないらしい、が数秒後、同志の1人が建物内へと身を隠し、次に出てきた時は紺色のネクタイに代わっていた。

 

(「……そうか、無事であったか。安心した。」)

 

 黒未発生・小型ピラー現れず・エース隊勝利__紺色が示す吉報に安堵しつつ、今後の予定を組み直す。

 

(「安全面を考慮すれば迅速に、それでいて目立たぬよう東京駅へ引き返し高崎方面の新幹線に乗るべきだ。親衛隊も工作員も混乱させるが何時もの気紛れで済ましてくれるだろう。然し……」)

 

「さあ、張り切って東京巡りだ!目一杯遊ぶぞッ!」

 

「「「オォーー!!!」」」

 

(「折角東京に来て、更に都内の同志に心の備えをさせてしまったのだ。幸い現時点で内陸は安定しておる故、この際少しでも挨拶回りしておきたい。」)

 

 そうして、我等は今朝決めた予定通り動く事になるのであった。

 

 先ずは、駅構内の男子トイレにて、駅職員でもある同志○○と接触し、予定を伝える。

 これで特高や都内、それに親衛隊の同志に行き渡ったので、異常事態が内陸若しくは東京に生じた場合の報告も頼んでおいた。

 

 そうして己は、3人の希望に応じる形で観光地を巡り、合間合間に隙を窺い若しくは同志達に作らせて、偶々予定が合って接触できる者等と対面してきた。

 例えばスカイツリー内部にて。

 

「お目にかかれて光栄です。これもピラーの導きかと、おっと冗談失礼しました。」

 

「構わん、己の方こそお陰で言葉を交わす切っ掛けになったのだ。来たる日に備えて、引き続き教徒を纏め上げてほしい。」

 

 CE教団幹部と。

 

「貴方の協力により、数々の有罪を勝ち取りまた冤罪を防ぐ事が出来ました。」

 

「此方こそ、最近では親飼の件でも助けてもらった。感謝しておる。」

 

 浅草寺の隅にて検察庁の官僚と。

 

「それでは、今後とも情報統制と広報に助力致します。」

 

「嗚呼、それと前橋駐在の記者2名についても。」

 

 銀座のビル影にて(たつみ)出版社の社長と。

 

「……むぅ。」

 

「迦具土神?如何なされましたか?まさか見られていると?」·

 

「……否、何でもない。機関以外の目も耳もない筈だ。」

 

「それならよろしいのですが。」

 

(「そう、実際に監視や盗聴されている訳ではない。だが特高へ帰還したい気持ちが生じてから、否恐らく県境を越えた時から、実体のない何かに帰れとせっつかれている気分と気配を感じる。之はもしや……」)

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 結局、東京では大した異変も危機も見受けられず、内陸からの報せも来ず、そして非同志の面々からは己の行動に振り回され疲れ果ててはいたが全く怪しむ素振りを窺えないまま新幹線に乗車し、夕日の沈み掛けな頃に特高へ無事到着した。

 

「……おかえり、天道寺英人。それに皆。」

 

「有無、ただいま戻ったぞ。」

 

 必死に怒りと不満を抑え込まんと無表情に努めながら待ち構えていた色鐘を前に、罪悪感を勘付かれぬよう言葉を返した。

 

「いやはや、初めてとなる日帰り東京観光、実に楽しかった。」

 

「……そうか、楽しかったか、それは何よりだ。」

 

「では、己は遊び疲れたので、食堂で夕食を食べてくる。」

 

「……分かった。お前達も早く食事にして休むといい。」

 

「「「……はいっ!!!」」」

 

「Yes!ベリーハングリーデスヨー!」

 

「私も、食事にしたい。」

 

「ご馳走一杯頂くネ!」

 

 斯くして、我等は食堂に向かい御座敷で何時も通りの豪勢な和食を食べて、寮に戻って風呂に入り、「疲れたから先に寝る」と伝えれば、元々疲労が溜まっていた上に同志達が就寝を促してくれたお陰で、普段の戯れを誰も務めることなく自室に戻っていった。

 そして布団を被り、通信隊へと接続し挨拶を交わして。

 

「通信隊の皆、そして校内の同志達、土曜に見張りを務めてくれた者達、礼を言う。今朝方突然言い出し実行した東京出張に振り回してしまった。休日手当や振替休暇等、可能な限り応じる故、遠慮なく申請して頂きたい。……以上、通達してほしい。」

 

「了解した。それで、先ずは此方からだ。」

 

「頼む。結果は紺だと把握しているが、手短に願う。」

 

「小型ピラーは現れなかったが、強力な狙撃に特化した新型CEが出てきた。撃たれた装甲車 台損傷 台廃棄だが、武士やクロムウェル、1期Aが昨日合同で編み出し練習していた戦法の応用により、黒ゼロで全滅させた。映像は見るか?」

 

 ……ふむ、さぞかし危険で白熱した戦闘であり、本来ならば直ぐにでも観たい所であるが。

 

「明日の晩にしておこう。本日己に生じた力と今後の展望を報告するのに集中したい。クロムウェルからの映像もその時頼む。色鐘等の見方はどうであった?」

 

「それは、~~」

 

 秋葉から、彼女達が己の突飛な行動に対する解釈を伝えられ、その認識が変わらぬよう対処せよと指示した。それから此方の報告__特高出発から帰還迄の己と周辺の状況、東京にて顔を合わせた同志の名前、此等について述べて。

 

「以上が、簡単な報告だ。詳細は後日提出するが、他に何かあるか?」

 

「明日、ベルト型1機が到着する、それも保科の要望通り二重武装(ダブルアーム)だ。再確認するが、武士が使っても構わんか?」

 

「有無、宗次の技量も智謀も、武功も評判も高まってきておる。腕輪型より使い勝手が良く、強力で、エース隊唯一無二となれば相応しかろう。無論、二重武装(アレ)は高負担であり、又特別性故受ける認識力も増大し自我の維持も困難となるが、奴なら乗り越えてくれる。奴1人だけでは敵わずとも、周囲の者等が必ずや支えてくれる。……尤も、過信せず()()()()()()()()()し続けておかねばならんが。」

 

「……その件で気になる事がある。」

 

「何だと、それは……ふわぁ~〜」

 

 いかん、思わず欠伸が出てしまった。

 

「明日動画視聴してから、改めて聞くようにするか?」

 

「……そうであるな、済まない、大和万歳。」

 

「体調管理には気を付けろよ、大和万歳。」

 

 そうして通信を切ってから、瞼を閉じながら己の変化に対する分析の為振り返るとしよう。

 

 

 





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 因みに今回書き記した元号「明寿」は、本作独自の設定となっておりますので、ご理解ください。

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